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第二章  こうして物語はこうしてゆっくりとでも確実に動いていく?

3  物語の強制力なんかには負けない???  天音Side

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 そうして何も状況が変わらないまま一月が過ぎていったの。

 当然の事ながら私にはこの後起こりうるだろう展開を十分過ぎる程理解していた。
 そうね、これから先何とも言えないフラグ立ちまくりのバッドエンドルート一直線の道をね。

 勿論私は足先何て所を切られたくもないし、またアナの踵も切らせたくなんてないっっ。
 おまけに私達姉妹の両目も鳥に突き潰されたくもなければ、その後の人生もきっと碌なものでないのだろう。
 前世ではドリゼラ達モブのモブ末路なんてそんなに興味もなかったから、彼女たちの人生の終焉がどのようなモノかなんてはっきり覚えていないし興味すらなかったもの。

 今ここにスマホがあれば確実にググっていただろう。
 そう私自身が30歳という若さで死んでそうまさかの異世界転生した挙句に前世で気にも留めなかった物語のモブになるなんて、物語を読んでいた幼い頃の私に言ってやりたいわっっ。

 物語は最期の最後までしっかり読みなさいって。
 
 それにもしたとえ何とか生き伸びたとしても絶対に平凡な人生を保証されているとは限らない。
 はあ、多分無難な所で場末の娼館へ姉妹揃って売り飛ばされ、顔も知らない……いやいや顔を知っていても嫌だけれどね。
 二人とも数えきれない男達に抵抗する事すら許されないまま犯され続ける腹ぼてエンドは真っ平ごめんだけれど、だからと言って将来王子様の妃になるだろうエラの命令による公開処刑で命を落とすのも絶対に嫌!!

 第一私は前世でも、そして今世に置いてもいまだ真っ更々の清い身体のなのよ!!

 確かに今はまだ16歳でしかも成人前の未婚の貴族令嬢であるから、処女性を重んじるこの国に置いてこれは当然ちゃぁ当然なのだろうけれど、前世の私はアラサ―……29歳崖っぷち女の拗らせ処女だったのよね。

 中高大学までずっと女だけの世界いた故なのか、いやいや周りの友人はそれなりに男の子達と楽しく遊んでいたわね。
 私も何回か誘われたんだけれど何と言うか、男の子と話すよりも女の子と話す方が落ち着くし、第一男の子に対して何をどう話せばいいのか全く分からなかったよっっ。
 そうこうしている間に無事大学を卒業して就職をしたの。

 そうっ、これで私も大人の仲間入り!!
 これから私を待っているだろう素敵な男性と巡り合って、きっと誰よりも幸せになるのだと心から馬鹿みたいに信じていたわ。

 でもね、私が就職したのは図書館。
 確かに男性職員……もいたわよ。
 それに本を借りに来る人の中にも女性や子供達だけでなく男性も含まれているわ。

 ただね、その中に思うような素敵な男性がいなかっただけっっ。

 夢を見過ぎていたのかもしれない。
 今にして思えばそうなのかもよね。
 でも、だってっ、ずーっと私は29歳になるまで男性とお付き合いなんてした事はおろか、まともに言葉を交わしたのも決して多くない状態だったのよ!!

 だから、少しくらい?

 いやいや私でなくとも誰だってめっちゃ夢を見るでしょう!!

 折角女として生まれてきたのだものっっ。
 素敵な男性と素敵な恋をして、そうして皆が羨む様なプロポーズをされてからの素敵な教会で真っ白でお姫様みたいなドレスを身に纏い、王子様の様なキラキラ笑顔の眩しい旦那様と誓いの言葉の後に触れ合うような優しいキス。
 
 キャ――――っっ!?
 今思い出してもめっちゃ恥ずかしいっっ!!

 い、いいわよっ、何と言われてもいいんだからっっ。
 めっちゃイタい女だって自分でもちゃんと自覚しているわよ!!

 でもいいじゃない。
 夢を見るのは誰でも自由でしょ。

 そうよ、夢よ夢っっ。

 情けないけれど前世の私はそんなイタい夢を抱いたまま呆気なく死んでしまったのよ。


 でもっ、今世は違う!!
 もうイタい夢なんか絶対に抱かないし抱こうとも思わない。
 私はあの瞬間生まれ変わって気がついたのっっ。

 夢よりも大切なのは!!

 勿論夢を全否定する心算つもりなんてないわよ。
 しか~しっ、夢だけでは人間生きていけないのも真実だわっっ。

 そう、特に今の現状はね。

 何と言っても私はシンデレラの意地悪な義姉その一なんてものに生まれ変わったのだもの。
 だから優雅に愛や恋へかまけている暇は私にはないの!!

 何故なら私――――ドリゼラと妹のアナ、お母様の人生を何としても護らなければいけないのだものね。

 恋や愛……うん特に王子様とのロマンスはかまこの際エラに任せて、私達親子はエラとは別の道を歩いて行く。
 ううん、絶対に歩かなきゃあいけない。
 だって何をおいても一番大切なのはなのだもん。
 そして出来れば、うんそれは贅沢な望みなのかもしれない。
 それでも私の中のドリゼラの記憶が強く望んでいるの、それは――――。

 お父様の残してくれたトレメイン子爵家を残す事。

 今の状況ではかなり難しい事だというのも十分理解している。
 国を出る出ない関係なく、平民となり命が助かるだけでも有り難いのかもしれない。

 それでもだっ、願うだけなら自由でしょ。

 幾ら前世の記憶があるとはいえ、私を含めアナとお母様は生粋のお貴族様。
 魔法はあるっちゃああるけれども下位の貴族や平民にはほぼほぼ魔力なんてものは存在しないし、前世みたいに便利な道具は何もない世界なのよね。

 そして私自身これより先に何が出来るかも未知数だ。

 それに……もし物語通りならば、エラを苛めたお母様の末路は――――が確定している。

 だから絶対に護ってみせる!!
 そして何があっても私はエラを苛めないし、当然お母様やアナにもさせやしないっっ。

 絶賛お母様と直接お話が出来ない現状の中で今私が出来る事――――それはエラとの関係を友好つ仲の良い姉妹関係を確固たるものとするに限るわっっ。

 あとカルリエ家の財政状態の把握ね。
 トレメイン家の財政状態は今の所安定している。
 領地経営はコリンヌ伯母様の嫁ぎ先でもあるオードラン伯爵家にお願いしてあるの。
 将来はきっと私かアナが従兄妹であるオードラン伯爵家の二男と結婚して後を継ぐ事になる。
 
 さあこれからよっっ。
 これからが勝負となる。
 今まで以上に細心の注意を払い、しっかりと周りを見て行動するのよ。
 そして何が何でも物語の強制力なんかに絶対負けたりなんてしないのだから!!

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