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リアン①

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「ちゃんと説明ぐらいしなさいよね! バカ王子!」
 手荒く馬車に突然押し込められた私は腰を擦りながら呟いた。

 馬車は狂ったように御者が鞭を当てているため、普段の倍のスピードで城下町を駆け抜けていく。

「どこに行くの?」
 大声で御者台に叫んでみたが返事はない。
「うーん。口止めされてるのかしら」
 喉が枯れるだけなので、ムダな努力はやめておく。

 別に外を見れば分かることだし。

 シャッ、とカーテンをめくる。
 ガタガタと揺れる車窓の景色はどんどん茶色が増していくようだった。

「ありゃ、本当に国境に向かっているじゃない……」
 道標からブルズという国境の町の名前が読み取れた。


 我が国エルンストと隣国バナンの国境は殆んど人家もない荒れ地が広がっている。

 荒れ地の隅にポツンと集落が固まっている。
 それが国境の町ブルズ。

 町の真ん中で、エルンスト領とバナン領とに別れている不思議な町だ。

「ブルズかぁ。こりゃ、本当に国外追放じゃないの……」

 私は肩を震わせた。


 ……。
 ん?

 泣いてなんかいないわよ?


 別にこの国になんかなんの未練もないし。

「やったぁ! 平民落ちしてこれでやっと念願のお気楽ライフじゃないの!」
 私は嬉しさのあまり、両手を天に突き上げて叫んだ。


 御者が何事かとのぞきこんできたけどかまうもんか。

「これで自由だわっ!」
 鬱陶しいドレスやコルセット、貴族のナンチャラを説教してくる小うるさい人達ともこれでサヨウナラ。

 うん。
 あの王子もたまには良いことしてくれるじゃないの。


    御者は可哀想な動物を見るような目で私を見ると黙って馬の尻に鞭を当てた。


    馬車のスピードが一段と上がる。
    国境の町、ブルズまであと少し──。



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