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第一章  最早これは呪い? もう呪いとしか思えないでしょうっっ

20 閑話  チャラ男側近 ジークの一人愚痴大会  Ⅴ

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 リーナちゃん。
 
 あの日生まれた不思議なお姫様はエドが呼んだ通りと命名された。
 因みに俺は親しみを込めてリーナちゃん呼びをしている。
 これに関してエドは全くいい顔をしてはいない。
 ああそうそうこれも大層驚いた事なのだけれどね、リーナちゃんが生まれた時より何故かエドは時間のある限り彼女の許へ日参し、まだ何も分からないであろう赤子の彼女をあり得ないくらい溺愛している。

 甘い声でリーナちゃんの名を呼び、
 蕩けそうな表情でリーナちゃんを何時までも見つめている。
 リーナちゃんの成長に合わせ、
 彼女と一緒に遊んでいる。
 抱き上げたり、歌を聞かせたり……それこそリーナちゃんのお気に入りの絵本を読み聞かせるのは勿論彼女がお昼寝から覚め、怖い夢を見たのかもしれない。
 そうして泣いる時には傍で優しくあやしていた。
 親鳥が愛しい雛鳥を護る様に……傍から見ていれば実に微笑ましいと皆は思っていた――――がっ、俺は違うと思う。
 
 あれは、エドのリーナちゃんに対するのは溺愛……いやいや執着めいたものを感じている。
 そしてもう一人――――溺愛されている本人もまた俺と同じ様にエドに対して何かを感じ取っていると思うね。
 しかしリーナちゃんはエドに対して執着をしている訳ではない。
 それは客観的に見ていてもわかる。
 これはエドの完全なる一方通行だとも……ね。
 何故ならリーナちゃんは何故か時折……いやいや隙あらばエドより距離を取ろうと模索しているけれども悲しいかな、彼女の想いは届く事無くそれどころか彼女よりも一枚も二枚も上手なストーカーより逃れる術がないと言ってもいい。
 
 時折あまり名エドのリーナちゃんへの執着が過ぎると、俺はちょっとお節介を焼いてしまう事がある。
 だってこの七年もの間エドだけじゃあないのだよ、彼の側近候補でもある俺もまたリーナちゃんの成長を見守っていたのだからね。
 確かにこの七年間彼女はまだ幼い女の子だ。
 だけどとても聡明で年齢にそぐわないくらい急に大人びている所があったりする。

 そんなリーナちゃんは俺にとってもとても不思議で特別な女の子。

 ああだからと言ってリーナちゃんへ恋情を抱いている訳じゃあないよっっ。
 10歳も年下の女の子に恋情……そもそもほんの一欠けらでもその様な想いを抱いたりでもしたら、俺はきっとエドによって直ぐにでも抹殺されているだろうね。

 ああ見えてエドはとても嫉妬深い。
 普段は女性に対してなんの思いも抱く事のない、凍れる皇子様とまで学院ではそう呼ばれている。
 未来の后妃を夢見てお花畑な令嬢達がエドの隙を狙って近づこうとするのだけれど、彼の纏うオーラが常に氷点下に達しているものだからね。
 綺麗所の令嬢達は全く近づく術もないのだよ。
 まあ俺は適当……になんだけれどね。
 
 もし彼女達がリーナちゃんを、そしてそのリーナちゃんと接する時のエドを見れば――――ぶるるっ、考えるだけでも怖いっっ。

 アールグレンの妖精姫。
 何時かエドの気持ちに気付いてくれればいいなと思う。
 なんと言ってもエドは俺の仕えるべき帝王なんだ。
 孤高な帝王だからこそ、何時かエドの気持ちに気付いてほしい……と思う。
 
「うわああああぁぁぁあぁああっっ!?」

 そして今日も俺はそんなエドを揶揄からかう事を止めず、また日頃の鬱憤を晴らすようにエドより繰り出される風魔法を真正面から放たれ、大空に舞う凧の様に大空へと飛ばされてしまうのだっっ。
 

 追伸……毎回怪我がないのはひとえに俺の運動神経の良さと俺の魔力の高さ故……だと思う。
 それともう一つ……俺は見てしまったんだよね。
 リーナちゃんが精一杯彼女じ自身の魅力を引き出した上での上目遣いからのエドへの可愛いお願いの瞬間――――きっと彼女は全く気がついてはいないだろうな。
 そんな彼女にお願いをされたエドは全身を赤く染め上げ喜びに打ち震えていたのをね。
 エドは自身の大きな手で必死に顔面を隠していたけれど、流石に耳や首元までは隠せていないし、そもそも顔面を隠す手だってほんのり赤く色づいていた。
 まあエドとリーナちゃんとでは慎重さが約50㎝は余裕であるし、第一リーナちゃんはまだ7歳のいとけない女の子。
 男女の機微なんて少しも分らないだろうし、エドがどんなに彼女へ執着しているかさえも気づいてはいないだろう。
 
 リーナちゃんだけなんだよ。
 エドが心の底から笑い、そして女の子へあからさまに優しくするのは……。
 ただリーナちゃんが生まれた瞬間からエドは君に対して並々ならぬ執着をしているんだ。
 だからねリーナちゃん。
 何時か気付いてやってくれないかな。
 俺の大切な親友の心を。
 そして俺はそう思いつつもやはりやらかしてしまうのだ。
 リーナちゃんを振り回している様で実際振り回されている親友を揶揄うのがさ。

 まあその……これも俺の悪い癖だな。
 悪いと思いつつ止められないのだからね。

*加筆させて頂きました。
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