永遠の愛を君に捧げん

雪乃

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番外編  ベルの初恋  ベルとシリルの出逢い

4  淡い想い  ベルSide

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「気がついたか」
「あ、あの……私?」

 心地良い温もりの中で目覚めた私が最初に見たものは――――。
 少し濃淡のある紫紺しこんの髪をぎゅっと後ろで束ね、鮮やかなエメラルドグリーンの瞳と綺麗な顔立ちの中にまだ少年らしいあどけなさが残っている。
 またこの御方は身体を鍛えておられるのだろうけれども、それはまだまだ現在進行形で成長しているだろう体躯。
 そして小ざっぱりとした平服に身を包まれてはいるも、シャツやスラックス……その一つ一つの品は一目見て上質なものだとわかるわ。
 でも何よりもまだ私はたった七年しか生きてはいないけれどもっ、こんなにも自身の心が揺り動かされ、信じられない事に何故か不思議にも全く抵抗なく吸い込まれてしまうのは……。
 ぐいっとこちらを覗き込む様に鮮やかで真っ直ぐなエメラルドグリーンの視線が、何者にも動じない様に育てられた私の心に突き刺さるのではなく、ただ見つめられるだけで心がほんわかと温かくなるの。


 それは一瞬の事。
 ほんの少し……だと思うわ。
 そうよね。
 何故ならほんの少し前まで私は物凄く心細い思いと、初めてだらけの体験をしていたのだもの。
 でもだから――――ではないの。
 他の誰でもではない、あの御方だからこそ私の心は得も言われぬ程に心は温かくなり、そうしてやっと落ち着く事が出来たのよ。
 また直ぐに現実世界へと帰らざるなくもなったわね。

 そう、私の小さな胸がドキドキしている間にもっ、っっ!!

 あぁ〰〰〰〰この時ばかりは今直ぐここで大穴を急いで掘って百年程篭りたい気分になったわっっ。
 それから男性を前に恥ずかしいと言う気持ちもしっかりと味わったわっっ。
 本当に居た堪れないっっ。
 もうこの様な姿を一刻も早く隠してしまいたい――――と言う気持ちと同時に、何時までも時間を忘れてでも……お傍にいたい。


 何もなくてもいい。
 ただそのエメラルドグリーンの瞳で見つめられていたい。
 不思議とそう思ってしまった。
 それが初恋と知るのはもう少し後の事なのに、私は不幸にも先に失恋を味わう事になったの。


「あ、あのうここは何処なのでしょうか?」
「え、あぁここは俺の家、いや正式にはその正門前だな」

 私は改めてゆっくりと周りを見渡す。
 そうね、先程の光景とは全く違うわ。
 冷たく硬い石畳の、あれは怖い街?ではないのかしら。
 少なくともあの不躾な若い兵士はここにはいない。
 でもっ、だとしたらここは――――。

「安心しろ……と言う言い方は可笑しいのかもな。でもあんな所でお前は凍えて倒れていただろう? それに足には怪我を負っている。見た所お前はあの辺りに住んでいる様でもなさそうだが、しかしな、お前みたいな幼い子供を置いて親は一体何処で何をしているんだっっ」

 はぁ、まあそうですね。
 お父様は山で……でではなく遠い戦地で戦いを愉しんでいらっしゃいますし、お母様はお父様のお仕事を、国王代理を務めていらっしゃいます――――何て事は口が裂けても言えません!!

「まぁ悪いとは思ったがお前は気を失っていたし、俺はお前の家を知らない。何しろ鍛錬の帰りに出会ったのだからな。だから一先ひとまず俺の家で怪我の手当てをしようと思いここへ転移したと言う訳だ。だがお前は家へ入る前に気が付いた」
「まあそれは助けて頂き有難う御座います」

 そして私はお礼をこ込めて優雅に淑女の礼……と忘れていました。
 今私はこの御方の腕の中。
 言葉でのみしかお礼を言う事が出来ません。
 ですが家――――と仰ってはいるけれども、これはどう見てもお屋敷です。
 それもれっきとした名のある貴族の邸宅なのでしょう。
 後でお名前を伺い、正式にお礼へ参らなければならないわね。
 でも出来れば王女としてよりも……。
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