31 / 42
第二章 どうやら成人する前に色々と人生を詰んでいるみたいです
10 ジャ○アンの主張!! アンセルムSide Ⅱ
しおりを挟む
まだそんな企みとも知らずに母親に無理やり連れて来られた俺は通された薔薇園でとても怒っていた。
だってそうだろう。
幾ら友人達や見知った顔のいる子供が多いと言われても、俺の周りには将来の公爵夫人の座を狙うまだ同じ子供の筈なのに、その姿から醸し出されているのは明らかに女狐や女豹の類いだと言ってもいいっっ。
獲物を品定めする様にゆっくりと舐め上げる様な視線、それでいて彼女達は自身の作りあげた容姿を如何に美しく且つ可愛いらしく魅せられるのかをっ、まだ年端もいかない年齢にも拘わらずアイツ等はちゃんと知っているのだ!!
そう社交界は何も大人だけの世界じゃあないっっ。
子供には子供なりの社交界と言うモノがあるのだっっ。
令嬢達は将来出来るだけ有望で高位の身分を持つ子息と繋ぎを付け、優良物件を見事手に入れるかを画策するだろうし、子息達もまたそんな令嬢達をじっくりと品定めすると共にやはり将来の相手としていかに相応しいものへと狙いを研ぎ澄ます。
そしてそこに気持ちなんてものは存在しない。
お互い生まれた瞬間よりどっぷりと貴族の血を受け継いでいるんだ。
利益のみを追求し、どうしても愛が欲しいのであれば将来落ち着いた頃にでも愛人を探せばいいだけの事。
それはどの家の子供達も十分過ぎる程理解している。
なんと言っても自分達の親がその手本なのだから……。
でも俺ははっきり言ってこんな世界が苦手なんだ。
両親を見ているからなのかもしれない。
俺の祖父母は珍しく政略的な婚姻だったにも拘らずお互いを今も大切に想いあっている。
両親にしてみれば理解出来ないらしいが、俺にしてみれば羨ましい限りでもある。
母親は愛人と別宅で暮らしたきり殆ど自宅には戻ってこない。
父親は父親で最近若い愛人と別れたばかりだ。
それ故退屈凌ぎにあの話をしたのかもしれない。
俺もその内親に決められた利益だけの婚約の果ての結婚が待っているのかと、薔薇園の隅で女狐ならぬ女豹な令嬢達より隠れていたら――――。
「泣いているのですか?」
はあっ、泣いて……いるってこの俺がか?
あり得ないだろうし何だこの少女は……って最初に思った。
じーっと俺を見つめる少女の瞳は鮮やかな緑色の中に青い星が一つ輝きを放っていた。
今まで見た事のない不思議な瞳を持つ俺よりも幼い少女の筈なのに、何故か幼いと言うよりも凛と清楚な百合にも見える気高くもほんの少し近寄り難い雰囲気を醸し出しているのが何故か酷く印象的であり知らずに惹かれてしまっていた。
だが俺もまだ9歳とは言え彼女よりも年上なのだっっ。
素直にそうかもしれないなんてお世辞にも言えないし笑って流す気にもなれなかっただから――――。
「男が泣く訳ないだろうチビ、俺よりもお前の方が本当は泣き虫何だろう」
なんて可愛げのない事を言ってしまった瞬間、あ、これヤバいかもしれない……と思った。
なんと言ってもこの席に招待されているのは伯爵家以上の高位の貴族ばかりの令嬢や子息達。
まあ我がバルテルス公爵家より格上の家はないと言ってもいいのかもしれないが、それだからと言って幼い令嬢を中していい理由にはならないのは俺だってちゃんとそこは理解出来ている。
だから相手に泣かれる前に謝ろうと思ったのだが……。
「私には泣く理由は今現在ないもの。でも貴方のその表情はとても寂しくそして悲しそうよ。ねえちゃんと心から笑っている? 人間心から笑っていられれば多少の事は何でも乗り越えて行けるけれど、しっかりと美味しいご飯を食べて御両親や友人達と沢山の話をして、そして心から笑えなければどんどん心が死んでしまうの。今の貴方の様にね」
「はあっ、お前何言って――――っっ!?」
俺は全身怒りで真っ赤になるような錯覚へと陥りかけた瞬間――――。
「はいこれ」
そう言って彼女のドレスのポケットより取り出したのは小さな、本当に小さな包みが一つ。
「あ、あぁ……」
馬鹿にされたと思い怒り出していた筈なのに、何故か俺は素直にその包みを受け取っていた。
「これは何……だ?」
情けなくも変に声が上擦ってしまう。
「ふふ、これは幸せになれる魔法のショコラよ。トリュフショコラと言ってアントン料理長と一緒に私が作ったの」
蕾が、いや咲き始めた花が一斉に綻び花開く様な優しい笑みを湛えながら彼女は、このショコラを食べてと俺に言う。
そして俺は促されるまま……いや普段であれば決して家の者が用意されたもの以外安易に口にする事は絶対にないのだが、何故かこの時は魔法にかかったかのように何の抵抗もなく包みを開きココアパウダー塗れの丸く、触れると少し柔らかいトリュフショコラなるモノを口へと運んだ。
だってそうだろう。
幾ら友人達や見知った顔のいる子供が多いと言われても、俺の周りには将来の公爵夫人の座を狙うまだ同じ子供の筈なのに、その姿から醸し出されているのは明らかに女狐や女豹の類いだと言ってもいいっっ。
獲物を品定めする様にゆっくりと舐め上げる様な視線、それでいて彼女達は自身の作りあげた容姿を如何に美しく且つ可愛いらしく魅せられるのかをっ、まだ年端もいかない年齢にも拘わらずアイツ等はちゃんと知っているのだ!!
そう社交界は何も大人だけの世界じゃあないっっ。
子供には子供なりの社交界と言うモノがあるのだっっ。
令嬢達は将来出来るだけ有望で高位の身分を持つ子息と繋ぎを付け、優良物件を見事手に入れるかを画策するだろうし、子息達もまたそんな令嬢達をじっくりと品定めすると共にやはり将来の相手としていかに相応しいものへと狙いを研ぎ澄ます。
そしてそこに気持ちなんてものは存在しない。
お互い生まれた瞬間よりどっぷりと貴族の血を受け継いでいるんだ。
利益のみを追求し、どうしても愛が欲しいのであれば将来落ち着いた頃にでも愛人を探せばいいだけの事。
それはどの家の子供達も十分過ぎる程理解している。
なんと言っても自分達の親がその手本なのだから……。
でも俺ははっきり言ってこんな世界が苦手なんだ。
両親を見ているからなのかもしれない。
俺の祖父母は珍しく政略的な婚姻だったにも拘らずお互いを今も大切に想いあっている。
両親にしてみれば理解出来ないらしいが、俺にしてみれば羨ましい限りでもある。
母親は愛人と別宅で暮らしたきり殆ど自宅には戻ってこない。
父親は父親で最近若い愛人と別れたばかりだ。
それ故退屈凌ぎにあの話をしたのかもしれない。
俺もその内親に決められた利益だけの婚約の果ての結婚が待っているのかと、薔薇園の隅で女狐ならぬ女豹な令嬢達より隠れていたら――――。
「泣いているのですか?」
はあっ、泣いて……いるってこの俺がか?
あり得ないだろうし何だこの少女は……って最初に思った。
じーっと俺を見つめる少女の瞳は鮮やかな緑色の中に青い星が一つ輝きを放っていた。
今まで見た事のない不思議な瞳を持つ俺よりも幼い少女の筈なのに、何故か幼いと言うよりも凛と清楚な百合にも見える気高くもほんの少し近寄り難い雰囲気を醸し出しているのが何故か酷く印象的であり知らずに惹かれてしまっていた。
だが俺もまだ9歳とは言え彼女よりも年上なのだっっ。
素直にそうかもしれないなんてお世辞にも言えないし笑って流す気にもなれなかっただから――――。
「男が泣く訳ないだろうチビ、俺よりもお前の方が本当は泣き虫何だろう」
なんて可愛げのない事を言ってしまった瞬間、あ、これヤバいかもしれない……と思った。
なんと言ってもこの席に招待されているのは伯爵家以上の高位の貴族ばかりの令嬢や子息達。
まあ我がバルテルス公爵家より格上の家はないと言ってもいいのかもしれないが、それだからと言って幼い令嬢を中していい理由にはならないのは俺だってちゃんとそこは理解出来ている。
だから相手に泣かれる前に謝ろうと思ったのだが……。
「私には泣く理由は今現在ないもの。でも貴方のその表情はとても寂しくそして悲しそうよ。ねえちゃんと心から笑っている? 人間心から笑っていられれば多少の事は何でも乗り越えて行けるけれど、しっかりと美味しいご飯を食べて御両親や友人達と沢山の話をして、そして心から笑えなければどんどん心が死んでしまうの。今の貴方の様にね」
「はあっ、お前何言って――――っっ!?」
俺は全身怒りで真っ赤になるような錯覚へと陥りかけた瞬間――――。
「はいこれ」
そう言って彼女のドレスのポケットより取り出したのは小さな、本当に小さな包みが一つ。
「あ、あぁ……」
馬鹿にされたと思い怒り出していた筈なのに、何故か俺は素直にその包みを受け取っていた。
「これは何……だ?」
情けなくも変に声が上擦ってしまう。
「ふふ、これは幸せになれる魔法のショコラよ。トリュフショコラと言ってアントン料理長と一緒に私が作ったの」
蕾が、いや咲き始めた花が一斉に綻び花開く様な優しい笑みを湛えながら彼女は、このショコラを食べてと俺に言う。
そして俺は促されるまま……いや普段であれば決して家の者が用意されたもの以外安易に口にする事は絶対にないのだが、何故かこの時は魔法にかかったかのように何の抵抗もなく包みを開きココアパウダー塗れの丸く、触れると少し柔らかいトリュフショコラなるモノを口へと運んだ。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる