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何だか嫌な感じがして警戒態勢をとる。

あちらもこちらに気付くいたのか、目にもとまらぬ速さで近づいてきた。

それはのんきに考えられる時間がある程度の速さで「何か振りかぶったなー」と思ったらキラッと光る金属片のようなものが重くユウリの大剣に響いた。

洞窟なだけあって反響音が凄まじく、腹を満たしていただけなのに、いきなり攻撃してきたやつにユウリは顔をしかめた。ユウリは以前もいきなり襲い掛かってくるやつに会ったことがあった。
だからいきなりの戦闘に対応できたものの、ユウリが素人だったら、その重さはたまったものじゃない。

何だかムカついて舌打ちをした。

相手はフードをかぶっていてよく見えないし、ってか、仮面もかぶっている気がするし、怪しさが尋常ではない。
手にしているのはまるで死神が持つような大きな鎌で、少しでもタイミングがずれていたなら腕一本くらいは飛んでいたかもしれない。

「———いきなりなんっ!なんだよ」

ユウリは咄嗟に大剣を裏返し、鈍器ともいえるような使い方で反撃に出た。
相手の鎌を大きく殴り、姿勢を低くして大きく一歩踏み出す。その一歩で相手の背後に回ると相手をたたき切るわけにはいかないから、ひとまず足蹴りを入れた。

(くそが…めんどくさい。なんでこんなあぶねーのがこんなところにいる?)

相手の体制が整う前に地面をけって反撃する。ユウリはそんなに体が大きいほうではないから、大剣を振り回すのに体を使う。思いっきり上半身をひねって相手の動きを封じにかかる。仮面野郎は叩き潰されるとでも思ったのか受けるには少し頼りない鎌で重圧を受けた。

「お前は誰だ⁉なぜいきなり襲い掛かってきた?」

ユウリは相手を下にして叫んだ。

「———っ‼おまえがクピディダスの悪魔か?」

「ッは?」

仮面野郎はそういうと足でユウリの腹をけって、距離をとる。

「何をしているのかわかっているのか?人をさらうのは大罪だぞ、お前には罪状がかかっている。」


(は?どういう意味だ?攫った?………………いや、さらってねぇし。攫われた側だし…。)

ますます意味の分からない返答に首をかしげる。

相手はユウリの話を聞くつもりもなさそうで、目の前にいる仮面野郎は俺を誰かと勘違いしているようだ。そう結論づける。仮面野郎は思ったよりも声が若かった。もしかしたらまだ若い分別のできない冒険者か何かだろうか。

鎌がまたふりかかってきて、最初と同じように受け止める。圧がユウリの腕にかかって振動が伝わってくる。まだ始まったばかりの打ち合いに、ユウリは付き合うのも、面倒くさいと思考を働かせた。

そのとき仮面野郎の胸元で何かが光った。シャラシャラと音が聞こえて、思わず視線をそちらに向ける。軽い金属の音だった。淡い緑色の金属片が胸元から飛び出てきた。

勢いよく飛び出たそれに思わず視線が奪われた。

そこには魔法語で何かが刻まれていて、丁寧な文字が気になって目を凝らしてみたが、さすがに戦闘中にじっくり見る余裕はなくて、耳に大きな衝撃音が響くと同時に視線を元に戻した。
それの中央にはどこかで見たような見覚えのあるマークが刻まれていた。

———どこかで目にした紋章、でもどこで見たのだったか。

それが懐かしい感じがした。仮面野郎の持つこの金属片も特別なものなのだろう。
魔法語で文字が刻まれるときその文字は通常のものよりも特別な意味を持つ。それは魔法という可能性に期待が込められた故の風習のようなもので、ユウリも銀のペンダントを胸にしまっていた。

ユウリは思い出しそうで、思い出すことのできないもやもやと、やっぱり武力のぶつけ合いに飽きてきた。

だから最後に思いっきり剣を振った。この程度の重さはユウリが吹っ飛ばすのにそれほど力はいらない。

「おまえ、さっきからいきなり何?……だれだよ⁉」


普段こんなに大きい声出さないから最後のとこで声が少し変に上がる。
仮面野郎は大きく吹っ飛ぶとその衝撃で砂ぼこりが舞い上がり視界が悪くなる。
そしてふらふらとその陰から姿を現すとユウリのその言葉に何を思ったのか、ゆっくりと行動を止めた。
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