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文化祭!ダンジョンダンジョンダンジョン!の巻
第171話 面倒な人たち
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文化祭の出し物は、結局「女装メイド&男装執事喫茶」で決定した。
飲食店は抽選になったんだけど、柴田さんが当たりくじを引いて「ッシャー! オラァー!」って叫んでたってもうひとりの文実委である倉橋くんが言ってた。
「柴田さん、そんなに叫ぶようなキャラじゃないって思ってたんだけど」
「やっぱりダンジョン潜ってると荒くなるよな」
ランバージャック稽古の後に並んでジュース飲みながら、柴田さんについての感想を倉橋くんと語ったりした。倉橋くんもあれは意外だったって。
「そうかなー? 倉橋くんはくじを当てても叫ばなさそう。普段から猿叫する以外は穏やかだし」
「叫ばないよ、そもそも俺も安永と同じで反対派だし」
倉永くんは真顔だけども、その反対派の蓮はその日のうちに寝返ってしまったんだよねえ。
「その安永くんですけどもね……奴は今女装乗り気なんだよ」
私がこそっと告げ口すると、倉橋くんは思いっきり仰け反った。
「裏切り者め……あんなに嫌がってたのになんで?」
「憧れてる俳優さんが今度舞台で女性役をやるんだけど、それが美しすぎて手のひらをくるんと」
スマホを出して例の舞台のキービジュアルを見せると倉橋くんはめちゃくちゃ唸った。
「えー……本当に男?」
「周囲も全部男」
こっちのツインテールもこっちの清純派美少女も男。なんならこの人今年35歳とか細かい情報を補足したら、倉橋くんは仰け反るのを通り越してひっくり返った。
「マジか……俳優って凄いなあ。安永って俳優に向かって本気だし、こんなの見たら仕方ないかな。安永が女装したらどうなるかはちょっと興味あるけど、中森の女装は見たくない……中森とか前田とか、なんでガタイのイイ奴らほど女装したがるのかな」
「永遠の謎だね。まあ、でも倉橋くんは女装似合いそう」
「えっ?」
「でも倉橋くんはあれだ、和服! 和服のメイドさんが似合いそう」
「……わかった、やる」
「えっ?」
あれ、何故かここでも手のひら返しが。
倉橋くんは撫で肩だから和服似合いそうなのは確かなんだけど。
そんなやりとりがあった翌日、学校に行ったら聖弥くんがどんよりしてた。
珍しいなあ。良くも悪しくも割と笑顔でいることが多いから、普通に落ち込んでるのは初めて見たかも。
でもそんな聖弥くんに話し掛けに行くと藪蛇になりそうだったから、聖弥くんの隣の席にいる蓮にこっそりLIMEで聞いてみることにした。
『聖弥くんどうしたの? 頭の上に暗雲載っけてて近付きがたいんだけど』
『あー。ステータスがSTR以外全部俺の方が高い事に気づいてへこんでる』
これは……ふたりでいるときに見せ合いっこかなんかして真実に気づいてしまったんだろうな。
いつかはこういう日が来ると思ってたよ。聖弥くん、うちのクラスの中では唯一一切の特訓をしないままでLV10になっちゃった人だし。
今はLVの高さで他の人と変わらないステータスを維持してるけど、成長率が低いんだよね。
それでも一般の人と比べたら全てに於いて高いパフォーマンスを発揮するし、本人自身が特訓はしないって選択をしたはずなんだけど。
どうしようかな……。
………………うん、放っておこう。装備の補正を入れたら一線級の能力であることに変わりはないんだしね。
『わかった、近付かないことにする』
『そうしとけ、こういうときの聖弥に捕まると愚痴が止まらなくてヤバい』
やっぱり……アホウドリ社長事件でもちょっと思ったけど、聖弥くんって爽やか王子様のイメージに反して、割と怨念が深いんだよね。触らぬ神に祟り無しだよ。
そして、その日のHRでは「和装メイドもあり?」と倉橋くんが言い出したことで、ちょっと男子がざわめいた。
「その身長だと女性物の着物は着られないんじゃない?」
衣装を作る側としてあいちゃんが「一応ね」と確認をしている。
「あー……うちのねーちゃん、コスプレイヤーでさ。昨日聞いたらすっごいノリノリで縫ってくれるって」
「た、確かに和服は直線縫いでできるから作れる人もいるけどさ……ノリノリだったんだ」
「わー、こんな身近にコスプレイヤーがいたなんて~」
ちょっと引きつってるあいちゃんに、棒読み気味の私。
コスプレね。うん、よくさせられたよ……ママに。ママ自身は今でもゴスペルのクリスマスライブとかでは、かなりいろんな意味でギリギリのコスプレをしてるね。
「あ、そしたら俺も衣装自前で持ってくる」
倉橋くんの和装がOKとなったことで、蓮が挙手してそんなことを言った。
更にざわめく男子たち。そりゃそうだよね! 反対派筆頭だったはずの蓮が手のひらくるんくるんだもん。
「一応衣装は一部は経費で買う予定だけど、どうして?」
「だって、ミニスカメイドだろ? 俺はミニスカは嫌だ。ロングスカートでクラシックなヴィクトリアンメイドで行く!」
柴田さんの質問にきっぱり答える蓮。今度は男子だけじゃなくてクラスの大半がざわめいた。
「俺はやるからには、本格的に本気でやる!」
「これは……すっごいの期待していいやつかもね」
体育祭の号泣ファントムが伝説化してるから、柴田さんまでもがごくりと喉を鳴らしたのであった。
飲食店は抽選になったんだけど、柴田さんが当たりくじを引いて「ッシャー! オラァー!」って叫んでたってもうひとりの文実委である倉橋くんが言ってた。
「柴田さん、そんなに叫ぶようなキャラじゃないって思ってたんだけど」
「やっぱりダンジョン潜ってると荒くなるよな」
ランバージャック稽古の後に並んでジュース飲みながら、柴田さんについての感想を倉橋くんと語ったりした。倉橋くんもあれは意外だったって。
「そうかなー? 倉橋くんはくじを当てても叫ばなさそう。普段から猿叫する以外は穏やかだし」
「叫ばないよ、そもそも俺も安永と同じで反対派だし」
倉永くんは真顔だけども、その反対派の蓮はその日のうちに寝返ってしまったんだよねえ。
「その安永くんですけどもね……奴は今女装乗り気なんだよ」
私がこそっと告げ口すると、倉橋くんは思いっきり仰け反った。
「裏切り者め……あんなに嫌がってたのになんで?」
「憧れてる俳優さんが今度舞台で女性役をやるんだけど、それが美しすぎて手のひらをくるんと」
スマホを出して例の舞台のキービジュアルを見せると倉橋くんはめちゃくちゃ唸った。
「えー……本当に男?」
「周囲も全部男」
こっちのツインテールもこっちの清純派美少女も男。なんならこの人今年35歳とか細かい情報を補足したら、倉橋くんは仰け反るのを通り越してひっくり返った。
「マジか……俳優って凄いなあ。安永って俳優に向かって本気だし、こんなの見たら仕方ないかな。安永が女装したらどうなるかはちょっと興味あるけど、中森の女装は見たくない……中森とか前田とか、なんでガタイのイイ奴らほど女装したがるのかな」
「永遠の謎だね。まあ、でも倉橋くんは女装似合いそう」
「えっ?」
「でも倉橋くんはあれだ、和服! 和服のメイドさんが似合いそう」
「……わかった、やる」
「えっ?」
あれ、何故かここでも手のひら返しが。
倉橋くんは撫で肩だから和服似合いそうなのは確かなんだけど。
そんなやりとりがあった翌日、学校に行ったら聖弥くんがどんよりしてた。
珍しいなあ。良くも悪しくも割と笑顔でいることが多いから、普通に落ち込んでるのは初めて見たかも。
でもそんな聖弥くんに話し掛けに行くと藪蛇になりそうだったから、聖弥くんの隣の席にいる蓮にこっそりLIMEで聞いてみることにした。
『聖弥くんどうしたの? 頭の上に暗雲載っけてて近付きがたいんだけど』
『あー。ステータスがSTR以外全部俺の方が高い事に気づいてへこんでる』
これは……ふたりでいるときに見せ合いっこかなんかして真実に気づいてしまったんだろうな。
いつかはこういう日が来ると思ってたよ。聖弥くん、うちのクラスの中では唯一一切の特訓をしないままでLV10になっちゃった人だし。
今はLVの高さで他の人と変わらないステータスを維持してるけど、成長率が低いんだよね。
それでも一般の人と比べたら全てに於いて高いパフォーマンスを発揮するし、本人自身が特訓はしないって選択をしたはずなんだけど。
どうしようかな……。
………………うん、放っておこう。装備の補正を入れたら一線級の能力であることに変わりはないんだしね。
『わかった、近付かないことにする』
『そうしとけ、こういうときの聖弥に捕まると愚痴が止まらなくてヤバい』
やっぱり……アホウドリ社長事件でもちょっと思ったけど、聖弥くんって爽やか王子様のイメージに反して、割と怨念が深いんだよね。触らぬ神に祟り無しだよ。
そして、その日のHRでは「和装メイドもあり?」と倉橋くんが言い出したことで、ちょっと男子がざわめいた。
「その身長だと女性物の着物は着られないんじゃない?」
衣装を作る側としてあいちゃんが「一応ね」と確認をしている。
「あー……うちのねーちゃん、コスプレイヤーでさ。昨日聞いたらすっごいノリノリで縫ってくれるって」
「た、確かに和服は直線縫いでできるから作れる人もいるけどさ……ノリノリだったんだ」
「わー、こんな身近にコスプレイヤーがいたなんて~」
ちょっと引きつってるあいちゃんに、棒読み気味の私。
コスプレね。うん、よくさせられたよ……ママに。ママ自身は今でもゴスペルのクリスマスライブとかでは、かなりいろんな意味でギリギリのコスプレをしてるね。
「あ、そしたら俺も衣装自前で持ってくる」
倉橋くんの和装がOKとなったことで、蓮が挙手してそんなことを言った。
更にざわめく男子たち。そりゃそうだよね! 反対派筆頭だったはずの蓮が手のひらくるんくるんだもん。
「一応衣装は一部は経費で買う予定だけど、どうして?」
「だって、ミニスカメイドだろ? 俺はミニスカは嫌だ。ロングスカートでクラシックなヴィクトリアンメイドで行く!」
柴田さんの質問にきっぱり答える蓮。今度は男子だけじゃなくてクラスの大半がざわめいた。
「俺はやるからには、本格的に本気でやる!」
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