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第一章 最早これは呪い? もう呪いとしか思えないでしょうっっ
19 閑話 チャラ男側近 ジークの一人愚痴大会 Ⅳ
しおりを挟む「こちらに御座いますわエドゥアルド皇子殿下」
「有難う」
長閑で美しい街並みをゆっくり歩く訳でもなく、俺達は帝国にある后妃宮に設えられたアールグレンへの王宮直結の魔法陣を通って来たからこそ、今は王宮内にある一室へと案内されているのだが……。
「よく来たねエド、ご覧よ私の二つ目の宝物だよ」
「エヴェ……エヴェリーナ?」
然も嬉しくて仕方ないと言わんばかりのアールグレンの国王陛下とは対象に、今まで聞いた事のない様なエドの、この場合何と表現したらわからないのだけれども俺が感じたであろう、ただしっくりとくる様な意味合いでは、ずっと長い間逢えなかった恋しい人と久しぶりに逢えた様な……熱が籠った様でいて何処か掠れた声でそう一言呟いた。
うーん呟いたと言うか、絞り出したと表現した方が近いのかもしれない。
おいおいちょっと待てっ、一体俺は何を言っているのだっっ。
普通に考えようが考えなくとも俺はまだ10歳だし、エドに至っては8歳のガキなんだよっっ。
皇子様とその従兄って言う身分が高いだけのっっ。
そもそも長い間逢えなかった恋しい人って言う表現はどう考えても可笑しいだろう。
俺達はまだ初恋ってものをマトモにした事もないし、身分的に恋をするのはあまり歓迎されないだろう。
俺が生まれたのは高位の貴族。
エドに至っては皇族、然もアイツはほぼほぼ時代の皇帝に確定なんだよね。
そんな立場の人間には安易に恋愛をする事を善しとされないと言うか、遊ぶ分ならば許されるだろう。
だがその先に待っているのは恋とは無縁な国益を伴う政略結婚でしかない。
それだからこそ代々の皇帝は幾人もの側妃や愛妾を求める。
まあその側妃達も周辺国や国内の貴族のバランスを考え選考される女性ばかりなのが何とも笑えない。
偶に……そう本当に偶然だよな。
そんな環境でも愛情を育む事の出来る相手を見つけ出せるのは……。
そしてエドの両親はまさしくその偶然の産物と言える。
両陛下共に子供の俺から見ても愛し合われているのだからな。
えーっと話が大分逸れてしまったな。
これもエドの醸し出すオーラが悪い!!
そもそもそんな声で囁く相手って言うのが――――っっ!?
アールグレン王の腕の中にいる、この世に生まれて間もない本当に小さな赤子。
その真っ白な絹のお包みに包まれているのは、ふわふわの銀色の髪と不思議な光を放つ緑色の瞳をした綺麗な顔立ちの女の子。
普通生まれたばかりの赤ん坊と言うものは小さな子猿みたいにしか見えなかったのだけれどね。
何故かこの子だけはしっかりと女の子に見えたんだ。
それにはっきり言って将来この王女様は物凄い美人になるなって思ったよ。
まあなんと言っても美男美女の両親より生まれてきたのもだけれど、まだ生まれたばかりだと言うのにも拘らず、何故か眩い光を纏う不思議な赤ん坊に見えたのだから……。
またそれと加えてもっと吃驚したのは――――っっ!?
「エ……ド? お前……泣いているのか!?」
「え、あ、いや……」
一応エドは否定したけれども、だがアイツの頬には涙の跡がくっきりと、ああ涙が頬を伝って流れ落ちただろう形跡が俺だけでなく、この場にいるアールグレン王と傍に控えている騎士と侍女がその様子をしっかりと見ていた。
ただ、やはり小国とはいえ王宮勤めの者達だ。
エドの事等何もなかったかの様に振る舞っている所は、まだまだ子供な俺とは違うと思った。
しかし従妹姫の誕生で普通に泣くの?
いやいやいやいやそれはあり得ないでしょっっ。
うん普通にあり得ないし、そもそもローラントの時だってお前通常運転だっただろエド。
因みにローラントの時はしっかり猿だった。
それとも妹的な存在が欲しかった――――と言えば、エド自身花王妃の生んだ義妹が一人いる。
だがその義妹とはあまり……そもそも女の子と言う存在にエド自身あまり興味を示した事がなかったな――――とは言っても男性へ性的な興味を抱いている様子もない。
つまりはそのどれをとっても目の前の小さな王女様へのエドの反応は、俺にとって信じられないのと何か特別なものにしか感じられなかったんだ。
しかしだっ、ここで俺はしっかり突っ込みを入れる事を忘れてしまったっっ。
なあエド、今この瞬間に生まれたばかりであろう王女様の名前を何故お前が……他国の人間なのに行き成り名付けているんだよっっ。
と言うかもうお前の事だから決めているのだろうな。
*ジークの閑話が長くなり申し訳ありません。
後一話で終わりますのでどうかよろしくお願いします。
因みに明日はバレンタインデーですね。
我が家では母の為にルビーチョコレートなるモノを仕入れて、
苺の入ったケーキを今日完成させました。
ピンク色で可愛いです。
それとルビーチョコを食べるとめっちゃフルーティーでした。
本命のいない私ですが、家族バレンタインもいいかなって^^
明日はどなた様にとっても幸せな日でありますように……。
雪乃
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