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子供たちが去った魔法陣を後にして、ジュリィの母親の後を追う。
彼女は奇妙なまでに進むのが早くて、ユウリは自然と小走りになった。しかし隣にいるシュウを目にした途端、思わず舌打ちがこぼれる。

「——チッ。」

ハルはともかくシュウの足の長さと言ったら、ユウリの小走り二歩が早歩き一歩とは。

「ユウリ?何を見て舌打ちしたんだ?」

ユウリの必死な様子でもおかしいのかシュウはこんな中でも上機嫌に笑う。
なんて憎たらしい。

(嫌味を言っているのか)

自分の身長を気にしていると知られても癪に障るので、言うわけがない。

外見よりもなかは存外に広くて、まるでどこか領主の屋敷のようだ。
しかし進んでも、進んでも、同じ扉がずっと続いていて、場所を知らないから同じところをループしているようにも感じる。

(……いや、ループしているのか。)

木の板でできた床を何度かミシミシ音を立てて進んだのち、ジュリィの母親が一つの扉の前で立ち止まった。何も言わないけれど、なんとなくこの先に人がいるような気がして、得体のしれない者に体が強張った。

「ここか…?」

ハルは母親の反応を確認しながら扉にかけられたプレートに目を向けた。
“父の部屋”と書かれたそのプレートはかなり古くて、最近できたものではなさそうだった。
ユウリがノックをしようと、左手の甲を扉に向ける時、扉の中から得体のしれない何かの魔力が強まった。
無意識に後ろに大きくさがると、けたたましい音とともに扉が外れ、砂ぼこりが舞う。

『ミーシャ、どこに行っていた?』

聞こえてくる穏やかな言葉とは裏腹に響いてきた声はこの世のものとは言えないくらい魔力がこもり、それだけで威圧される。ビリビリした空気が肌を刺すようだ。
中の人物は魔力で人物を感知しているだけで、目の前が見えていないんじゃないかというくらいに薄暗い。

『どこに行っていた?どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた、どこに行っていた?…お前たちは誰だ…ミーシャを奪う気か』

ようやくユウリ達にも気づいたのか視線を同時にあげる。端から順番に目線を動かしてユウリを目にしたとたんジュナファーは驚いたように目を開くと威圧まで感じていた魔力が少し弱まったような感じがした。

「初めまして、ジュナファーさん。……もしかしたら初めましてじゃないのかな。」

ハルが冷静そうに口にする。
ユウリはこちらをとらえた瞳に驚きが隠せなかった。——今朝依頼を受けた相手で、こんな陰鬱な雰囲気も、今日の朝はその姿ではなかったのだ。ハルはともかくシュウも微塵も驚いた様子がなくて、まるでユウリだけが動揺しているみたいだ。

「兄さんたち、この後は僕に任せてもらってもいいかな」

その言葉にシュウは一歩下がりハルはクピディダスを探していただけあって、冷静に魔法陣を展開する。

「ジュナファーさんに聞きたいことがあるんです。聞こえているかな…。」

地面に魔法陣を展開するための手を付けたまま話を続ける。確かにハルは探しものがあるといっていた。ユウリは忘れかけていたことをふと思い出す。わざわざジュナファーさんに聞かなくてはならないことだったのだと知る。

「こんな時に話している場合ではないのは承知の上です。あなたがこんな風になったのは何年前からですか?あなたの空間に…女の子はいませんか」

ハルのその声は聞こえなくなるくらい微かなものになる。ジュナファーはその言葉を聞いて、苦しそうなうめき声をあげた。
ユウリは苦しそうな声なんて聞いていたくなくて、ハルに問う。
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