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第二章 どうやら成人する前に色々と人生を詰んでいるみたいです
17 魔王VSジャ○アン?? アンセルムSide
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「ひっ、ひぃっ、た、たた助けてくれっっ。たっ、頼むから命だけはっっ」
俺が吐きだせた言葉はたったそれだけ。
情けないが余りの恐怖で上体を起こしそのまま立ち上がろうとしたのだが既に腰は抜け、今は?いやっいやこのままでは立ち上がれる気が全くしないっっ。
そしてただただほんの数m先にいるだろうアイツがっ、ラングハイムの第二皇子が途轍もなく怖いっっ。
あ、アイツの生気等一切感じさせない視線から放たれる何かだけで俺はこの場で死んでも可笑しくないとさえ、またアイツの視線よりはもう逃げられないのだと否応なく痛感させられてしまう。
あぁ昔誰かより何気に聞いた事があった。
その時はそんな事は絶対にないと鼻で笑っていたのだがっ、い、今なら……そうたった今ならば正確に理解出来るっっ。
視線だけで人を射殺せる奴が存在する――――って事をだ!!
まさに今そこにいる奴がそうだ。
エヴェリーナの前では何時も笑顔しか……それも何とも蕩けた阿呆面しか見せない癖にあの野郎っ、裏でこんな恐ろしい一面を隠し持っている等俺は何も聞いていないっっ。
と、兎に角今はエヴェリーナよりも己の命を最優先するんだっっ。
この危機的な状況を打破さえ出来ればエヴェリーナ等何時でも直ぐに手に入れられるのだからな。
そうだっ、コイツさえ邪魔をしなければっ、今この瞬間エヴェリーナはこの俺へキスをしようとしていたのだっっ。
ふ、ははは、コイツはいい、実に傑作だ。
本当に馬鹿な奴だ。
今お前の腕の中で護っている女の心は既に俺のものなのだからな。
心――――いいやっ、心だけじゃあない!!
その小さな身体は元より、エヴェリーナの全てを形成するものは婚約者であり、未来の夫たる俺のものなのだっっ。
断じてお前のモノじゃあないっっ。
アイツはっ、エヴェリーナはこの俺だけのものっっ。
これだけは何があろうと覆りはしない。
代々我が国の女王を支えるべく王配となる者は他国の人間より選ばれなかった。
いいや女王だけじゃあないっっ。
王統を受け継ぐ血の濃い者の伴侶たる者は確実に自国の貴族――――それも高位の身分の中より選ばれていたんだ。
まあ偶には例外もある。
それがアレだアレ、ラングハイムの第二皇子の母であり現帝国の后妃がそれに当る。
本来ならば決してあり得ない事だったのだが現国王が今の王妃を何よりも大切にしている事もあり、特例としてラングハイムへ嫁し、そうして今現在諸悪の根源であり目の前にいる魔王を産み落としたんだっっ。
だがな、幾ら半分はアールグレンの血を受け継いでいるとは言え所詮お前は他所者なんだよ。
俺の様に純血のアールグレン人でない限りお前の穢れた腕の中にいるエヴェリーナは、何があってもお前のモノにはならない。
そして俺はこのアールグレンでも屈指の名門バルテルス公爵家の優秀な嫡男として、堂々と将来でなくたった今でもエヴェリーナの隣に立っているんだからなっっ。
その他所者のお前がっ、将来の女王夫妻の触れ合いを邪魔する事等あっていい筈が――――ひぃぃぃっっ!?
「俺の愛しいリーナを一度ならずも二度も……いや、今回は今までと違い何かと趣向を凝らしてくれたらしいが中々に面白かったぞ。お前とお前の父親そしてもう一人――――」
「よ、よよ寄るなっっ。そそ、それ以上俺へ近づくんじゃない!!」
薄ら寒い……その様な生温いモノじゃあないっっ。
譬えるならばたと真冬の極寒のアールグレンを取り囲む雪山よりもっ、い、いやその昔乳母の語る話に訊いた事があるあ、アレだっっ。
魔人達の中でも最も強い魔王よりほんの少しでも視線を向けられた者は一瞬にして全身の血が凍てつき、生きながらにして氷漬けの躯と化す。
ま、まさに今のアイツはっ、ラングハイムの第二皇子の視線はこの俺をただ殺すだけでは飽き足らず、生きながらに氷漬けにしようとさえしていると断言出来るっっ。
この国にとって脇役でしかない他国の皇子の癖にっ、お、俺のエヴェリーナへ図々しくもちょっかいを出すとは――――ひいぃぃっっ!?
いい、いや今はエヴェリーナ等どうでもいいっっ。
と、とにかく今はコイツをっ、この状況を何とか打破しなければ俺は――――殺されるっっ!?
「ふ、お前に未来があると思うのか?」
な、なな何故心の声がっっ!?
「ふん、お前の様なモブ以下の存在等、態々力を行使するまでもなく十分過ぎるくらいにわかるだろう」
モブ?
モブって一体何なのだっっ。
もしかしなくとも何かの呪文なのだろうかっ、いやもし呪文ならばお、俺は……本当に今、ここで死ぬのか?
このモブと言う呪文で死んでしまうのか?
いやいや俺はまだ死にたく――――し、死ぬ訳がないだろうっっ。
何故なら俺は将来の……。
「――――なれるとでも思っているのか。何処までもお目出度い脳ミソだな。まあその点においてはお前自身だけでなくお前の両親もな」
魔王は男の俺でも一瞬見惚れてしまいそうな程妖しい色香を纏った氷笑を湛え、ゆっくりとそして確実に俺へと近づいてくる。
そんな魔王に対し俺は腰が抜けた状態に加え、恐怖の余り全身をガタガタと震わせながら尻を床につけたままでアイツが歩を進めるのと同時に何度も足を滑らせながら這う這うの体で後退するしかこの状態より逃れる方法が見つからない。
俺が吐きだせた言葉はたったそれだけ。
情けないが余りの恐怖で上体を起こしそのまま立ち上がろうとしたのだが既に腰は抜け、今は?いやっいやこのままでは立ち上がれる気が全くしないっっ。
そしてただただほんの数m先にいるだろうアイツがっ、ラングハイムの第二皇子が途轍もなく怖いっっ。
あ、アイツの生気等一切感じさせない視線から放たれる何かだけで俺はこの場で死んでも可笑しくないとさえ、またアイツの視線よりはもう逃げられないのだと否応なく痛感させられてしまう。
あぁ昔誰かより何気に聞いた事があった。
その時はそんな事は絶対にないと鼻で笑っていたのだがっ、い、今なら……そうたった今ならば正確に理解出来るっっ。
視線だけで人を射殺せる奴が存在する――――って事をだ!!
まさに今そこにいる奴がそうだ。
エヴェリーナの前では何時も笑顔しか……それも何とも蕩けた阿呆面しか見せない癖にあの野郎っ、裏でこんな恐ろしい一面を隠し持っている等俺は何も聞いていないっっ。
と、兎に角今はエヴェリーナよりも己の命を最優先するんだっっ。
この危機的な状況を打破さえ出来ればエヴェリーナ等何時でも直ぐに手に入れられるのだからな。
そうだっ、コイツさえ邪魔をしなければっ、今この瞬間エヴェリーナはこの俺へキスをしようとしていたのだっっ。
ふ、ははは、コイツはいい、実に傑作だ。
本当に馬鹿な奴だ。
今お前の腕の中で護っている女の心は既に俺のものなのだからな。
心――――いいやっ、心だけじゃあない!!
その小さな身体は元より、エヴェリーナの全てを形成するものは婚約者であり、未来の夫たる俺のものなのだっっ。
断じてお前のモノじゃあないっっ。
アイツはっ、エヴェリーナはこの俺だけのものっっ。
これだけは何があろうと覆りはしない。
代々我が国の女王を支えるべく王配となる者は他国の人間より選ばれなかった。
いいや女王だけじゃあないっっ。
王統を受け継ぐ血の濃い者の伴侶たる者は確実に自国の貴族――――それも高位の身分の中より選ばれていたんだ。
まあ偶には例外もある。
それがアレだアレ、ラングハイムの第二皇子の母であり現帝国の后妃がそれに当る。
本来ならば決してあり得ない事だったのだが現国王が今の王妃を何よりも大切にしている事もあり、特例としてラングハイムへ嫁し、そうして今現在諸悪の根源であり目の前にいる魔王を産み落としたんだっっ。
だがな、幾ら半分はアールグレンの血を受け継いでいるとは言え所詮お前は他所者なんだよ。
俺の様に純血のアールグレン人でない限りお前の穢れた腕の中にいるエヴェリーナは、何があってもお前のモノにはならない。
そして俺はこのアールグレンでも屈指の名門バルテルス公爵家の優秀な嫡男として、堂々と将来でなくたった今でもエヴェリーナの隣に立っているんだからなっっ。
その他所者のお前がっ、将来の女王夫妻の触れ合いを邪魔する事等あっていい筈が――――ひぃぃぃっっ!?
「俺の愛しいリーナを一度ならずも二度も……いや、今回は今までと違い何かと趣向を凝らしてくれたらしいが中々に面白かったぞ。お前とお前の父親そしてもう一人――――」
「よ、よよ寄るなっっ。そそ、それ以上俺へ近づくんじゃない!!」
薄ら寒い……その様な生温いモノじゃあないっっ。
譬えるならばたと真冬の極寒のアールグレンを取り囲む雪山よりもっ、い、いやその昔乳母の語る話に訊いた事があるあ、アレだっっ。
魔人達の中でも最も強い魔王よりほんの少しでも視線を向けられた者は一瞬にして全身の血が凍てつき、生きながらにして氷漬けの躯と化す。
ま、まさに今のアイツはっ、ラングハイムの第二皇子の視線はこの俺をただ殺すだけでは飽き足らず、生きながらに氷漬けにしようとさえしていると断言出来るっっ。
この国にとって脇役でしかない他国の皇子の癖にっ、お、俺のエヴェリーナへ図々しくもちょっかいを出すとは――――ひいぃぃっっ!?
いい、いや今はエヴェリーナ等どうでもいいっっ。
と、とにかく今はコイツをっ、この状況を何とか打破しなければ俺は――――殺されるっっ!?
「ふ、お前に未来があると思うのか?」
な、なな何故心の声がっっ!?
「ふん、お前の様なモブ以下の存在等、態々力を行使するまでもなく十分過ぎるくらいにわかるだろう」
モブ?
モブって一体何なのだっっ。
もしかしなくとも何かの呪文なのだろうかっ、いやもし呪文ならばお、俺は……本当に今、ここで死ぬのか?
このモブと言う呪文で死んでしまうのか?
いやいや俺はまだ死にたく――――し、死ぬ訳がないだろうっっ。
何故なら俺は将来の……。
「――――なれるとでも思っているのか。何処までもお目出度い脳ミソだな。まあその点においてはお前自身だけでなくお前の両親もな」
魔王は男の俺でも一瞬見惚れてしまいそうな程妖しい色香を纏った氷笑を湛え、ゆっくりとそして確実に俺へと近づいてくる。
そんな魔王に対し俺は腰が抜けた状態に加え、恐怖の余り全身をガタガタと震わせながら尻を床につけたままでアイツが歩を進めるのと同時に何度も足を滑らせながら這う這うの体で後退するしかこの状態より逃れる方法が見つからない。
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