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神を殺す武器の巻
第230話 犠牲者は誰
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「い、五十嵐先輩、クラフト的に、特定の名前の武器まで狙って作れるものなんですか!?」
「聞いたことないよ!」
慌てた私の問いかけに即答える五十嵐先輩。そうですよね!? 金沢さんだって作った後鑑定しないと何を自分が作ったのかわからなかったんだし。
「武器クラフトって金沢くん以外に誰かしら」
「金沢さんで済んでたから他に知り合いいないですね」
私と五十嵐先輩のやりとりを聞いてたはずなのに、変わらない様子でママと颯姫さんは話し続けている。
「確実なのは『この人に縁がある武器を作ったら絶対天之尾羽張が出ます』って人を捕まえる方よね。彩花ちゃんで草薙剣が出たんだし」
「それの方が難易度高いんじゃないですか? そもそも天之尾羽張が出る人ってどういう人ですか」
「前世が伊弉諾尊か、迦具土神じゃない?」
「ないない。ボクは天孫の系譜だけどほとんど人間だから普通に転生してたけど、真性の神様は普通人間に生まれ変わってこないでしょ」
彩花ちゃんまでが加わって、3人が同時に腕を組んでうーんと唸った。
私は……あまりに話が常軌を逸しているので口を開けてポカンとしていた。
「こういうときは集合知に頼る。ゆ~かちゃん、ちょっといいかな」
一方、タイムさんはスマホを操作して何事かを書き込んでいた。私が画面を覗き込むと……うわ、これって私たちのスレ!? 初めて見た!!
「今回続いたトラブルの対処法として特定の武器が必要になったから、狙い撃ちで特定の武器をクラフトできる方法があるかをスレ民に相談するんだ。ゆ~かちゃんの名前で書き込めば反響が大きいから、他のスレにも派生してかなり多くの人の知恵を集められると思う」
書き込み済みの文章を真顔で私に見せてくるタイムさん。「名無しの冒険者」って書いてあるところはまだ「ゆ~か」になってない。
「それだー! 絶対効果あるわよ! 何だったら私と颯姫さんも『今目の前でゆ~かが書いた』って証言するし」
「待って! 柚香ちゃんが書いて投稿するところを撮影してアップしましょう。それが一番の証拠になりますよ」
ママに聖弥くんまで口を突っ込んできて一気に騒がし……場が盛り上がったね。
確かに、ああいうところって本人降臨すると喜ぶかも知れないし、盛り上がるのは間違いないよね。
撫子のせいで2回続けて配信がブチギレになっちゃったから、視聴者さんやスレ民の人たちには心配を掛けてることは間違いない。
……やるか。書き込みしつつ、動画にしてアップ。
「えーと、これ諸事情あって私のスマホじゃないんですけど、これからY quartetのファンスレに書き込みをしようと思います」
私がスマホを操作しているところを、ママが私のスマホで撮影した。スマホを動かして、書き込み中の画面まで映してる。確かにこれなら確実に私ってわかるね。
「諏訪ダンジョンと今回の横須賀ダンジョン、配信には映らない存在によって邪魔が入りました。私はそのせいでマナ溜まりに落とされたんだけど、ヤマトが助けてくれたおかげか何の影響もありません」
喋りながら、書き込み用の文章を作っていく。元のタイムさんが作ってくれた文章だとちょっと硬いから、いつも私がしゃべってる感じに修正だね。
「結論として、私がダンジョン行かなきゃいいだろうとも言われたんだけど、毎回邪魔されたり危ない目に遭わされたままでいるの腹が立つので、いい加減返り討ちにしたいんです! でも、どうも相手は神霊の類いらしくて普通の武器が一切効かないので、神様を殺した逸話のある武器で対抗したい。
そこで問題になってるのが、『クラフトで特定の武器を狙い撃ちで作れるのか』ってことなんですけど、ご存じの方がいたら情報ください! できるのかできないのかとか、できるとしたらどのくらいの能力が必要なのかとか。――ゆ~かで書き込みしますね。ぽちっとな!」
私が書き込みを終えるとママが動画をゆ~かチャンネルにアップした。そのURLをスレに貼って、「本当に私が書き込みしたよ」という証拠を残してとりあえずのやることはおしまい。
「おお、すっごい勢いでスレが」
スレを開いて見ていた颯姫さんが、感心したように呟く。
私は何か疲れてしまって、蓮の隣に行って彼に寄りかかった。
「お疲れ。何もできなくてごめんな」
「蓮にはそういうことは求めてないよ。こういうことは腹黒四天王に任せておこう?」
「すっかり聖弥が馴染んでて、ちょっと怖い」
「生き生きとしてるよね……」
ママがさっき淹れてくれた紅茶はすっかり冷め切っていたけど、それを飲んで一息つく。
颯姫さんが実況してくれてるんだけど、動画から来たって人がいたりして、既にスレがいつもの状態より人数膨らんでるみたい。
そしてその人たちは、クラフトスレに訊いてくるとか、知り合いのクラフトマンに訊いてみるとか、人海戦術で情報を集め始めた。
「ユズ、そういえば、アカシックレコードに接続してるんでしょ? こういう情報探れないの?」
ママに尋ねられたけど私はゆっくり首を振る。
薄々わかる。あれは負荷が酷いから、私が今日何かできる分はおしまい。
もし無理に情報探ろうとしたら、脳が負荷に負けて大変なことになる。
「私の力はもうないわね状態だよ。あれ、ちょっとのことを調べるのも凄い負荷が掛かるから、これ以上やったら確実に脳にダメージが来る」
「便利なことには代償があるのねえ……だったら十分休んだ後で明日って事もできるけど、もしかするとスレの方が早いかもね」
「……私もそんな気がしてきましたよ。ほとんど都市伝説の類いですけど、過去に一例だけ狙った武器を作ったクラフトマンがいたらしいです。当時のLVは58で、DEXは200超えてたとか」
「えっ、もうそんな情報が!?」
「早え」
蓮と私が驚いていると、颯姫さんは眉をしかめた。
「都市伝説レベルなのはね、作った武器が『聖槍ロンギヌス』で、その後そのクラフトマンは行方不明になってるからなの。ロンギヌスの方は現存してるんだけど、クラフトマンが本当に狙って作ったのか、それとも偶然できたロンギヌスを『狙って作った』って言ってるのかわからない」
「ああ、その話ならこっちにもう少し詳しい考察を見つけたよ」
タイムさんが別のサイトを私たちに示してくれた。腹黒四天王有能ー。
「ものが『ロンギヌス』だから余計な尾びれが付いて都市伝説チックになってるけど、これは狙って作った物に間違いないって。根拠は、伝説金属でのクラフトをして縁のある武器を作ることはあるけども、そういう時は武器が持ち主に紐付けられていて補正が本人以外十分には付かないんだよね。
ところが、このロンギヌスは誰が持ってもオリハルコンで付く補正がきっちり付くんだって」
おおー、と全員の感心する声が上がった。確かに縁のある武器って本人にしか補正がMAXで付かないよねえ。それは私たちも体感したことある問題だ。
「だから、他の人の手を借りず、このクラフトマンひとりで作ったということで間違いないと書かれてるし、僕もそう思うよ。結論としては、クラフトマンとしては相当の高LVとステータスを要求されるけど、可能だってこと」
「……だとしたら、金沢くんって無理じゃないの?」
ママがぼそりと呟いた言葉に颯姫さんが青ざめる。
何のことかわからない私たちが首を傾げていたら、ママが盛大なため息をついてテーブルに突っ伏した。
「金沢くん、LV30よ。ブートキャンプ無しのLV30よ。どこまでLVを上げたら素のDEXが200を超えるの? 颯姫さんって凄い高LVよね、そこまで上がるのに何年掛かった?」
「……約10年です」
ひいい、LV80超えになるのに10年掛かるんだ! ていうか、多分10年でって早い方なんだよね。
え? じゃあ「ブートキャンプしてるクラフト」を育成した方が早いって事?
それって、冒険者科の中から候補を探さないと駄目って事じゃない!?
「聞いたことないよ!」
慌てた私の問いかけに即答える五十嵐先輩。そうですよね!? 金沢さんだって作った後鑑定しないと何を自分が作ったのかわからなかったんだし。
「武器クラフトって金沢くん以外に誰かしら」
「金沢さんで済んでたから他に知り合いいないですね」
私と五十嵐先輩のやりとりを聞いてたはずなのに、変わらない様子でママと颯姫さんは話し続けている。
「確実なのは『この人に縁がある武器を作ったら絶対天之尾羽張が出ます』って人を捕まえる方よね。彩花ちゃんで草薙剣が出たんだし」
「それの方が難易度高いんじゃないですか? そもそも天之尾羽張が出る人ってどういう人ですか」
「前世が伊弉諾尊か、迦具土神じゃない?」
「ないない。ボクは天孫の系譜だけどほとんど人間だから普通に転生してたけど、真性の神様は普通人間に生まれ変わってこないでしょ」
彩花ちゃんまでが加わって、3人が同時に腕を組んでうーんと唸った。
私は……あまりに話が常軌を逸しているので口を開けてポカンとしていた。
「こういうときは集合知に頼る。ゆ~かちゃん、ちょっといいかな」
一方、タイムさんはスマホを操作して何事かを書き込んでいた。私が画面を覗き込むと……うわ、これって私たちのスレ!? 初めて見た!!
「今回続いたトラブルの対処法として特定の武器が必要になったから、狙い撃ちで特定の武器をクラフトできる方法があるかをスレ民に相談するんだ。ゆ~かちゃんの名前で書き込めば反響が大きいから、他のスレにも派生してかなり多くの人の知恵を集められると思う」
書き込み済みの文章を真顔で私に見せてくるタイムさん。「名無しの冒険者」って書いてあるところはまだ「ゆ~か」になってない。
「それだー! 絶対効果あるわよ! 何だったら私と颯姫さんも『今目の前でゆ~かが書いた』って証言するし」
「待って! 柚香ちゃんが書いて投稿するところを撮影してアップしましょう。それが一番の証拠になりますよ」
ママに聖弥くんまで口を突っ込んできて一気に騒がし……場が盛り上がったね。
確かに、ああいうところって本人降臨すると喜ぶかも知れないし、盛り上がるのは間違いないよね。
撫子のせいで2回続けて配信がブチギレになっちゃったから、視聴者さんやスレ民の人たちには心配を掛けてることは間違いない。
……やるか。書き込みしつつ、動画にしてアップ。
「えーと、これ諸事情あって私のスマホじゃないんですけど、これからY quartetのファンスレに書き込みをしようと思います」
私がスマホを操作しているところを、ママが私のスマホで撮影した。スマホを動かして、書き込み中の画面まで映してる。確かにこれなら確実に私ってわかるね。
「諏訪ダンジョンと今回の横須賀ダンジョン、配信には映らない存在によって邪魔が入りました。私はそのせいでマナ溜まりに落とされたんだけど、ヤマトが助けてくれたおかげか何の影響もありません」
喋りながら、書き込み用の文章を作っていく。元のタイムさんが作ってくれた文章だとちょっと硬いから、いつも私がしゃべってる感じに修正だね。
「結論として、私がダンジョン行かなきゃいいだろうとも言われたんだけど、毎回邪魔されたり危ない目に遭わされたままでいるの腹が立つので、いい加減返り討ちにしたいんです! でも、どうも相手は神霊の類いらしくて普通の武器が一切効かないので、神様を殺した逸話のある武器で対抗したい。
そこで問題になってるのが、『クラフトで特定の武器を狙い撃ちで作れるのか』ってことなんですけど、ご存じの方がいたら情報ください! できるのかできないのかとか、できるとしたらどのくらいの能力が必要なのかとか。――ゆ~かで書き込みしますね。ぽちっとな!」
私が書き込みを終えるとママが動画をゆ~かチャンネルにアップした。そのURLをスレに貼って、「本当に私が書き込みしたよ」という証拠を残してとりあえずのやることはおしまい。
「おお、すっごい勢いでスレが」
スレを開いて見ていた颯姫さんが、感心したように呟く。
私は何か疲れてしまって、蓮の隣に行って彼に寄りかかった。
「お疲れ。何もできなくてごめんな」
「蓮にはそういうことは求めてないよ。こういうことは腹黒四天王に任せておこう?」
「すっかり聖弥が馴染んでて、ちょっと怖い」
「生き生きとしてるよね……」
ママがさっき淹れてくれた紅茶はすっかり冷め切っていたけど、それを飲んで一息つく。
颯姫さんが実況してくれてるんだけど、動画から来たって人がいたりして、既にスレがいつもの状態より人数膨らんでるみたい。
そしてその人たちは、クラフトスレに訊いてくるとか、知り合いのクラフトマンに訊いてみるとか、人海戦術で情報を集め始めた。
「ユズ、そういえば、アカシックレコードに接続してるんでしょ? こういう情報探れないの?」
ママに尋ねられたけど私はゆっくり首を振る。
薄々わかる。あれは負荷が酷いから、私が今日何かできる分はおしまい。
もし無理に情報探ろうとしたら、脳が負荷に負けて大変なことになる。
「私の力はもうないわね状態だよ。あれ、ちょっとのことを調べるのも凄い負荷が掛かるから、これ以上やったら確実に脳にダメージが来る」
「便利なことには代償があるのねえ……だったら十分休んだ後で明日って事もできるけど、もしかするとスレの方が早いかもね」
「……私もそんな気がしてきましたよ。ほとんど都市伝説の類いですけど、過去に一例だけ狙った武器を作ったクラフトマンがいたらしいです。当時のLVは58で、DEXは200超えてたとか」
「えっ、もうそんな情報が!?」
「早え」
蓮と私が驚いていると、颯姫さんは眉をしかめた。
「都市伝説レベルなのはね、作った武器が『聖槍ロンギヌス』で、その後そのクラフトマンは行方不明になってるからなの。ロンギヌスの方は現存してるんだけど、クラフトマンが本当に狙って作ったのか、それとも偶然できたロンギヌスを『狙って作った』って言ってるのかわからない」
「ああ、その話ならこっちにもう少し詳しい考察を見つけたよ」
タイムさんが別のサイトを私たちに示してくれた。腹黒四天王有能ー。
「ものが『ロンギヌス』だから余計な尾びれが付いて都市伝説チックになってるけど、これは狙って作った物に間違いないって。根拠は、伝説金属でのクラフトをして縁のある武器を作ることはあるけども、そういう時は武器が持ち主に紐付けられていて補正が本人以外十分には付かないんだよね。
ところが、このロンギヌスは誰が持ってもオリハルコンで付く補正がきっちり付くんだって」
おおー、と全員の感心する声が上がった。確かに縁のある武器って本人にしか補正がMAXで付かないよねえ。それは私たちも体感したことある問題だ。
「だから、他の人の手を借りず、このクラフトマンひとりで作ったということで間違いないと書かれてるし、僕もそう思うよ。結論としては、クラフトマンとしては相当の高LVとステータスを要求されるけど、可能だってこと」
「……だとしたら、金沢くんって無理じゃないの?」
ママがぼそりと呟いた言葉に颯姫さんが青ざめる。
何のことかわからない私たちが首を傾げていたら、ママが盛大なため息をついてテーブルに突っ伏した。
「金沢くん、LV30よ。ブートキャンプ無しのLV30よ。どこまでLVを上げたら素のDEXが200を超えるの? 颯姫さんって凄い高LVよね、そこまで上がるのに何年掛かった?」
「……約10年です」
ひいい、LV80超えになるのに10年掛かるんだ! ていうか、多分10年でって早い方なんだよね。
え? じゃあ「ブートキャンプしてるクラフト」を育成した方が早いって事?
それって、冒険者科の中から候補を探さないと駄目って事じゃない!?
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