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第60話 テンプレのギルド長

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もはやおなじみとなった別室に入ると、ギャン氏はギルド職員の手によって後ろ手に縛られ、さるぐつわをされて転がされた。

部屋には俺、おっさん職員、ギャン氏。

受付嬢さんは誰かを呼びに出て行った。

テンプレだと、ギルド支部長とか副支部長とかが出てくるんだろう。

まあ、ただの職員にギルド員資格停止の権限があるとは思えない。

ある程度の上司が出てこないと話は進まないんだろう。

「一応俺の要求だけ先に言っておくね。
   カッパハゲの全財産を賠償金としてもらう。
   カッパハゲのギルド員資格の剥奪。
   衛兵への引き渡し。
   俺へ復讐に来た際に返り討ちへの免罪。
 これが最低条件ね。」

どっかで聞いた交渉術。

『始めに実現不可能なほどハードル上げておけば、多少それを下げただけで通常は無理な要求でも通る。』

ってヤツ。

「盗賊に襲われて撃退したら、その盗賊の持ち物は俺のモノでしょ?
 罪にも問われないし。
 何も違わないよね?」

そうなのである。

この世界では盗賊は魔物と同じような害獣扱いで、討伐自由。

もしくは奨励すらされている。

当然殺人罪には問われないし、貯めこまれた財貨は討伐者の物となる。

盗賊に奪われていた物でどうしても取り戻したい被害者は、討伐者と交渉してそれを買い取る。

というのが普通なのだ。

そんな話をしていたら、奴隷娘を伴ってやけに迫力のある美人さんが部屋に入って来た。

見た目は二十代半ば位。

長い茶髪を後ろに巻き上げバレッタで留めている。

これでメガネにスーツだったらやり手の秘書か司書って感じ。

父親の秘密金庫の中にあった●VDコレクショ・・・コホン。

もしくは学校で評判のエロ英語教師みたいな。

ブラウスのボタンを三つ目まで外すとか・・・戦争だろうが!

「なにか失礼な淫猥なことを考えなかったか?」

第一声がそれである。

見透かされた?

もしかしたら顔に出ていただろうか?

「はい。ごちそうさまです。」

ここは素直にお礼を言っておこう。

「ふむ。腹の座り方は新人のものでは無いな。」

『腹が座っている』というのはどうだろう?

むしろ『状況を理解していない』とか『舐め切っている』じゃないだろうか。

「そんなことより、どちら様でしょうか?」

俺の夜のおかずになるとかならないとかより、今はもっと重要なことがあるはずだ。

「当冒険者ギルドの支部長だ。」

おっさん職員が紹介してくれる。

「そして俺が副支部長だ。」

「えっ?」

さすがにそれはびっくりした。

副支部長ならギャン氏への対応を即断で決めれたのには納得だが。

なんかイメージでは中間管理職っていうか、中小企業の経理課長みたいな・・・

副支部長。

中間管理職で合ってるか・・・

「ごくろうさまです。」

なぜか自然にねぎらいの言葉が口に出ていた。

あの髪の毛は・・・・犠牲になったのだ。

おそらく胃も。

「そう思うならこれからはおとなしくしてくれるか?」

「だが断る。」

自分からは仕掛けないけどやられてそのままってのはありえない。

「専守防衛、過剰防衛、容赦無しがモットーなんで。」

ドヤ顔で言ってみる。

副のおっさんは苦い顔だが、美人支部長は気に入ったようだ。

「結構、結構。
 若いもんはそれくらい自己中心的なくらいでちょうどいい。
 いずれ痛い目にも会うだろうがそれも勉強だ。」

そう言って、俺の要求を全て飲んでくれた。

「もともとコイツは、うちの職員にセクハラしまくっていたからちょうどいい。
 泥はお前が被ってくれるしな。」

どうやらWINWINに近い感じで収まったようだ。

俺が悪役になってしまった感は否めないが。
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