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2016年9月のごはん。
はじめて作ったあんこパンなのじゃ
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夢の中で俺は怪物と戦っていた。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」
「オオオオオア」
目の前にいるのは巨体のモンスター。
俺は剣を振りかざした。
しかし、モンスターの拳によりその剣は叩き折られてしまう。
「あわわわ」
絶体絶命のピンチ。
モンスターの拳が俺に降りかかる。
その時だった。
………かしゃん。
モンスターが一瞬で崩れ落ちたのは。
「は!?」
ひらり、と真紅色のマントが漂う。
「どうしたお主、新米か?」
現れたのは、黒髪のおかっぱ頭の、美少年だった。
年は11~12歳くらいだろう。
男の俺でも惚れ惚れとしてしまうほど、美しかった。
「あなたは…?」
「うむ。我が名前はカレンであるぞよ」
少年はいう。
「女みたいな名前だが……」
「いやのう。軍の事情でかような格好ではあるが……」
□
□
□
チュンチュン……。
小鳥の可愛らしい鳴き声が聞こえる。
「はっ」
目が覚めた。
「…またあの夢か」
俺はまどろんだ意識を覚醒させる。
これが俺と姫の最初の出会いだ。
ベタベタな出会い方だったが。
真紅の男装の美姫との出会い。
俺は顔を洗ってから居間に向かった。
「えへへ」
姫がちゃぶ台の前で『じっくりコトコトこんがりパン完熟かぼちゃポタージュ』を見ていた。
「…姫、朝ごはん前ですよ」
「いいじゃないかー」
姫は八重歯を見せて笑う。
「スープ専用のパンをこんがり二度焼きしたそうじゃよ!?気になるのう」
「そうか」
俺も同じものを用意する。
「あ、紫、姫」
茜が起きてきた。
片手にパン雑誌を持っている。
「なんじゃ?」
姫は訊いた。
「姫…パンの件ですが…二次発酵を忘れてませんか?」
「え」
二次発酵?
なんだそれは。
「ほら」
茜がパン雑誌をパラパラとめくる。
そこにはテーブルロールの作り方が載っていた。
生地を作って捏ね、一次発酵。
分割してベンチタイム。
そして、二次発酵。
「…あちゃ」
姫がいう。
「ちゃんと本を読んでますか?」
茜が困惑する。
「だからいつもちょっと硬いんですよ」
「なるほど」
姫。
スープカップにお湯を注いだ。
10秒かき混ぜ、1分待つ。
「うむ。パンがさくさくじゃ」
姫はご満悦だ。
「確かに、パンがいいですね」
茜が言う。
黄色いかぼちゃスープの中にパンが浮かんでいた。
「甘いスープであった」
姫が御馳走様をする。
「うむ…」
頷く俺。
俺達は朝ごはんを食べた。
が。
「あんこパン硬い…」
翠が言う。
「二次発酵してないからだな」
紫が言った。
「おうのう」
姫。
「明日もこんな状態なら、店のパン買いますよ?」
茜が言った。
「あんこは美味だが」
葵が言う。
「いやじゃいやじゃ~!硬くてもわらわひとりで食べるのじゃ!」
姫が言う。
「こら、いくらなんでもそれは食費の無駄遣いだ」
紫が言う。
「うわーん」
と本当の小学生女児のように泣いてしまった。とほほ。
「こら、姫、皿洗うの忘れてるぞ」
葵が言う。
「わかっておるのじゃ」
姫は泣きながら皿を運ぶ。
なんだか、俺達が姫の主というより、親のような立場だ。
□
「おいしいのう」
数時間後。
機嫌を治した姫はロッテの『雪見だいふくクッキーアンドクリーム』を平らげていた。
「もう雪見だいふくの季節か」
俺は言った。
時の流れは早いものだ。
姫は午後の紅茶こだわり素材の瀬戸内柑橘ティーを飲んだ。
これはカフェイン・カロリーゼロで、愛媛みかんと広島レモンが使われている。
「あー爽やかな味じゃのう」
姫は言った。
「姫、そんなものばかり飲んでないで、血も飲まないと駄目ですよ」
俺は言った。
姫は吸血鬼の中でも得意体質で、日光のダメージもかなり削減されている。
しかしそれは、輸血あってこそ。
しかし。
「わらわ、いま血を吸うよりパン食べたい」
ずるっ
「姫は本当に吸血鬼ですか!?」
思わず突っ込んだ。
ただでさえ最近は温暖化の影響で、紫外線ダメージが半端ないというのに。
「えーだって血飲むってグロいしーこの作品全年齢対象だしー」
姫がメタな事を言う。
「いや血を吸わない吸血鬼なんて吸血鬼の意味ないじゃないか」
紫は言う。
もっと設定を活かそうぜ…。
「設定?そんなんしらぬ」
姫はそっぽを向いて午後の紅茶をゴクゴク。
ああ……
絶世の美少女が台無しな立ち居振る舞いだ。
こいつ吸血鬼美少女じゃなく、親父系美少女じゃないのか?
「アルコールは好きじゃぞ」
そう質問すると、姫がふふーんと言う。
「そうだよなお前BBA……」
「失礼じゃぞ」
むっとされた。
はぁ。
□
俺と可憐は縁側でロッテのフィッツシオシオレモン味を食べていた。
「ふう」
庭では葵が土弄りをしている。
きゅうりも大分育ってきたようだ。
残念ながら、大根は全滅してしまったが……。
「昼飯食べるよー」
翠が言った。
「はぁい」
姫は立ち上がる。
四人で調査品を食べた。
『マンゴーツリー東京監修トムヤムクンヌードル』だ。
「うましうまし」
可憐はあんぱんを食べながらブレンディスティックカフェオレカロリーハーフを飲んでいる。
「この調味油をいれるんだな」
葵が言った。
スープが赤に染まる。
「いただきまーす」
可憐が食べた。
「からぁ」
可憐がいう。
「口がヒリヒリするな」
紫は言う。
「のじゃ」
□
夕方。
紫と姫は、パン作りをした。
「こねこね~こねこね~」
姫は楽しそうだ。
台所には小麦粉の匂いが漂う。
一次発酵に移った。
「今日こそ茜の惣菜をいれるぞ」
俺は言った。
「そうじゃそうじゃ」
姫の同意。
「とりあえず、今の目標はおいしいパンを作れるようになることと」
俺は姫のふにふにほっぺたをむぎゅーと摘まんだ。
「いてててて」
「そのワガママ姫な性格を治すことだな」
「こらー!」
姫が怒る。
「あはは」
俺は逃げた。
「とう」
脇腹を避ける。
「はっ」
次は肩。
「とう」
頭。
「ひょい」
股間。
「えいや」
顎にぶち当たった。
「いたたたたた…」
「喧嘩でわらわに勝とうとは、1000年早いのう」
姫がにやにやする。
「親の言うことは聞きなさい」
紫は言った。
「そちの腹から産まれた覚えなどないわ!!」
姫がムスッとなる。
あれ…?俺母親ポジション?
「そうそう、ちなみに父親は翠殿だからな」
姫が言う。
「茜は?」
「執事」
「葵は?」
「ペットじゃ」
……はぁ。
「ドラゴンの背中に乗るの最高じゃ」
「はぁ」
にこにこの姫。
□
一次発酵が終わったあと、分割してベンチタイムを取った。
そして、惣菜を詰めて二次発酵。
「なかなか膨らまないのう」
姫が言う。
「温かくないからかな」
俺は言った。
俺達はパンをオーブンに入れた。
「なかなか上手くいかんのう」
「そうだな」
「戦いのほうが遥かに楽じゃった」
「そ、そうか?」
「うむ」
きりっと、小鳥のような眼差しでオーブンをみる可憐。
………。
□
「ああ」
やはり失敗した。
「硬いパンじゃのう」
可憐は言う。
「カチコチですね」
紫は言う。
「食べてみるかの」
「はい」
やはり中も固かった。
「一体なにを間違えているのか……」
げんなりする姫。
「また再挑戦しましょう」
紫が言う。
「そうじゃの」
姫。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」
「オオオオオア」
目の前にいるのは巨体のモンスター。
俺は剣を振りかざした。
しかし、モンスターの拳によりその剣は叩き折られてしまう。
「あわわわ」
絶体絶命のピンチ。
モンスターの拳が俺に降りかかる。
その時だった。
………かしゃん。
モンスターが一瞬で崩れ落ちたのは。
「は!?」
ひらり、と真紅色のマントが漂う。
「どうしたお主、新米か?」
現れたのは、黒髪のおかっぱ頭の、美少年だった。
年は11~12歳くらいだろう。
男の俺でも惚れ惚れとしてしまうほど、美しかった。
「あなたは…?」
「うむ。我が名前はカレンであるぞよ」
少年はいう。
「女みたいな名前だが……」
「いやのう。軍の事情でかような格好ではあるが……」
□
□
□
チュンチュン……。
小鳥の可愛らしい鳴き声が聞こえる。
「はっ」
目が覚めた。
「…またあの夢か」
俺はまどろんだ意識を覚醒させる。
これが俺と姫の最初の出会いだ。
ベタベタな出会い方だったが。
真紅の男装の美姫との出会い。
俺は顔を洗ってから居間に向かった。
「えへへ」
姫がちゃぶ台の前で『じっくりコトコトこんがりパン完熟かぼちゃポタージュ』を見ていた。
「…姫、朝ごはん前ですよ」
「いいじゃないかー」
姫は八重歯を見せて笑う。
「スープ専用のパンをこんがり二度焼きしたそうじゃよ!?気になるのう」
「そうか」
俺も同じものを用意する。
「あ、紫、姫」
茜が起きてきた。
片手にパン雑誌を持っている。
「なんじゃ?」
姫は訊いた。
「姫…パンの件ですが…二次発酵を忘れてませんか?」
「え」
二次発酵?
なんだそれは。
「ほら」
茜がパン雑誌をパラパラとめくる。
そこにはテーブルロールの作り方が載っていた。
生地を作って捏ね、一次発酵。
分割してベンチタイム。
そして、二次発酵。
「…あちゃ」
姫がいう。
「ちゃんと本を読んでますか?」
茜が困惑する。
「だからいつもちょっと硬いんですよ」
「なるほど」
姫。
スープカップにお湯を注いだ。
10秒かき混ぜ、1分待つ。
「うむ。パンがさくさくじゃ」
姫はご満悦だ。
「確かに、パンがいいですね」
茜が言う。
黄色いかぼちゃスープの中にパンが浮かんでいた。
「甘いスープであった」
姫が御馳走様をする。
「うむ…」
頷く俺。
俺達は朝ごはんを食べた。
が。
「あんこパン硬い…」
翠が言う。
「二次発酵してないからだな」
紫が言った。
「おうのう」
姫。
「明日もこんな状態なら、店のパン買いますよ?」
茜が言った。
「あんこは美味だが」
葵が言う。
「いやじゃいやじゃ~!硬くてもわらわひとりで食べるのじゃ!」
姫が言う。
「こら、いくらなんでもそれは食費の無駄遣いだ」
紫が言う。
「うわーん」
と本当の小学生女児のように泣いてしまった。とほほ。
「こら、姫、皿洗うの忘れてるぞ」
葵が言う。
「わかっておるのじゃ」
姫は泣きながら皿を運ぶ。
なんだか、俺達が姫の主というより、親のような立場だ。
□
「おいしいのう」
数時間後。
機嫌を治した姫はロッテの『雪見だいふくクッキーアンドクリーム』を平らげていた。
「もう雪見だいふくの季節か」
俺は言った。
時の流れは早いものだ。
姫は午後の紅茶こだわり素材の瀬戸内柑橘ティーを飲んだ。
これはカフェイン・カロリーゼロで、愛媛みかんと広島レモンが使われている。
「あー爽やかな味じゃのう」
姫は言った。
「姫、そんなものばかり飲んでないで、血も飲まないと駄目ですよ」
俺は言った。
姫は吸血鬼の中でも得意体質で、日光のダメージもかなり削減されている。
しかしそれは、輸血あってこそ。
しかし。
「わらわ、いま血を吸うよりパン食べたい」
ずるっ
「姫は本当に吸血鬼ですか!?」
思わず突っ込んだ。
ただでさえ最近は温暖化の影響で、紫外線ダメージが半端ないというのに。
「えーだって血飲むってグロいしーこの作品全年齢対象だしー」
姫がメタな事を言う。
「いや血を吸わない吸血鬼なんて吸血鬼の意味ないじゃないか」
紫は言う。
もっと設定を活かそうぜ…。
「設定?そんなんしらぬ」
姫はそっぽを向いて午後の紅茶をゴクゴク。
ああ……
絶世の美少女が台無しな立ち居振る舞いだ。
こいつ吸血鬼美少女じゃなく、親父系美少女じゃないのか?
「アルコールは好きじゃぞ」
そう質問すると、姫がふふーんと言う。
「そうだよなお前BBA……」
「失礼じゃぞ」
むっとされた。
はぁ。
□
俺と可憐は縁側でロッテのフィッツシオシオレモン味を食べていた。
「ふう」
庭では葵が土弄りをしている。
きゅうりも大分育ってきたようだ。
残念ながら、大根は全滅してしまったが……。
「昼飯食べるよー」
翠が言った。
「はぁい」
姫は立ち上がる。
四人で調査品を食べた。
『マンゴーツリー東京監修トムヤムクンヌードル』だ。
「うましうまし」
可憐はあんぱんを食べながらブレンディスティックカフェオレカロリーハーフを飲んでいる。
「この調味油をいれるんだな」
葵が言った。
スープが赤に染まる。
「いただきまーす」
可憐が食べた。
「からぁ」
可憐がいう。
「口がヒリヒリするな」
紫は言う。
「のじゃ」
□
夕方。
紫と姫は、パン作りをした。
「こねこね~こねこね~」
姫は楽しそうだ。
台所には小麦粉の匂いが漂う。
一次発酵に移った。
「今日こそ茜の惣菜をいれるぞ」
俺は言った。
「そうじゃそうじゃ」
姫の同意。
「とりあえず、今の目標はおいしいパンを作れるようになることと」
俺は姫のふにふにほっぺたをむぎゅーと摘まんだ。
「いてててて」
「そのワガママ姫な性格を治すことだな」
「こらー!」
姫が怒る。
「あはは」
俺は逃げた。
「とう」
脇腹を避ける。
「はっ」
次は肩。
「とう」
頭。
「ひょい」
股間。
「えいや」
顎にぶち当たった。
「いたたたたた…」
「喧嘩でわらわに勝とうとは、1000年早いのう」
姫がにやにやする。
「親の言うことは聞きなさい」
紫は言った。
「そちの腹から産まれた覚えなどないわ!!」
姫がムスッとなる。
あれ…?俺母親ポジション?
「そうそう、ちなみに父親は翠殿だからな」
姫が言う。
「茜は?」
「執事」
「葵は?」
「ペットじゃ」
……はぁ。
「ドラゴンの背中に乗るの最高じゃ」
「はぁ」
にこにこの姫。
□
一次発酵が終わったあと、分割してベンチタイムを取った。
そして、惣菜を詰めて二次発酵。
「なかなか膨らまないのう」
姫が言う。
「温かくないからかな」
俺は言った。
俺達はパンをオーブンに入れた。
「なかなか上手くいかんのう」
「そうだな」
「戦いのほうが遥かに楽じゃった」
「そ、そうか?」
「うむ」
きりっと、小鳥のような眼差しでオーブンをみる可憐。
………。
□
「ああ」
やはり失敗した。
「硬いパンじゃのう」
可憐は言う。
「カチコチですね」
紫は言う。
「食べてみるかの」
「はい」
やはり中も固かった。
「一体なにを間違えているのか……」
げんなりする姫。
「また再挑戦しましょう」
紫が言う。
「そうじゃの」
姫。
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