【柴犬?】の無双から始まる、冒険者科女子高生の日常はかなりおかしいらしい。

加藤伊織

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体育祭!ダンジョンダンジョンダンジョン!の巻

第149話 鎌倉ダンジョンRTA

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 食後すぐ私たちは鎌倉ダンジョンへ向かった。
 帰りは方向的に別々にならないといけないけど、行きは戦い方の相談をするためにうちの車に蓮と聖弥くんも乗り込んだ。

「1時間と考えると、単純に行きに30分、帰りに30分ってことになるかな」
「足柄ダンジョンのとき、敵がほとんどいない状態で7層まで20分だったよな。ラピッドブースト掛ければ10層も狙えるか?」
「ドロップを一切拾わない、経験値だけが欲しいってことなら、ヤマトを解放しちゃえば勝手に経験値は入ってくるよ。この前小田原ダンジョンでモンスターハウスにヤマトが突っ込んじゃって、戦わないでLV20まで上がったし」
「え? 柚香、LV上がったのか!? 俺より高くなったじゃん!」

 初耳、って顔で蓮が驚いている。あれっ? 言ってなかったっけ。
 まあ、聖弥くんも、相方とはいえ全部全部話してたりしないんだろうなあ。

「合宿の時に法月さんのテイムとか僕の勝手な行動のせいで、時間をフルに戦いに充てられなかったから、そのパーティーでLV上げしてきたんだよね。僕もLV18まであがったよ」
「うえっ! 聖弥に追いつかれた! 合宿の時、LV1しか上がらなかったんだよな」

 まあね、その時は蓮のLV17がクラス最高だったし。下級ダンジョンじゃあなかなかLV上げるのは難しくなってたし。

「とりあえず、基本の立ち回りとしては、敵がワンランク強くなる5層までは無理に戦闘しないで駆け抜ける方向で。5層で少し戦って、僕たちの攻撃コストと経験値が釣り合うかを見て、余裕があるなら10層まで駆け抜けて時間ぎりぎりまで戦おう」

 スマホでダンジョン情報を調べながら聖弥くんが提案する。
 確かに、私たちは戦力飽和パーティーだから行けなくはないはず。
 ……ぶっちゃけ、全員が全力で走ったらそこいらのモンスは追いつけないよ。

「イエッサー! じゃあ、私が先頭で突っ切るけども、蓮と聖弥くんも10層までの地図をできるだけ頭に入れて。最短ルート記載してあるサイトのリンク送る」

 私が見ているサイトのURLをLIMEで共有して、私は地図の丸暗記にシフトした。
 これってコツがあって、道順を覚えるんじゃなくて、マップ全体をぼんやり見るんだよね。
 このサイトの場合、最短ルートが赤線で書いてあるから凄く覚えやすい。

 ダンジョンに着く前に10層全部頭に入った。……と言ったらふたりにすっごい驚かれた。
 いやいや、私は楽譜もこれで覚えてるよ。記憶術のひとつだと思うけどなあ。


 ダンジョンに着いたらふたりに装備を渡し、それぞれ更衣室へ。
 ママふたりは自動販売機の隣にあるベンチで、ふたり一緒にスマホを覗き込んでいる。漏れてる音楽から、あのミュであることがわかるね……。

 昨日着ていた防具は今日洗ってるから、黄色い方のセットアップを着て、ヤマトにも「暴走犬」Tシャツを着せる。
 暴走して欲しいわけじゃないんだけどね!!

 考えたくないけどレア湧きとかが起こったときのために、右太ももに棒手裏剣をセットしたベルトを巻き、最後に村雨丸を佩いて私の装備は完了。
 早く注文した頭部防具来るといいんだけど。予定では9月末くらいなんだよね。

「準備OK?」

 ほとんど同時に出てきた蓮と聖弥くんに確認すると、ふたりは頷く。

「ファイアーボールぐらいならバンバン撃っていいからね!」
「了解!」

 ママズに行ってきますと声を掛け、私たちは夜のアンデッドダンジョンに足を踏み入れた。


「夜の8時にさー、アンデッドしか出ないダンジョンに潜る物好きっている?」
「しょうがねーじゃん。最寄りなんだから」

 2層に下って、早速群れているゴーストに蓮がファイアーボールをぶつける。
 一番威力の低い初級魔法だけど、蓮が撃つと威力がおかしいね!
 道を塞いでいる敵は一掃だよ。

「ヤマト、このまま走って行くからね! ちゃんと付いてきてね!」
「ワン!」

 ……いいお返事の時は、言うことを聞いた印象があんまりないんだよなあ……。
 こんなことを考えるのもフラグ立てかな、なんて思いながら最短距離を走る。

 暴走犬Tシャツのヤマトは、毎日のお散歩で身に付けたきやくそくこうしんで私の隣に並んできちんとペースを合わせて走……っていたのは、5層まででした!!

「あーっ! ヤマトー! そっち行っちゃダメー!」

 急に尻尾を振って駆け出したヤマトの向かう方向には、10層までの中では一番大きい部屋がある。そっちに行っちゃうと最短距離とは反対方向な上に、大部屋って事はモンスが多いんだよ!

「ヤマト、ステイ! ステイッ! ダメだー! 今日は言うこと聞いてくれない!」
「ほんとおまえ、テイマーとして未熟過ぎねえ!?」
「ぐぬー! 私はヤマトを追うから、蓮と聖弥くんはこの辺で戦ってて!」
「了解!」

 もういっそ、ヤマトが向かった先がモンスターハウスだったらいいのに! ……という願いもむなしく、全力で走って追いついた私が見たのは、ほどほどに湧いたグールやゾンビを嬉々としてヤマトが倒しているところだった。

 一撃で倒しては魔石ボリボリ。襲いかかられてはワンパンで退け、無双しまくるヤマト。もちろん、いくら私が「ステイ!」と叫ぼうとも止まることはなく……。

 ヤマトが止まったのは、部屋中のモンスを倒しきった時で、既に時間は40分が経過していた。

 LVは上がったよ。1だけだけど。
 モンスターハウスだったら2か3くらい上がったかもしれないし、どうせ暴走するならもっと下層でしてくれれば経験値もたくさん入ったのになあ。

 隙を突いて集めていた魔石を使ってヤマトを誘導し、お座りさせて圧を掛ける。ダンジョンモードのヤマトはそんなものでは萎縮したりしないんだけどね。

「ステイって言ったら止まらないとダメでしょう。いい? 今度からはちゃんと私の言うことを聞いてね」

 って言ってる側から、私が右手に魔石握ってるのに気づいてフンフンして舐め始めるしー!

「やっぱりダメだったか」
「ヤマトって頼りになる戦力だけど、あまりに制御できてないよね……」

 どうも通路近くの敵を倒しきってしまったらしいふたりが、歩いて私のところにやってきた。

「今日はもうこれ以上は下層に行けないね。戻ろう」
「ヤマトー、ちゃんと柚香の言うこと聞かなきゃダメだぞ?」

 いつもだったら遊び相手と思ってる蓮の言葉にも、ヤマトは「知らんー」って顔でそっぽを向く。
 しょうがないので魔石はヤマトにあげて、私が抱えてそこから地上に戻ったけども。
 うーん、抱えても本気で抵抗されたら抑えられないんだよね。どうしたもんか。

「あんまり気にすんなよ。1時間かかってないのにLV1上がっただけでも凄いと思おうぜ」

 私がしょげているせいか、蓮が「おまえのことを責めてないよ」と慰めてくれたけど。

「なんか、蓮に慰められるのって屈辱を感じるんだよね……」
「ほんっとーーーに、おまえって俺のことどういう風に見てるわけ?」

 青筋立てた蓮に怒られましたよ。
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