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ダンジョンの謎とヤマトの謎の巻
第215話 ダンジョンに行く前に
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ママから「滝山さんと安西さんのグループ作っておいて」と言われ、「2限の後の休み時間に行くので、滝山先輩に教室にいてくださいと伝えてください」と五十嵐先輩に伝言を頼んでおいた。
それで、休み時間に3年生の教室に行ったら――。
「柚香ちゃーん! 私もダンジョンに連れてってー!」
五十嵐先輩に捕獲された……。なんでも前回の配信を見て、あいちゃんがLV7もあがったというのを聞いて羨ましいそうで。
「前回の配信見たんですよね? 画面に映ってなかったけど、こっちに敵意を向けてくる、影のない謎の女の子が出るかもしれないんですけど」
「それは嫌だけど、上級のモンスよりは何もできないんじゃないの? この前も結局何かされた?」
「ヤマトに威嚇されて何もできませんでしたね」
「じゃあ行く! LV上げたいもん。1年生と2年生が一気にクラフトマンまで育っちゃって、3年のアドバンテージがLVしかなくなってるんだよー。必死になるよー」
ああ、そういう事情もあるんだ……。それは確かに必死になるかも。
「わかりました。ダンジョンエンジニアとしても五十嵐先輩の方が安心だから、次に行く日が決まったら声を掛けますね」
「やっほう! ありがとー!」
五十嵐先輩の件を片付けて、滝山先輩とLIMEで繋がってグループを結成させてもらう。私からママを誘い、滝山先輩から安西先輩を誘ってもらってチームMV裏方を作ることになった。
「ママが絵コンテ一部変更したいって言ってました。昨日あれから蓮の歌が凄い変わったから、イメージとか見せたい表情とか変化したみたいで」
「柚香ちゃんのお母さんは何者? って感じだよね」
「推しのMVを山ほど見てる研究熱心なオタクです……」
「そ、それなら仕方ない」
ある意味自分も「好きなミュージカル見まくった研究熱心なオタク」である滝山先輩は、物凄くあっさりと納得した。
「今のところ、土曜日にレコーディングして、天気が良ければそのまま撮影もしちゃおうって思ってるみたいですけど大丈夫ですか?」
「私も安西さんも予備校は英語と国語しか授業がないから、土曜日だったら大丈夫だよ」
ほええ、芸大の受験科目ってそんなに少ないんだ。話を聞いたら面接とか作文とか、学科以外の物もあるみたいだけど。
昨日録画しておいた歌ってる蓮の姿を見せたら、滝山先輩は食い入るように画面を見ていた。
「え? 全然私たちが聞いたときと違う……。表情もいいし、確かにこれは絵コンテ変更したくなるわ」
うん、ママは蓮の切なげな顔のアップをもっと入れたいって言ってたんだよね。ベタだけど、モノクロの写真を混ぜたりしながら。
その辺は滝山先輩と安西先輩とママで相談してくれる様にお願いして、私は3年生の教室を後にした。
教室に帰ったところでちょうど鉢合わせた彩花ちゃんを捕まえる。彩花ちゃんは一瞬ビクッとしてたけど、私から逃げようとはしなかった。
「前にも言ったけどさ、次のダン配、一緒に行かない?」
「ダン配は……出たくないな」
ああ……やっぱりそうか。まあ仕方ないかなあ。
私がわかりやすく落ち込んでると、彩花ちゃんは私の頭を撫でた。
「ダン配には出ないけど、一緒に行くよ。ゆずっちたちの近くにいて、危なくなったら助ける。それじゃダメ?」
「えっ? 私は良いけど、彩花ちゃん大丈夫なの? 仮にも上級ダンジョンだよ」
「もー、江ノ島ダンジョン行ったときにボクが上級でも平気だっていうの見たでしょ? ヤマトが暴れてたらモンスのヘイトはそっちに集まるから、ボクはそんなに危なくないよ」
そっか、ダン配には出ないけど近くにいる……それなら安心かも。
あの女の子のことを知ってるらしい彩花ちゃんと、キーになるヤマトが一緒にいてくれれば。
「ありがとう、彩花ちゃん!」
「……ゆずっちが安心してダンジョン行ける様にしないとね。で、次はどこに行くの?」
「あ、まだそれは考えてないんだ。人数増えるとヘリが使えないから、車か電車で行ける範囲にしないとね」
ダンジョンの選定はパパとママに相談してみよう。
蓮と聖弥くんにも確認を取って、土曜日がMV制作、日曜がダン配という予定になった。行き先はまだ決まってないけど、予告だけはX‘sに出す。
そしてその日の晩、4人で夕飯を食べてるときにママのスマホが震えた。画面を確認したママは慌てて箸を置いてスマホを操作し始めた。普段は食事中にスマホ触るなって言うのに珍しい。
「日曜日のダンジョン、横須賀ダンジョンにしなさいよ。藤堂さんにダンジョンのこと相談してたんだけど、ライトニング・グロウが一緒に行ってくれるって」
「えええええええ!?」
ライトニング・グロウといえばスレ民の藤堂颯姫さんがいる、県内でもトップクラスの――ううん、多分トップの冒険者パーティーだ。
角材で戦うの見てみたいって思ってたんだよね!
「そんな……いいんですか?」
思わぬビッグネームが出てきて蓮は引け腰だ。でもママは気にするなと手を振って見せる。
「横須賀ダンジョンならあのパーティーのホームグラウンドだし、藤堂さんはこの前の配信も見てあんたたちのことを心配してるのよ。あのパーティーが一緒にいるなら安心でしょ?」
それはめちゃくちゃ安心だ……。藤堂さんは何回か会った事があるんだけど、スレ民っぽくない良識派というか、強い以外は普通の人に見えるしね。
おっと、スレ民に対してイメージが偏りすぎてるかな。そもそもママもスレ民なんだし、大多数の人は「普通の人」のはずなんだよね。
モブさんとか瑠璃さんがすっごい存在感あるだけでさ。
早速聖弥くんに連絡してみると、ライトニング・グロウが一緒に来てくれるって事でふたつ返事のOKが返ってきた。
五十嵐先輩は「どこでもいいよー」とのこと。まあ、そういうスタンスの人だよね。
そして彩花ちゃんは――。
『横須賀~? (;゚д゚)』
あれ……なんかめちゃくちゃ嫌がってるなあ?
それで、休み時間に3年生の教室に行ったら――。
「柚香ちゃーん! 私もダンジョンに連れてってー!」
五十嵐先輩に捕獲された……。なんでも前回の配信を見て、あいちゃんがLV7もあがったというのを聞いて羨ましいそうで。
「前回の配信見たんですよね? 画面に映ってなかったけど、こっちに敵意を向けてくる、影のない謎の女の子が出るかもしれないんですけど」
「それは嫌だけど、上級のモンスよりは何もできないんじゃないの? この前も結局何かされた?」
「ヤマトに威嚇されて何もできませんでしたね」
「じゃあ行く! LV上げたいもん。1年生と2年生が一気にクラフトマンまで育っちゃって、3年のアドバンテージがLVしかなくなってるんだよー。必死になるよー」
ああ、そういう事情もあるんだ……。それは確かに必死になるかも。
「わかりました。ダンジョンエンジニアとしても五十嵐先輩の方が安心だから、次に行く日が決まったら声を掛けますね」
「やっほう! ありがとー!」
五十嵐先輩の件を片付けて、滝山先輩とLIMEで繋がってグループを結成させてもらう。私からママを誘い、滝山先輩から安西先輩を誘ってもらってチームMV裏方を作ることになった。
「ママが絵コンテ一部変更したいって言ってました。昨日あれから蓮の歌が凄い変わったから、イメージとか見せたい表情とか変化したみたいで」
「柚香ちゃんのお母さんは何者? って感じだよね」
「推しのMVを山ほど見てる研究熱心なオタクです……」
「そ、それなら仕方ない」
ある意味自分も「好きなミュージカル見まくった研究熱心なオタク」である滝山先輩は、物凄くあっさりと納得した。
「今のところ、土曜日にレコーディングして、天気が良ければそのまま撮影もしちゃおうって思ってるみたいですけど大丈夫ですか?」
「私も安西さんも予備校は英語と国語しか授業がないから、土曜日だったら大丈夫だよ」
ほええ、芸大の受験科目ってそんなに少ないんだ。話を聞いたら面接とか作文とか、学科以外の物もあるみたいだけど。
昨日録画しておいた歌ってる蓮の姿を見せたら、滝山先輩は食い入るように画面を見ていた。
「え? 全然私たちが聞いたときと違う……。表情もいいし、確かにこれは絵コンテ変更したくなるわ」
うん、ママは蓮の切なげな顔のアップをもっと入れたいって言ってたんだよね。ベタだけど、モノクロの写真を混ぜたりしながら。
その辺は滝山先輩と安西先輩とママで相談してくれる様にお願いして、私は3年生の教室を後にした。
教室に帰ったところでちょうど鉢合わせた彩花ちゃんを捕まえる。彩花ちゃんは一瞬ビクッとしてたけど、私から逃げようとはしなかった。
「前にも言ったけどさ、次のダン配、一緒に行かない?」
「ダン配は……出たくないな」
ああ……やっぱりそうか。まあ仕方ないかなあ。
私がわかりやすく落ち込んでると、彩花ちゃんは私の頭を撫でた。
「ダン配には出ないけど、一緒に行くよ。ゆずっちたちの近くにいて、危なくなったら助ける。それじゃダメ?」
「えっ? 私は良いけど、彩花ちゃん大丈夫なの? 仮にも上級ダンジョンだよ」
「もー、江ノ島ダンジョン行ったときにボクが上級でも平気だっていうの見たでしょ? ヤマトが暴れてたらモンスのヘイトはそっちに集まるから、ボクはそんなに危なくないよ」
そっか、ダン配には出ないけど近くにいる……それなら安心かも。
あの女の子のことを知ってるらしい彩花ちゃんと、キーになるヤマトが一緒にいてくれれば。
「ありがとう、彩花ちゃん!」
「……ゆずっちが安心してダンジョン行ける様にしないとね。で、次はどこに行くの?」
「あ、まだそれは考えてないんだ。人数増えるとヘリが使えないから、車か電車で行ける範囲にしないとね」
ダンジョンの選定はパパとママに相談してみよう。
蓮と聖弥くんにも確認を取って、土曜日がMV制作、日曜がダン配という予定になった。行き先はまだ決まってないけど、予告だけはX‘sに出す。
そしてその日の晩、4人で夕飯を食べてるときにママのスマホが震えた。画面を確認したママは慌てて箸を置いてスマホを操作し始めた。普段は食事中にスマホ触るなって言うのに珍しい。
「日曜日のダンジョン、横須賀ダンジョンにしなさいよ。藤堂さんにダンジョンのこと相談してたんだけど、ライトニング・グロウが一緒に行ってくれるって」
「えええええええ!?」
ライトニング・グロウといえばスレ民の藤堂颯姫さんがいる、県内でもトップクラスの――ううん、多分トップの冒険者パーティーだ。
角材で戦うの見てみたいって思ってたんだよね!
「そんな……いいんですか?」
思わぬビッグネームが出てきて蓮は引け腰だ。でもママは気にするなと手を振って見せる。
「横須賀ダンジョンならあのパーティーのホームグラウンドだし、藤堂さんはこの前の配信も見てあんたたちのことを心配してるのよ。あのパーティーが一緒にいるなら安心でしょ?」
それはめちゃくちゃ安心だ……。藤堂さんは何回か会った事があるんだけど、スレ民っぽくない良識派というか、強い以外は普通の人に見えるしね。
おっと、スレ民に対してイメージが偏りすぎてるかな。そもそもママもスレ民なんだし、大多数の人は「普通の人」のはずなんだよね。
モブさんとか瑠璃さんがすっごい存在感あるだけでさ。
早速聖弥くんに連絡してみると、ライトニング・グロウが一緒に来てくれるって事でふたつ返事のOKが返ってきた。
五十嵐先輩は「どこでもいいよー」とのこと。まあ、そういうスタンスの人だよね。
そして彩花ちゃんは――。
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