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第50話 奥の密室で

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「ギャンさんに関しては、殺さなければ問題にならないと思います。
 あちこちでやらかしてますし、カキ様から先に手を出すことはなさそうですし。」

おいっ。いいのかそれで。

良いってのならやっちゃうけど、商人ギルドに続いて冒険者ギルドも入りづらくなるな。

まあ今更って感じはするが。

「ギルドの複合加入は問題ありません。
 ただ、ギルドによっては相性が悪いところもありますので他のギルドすべてが大丈夫かどうかは保証できませんけどね。」

どういうことだろう?

神社と寺が仲悪いみたいなことがあるのかな?

「当ギルドに加入していて加入できなさそうなのは『探索者ギルド』位ですね。」

うん。これは解る。

モロに競合関係にあるライバルというか敵だろう。

「討伐証明部位の一覧は、今お見せしますが、お渡しするほど数がありませんので、覚えるかメモするかしてください。
 買い取りの一覧は有りませんので受付で聞いてください。
 まあ常時討伐依頼で言えば、オークが全部、スライムが魔芯玉、モノコーンラビットは肉と毛皮、多足狼は毛皮、ゴブリン・コボルト・ウォーキングマンイーターは二束三文なんで無駄。
といったところでしょうか。」

討伐証明部位は、オーク・ゴブリン・コボルトが鼻、スライムが魔芯玉、モノコーンラビットが角、多足狼が右前脚、ウォーキングマンイーターが黄色い花びら。

スライムの魔芯玉ってのが気になるが、ラノベでよくある「魔石」的な魔物のコア的な奴なんだろう。

まあ、おれがやるとすればどうせ丸ごと全部持ってくるんだろうから別にいいか。

「指名依頼については、断っても何も明文化された制限や罰則はありません。」

なんか気になる言い回しだな。

「なんか気になる言い回しですが、なにか含むところがあるんじゃないです?」

気になったことは全部聞こう。

せっかくの別室だ。

気配察知でも聞き耳立ててるような奴は居ない。

「はい。まずギルド内での評価に影響します。
 もちろん身の丈に合わない依頼を無理に受ける必要はありませんが、可能な依頼を断り続けたりすると、昇級に響きます。」

まあ、サボリーマンはいらんよね。

「さらに、依頼者が有力者ですといろいろとあります。」

ああ、嫌がらせや闇討ちもありうるのね。

「まあ、普通は指名依頼なんてC級以上の実力者や、個人的なつながりのある人にしかかかりませんけどね。」

さっきババンガ商会から指名依頼があるとかないとか言ってなかったか?

まあ罰則はないようだし無視すればいいか。

「ギルドカードの有効地域ですが、C級以上がどこの国でも、D・E級がドドンガ王国内、F・G級がドナドナ伯爵領内となります。
 まあ、実力と信用度の関係でそんな感じになります。」

「ドナドナ伯爵領って言いますと?」

「このカウの街を中心に東はアップス山脈まで、北はモルダー川まで、他の方角は海になります。」

聞いても良くわからん。地図が欲しいな地図が。

「一番大きな街はここカウの街になります。
あとは比較的大きな街が五つと、村があちこちにって感じですね。」

地図が欲しいと思ったからなのか、奪ったスキルにマッパーがあったからなのかはわからないけれど、頭の片隅に地図が浮かんだ。

日本での地図のように細かい物ではない、小学生が書いた西ヨーロッパって感じの粗いものだが、これでなんとなく位置関係が解った。

そんなこんなで他にも色んなことを聞いた。

「そして、オーク43匹、ゴブリン30匹、コボルト20匹の討伐及び買取で、70万5千ゴルになります。
 それから、大分魔物の討伐がありましたので、F級に昇級しています。」

受付嬢さんは、そう言って硬貨が入っているであろう布袋と、商人ギルドで貰ったカードと同じようなカードをテーブルの上に置いた。





「で、指名依頼の件なんですが。」

俺が金貨の枚数を数えていると、受付嬢さんが言いずらそうに話しかけてくる。

忘れててほしかったなぁ。

「受けませんよ。」

「えっ?」

速攻で断ったのにびっくりされた。

「言いずらそうにしてたってことは、いろいろご存知でしょ?」

天下のババンガ商会からの指名依頼であれば、普通は喜んで話してきそうなものだ。

「昨日の件については、多少聞き及んでおりますが、依頼は当主のバン・ババンガ様からで、タカビー様ではありませんので・・・」

「誰ですかタカビーって?」

聞き覚えのない名前だ。

もともと外国人の名前って覚えずらいのに、異国人の名前だ。

「昨日カキ様が引き摺りまわしていた商人ギルドの支部長ですよ。」

そんな名前だったんだ。

ていうか、俺が引きずり回してたの知ってるんだ

「へぇ、そんな名前だったんだおっさんA。
 でも、当主さんだとなんか違うんですか?」

「当主のバン様と長男のタカビー様があまりうまくいっていないことはこの街では、暗黙の了解と言いますか・・・」

またまた言いずらそうだ。

それにしても、昨日今日たどり着いた異世界人には暗黙の了解なんてわかるわけがない。

「何でです?」

「バン様がおっしゃるには、『一人で身を立てる商人にはなれんから組織をバックにつけるしかない』とのことで商人ギルドに多額の寄付をして支部長の座を買われたとか、一人では心もとないので中の上の出来の三男のイイタイ様を役員としてお付けになったとか。
 それを自分の力に自信のあるタカビー様はご不満だとか。」

いるよね、自分の実力が解ってなくて自分スゲーな奴。

「そんなんを要職にねじ込むなんて御当主様も大概ですね。
 自分達さえよければ周りはどうなってもいいんでしょうか?
 押し込まれた商人ギルドの人も大変ですね。いい迷惑でしょうに。
 大体、いくら大商人でも一介の商人がギルドの支部長の首を挿げ替えられるって、同業者が集まるギルドとしていかがなもんなんでしょうね?」

「容赦ないですね・・・」

受付嬢はドン引きだ。

いやいや、もうすでに市中引き回しの刑をリアルでやっちゃってるんだから、暴言なんて今更でしょ?

「というわけで、どんな依頼かは知りませんが受けません。」

そんなことをしている暇は無い。

なにしろこの街の商人ギルドに関係することなく、あと600万ゴル稼がねばならないのだ。

街の店では購入資金に不安があるし、大手は他にあるのかもしれないが、少なくとも俺はババンガ商会しか知らない。

つまり今のところ、冒険者ギルドで稼ぐしか手が無くて、個別の依頼を受けるよりは常時討伐依頼をこなすってのが今の俺の方針だ。

今日一日で70万ゴル。

あと8日間、今日と同じ稼ぎがあれば間に合うはず。

確か今日を含めて10日間お取り置きしてもらえてるはず。

ついでに稼ぎのいい魔物や場所もきいておくか。

「ついでに、効率の良い狩場と魔物を教えていただけませんかね?」


一匹で討伐料や素材として高価な魔物は多数いるが、見つけるのに時間がかかったり、遠い森の中に居たりするので効率は悪くなるらしい。

オークはこの街の北西方向にある「鉄山」と呼ばれる山の麓から中腹にかけて生息しているらしい。

あまり上に行くと格が違う魔物のテリトリーらしく、そこには近づかないとのこと。

モノコーンラビットは鉄山に向かうまでの草原に分布。

植物の根を主食にしているらしく、畑の根菜に被害が出ることから害獣とされている。

オークとモノコーンラビットがE級以下であれば効率が良い魔物とされているようだ。

D級以上になるといろいろな魔物が対象になるらしいが、F級の俺には教えてくれなかった。

その代わりに、アップス山脈や、それを超えたところにある南ドドンガ大森林には絶対に近づくなと忠告された。

これはフリだろうか?

絶対押すなよ。押すなよ。押すなよ。 的な(笑)

そりゃ行かずにはいられない。

カウの街から西南西に馬車で3日位のところにアップス山脈がある。

今回は間に合わないか、一匹で600万ゴルになる魔物を往復6日の残り2日で見つけて討伐するなんて難しいだろう。

確認のためにこれも聞いてみるか。

「ちなみに一匹討伐したら1000万ゴルになるような大物もそこにはいるんですよね?」

「一匹で1000万ゴルと言えばちょうど大森亀が討伐300万、大体素材700万になりますね。
 あとは大火蛾や徘徊竜ゴーレムも同じくらいです。
 単体ではありませんが、蝗熊の一家や甲羅狼の群れ、針山猫の群れでもそのくらいいきますね。
 ただ、B級以上推奨ですから、間違っても狙ってはダメですよ。」

なんだか物騒な魔物がいるようだ。

なんとなくネーミングでどんな魔物かは解る。

がやはり発見が難しいようなので、そのうちに行ってみようか位にとどめておく。

フリと考えるのはやめておこう。うん。

そしてオークとモノコーンラビットの効率的な狩り方について考える。

オークは肉だったから上中下のランクでいけたけど、毛皮も必要なモノコーンラビットは爆散系はダメだろう。

風魔法の『風刃』で首チョンパか、雷魔法の『感電』とかで外見上無傷でとらえて口の中か尻の穴から一刺し。

毛皮には傷はつかない。

串刺しにされて生きていられるものがいるとも思いたくない。

内臓を食うとすれば少しあれかもしれないな。

口から脳へ電撃がベストか。

まあ、いろいろアレだが・・・有効でしょ?

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