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第一章 転生先は物語と酷似している世界の中二人の転生者は……。
11 ヒロイン エラ エラSide Ⅴ
しおりを挟む「ねぇ、最近お父様のお仕事は上手くいっているのかしら」
「どうなさいましたエラお嬢様」
今私は私室の長椅子の手摺へやや物憂げな表情を湛えたまま自分の身体を横たえさせ、少しクッションへ強めに押し付ける様にしている。
そうして態と出来得る限り艶かしい体勢で上半身を預けていた。
ふふん、こうするとね、襟ぐりのやや開いた感じのドレスを着ているとさ、お胸の谷間がちょーっとだけ見えたり見えなかったりするんだよね。
所謂パイちら?
当然私はまだまだ13歳のお子様だから、そこはなけなしの有るか無いかの胸を両腕でぎゅっと押し上げる努力をしているわっっ。
そしてここではっきり言わせてもらえば勿論私が自ら進んでそんな姿を見せたいんじゃあないっっ。
じゃあ誰が見たいって?
それは決まっているじゃない。
今私の前に立っている執事のエドモンよ。
ふふ、エドモンはお父様と同じ40代のおじさんだけれど、彼もまた長年密かに私のお母様へ恋をしていたと言うワケ。
だからエドモンもお父様と同じ。
ううん、もしかしたらそれ以上かもしれない。
どうしてそんな事がわかるって?
そんなの馬鹿でもわかるわよ。
お母様と激似らしい幼い私に対して、二人とも大人の癖に滑稽なくらい私を溺愛しているんだもの。
まあ私が美しく可愛い過ぎるのも問題なのかもしれない。
しかしだからと言って幼女を捕まえて無体を働いたりする事はなかったわ。
でも私に向ける視線がウザいくらい訴えかけてくるの。
うん、ちょっとばかり鬱陶しいけれど、大の大人を自分の好きな様に動かせるのはこれはこれでめっちゃ愉しい。
それにエドモンもね、お父様とはタイプの違うイケメンなんだもの。
エドモンはお父様よりも背が高くてとても綺麗な顔立ちをしている。
一見冷たい様にも見えるけれど、そうね譬えるならばしなやかな肢体を持つ野生の豹ね。
一方お父様はどちらかと言えば甘いマスクの優しげな顔立ちをしているわ。
多分……きっと大抵の者はその優しげな甘いマスクで簡単に騙されてしまうでしょうね。
だけど一旦仕事モードになればお父様はその顔を最大限に生かし、相手を完全に油断させた瞬間――――パックリと狼みたいな大きな口と牙を見せつけて相手の商売を骨の髄まで貪り尽くす。
ちょっと怖いけれどまあどっちにしても私には全く害が及ばないからいいの。
それにそんな事で商売が上手くいくのなら幾らでもやって欲しいくらいよ。
だって言い換えればその分私は思いっきり贅沢が出来るんだもん。
でも最近ちょっと気に掛かるのよね。
そう、以前の様にお父様は私へ会いに来なくなったわ。
少し前まで毎日、そうね仕事がない時は何回もやって来ては私を如何に愛しているかって言っていたのに、新しいお義母様と結婚をした境にっ、ううんお義母様と恋に堕ちた瞬間からまるで私の事なんて全く見ていない感じがする。
確かにこれも私のバラ色の未来の為に致し方ないとわかっているけれどもっ、だからと言って下僕が減るのは正直面白くない!!
どうせお義母様との生活はほんの少しの間だけ。
だからお父様も適当にすればいいのに、何でこうも思い通りにならないんだろう。
それから最近まさかのドリゼラのお節介と相まって私はちょっと所じゃあなくっ、めっちゃイラついている!!
うん、余りこういう事には関わりたくないんだけれど、でも仕方がないじゃない。
仕事を放棄するお父様が悪いの。
そう私は何も悪くはないわ。
だって私が動かないと物語が全く進みそうにないのだものだから……。
「そうね、最近……お父様は新しいお義母様とずっとご一緒に過ごされているでしょ? 今迄あんなにお仕事に打ち込んでいらっしゃったのに、今では新しいお義母様のお傍から少しも離れようとなされないのよね」
「そ、それは……エラ様のお母様を亡くされた故の事でしょう」
「お母様の所為?」
「はい、もうかれこれ七年前になりますね。奥方様がお亡くなりになられたおり、旦那様は遠方へお仕事に行っておられたのを覚えていらっしゃいますか?」
「え、えぇそうね。そうだったわね」
忘れていたわよ、そんな過去の出来事なんてさ。
全く一々モブキャラの存在まで覚えていないって。
「旦那様は奥方様の最期の瞬間を見送る事が出来なくて、それはそれは大層悲しみ悔いておられました。ですから今度こそは新しくお迎えになられた奥方様を心より大切になさりたいのでしょう」
「ふーん、そっか、そうよね」
でもエドモン、尤もらしい表情で語りかけてくるけれどさ、気がついてる?
あんたってば年甲斐もなく鼻の下をこれでもかって言う程に伸ばして、私の胸をさっきからチラチラ見ているんだよね。
まーったく何処の世界も男って言うのは本当にスケベだよね。
でもまあいいか、これからあんたには仕事をして貰うんだからさ。
うん、その駄賃としたら……いやいややっぱり安く売り過ぎだよっっ。
大体未来の王妃様の胸をチラ見なんてっ、やっぱりあんたも……ね。
「でもエドモン、お父様の商会には沢山の職人がいるのよ。お父様が幸せなのはとても嬉しいけれど、でも私はお父様の娘として職人さん達の生活も考えなくてはいけないと思うのよ」
「おおお嬢様っ、まだまだ幼いと思っておりましたのに、もうそこまで商会についてお考えになられていたのですね!! 何時までも可愛らしい私のお嬢様と思っておりましたのに、何時の間にかお嬢様は大人の女性となられたのですね」
「ま、エドモンてば……」
おいっ、何時の間に私があんたの可愛いお嬢様になったんだよっっ。
私は17歳のJKだっつーの!!
「ねえエドモン、一つお願いが有るの」
私は焦らす様に身体をゆっくりと起こし、そうして出来るだけ駄々甘~い声でエドモンにあるお願いをする。
最初こそは流石のエドモンも吃驚していたけれど、でももう少しだけ甘さを出して可愛く彼にお強請りをすれば――――ほんとチョロイ。
めっちゃチョロイよこのおっさん。
話を終えたエドモンは恭しく私の手の甲へ自分の、やや湿り気のある唇を押し付けたよ。
うげっ、気持ち悪っっ。
でも我慢我慢、これさえ我慢すれば望みのモノが手に入るんだからっっ。
そうしてエドモンはめっちゃご機嫌で私の部屋を後にする。
これでもう私は後戻りする事は出来ない。
いやいや元からする心算なんてないしー。
兎に角今はエドモンに穢された手を一刻も早く消毒しよう。
本当にキモいつうか、マジで止めて欲しいわっっ。
私の白魚の様に綺麗な手が腐ったらどうしてくれるのさっっ。
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