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神を殺す武器の巻

第245話 地元デートです

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 ママが冷蔵庫の食材好きに使っていいわよって言ってくれたから、私としては精一杯のお弁当を作ろう!
 あ、鶏モモ肉発見。唐揚げにしちゃおうかな。唐揚げ嫌いな男子はいないよね……多分。あと玉子焼きは当たり前として、ご飯はお握りにしたほうがお弁当箱を二人分のおかずで埋められるからー……。

 鶏肉は適当な大きさに切って、チューブのニンニクと生姜と、醤油と蜂蜜を一緒に入れたビニール袋に放り込んでもみもみ。そして放置。前に一度作ったらかれんちゃんに「これは唐揚げじゃなくて竜田揚げ」って言われたけど、うちは唐揚げも竜田揚げも片栗粉で作るからどっちも「唐揚げ」って呼んでるのだ。
 ご飯は早炊きモードで2合炊き始めて、炊くときに出汁パックとお塩をちょっと入れておく。好きなんだよね、出汁炊きごはん。鮭フレークがあるから鮭お握りでも良かったんだけど。

 玉子焼きはママが作るのが美味しすぎて、あれの作り方も一応知ってるんだけど前の晩から仕込まなきゃ作れないものなので却下。
 卵溶いて、白だしとお砂糖ちょっと入れて、だし巻き風の厚焼き卵を作る。絶対「え、おまえだし巻き玉子なんか作れんの?」って蓮に言われる未来が予想できてるんだけど、うちには卵がくっつかない最強の玉子焼き用フライパンと、それとセットになってるフライパン幅の最強フライ返しがあるんだよね!
 ははははは! これを使えば私程度の料理の腕でも、綺麗な玉子焼きが作れるのだよ!!

 というわけでちゃちゃっとひよこ色の玉子焼きを作り、お弁当箱を前にして悩む。
 野菜がない……ここはバランスのために何か緑色のものを入れないといけないな。ほうれん草のソテーとか……あー、ほうれん草なかった! 野菜室に入ってる葉物野菜はキャベツとレタスと小松菜か。
 んー、レタスは唐揚げの下に敷くとして、しめじもあるから小松菜としめじを煮浸しにしよう。地味っぽいけど仕方なし! お弁当を作るのは普通の料理を作る3倍は難しいと思う!

 彩りにプチトマトとか入ったら綺麗なんだけど、冬だし、我が家プチトマトにこだわる人がいないから買い置きがないね。
 まあいいか、蓮は私が料理できることは一応知ってるんだけど、あんまり期待はしてないみたいだから求められるハードルは低いんだよね。

 小松菜としめじでちょこっと煮浸し作って、アルミカップに入れる。これ、もしかして蓮のフロストスフィアとか使えばあっという間に冷めるかな? いや、凍るか。

 馬鹿なことをいろいろ考えつつ揚げ物用の鍋に油入れて加熱して、ご飯があと10分で炊き上がるタイミングでお肉をザルに開けて、片栗粉を付けて唐揚げの準備。二度揚げして中はジューシー外はカリッといい色になるように揚げる。
 ちょうど唐揚げが揚がったときに炊飯器からメロディが流れた。私天才かな!

 熱々のご飯から出汁パックを取ってしゃもじでかき混ぜ、ラップを用意してミトン使って三角に握る。熱いの嫌だからミトン使うよ。
 ご飯を全部お握りにしたところで、おかずをお弁当箱に詰めて割り箸を2膳一緒に包み、ちょっと冷めたお握りの形を整えてこれは別の容れ物にきちっと並べる。

 1時間以内にやってやったぜ! でも私これ以上のお弁当は本当に作れないんだけどね!

「お弁当できたよー! ドッグラン決まった?」
「おお、マジ? 柚香は凄いよなー。俺目玉焼きくらいしか作れない。ドッグランは、まあよさげな場所に登録なしで入れるところがあった。カフェ併設だから寒かったらそっち入ればいいし」
「よし、お弁当はアイテムバッグに入れて……と」

 お弁当持ったまま普通に走ったら寄るからね。こういう時にアイテムバッグって本当に便利だなあと思うよ。多分他の人と「便利」と思ってる点が違うけど。
 お弁当以外にヤマトのお水用の器とおやつを持って、私は蓮にヤマトのリードを渡した。さて、まずは江ノ島へレッツゴー!

 江ノ島はなんだかんだ近いから、走っても30分くらいなんだよね。体力が付いて走るのにも慣れた蓮はいいペースをキープしながら、ヤマトと楽しそうに走っていた。私もそれに並んで走る。走りながらちょっとしゃべるくらいの余裕もある。

 江ノ島に着いて、まずは紫いもソフトクリーム! 走ってきたからちょうどいいね。相変わらず美味しーい!
 その後は観光客で混んでる細い道を上がって、たこせんを買いに行く。

「そういえばヤマトってたこせん上げても平気なのか?」
「えー、どうだろ。そもそも犬じゃないしねえ」

 並んで買った焼きたてのたこせんを、パキッと割ってヤマトにあげてみる。うん、躊躇なく食べるね。ヤマトが「もっともっと」ってねだるので、結局私と蓮のたこせんはヤマトのお腹に1/3位入ってしまった。

「はっ! タコが平気って事はさ、もしダンジョンでクラーケンとかが出ても――」
「言うな、それ以上言うな。なんでも食おうとするんじゃないよ、おまえは」

 くだらない話して笑いつつパリパリのタコせんべいを食べる。凄く地元デートだけど楽しいな。蓮と一緒だったら多分私はどこでも楽しいんだろうと思うけどね。
 ――ただし、蓮の場合は私が一緒だからってどこでも楽しいとは限らないよね。昨日の遊園地とか見てる限り。

 ドッグランでは人間の飲食が禁止だから、途中の公園のベンチで早めだけどお弁当を食べることにした。というか、さすがに寒いな! お弁当はアイテムバッグの中だから、まだ温かいだろうけど。

「なんか温かい飲み物買ってくる。お茶でいいか?」
「うん、ありがとー」

 蓮が近くの自販機に向かったとき、私のスマホが鳴った。ロック画面を見れば、寧々ちゃんからのLIMEメッセージが入ってる。

『やっと修行終わったよー! これからライトさんが車で送ってくれるって言うから、柚香ちゃんの家に行くね! きっとびっくりするよ!』

 予定通り終わったんだ! よかったー。ずっと連絡なかったから心配したよ、ということをこっちも送ると、すぐに返事が返ってくる。

『心配掛けてごめんねー。新宿ダンジョン、電波入らなくてメッセージ送れなかったの』

 寧々ちゃんのそのメッセージを見て、私は思わず固まった。
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