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第一話  もしかしなくてもここはとある異世界と言うものなのでしょうか???  前篇

初めての見た外の景色

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「少しは落ち着いたか?」

 公爵は今迄聞いたコトもないくらいめっちゃ優しい声で、私の顔近くで囁くように言う。
 しかしこれはこれで、めっちゃ心細い今の私にとっては、天使の……はたまた悪魔の甘い囁きにも取れてしまうっっ。
 おまけに私の右耳はぴったりと逞しい公爵の胸にくっついていると言う訳で、彼の甘い囁きと規則正しい心音は、男性未経験=自分の年齢という私にとって途轍もない破壊力があるのですっっ。
 それなのに普通の世の乙女ならば、絶対こんなイケメンの前ではしないコトを私はしてしまったのですよ。

「ず、ずびば……ぜん、もう、だ、大丈夫れず……ぐずっ」
「全く大丈夫には見えないのだが、それともまだまだ愛美まなみは子供なのか?」

 そんな事……ないと言い返したくとも、今自分でもわかるくらいめっちゃ涙で顔はぐしゃぐしゃだし、それに鼻水もずるずると垂れてるし、それと関係なく私ってそもそも色気なんか全くと言っていい程ない。
 まぁまだ私17歳だもん、後2~3年もすればお色気も備わってくるでしょう……ぉ?
 それにこんなにホームシックでなかったならば、めっちゃ麗し過ぎるイケメンの前では絶対あり得ない……いや、したくない表情かおだっっ。
 然も公爵はそんな私の顔をしっかりその顔を見ているし、絶対この公爵って乙女心と言うモノを理解しない男性ひとだっっ!!
 そりゃあ乙女心なんてモノ理解しなくっても、女性達はきっと公爵へとむらがるんだろう……けどさ。

 ガ―――――ン。

 れれ?
 いやなんでそんなコト思って私が落ち込むワケ?
 いやいや何故に胸がズシーンと重くなるワケ?
 何か今、自分で言った言葉で自分が傷ついている(然も心の中で)??
 もしかしなくても彼がイケメン過ぎるから……?
 そうだよねー、元の世界でも見たコトないくらいイケメンなんだもん、きっとその所為せいだわ。
 誤解だわ誤解、な~んにも変な感情なんてないんだから、それに公爵は偶然降ってきた私を保護という名目で軟禁していたくらいなのだからっっ!!
 そうよっ、それに私は逃亡を図っている最中だったのに、こうして公爵に捕獲されたんだからっっ。
 今更ながらだけど変に公爵を意識してしまった私は、何となくこの状態がめっちゃ落ち着かない。
 いやいやお姫様抱っこされている時点で私の心がアウトだって言ってるもん。

 抱かれている。
 そう、私の身体に彼の逞しい胸に腕、時々顔も触れている辺りより妙な熱さが伝わってくる。
 その熱が私の身体に伝わると、何とも言えず何処かむずむずゾクゾクしてしまう。
 くすぐったいような心地いいよう……でも、私の心臓は半端ないくらいドキドキと煩い。
 こんなコト……今まで生きてきた中で体験したコトなんてないっっ。

 危険危険危険危険―――――っっ!!

 あ゛あ゛〰〰〰〰ヤバいなんてもんじゃないかもしれないっっ。
 は、早く離れないと取り返しのつかないコトになってしまう〰〰〰〰〰〰かもしれない。

「こ、公爵やっぱり降ろして下さいっっ!! 怪我をしているワケでもないんですからっ、そ、それにこんなのは可笑しいと思いますっっ!!」
「公爵ではないエディーでいい、それに私がしている事に一々いちいち文句を言うな」

 え、エディーっっ!?
 ほぼほぼ1ヶ月もの間放置で、行き成り公爵からファーストネームすっ飛ばして愛称ニックネームですかっっ!!!
 一体何のプレイですかっっ!!
 私達まだはい、2回しか会っていませんし、その何でしたっけ、最初なんて貴方人のコトって言っていたでしょう??
 何かめっちゃ訳わかんないんですけど……公爵。

「何故、呼ばん?」
「いやいや行き成りハードル上げないで下さいっ、そもそも公爵でいいじゃないですかっっ!! 私もここへは長居ながいしませんしというかする心算つもりもないので、帰る方法が分かれば即元の世界へ帰るん……だから」

 変な期待を持たせないで下さいよね。
 そう心の中で少し寂しい様に私は呟くけれども――――。

「帰さない――――かもと言ったら?」
「はっ、何を言ってるんですかっっ!? 意味わかんないです、公爵みたいに大人じゃなくて私は子供……」
「エディーだ、愛美」

 ううっ近い、公爵めっちゃ私に顔を近づけているっっ!!
 そして無駄にイケメンオーラ半端ないですっ、でもこれは目の保養……にしては刺激強過ぎるし、これはこれでめっちゃ心臓に悪いですっっ。
 だけどわかるのは私が公爵を愛称で呼ばなければ、この天国とも地獄とも知れないモノが何時までも続くのだというコトだけはちゃんと理解した。
 だから呼ぶしかなかったんです。
 私はめっちゃ自分の心臓が可愛いモノで……。
 そうめっちゃ恥ずかしい……けれど。

「エディー……」
「それでいい、ルーズベルト」

 公爵……もといエディーは何かわかんないけれどめっちゃ満足した様な笑みを浮かべて、ルーズベルトさんに声を掛けると私を抱いたまま彼の背に、おおぉっ、ひょいっと簡単にドラゴンさんの背中にに乗っていましたっっ!!

「ルーズベルト頼んだぞ」

 エディーがそう言うとルーズベルトさんはその大きな翼を広げて一気に空高く凄いスピードで飛翔した。
 余りの勢いで私はエディーに縋りつくしかなかったけれど、彼は体勢を崩すコトなく、実にスマートな姿で騎竜きりゅうしている。
 これだけ勢いよく飛んでいたら呼吸がし難いのかなーってと思ったけれど、あながちそうでもないみたい。

 やはりここは私の世界ではない。

 そして空高く飛翔して見えてきたのは、地平線の向こうが薄っすらと白みがかってきているのと、その予想にもしていない周囲の……この世界の光景だった。
 刻一刻と時間と共に太陽がゆっくりを顔を出す光景はとても美しいんだけれど、それよりも明るくなるにつれてこの世界の姿が徐々にあらわわとなっていく。

 そう、それはとても不思議な光景。
 今迄見たコトもない姿。
 まるで……そうここは物語みたいな世界。
 簡単に言えば大小様々なシャボン玉みたいな透明な球体の中に、屋敷や街らしきものが幾つも点在している。
 然も驚くコトに全部浮いているっっ!!
 そして中央にひと際大きいシャボン玉の中に、めっちゃ大きなお城みたいな建物があった。
 そのコトに私が気付いたのかとでも言う様に、エディーはすっとそれをして言う。

「あれがこの帝国の居城アリステル城だ。あの城には皇帝と皇妃そして皇太子がいる」
「アリステル城……?」

 うわぁホントに物語やんっっ。
 なんかめっちゃドキドキしちゃう。
 私が心の中で時めいていると……。

「皇太子が気になるか?」

 えっ?
 エディーさん、なんかちょっとその冷たい一言が気になるんですけれどでも……。

「う~ん、気にならないと言えば嘘になりますね。だってここは私の世界とまるで違うんですから、つい皇子様って聞くと物語みたいじゃないですか。まぁ世界が違うから私には関係ないですけれどね、でもやっぱり皇子様には婚約者もいらっしゃるのでしょう?」

 そうそう綺麗なお姫様が……。

「あぁ、いる」

 エディーさん、そこはいらっしゃる……というのが正しいのでは?

「考えていた程悪くない相手……だな。愛美の物語の中の皇子様とはどんなモノだ?」

 え、ちょ、急にこっちに振られても……。

「んー優しい……かな? でもわかんないですね、私は元の世界じゃ一般人で普通に高校生していたんですから、そんな私が皇子様と出会う展開なんてモノはないですもん。だからわかりません、でも、よくある物語の中では皇子様と綺麗なお姫様が何時までも幸せに暮らしましたって言うのが、所謂いわゆるハッピーエンドってモノでしょうかね」
「そうか」
「そうです」

 エディーは何が如何なのかわからないけれども、何やら納得した様に頷いていた。
 そしてこれが自分に関係するコトとは、この時の私には全く何もわかりませんでした。
 いやっ、わかっていたならば全力で何とか……出来ないかもしれない。
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