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0.序章 始まりは。

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何度か見た景色だと思った。目を瞑っているけれど、外は明るいことがわかる。オレンジ色だ。きっと夕焼け色に空が染まっているのだとユウリは思った。耳を澄ませると誰かが近くですすり泣く声が聞こえて、頭の周りは暖かいけれど、体はなんだかだるい。
なんでこんなに体が重いんだ。いつも通りの悪態を心の中でついた。
眩しい夕焼け以上にその音が気になって重い瞼を開ける。

———親友がいた。

いつもの一緒に悪だくみするときの意地の悪い顔とは違って、大泣きの顔が目の前にあった。俺は長い間一緒に過ごしてきたけれど、こんな顔は初めて見たものだったから、なんだか茶化したくなって周りを確認しようとした。

でもどういうわけか、相変わらず体は重いし、あいつは俺の頭を腕に抱えて涙を流しているようで、頭は固定されていた。
どうりで頭のあたりが温かいわけだ。普段はけんかっぱやくて、他人には猫かぶってすまし顔でいるくせにどうしてまたこんなにも公の場でぐしょぐしょに泣いているのか。重い瞼の隙間からその顔をジーっとみてると何かを話そうと口をそっと動かしたのが見えた。

「———なんでまた……………。」

あいつは、シュウはそうつぶやくとますますユウリを強く抱きしめた。声が小さすぎてよく聞こえない。
「また」ってどういうことなのかを聞きたいけれどうまく体が動かせない。瞼が動くのだから口くらい動いてもいいものなのにと頭は冷静だった。

(俺は何しているんだろう?)

シュウは涙のせいか、それともほかに原因があるのか呼吸も荒くなってきていて、震える指先がユウリの頬をなでる。
「お願い、もう置いていくな。—————一人はいやだ。なんで全部言う前にそうやって……。」

ああ。おいていかない。どうしてそんなことを言う?泣くなよ、
一人はさみしいって俺が一番知っている。

いつもそばで見守ってくれたのは、あいつだったしこの先ずっと一緒にいると思っていた。でもこの体が動かないから、

(あーあ、こんなタイミングであいつへ言いたいことを思いついてしまうなんて、なんてタイミングが悪いんだ)

もううまく頭が働かない。
体は一気に冷えていって、思うように動かない。ぽたぽたと落ちてくる涙をぬぐってあげたいのに、肝心の手を挙げることもままならない。

目の前が暗くなった。
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