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泣いているミリーをさらっと無視してユウリの瞳だけを見つめた。
「でも魔力少なそう」
魔力量は瞳の色によって変わる。多くの人は焦げ茶の瞳だ。シュウのような紫の瞳を持つ人はとても少なくて魔力量は無限に近いくらいに多い。たまにその瞳が親と異なっていたり、色が薄すぎて、コンプレックスを持つ人だっているのだ。
だからデリクの言うように確かにユウリの薄い色はそうなのかもしれない。ユウリはたいして魔力を使わないから魔力量がよくわからにけれど、否定もしなかった。
それにしても、デリクは遠慮をしない子供らしい。
ユウリは覗き込んでくるデリクよりもいまだ大泣きし続けるミリーが気になって仕方がなかった。
「——なんで泣いた?」
「ミリーは不安になると、泣いちゃうんだよ。」
「不安…」
「お兄ちゃん、家の人いないっていうから、ミリーはおいていかれたと思ったんだよ。」
ユウリが理解していないことが分かると、デリクは言葉を付け足した。
「ミリー、それは嘘だ。」
———そういうつもりで言ったんじゃない。おいて行かれるわけがないだろ。
「お兄ちゃん嘘ついたんだって、ミリー」
デリクはユウリの言葉を杜撰に置き換えると、ミリーの様子をうかがった。涙を落ち着けると、ヒックヒックしながら、ユウリの目を見つめる。
二人の近くなった顔に身じろぎながらも、抱えているままではそれほどの距離をとることが出来ない。
「本当だぁ、目がきれい!」
泣いていても人の会話は耳に入っているみたいだ。あっという間に気持ちを切り替えると、少し赤くなった目でこちらによる。
ミリーのその声に前を歩いていたジュリィが気になったかのようにハルの服を引っ張った。
「おうじさま!私も見るますの!」
「え、はい。」
遠くから見ていたハルもミリーにそういわれれば、近づかざるを得ない。ハルは服に絞められて苦しそうにしながらもこちらに近づく。
「お、おい。」
追い詰められた獲物の気持ちってこういうものなのだろうなと、頭の端で考えながら、ユウリは後退さる。
「近づいてくるな。」
両手がふさがれているから思うように体を止めることが出来なくて、その代わりにすこし頭を振って抵抗する。魔物と敵対している時だったならユウリよりも強いものなんて、ここ最近はあまりいないし、会ったとしても自分でどうにでもする。しかしこの状況はそうはいかなくて、身震いする。
ユウリの抵抗もむなしく、ジュリィは体を前に乗り出すと、両手をユウリの顔に当てるとグイっと引っ張った。
「うわぁ!こんな色は初めて見た!キラキラしててきれい!!」
「…でかい声出すな。」
「本当だね。きれいだ。」
無表情の顔をますます引きつらせるのと同時にハルも一緒に覗き込んできた。ユウリは逃げ腰になりながらも逃げられないでいると、近くに寄った仮面の下のハルの瞳が覗いた。
(シュウと同じ。)
ハルの瞳は珍しいことにハルと同じ紫でユウリは少し驚いた。こんな短期間に魔力の最大値ともいえる紫の瞳を持つものに遭遇するなんて、驚くなというほうが難しい。
「そんなに珍しい色か?」
ユウリはそんなのも気にしないで近づいてくるハルに聞く。魔力の重要性を考えていなかったユウリには子の瞳の色が正直なところあまり珍しいと思っていなかった。ブラウンよりも薄い色だけのだ。ユウリの言葉でハルは少しだけ好奇心を落ち着かせると、姿勢を元に戻す。そのついでに一歩下がってさらに距離をとると、ハルとジュリィは残念そうな顔をする。
「うん!反射して金色に見えるよ。多くの人はそんなに薄くないと思う」
デリクはそう突っ込む。
「それにしてもこんなに薄い人は見たことないわ!羨ましい‼。」
茶色は魔力があまりない証拠だ。基本的に貴族には紫が多い。
シュウは綺麗なヴァイオレットだ。澄んだ瞳にきれいな紫がとてつもなくきれいだったのをユウリは覚えていた。だからユウリは貴族かな、なんて考えるわけだが。
「でも薄いってことはほとんど魔力がないってことだよ、それでもいいの?」
羨ましいといったジュリィにデリクはそういうと、「でも綺麗なのにぃ」と言葉を漏らしながらも、魔力が少ないことに頭を悩ませているようだ。
ユウリはその言葉にしばらく首をひねった。
「…魔力」
さっきから言われているように、ユウリはたいして魔法を使うのに困ったことがない。平民の中でも魔力が少ない人たちは互いに協力して生活するのが一般的だがユウリにはそういう経験がないのだ。だって荷物持ちに空間魔法は使えているし、そのうえほかの生活魔法で困ったことはない。
もしかしたら多いのかもと思っていたけど、みんなの平均はユウリが持っているよりも本当はもっと多いのかもしれない。そうユウリは妙に納得する。
ユウリの瞳は紫から考えると黒の下の茶色の下の薄茶の下ということだ。
ダンジョンで黄金を見つけたら「金だ」って思うくせに魔力の量では位が低いらしい。その不思議に心の中で笑った。その傍らで、ハルがずっとこっちを見つめていたのには気づかなかった。
「でも魔力少なそう」
魔力量は瞳の色によって変わる。多くの人は焦げ茶の瞳だ。シュウのような紫の瞳を持つ人はとても少なくて魔力量は無限に近いくらいに多い。たまにその瞳が親と異なっていたり、色が薄すぎて、コンプレックスを持つ人だっているのだ。
だからデリクの言うように確かにユウリの薄い色はそうなのかもしれない。ユウリはたいして魔力を使わないから魔力量がよくわからにけれど、否定もしなかった。
それにしても、デリクは遠慮をしない子供らしい。
ユウリは覗き込んでくるデリクよりもいまだ大泣きし続けるミリーが気になって仕方がなかった。
「——なんで泣いた?」
「ミリーは不安になると、泣いちゃうんだよ。」
「不安…」
「お兄ちゃん、家の人いないっていうから、ミリーはおいていかれたと思ったんだよ。」
ユウリが理解していないことが分かると、デリクは言葉を付け足した。
「ミリー、それは嘘だ。」
———そういうつもりで言ったんじゃない。おいて行かれるわけがないだろ。
「お兄ちゃん嘘ついたんだって、ミリー」
デリクはユウリの言葉を杜撰に置き換えると、ミリーの様子をうかがった。涙を落ち着けると、ヒックヒックしながら、ユウリの目を見つめる。
二人の近くなった顔に身じろぎながらも、抱えているままではそれほどの距離をとることが出来ない。
「本当だぁ、目がきれい!」
泣いていても人の会話は耳に入っているみたいだ。あっという間に気持ちを切り替えると、少し赤くなった目でこちらによる。
ミリーのその声に前を歩いていたジュリィが気になったかのようにハルの服を引っ張った。
「おうじさま!私も見るますの!」
「え、はい。」
遠くから見ていたハルもミリーにそういわれれば、近づかざるを得ない。ハルは服に絞められて苦しそうにしながらもこちらに近づく。
「お、おい。」
追い詰められた獲物の気持ちってこういうものなのだろうなと、頭の端で考えながら、ユウリは後退さる。
「近づいてくるな。」
両手がふさがれているから思うように体を止めることが出来なくて、その代わりにすこし頭を振って抵抗する。魔物と敵対している時だったならユウリよりも強いものなんて、ここ最近はあまりいないし、会ったとしても自分でどうにでもする。しかしこの状況はそうはいかなくて、身震いする。
ユウリの抵抗もむなしく、ジュリィは体を前に乗り出すと、両手をユウリの顔に当てるとグイっと引っ張った。
「うわぁ!こんな色は初めて見た!キラキラしててきれい!!」
「…でかい声出すな。」
「本当だね。きれいだ。」
無表情の顔をますます引きつらせるのと同時にハルも一緒に覗き込んできた。ユウリは逃げ腰になりながらも逃げられないでいると、近くに寄った仮面の下のハルの瞳が覗いた。
(シュウと同じ。)
ハルの瞳は珍しいことにハルと同じ紫でユウリは少し驚いた。こんな短期間に魔力の最大値ともいえる紫の瞳を持つものに遭遇するなんて、驚くなというほうが難しい。
「そんなに珍しい色か?」
ユウリはそんなのも気にしないで近づいてくるハルに聞く。魔力の重要性を考えていなかったユウリには子の瞳の色が正直なところあまり珍しいと思っていなかった。ブラウンよりも薄い色だけのだ。ユウリの言葉でハルは少しだけ好奇心を落ち着かせると、姿勢を元に戻す。そのついでに一歩下がってさらに距離をとると、ハルとジュリィは残念そうな顔をする。
「うん!反射して金色に見えるよ。多くの人はそんなに薄くないと思う」
デリクはそう突っ込む。
「それにしてもこんなに薄い人は見たことないわ!羨ましい‼。」
茶色は魔力があまりない証拠だ。基本的に貴族には紫が多い。
シュウは綺麗なヴァイオレットだ。澄んだ瞳にきれいな紫がとてつもなくきれいだったのをユウリは覚えていた。だからユウリは貴族かな、なんて考えるわけだが。
「でも薄いってことはほとんど魔力がないってことだよ、それでもいいの?」
羨ましいといったジュリィにデリクはそういうと、「でも綺麗なのにぃ」と言葉を漏らしながらも、魔力が少ないことに頭を悩ませているようだ。
ユウリはその言葉にしばらく首をひねった。
「…魔力」
さっきから言われているように、ユウリはたいして魔法を使うのに困ったことがない。平民の中でも魔力が少ない人たちは互いに協力して生活するのが一般的だがユウリにはそういう経験がないのだ。だって荷物持ちに空間魔法は使えているし、そのうえほかの生活魔法で困ったことはない。
もしかしたら多いのかもと思っていたけど、みんなの平均はユウリが持っているよりも本当はもっと多いのかもしれない。そうユウリは妙に納得する。
ユウリの瞳は紫から考えると黒の下の茶色の下の薄茶の下ということだ。
ダンジョンで黄金を見つけたら「金だ」って思うくせに魔力の量では位が低いらしい。その不思議に心の中で笑った。その傍らで、ハルがずっとこっちを見つめていたのには気づかなかった。
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