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第一章 転生先は物語と酷似している世界の中二人の転生者は……。
2 天音=ドリゼラSide
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私はドリゼラ・トレメイン16歳。
我が国ルフェ王国内でも由緒あるトレメイン子爵家の令嬢だった。
爵位こそ低いけれども私は子爵令嬢としての出来得る限り最高の教育を受け、そして行く行くは玉の輿ゲットを幼い頃より虎視眈々と密やかに目論んでいたらしい。
まあ母親であるトレメイン夫人譲りの美貌と、自分でもうっとりするくらい素晴らしいプロポーションを持っている故なのだろう。
艶やかな漆黒の髪と栗色の瞳をした私。
前世とは違い自身の容貌にそれなりの自信もあり、常に上昇志向の強いドリゼラ。
子爵家に生を受けたとはいえ、ドリゼラは何としても上流階級の世界へ捻じり込みっ、彼女の望み通り栄耀栄華を極めてみせたかったらしいが、どうやら現実は彼女に冷たかったみたい。
そう、事の始まりは今より三年前に流行病で父を亡くし、子爵家未亡人として過ごされていたお母様がつい最近になって再婚相手に選んだのは、あろう事か我が子爵家よりも格下のカルリエ男爵だった。
そのカルリエ男爵自身もまた数年前に愛する奥方を病で亡くされたとか……もね。
また男爵にはが一人娘がいるけれども、その令嬢をかなり溺愛しているらしい。
然も男爵自身到底男やもめの子持ちには見えない程に若々しく、整った容貌とそれに加えてかなりの財産家であると社交界でも特に貴婦人方に大層有名だとか。
そうしてカルリエ男爵の後添えの地位を狙っているのは未婚既婚、未亡人を問わず数多の女達が涎を垂らして狙っていると言う事もね。
でも、その一方でカルリエ男爵自身はつい最近まで再婚の意思が全くなかったらしい。
うん、これは全てドリゼラの記憶が私に教えてくれている真実。
ドリゼラが前世の天音を思い出す直前まで、相当腹に据え兼ねていた現実なんだものね。
第一に子爵家よりも格下の男爵家へ後妻として入る母親に対してもドリゼラは面白くなかったみたいだし、それに加えて家格が下がればそれだけ貴族令嬢として、将来の結婚相手にも余り期待は出来ないみたい。
だからドリゼラはカルリエ男爵家へ向かう当日の馬車の中でもずっと何か打開策を見いだそうと、彼女なりに色々考えていた訳よ。
まあ私からすれば子爵令嬢の結婚相手にするならば同格の子爵、良くて伯爵家くらいだろうと思うのだけれどドリゼラはその上、何とつまりは侯爵家への輿入れを狙っていたのだから驚きよね。
然も出来得る事ならば王子様との結婚や王族若しくは高位貴族の主催する舞踏会場で美しく着飾り、楽しくダンスを踊りたいなんて、何処か夢見る哀れなヒロインルートを真剣に目指そうとしていたとは、流石に思わず笑いたくなる案件だけれども、これは夢や物語ではなく現在進行形で自分自身の身の上に起こっている話なので少しも笑えないわっっ。
そうして脳内一杯にお花畑を咲かせていた故に隣にいる妹のアナスタシアにも喧嘩を売り、あまつさえ上品ぶってカルリエ男爵より差し出された手の上へふんわりと添える程度にしか自身の手を乗せた結果――――!?
ドリゼラは馬車に取り付けられた足台を踏み外し、屋敷内にいたであろう全ての使用人達衆人環視の中達綺麗なドレスの裾も思いっきり捲れ上がり、また大きな音を立てて見事にすっ転んでしまった!!
おまけに運悪く馬車の角で強かに頭を打ち付け、あり得ない姿で転倒と共に気絶をしたの。
また余程打ち所が悪かったのか一週間の間昏々と眠りに就き、そうして今の私=天音がここにいるのだ!!
天音とドリゼラの記憶を持つ――――とは言っても現在の主導権はドリゼラの記憶を吸収した天音である私は自身の置かれた状況を鑑みて思う。
間違いない、カルリエ男爵こそシンデレラの父親なのだろう。
また彼の一人娘こそがこの世界のヒロイン――――シンデレラ。
でも確か名前はなんだっけ、エラ、んー確かエレオノーラだったわよね。
まだ正確には会った事はないのだけれども……。
それにしてもどうやら件の物語はもう既に始まっているんだわっっ。
このまま何もしなければ私を含め、お母様とアナスタシアは間違いなくバッドエンドのフラグが全力で旗を揺らしながら立っている。
いや、立っているだけならまだいい。
その隣で死神が手招きしながらにーっこりと微笑んでいるんだよっっ!!
最初は私だけでもって思い、悪いけれどもお母様の結婚式の間にこっそりと隙を見て逃げ出そうかとも思ったの。
馬車より転げ落ちて前世の記憶が戻ったのは、多分気を失って直ぐの事だと思う。
ただ記憶の整理を必要としていたからこの一週間もの間眠っていただけに過ぎない。
でもね、その一週間の間揺蕩う意識の中で視えていたのは、眠る私を然も心配そうに見つめるお母様とアナスタシアの二人だけ。
勿論私を世話する人達もいたわよ。
だけど家族として心配してくれたのはこの二人だけだったのよ。
それに何故か私が眠っている間に結婚式を済ませ家族となったカルリエ男爵や、童話では心優しいとされるエラも一度として私へ会いに来てはいない。
そして今も私の中で二人分の記憶が混在している。
冷酷で強欲なお母様と、何でも突っ掛かり悪態ばかり吐く意地悪でぽっちゃり体型な妹のアナスタシア。
でももう一方では亡きお父様を深く愛し、ドリゼラとアナスタシアを愛しているにも拘らず、ややツンデレな所は満載だけれども優しいお母様と物語同様にぽっちゃりは同じだし、よく喋るけれど妹のアナスタシアは余りと言うか、全く悪態は吐かないわね。
寧ろややおっとりしているけれど私よりお洒落さんで、常に身嗜みを気にしている癖に美味しい物が大好きな妹アナスタシア。
あーさっきもそうだったよね。
私はチョコレートケーキの誘惑に負けたんだっけ。
まぁ兎に角よ、思ったのは童話と余りにも酷似した世界だけれど、でも全く違う異世界かもしれないって事!!
登場人物は同じでも、その性格までも同じとは限らないかなぁ……と思い至ったのですよ。
だからして当初の一人だけすたこらさっさと脱出するのは何かいけない様な気がしてね。
うん、出来る事ならば親子三人で困難に立ち向かいたい――――とは思うけれど、これが本当に上手くいくのかが不安なのですよ。
我が国ルフェ王国内でも由緒あるトレメイン子爵家の令嬢だった。
爵位こそ低いけれども私は子爵令嬢としての出来得る限り最高の教育を受け、そして行く行くは玉の輿ゲットを幼い頃より虎視眈々と密やかに目論んでいたらしい。
まあ母親であるトレメイン夫人譲りの美貌と、自分でもうっとりするくらい素晴らしいプロポーションを持っている故なのだろう。
艶やかな漆黒の髪と栗色の瞳をした私。
前世とは違い自身の容貌にそれなりの自信もあり、常に上昇志向の強いドリゼラ。
子爵家に生を受けたとはいえ、ドリゼラは何としても上流階級の世界へ捻じり込みっ、彼女の望み通り栄耀栄華を極めてみせたかったらしいが、どうやら現実は彼女に冷たかったみたい。
そう、事の始まりは今より三年前に流行病で父を亡くし、子爵家未亡人として過ごされていたお母様がつい最近になって再婚相手に選んだのは、あろう事か我が子爵家よりも格下のカルリエ男爵だった。
そのカルリエ男爵自身もまた数年前に愛する奥方を病で亡くされたとか……もね。
また男爵にはが一人娘がいるけれども、その令嬢をかなり溺愛しているらしい。
然も男爵自身到底男やもめの子持ちには見えない程に若々しく、整った容貌とそれに加えてかなりの財産家であると社交界でも特に貴婦人方に大層有名だとか。
そうしてカルリエ男爵の後添えの地位を狙っているのは未婚既婚、未亡人を問わず数多の女達が涎を垂らして狙っていると言う事もね。
でも、その一方でカルリエ男爵自身はつい最近まで再婚の意思が全くなかったらしい。
うん、これは全てドリゼラの記憶が私に教えてくれている真実。
ドリゼラが前世の天音を思い出す直前まで、相当腹に据え兼ねていた現実なんだものね。
第一に子爵家よりも格下の男爵家へ後妻として入る母親に対してもドリゼラは面白くなかったみたいだし、それに加えて家格が下がればそれだけ貴族令嬢として、将来の結婚相手にも余り期待は出来ないみたい。
だからドリゼラはカルリエ男爵家へ向かう当日の馬車の中でもずっと何か打開策を見いだそうと、彼女なりに色々考えていた訳よ。
まあ私からすれば子爵令嬢の結婚相手にするならば同格の子爵、良くて伯爵家くらいだろうと思うのだけれどドリゼラはその上、何とつまりは侯爵家への輿入れを狙っていたのだから驚きよね。
然も出来得る事ならば王子様との結婚や王族若しくは高位貴族の主催する舞踏会場で美しく着飾り、楽しくダンスを踊りたいなんて、何処か夢見る哀れなヒロインルートを真剣に目指そうとしていたとは、流石に思わず笑いたくなる案件だけれども、これは夢や物語ではなく現在進行形で自分自身の身の上に起こっている話なので少しも笑えないわっっ。
そうして脳内一杯にお花畑を咲かせていた故に隣にいる妹のアナスタシアにも喧嘩を売り、あまつさえ上品ぶってカルリエ男爵より差し出された手の上へふんわりと添える程度にしか自身の手を乗せた結果――――!?
ドリゼラは馬車に取り付けられた足台を踏み外し、屋敷内にいたであろう全ての使用人達衆人環視の中達綺麗なドレスの裾も思いっきり捲れ上がり、また大きな音を立てて見事にすっ転んでしまった!!
おまけに運悪く馬車の角で強かに頭を打ち付け、あり得ない姿で転倒と共に気絶をしたの。
また余程打ち所が悪かったのか一週間の間昏々と眠りに就き、そうして今の私=天音がここにいるのだ!!
天音とドリゼラの記憶を持つ――――とは言っても現在の主導権はドリゼラの記憶を吸収した天音である私は自身の置かれた状況を鑑みて思う。
間違いない、カルリエ男爵こそシンデレラの父親なのだろう。
また彼の一人娘こそがこの世界のヒロイン――――シンデレラ。
でも確か名前はなんだっけ、エラ、んー確かエレオノーラだったわよね。
まだ正確には会った事はないのだけれども……。
それにしてもどうやら件の物語はもう既に始まっているんだわっっ。
このまま何もしなければ私を含め、お母様とアナスタシアは間違いなくバッドエンドのフラグが全力で旗を揺らしながら立っている。
いや、立っているだけならまだいい。
その隣で死神が手招きしながらにーっこりと微笑んでいるんだよっっ!!
最初は私だけでもって思い、悪いけれどもお母様の結婚式の間にこっそりと隙を見て逃げ出そうかとも思ったの。
馬車より転げ落ちて前世の記憶が戻ったのは、多分気を失って直ぐの事だと思う。
ただ記憶の整理を必要としていたからこの一週間もの間眠っていただけに過ぎない。
でもね、その一週間の間揺蕩う意識の中で視えていたのは、眠る私を然も心配そうに見つめるお母様とアナスタシアの二人だけ。
勿論私を世話する人達もいたわよ。
だけど家族として心配してくれたのはこの二人だけだったのよ。
それに何故か私が眠っている間に結婚式を済ませ家族となったカルリエ男爵や、童話では心優しいとされるエラも一度として私へ会いに来てはいない。
そして今も私の中で二人分の記憶が混在している。
冷酷で強欲なお母様と、何でも突っ掛かり悪態ばかり吐く意地悪でぽっちゃり体型な妹のアナスタシア。
でももう一方では亡きお父様を深く愛し、ドリゼラとアナスタシアを愛しているにも拘らず、ややツンデレな所は満載だけれども優しいお母様と物語同様にぽっちゃりは同じだし、よく喋るけれど妹のアナスタシアは余りと言うか、全く悪態は吐かないわね。
寧ろややおっとりしているけれど私よりお洒落さんで、常に身嗜みを気にしている癖に美味しい物が大好きな妹アナスタシア。
あーさっきもそうだったよね。
私はチョコレートケーキの誘惑に負けたんだっけ。
まぁ兎に角よ、思ったのは童話と余りにも酷似した世界だけれど、でも全く違う異世界かもしれないって事!!
登場人物は同じでも、その性格までも同じとは限らないかなぁ……と思い至ったのですよ。
だからして当初の一人だけすたこらさっさと脱出するのは何かいけない様な気がしてね。
うん、出来る事ならば親子三人で困難に立ち向かいたい――――とは思うけれど、これが本当に上手くいくのかが不安なのですよ。
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