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第二章  どうやら成人する前に色々と人生を詰んでいるみたいです

15 ジャ○アンの主張!!  アンセルムSide  Ⅶ

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 しかし意外とエヴェリーナと逢う機会は早くに訪れた――――と言うのか、俺の気持ちを察した父親が何処ぞかで聞きつけた高名な闇の魔法使いを雇い、そうしてその者の手により幾重にも堅牢に張り巡らされた王宮へ無事に入宮する手筈を整えてくれたのだ。

 俺自身その魔法使いとは二、三回しか会ってはいない。
 しかしそいつは常に漆黒の外套を全身に纏い、頭からすっぽりと闇の魔法使いらしく漆黒の闇に包まれ、顔は勿論その表情を読み取る事さえ出来やしなかった。
 何とも不気味で、胡乱気な者にしか感じられなかった中でただほんの少し垣間見えたのは、ぞっとするくらい血の様に赤く薄い唇とその横にある黒く艶めいた黒子だけ。
 この時俺は多分目の前にいる魔法使いはなのだと何気なしに思った。
 だがそれがどうしたのかと言う訳でもない。
 俺にとっては魔法使いの性別や個人的な事情等どうでもいい。
 金で……父親のだがな、しかし金で雇われた以上依頼した仕事さえしっかりしてくれれば問題はないし、それ以上あの者について知りたいとも思わなかった。


 そうして俺は正門より公爵である父親と共に堂々と王宮へ入ったのは言うまでもない。
 エヴェリーナの婚約者であり未来の王配としては当然の事だろう。
 だがその先、つまりは王族のプライベートエリアへはそこに住む王族の許可がなければ入宮する事はおろか近づく事さえも出来ないのが何とも口惜しい。

 俺は準王族ともいえる存在であると言うのにもだっっ。

 だが父の雇い入れた闇の魔法使いの力は思った以上にその能力は高く、幾重にも張り巡らされているだろう重防御結界を、ご丁寧に人一人分入る程度の穴を、王宮の厳つい警備の者に一切気付かれる事無く瞬く間に作ってくれた。
 これで自由に何時でも俺のエヴェリーナへ逢いに行けると、そしてエヴェリーナも俺に逢いたくて仕方がないのを一生懸命我慢しているのだろうと思い、そんな彼女を可愛い奴だと思えば口角は自然に上がってしまうのを必死に抑えつつ、闇の魔法使いの力でピンポイントにエヴェリーナの許へと転移をさせてくれた……のだがぁあ!?


「貴方はどなたなの? 私は紹介もされていない方とお話はしないわ」
「なっっ!?」

 発せられた言葉にほんの僅かな愛想すらなく、まるで初めて俺に会ったとでも言う様な冷たい態度のエヴェリーナ。
 俺はこの二年もの間エヴェリーナっ、俺はお前に逢いたいと、お前は俺のモノだと心の中で何度も何度も想い続けっ、ずっと逢いたいと願っていてやったたのにお前はそうではなかったのかっっ!!
 まさか二年もの間お前は一度も俺の事を想わなかったとは言わないだろう……な?
 もしかしなくとも俺だけなのか?
 この俺だけがお前の事をずっと毎日毎日考えて頂け――――なのか!?
 俺はこの時に生まれて初めて茫然自失と言う想いを知ったともいえる――――がっっ。

 まあ実際に俺達の間には二年もの時間が流れていたのだ。
 俺は現在13歳となり王都にある学院で学びそしてあの頃よりも背や体格はは勿論、容姿も遥かに整っている。
 実際に学院でも俺へ告白しに来ている令嬢も数多いるくらいだ。
 しかし俺にはもうエヴェリーナ、お前と言う婚約者がいるのだ。
 俺は両親の様に他へ愛人を囲う事は善しとはしない。
 将来の女王の王配としてその辺りは誠実に、まあその女はお前だけにしておいてやる。

 だがエヴェリーナ……お前もその大分……いや、いい意味で変わったな、
 5歳の頃よりも背や手足はすんなりと伸び、小さいが美しい淑女へ成長して俺は実に嬉しいぞ。
 俺ばかりが美丈夫になってもなぁ、お前が俺の隣に立つのを躊躇ってしまっては元も子もないがこの様子ではそれも心配ないだろう。
 現国王夫妻も美男美女ではあるが将来の俺達はきっとそれ以上になるだろう。
 それに久し振りだからと言って俺も『婚約をしてやってもいい』と間違えて言ってしまったのをお前は怒っているのだろう。
 仕方ないから言い直してや――――!?

「ねぇ貴方はどなたなの? そして誰の許しを得てこの場所にいるのかしら」
「――――なっ、つぅぅっっ!?」

 そんなモノ決まっているっ、俺の許しだっっ!!

「な、何者ですかっっ!? 事と次第によってはこのまま何もなかった事なんて断じて出来ませんっっ」
「エリーサっ、兎に角大きな声で叫びましょうっっ。きっと近くに騎士達がいる筈よ。なのだから騎士達に捕えて貰いましょっっ」
「姫姉様は私達が絶対にお護り致しますからっ、どうかこのろうぜきものの前へ行かないでっっ」

 それまでなりを潜めていた筈の忘れもしない二年前のあの日、俺よりエヴェリーナを連れ去った張本人であるリーヴ伯爵令嬢とエリーサと言うのは恐らく子爵家出身のエヴェリーナの侍女なのだろう。
 その二人が俺と彼女の間へ割って入り意味不明な事をぎゃんぎゃんと喚き散らしている。
 正直に言って鬱陶しい。
 大体将来の女王夫妻に対して失礼極まりない!!
 しかも不法侵入等言われる等不敬極まりない。

 そして今度こそ俺はエヴェリーナへしっかりと分かり易く言い直してやろうと思ったんだ。
 幾ら鈍感な者でもこれを言われたらきっとわかる筈。

「お、おい俺はお前と――――」

 結婚してやる。
 そう言ってエヴェリーナを喜ばせようと思った刹那、眩い光が俺の身体を包み込む。
 そうして光を感じなくなり目を開ければそこは見慣れた屋敷の前。
 つまりは俺の、バルテルス公爵家の所有する王都にあるタウンハウスの前だった。 
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