【柴犬?】の無双から始まる、冒険者科女子高生の日常はかなりおかしいらしい。

加藤伊織

文字の大きさ
上 下
182 / 360
文化祭!ダンジョンダンジョンダンジョン!の巻

第169話 テストが終わったらどうなる? 文化祭準備が始まるんだ

しおりを挟む
 体育祭が終わって、テストが終わって、ダン配して……。
 その間に寧々ちゃんは冒険者協会にマユちゃんのことを報告したら、やっぱりレポート書かされたりしてて。
  冒険者協会にはアグさんを紹介してくれた毛利さんもいるし、寧々ちゃんと私が繋がってることは多分バレてる。
 アグさん師匠のことは伏せて、従魔を特訓した結果ということだけに絞ってたけど、毛利さんにはすぐそこのところはわかるだろうな。

 そして、通常の授業が戻ってくるのと同時に、文化祭の準備も始まった。息つく間もないとはこのことだよ……。


「それではうちのクラスは執事&メイド喫茶で決まりました」

 はっ! 昨日猫が大好きなジェル状おやつをサツキたちにあげていたらヤマトがいつの間にか混じって必死に舐めようとしてたときの動画を脳内再生してにやけていたら、文化祭の出し物が決まっている!!
 執事&メイド喫茶? うん、そりゃ蓮とか聖弥くんが執事をやったら似合うだろうなあ。個人的には彩花ちゃんも執事の方で見てみたい感じ。

「異議あり!!」

 後ろから凄い切迫した蓮の声が、教室の窓ガラスを震わせる勢いで響いた。

「異議受け付けません。もう決定しました。多数決で」

 文化祭実行委員の柴田さんは無慈悲に黒板の他案を消していく。
 蓮が異議あり? 執事とかのコスプレ好きそうだけど。

「男装執事はともかく、女装メイド喫茶なんて誰得なんだよ!」

 はい?
 やばっ、私大事な話をずーっと聞き逃してたみたいだぞ!?

「体育祭のおかげで長谷部さんのファンクラブができてるし、男装執事喫茶は圧倒的に人気が取れるでしょ。それに、研究展示とかの方が当日楽できるけど事前準備の方が大変で、脳筋冒険者科としては体育祭みたいな思いはしたくないっていうのがみんなの一致した意見じゃん。
 安永くんもいい加減諦めろ」
「ぐっ……ぐぬぬぬぬ……」
「まあ、飲食店枠は上限が決まってるから、実行委員会に案を提出した後でも100%今の案で決定じゃないから。枠内に出店希望が収まればこのまま決まって、オーバーしてたらそこで抽選があるからさ」
「頼む、他のクラス飲食店希望してくれ!」

 蓮が祈る必死な声が後ろから聞こえてくる……。
 何故こうなった?


 脳内動画の再生で反対意見も出さないほどぼけっとしてましたとおおっぴらに言えず、私はこそっとかれんちゃんの帰り際を捕まえて経緯を聞くことにした。

「柚香……あんたねえ……」

 物凄い呆れられたけど、そのくらいインパクトでかかったんだよ!
 証拠としてスマホに保存した動画見せたら、かれんちゃんもデレデレになって、「ベルーガほどじゃないけどこれなら仕方ない」って言ってくれたしね。

 かれんちゃんがうまく話を要約してくれたけど、最初にいくつか案が出た中でお約束の様に喫茶店が出たそうな。
 そこに中森くんが「普通の喫茶店じゃ話題にならないから、女装メイドと男装執事にしようぜ! 俺メイド服着てウケを狙うわ」と男前な発言をし、寧々ちゃんが「長谷部さんのファンクラブができてるから男装喫茶は当たると思う」って補足を入れたんだって。

 彩花ちゃんのファンクラブ……なにそれ初耳。
 でも初耳だったのは私だけじゃなくて、彩花ちゃん自身も知らなかった。
 なんでも、写真部が撮影して掲示した体育祭の写真の中に、彩花ちゃんファントムが切ない表情でクリスティーヌに手を差し伸べてるのがあったそうなんだよね。
 女子の男装ファントムで、長い髪で背の高い彩花ちゃんがやってるってところが一部の乙女心をくすぐり、局地的人気が出てるらしい。

 わかる気がする。彩花ちゃんファントムは、私を略奪しようとあの手この手を使ってさえいなければ、見た目だけはかっこよかった。
 彩花ちゃん割と胸があるから、それが隠しきれなくて、「女子の男装」ってはっきりわかるところも萌えポイントだったよね!

 そして、女子が割と「執事の格好してみたいー」と乗ったのと、男子の中で男気溢れる奴らが「一生に一度くらいメイド服を着るのも辞さない! ウケたい!」と中森くんに続いて出てきたので、多数決の結果そのまま決まってしまった、と。
 まあ、中には「安永と由井のメイドがウケないはずはない」って意見とか、「柳川の執事も絶対需要がある」とか、当人に関係なく盛り込まれたものもあるんだけどね。

 まあ、私は執事やるのにやぶさかではないね。むしろ楽しそう。
 問題はさ――。

「ぜーーーーーったい、やりたくない!」

 うちに着いてまでプンスコしてる蓮ですよね。
 聖弥くんは割と「まあ、それで人気が出るなら」って割り切ってるらしくて、蓮みたいな反応はしてない。

「どうしたの、蓮くん」

 トレーニングウェア姿のママがそんな蓮を見て目を丸くしている。

「クラスの文化祭の出し物が、男装執事&女装メイド喫茶になっちゃって」
「そもそも中森のメイドだって俺は見たくない! あんなに肩幅あってケツアゴの男のメイドとか絶対嫌だ!」
「やだーーーーー! なにそれ楽しそう!」

 ママの声が1オクターブ上がったよね……。うん、絶対好きだと思ったんだ。

「そうそう、これ見て! 女装と言ったらヒロキくんじゃない? これ、今日X‘sに告知入ってきた次の舞台のキービジュ! 美しいわよねえ」

 ヒロキくん、の一言で思わず蓮がママのスマホを覗き込む。ヒロキくんっていうのはお刀ミュージカルのキャストのひとりで、中性的な演技と圧倒的な歌唱力で定評があるんだよね。蓮も「鳥肌止まらない」って前に言ってたなあ。

「今回の舞台、全員男性でやるのよね。だからキャストの半分くらい女装だけど、ほら、この子もこの子も蓮くん知ってるでしょ」
「…………俺、女装します」

 私から見ても美しすぎるヒロキくんの女装主人公に、蓮があっさり手のひらを返した……。
 チョロすぎない?
しおりを挟む
ステータスについては、近況ボードのステータス講座にまとめてありますので、混乱したらそちらをご覧ください。
感想 3

あなたにおすすめの小説

先にわかっているからこそ、用意だけならできたとある婚約破棄騒動

志位斗 茂家波
ファンタジー
調査して準備ができれば、怖くはない。 むしろ、当事者なのに第3者視点でいることができるほどの余裕が持てるのである。 よくある婚約破棄とは言え、のんびり対応できるのだ!! ‥‥‥たまに書きたくなる婚約破棄騒動。 ゲスト、テンプレ入り混じりつつ、お楽しみください。

アシュレイの桜

梨香
ファンタジー
『魔法学校の落ちこぼれ』のフィンの祖先、アシュレイの物語。  流行り病で両親を亡くしたアシュレイは山裾のマディソン村の祖父母に引き取られる。  ある冬、祖母が病に罹り、アシュレイは山に薬草を取りに行き、年老いた竜から卵を託される。  この竜の卵を孵す為にアシュレイは魔法使いの道を歩んでいく。

護国の鳥

凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!! サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。 周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。 首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。 同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。 外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。 ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。 校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い

竹桜
ファンタジー
 主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。  追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。  その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。  料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。  それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。  これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

処理中です...