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第一章  最早これは呪い? もう呪いとしか思えないでしょうっっ

10 魔王ならぬ元旦那様と私の関係性  Ⅰ

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「ごちそうさまでした」

 私は日本人らしく手を合わせてそっと呟く。
 
 今日も無事に午後のお茶が恙無つつがなく?
 いやいや細かい事を気にしてはいけないっっ。
 うん、何事も気にし過ぎは――――だ。
 そして今日も美味しいタルトを有難うアントン。

 アントンは我が王宮で仕えてくれる天才料理長なの。
 彼の作り出すお料理は勿論簡単なお菓子に至るまで、最早それはもう神の領域と言ってもいい。
 それぐらいに彼の両手より作り出されるものはどれも皆素晴らしく、その全てが美味しい。
 そんな神の手を持つアントンは明るい茶色ライトブラウンの髪と瞳をした、心は少年その姿は50歳の恰幅の言いオジサマ――――だったりする。
 それと私はアントンの作る熱烈なお菓子のファンでもあるるるるr……っっ!?

「まただね。リーナの脳ミソは一体どこへお散歩に言っているのかな?」

 ひ、酷いっ、脳ミソのお散歩ってそれ、7歳のいたいけな女の子へ言う台詞ですか??

「本当にまだわからないのかな。何度も言う様に私がアールグレンここにいる間のリーナの時間は、全てこの私のものでしょう」
「ひっ、そ、そんなぁ」
「ふ、本当にまだまだ躾がなっていないのかなリーナ。それとも一度きちんとリーナにはこの俺様が直々に教えてやらないといけないと、リーナ自身もそう願っているのであれば――――」

 後半の声が怖いっっ!?
 めっちゃ怖すぎますっっ。

「イ、イエッ、ジュウブンニリカイシテイマス、エドオ兄サマ。リーナガ、スベテハリーナガワルウゴザイマシタ。ゴメンナサイデス」

 そうヤバいと思ったら即日本人奥義ジャンピング土下座――――を試みたいのは山々だけれどもっ、おやつの時間はもう終了なのに、何故かエドお兄さまはまだ私を膝の上から降ろしてはくれない。
 なので心の中でジャンピング土下座をしつつ言葉だけで謝罪をする。
 そしてこの謝罪には当然心は籠ってはいない。
 それ故にカタコトでの謝罪は御愛嬌だ。
 そもそも何故に何時も何時も私が謝らなければいけないと言うのだろうね!!
 別に私は何も悪い事をしている訳でもないのだ。

 大体ですよ、エドお兄さまのお膝抱っこも私がして欲しいと言った覚えは一度も――――ない。
 タルトやお茶もちゃんと自分で食べられるし、食べさせて貰っていたと言うか気がついたら食べさせられていたのは、まだ何も出来ない赤ちゃんだった頃なのだもの。
 昔からほんの一瞬でもエドお兄さまの前で気を抜けば、何かと世話を焼こうと色々画策してくるのがエドお兄さまと言う人間?なのだ。
 そして今も――――。

「ひゃんっっ!?」
「ふふ、可愛い声だねリーナ」
「い、いい今っ、ほ、ほほ頬をぺろってお兄さまっっ!?」

 私はエドお兄さまのお膝の上で上体を少しでもお兄さまより離れようと身体を思いっきり仰け反らせ、ぺろんと舐められたであろう左の頬を左手でしっかり押さえつつ、私はわなわなと震えつつも身体はしっかりと硬直していた。 

「御馳走様、美味しかったよ私の愛するリーナ」

 目の前には全く悪びれる事もなく実にスマートに言うエドお兄さまと言う名の魔王。 
 そして魔王と言う名の元旦那様。
 お話しましょう私と魔王の関係を――――ってそもそもその関係すらも築きたくはないのよ私はね!!
 本当に、出来る事ならばお互い知らない場所と時で生きたいものだと、つくづくそう思ってしまう今日この頃の私なのです。
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