上 下
90 / 273
Y quartet結成! の巻

第84話 SE-REN(仮)活動終了! そして

しおりを挟む
「蓮が退所届を書き終わったら、僕の方の『重大発表』は終わりかな。なかなかないよね、ダメだと思ってた人が予想以上にもっとダメだったケース。
 楽しみだなあ、この配信の再生数どこまで伸びるかな? どうせならネットニュースとかで大々的に扱って欲しいな。もう、アルバトロスオフィスと中川社長を再起不能にして欲しい」

 笑顔で言うことかな、それは。
 腹の中に抱え込んでた物を爆発させてスッキリしたらしい聖弥さんは、ものすごーく爽やかな王子様スマイルだけど……笑顔と発言の中身のギャップが酷い。

「えーと……」
「こういう奴なんだよ、聖弥は」

 私が中途半端な顔で困っていると、ぼそりと蓮くんが呟く。
 それも配信で言っていいことなのかな!?

 ていうか、こいつら今たくさんの人に見られてる配信中だっていう自覚が薄くない!?
 アイドルが自分で自分の黒いところ暴露してどうするのさ!

「ねえ、仮にもふたりともアイドルだよね!? ファンに見せていい顔とそうじゃない顔は分けるべきじゃない?」

『わあ。ゆ~かが正論を』
『確かにちょっと思った』
『聖弥くんは前から時々漏れてたよ。何もなければ王子様でいられるんだけど』
『ゆ~かちゃんが一番アイドルだよ!!!!!!!!!! ファムファタル!!!!』

「今までも時々漏れてたんだー……。私はアイドルじゃないから素を見せてもいいけどさあ……」

 流れるコメントを見ながら思わずがっくり来たね。ママも配信してる蓮くんのスマホの後ろで「ナイナイ」って手を振ってる。

「でも、余程のことがない限り、僕がキレることはないし。前にも漏れたのは確かだけど、それは火祭り事件の時だけだよ」
「うん、聖弥は基本的には穏やかな奴だよ。滅多にキレないから、キレたときが怖いだけだ」
「蓮は軽いことで軽くキレるよね、僕もそのくらい小出しにできればいいんだけど」
「あー、わかるわかる!」

 軽いことで軽くキレる蓮くんはわかる!
 でも、私も同じタイプだー……。

 おや、ママが何かジェスチャーで指示してる。次へ行けってことかな。
 確かに、このままぐだぐだしてるのはあんまり良くない。

「じゃあ、次のコーナーに行きます。蓮くんはそのまま書いててね。
 SE-REN(仮)重大発表! ○○作ったよ! です。さーて、何を作ったでしょうか!」

 力技で話題を切り替えると、コメントがまたガーッと凄い勢いで流れる。

「雪だるま? 今雪ないよ! 料理、惜しい。料理は確かに作りました。でもその話じゃないんだ。新曲? おおっ? 惜しいなー、でもこんな短期間で新曲は作れない。惜しいから木久翁さんに座布団1枚!」

『相変わらず大喜利好きだな』
『木久翁さんのこと大好きなんだな』
『アクスタ! ブロマイド! むしろ作って!』

 うん、大喜利大好き。でもそろそろこの大喜利状態は切り上げて正解を出そうか。

「正解は、なんとMVミユージツクビデオです! SE-RENの『Magical Hues』を私と蓮くんで歌って踊って、MV作りました! 音源も新規収録。当たり前か。しかも、私メインカメラで撮ってるのと蓮くんメインカメラで撮ってるのの2本あります!」
「おかしい……俺が退所届を書いてるのに、俺にまつわる重大発表がゆ~かひとりによって行われている……」
「ごめんて。でも蓮くんが書き終わるまで待ってると話進まないから」

 ぐう、と呻いて情けない顔になりつつも、手は止めない蓮くん。偉い。というか早く終わらせたいんだね。
 でも書くのは物凄く遅い。書き損じると面倒になるからみたいだけど。

『MV作ったの!?』
『ゆ~かが歌って踊った!?』
『凄い! 早く見たい!』
『先週配信がなかったのはそれかー』

「お、鋭い人がいる。そうです。ここのところ配信がなかったのは、ママが突然MV作るって言い出して、そのためにレッスンとかしてたせいです。……あれ? なんでMV作るって言い出したんだっけ?
 あー! そうだ、防具作ったんですよ! 寧々ちゃんのところに頼んで、総アポイタカラ製の布防具を! あああー! どうしよう、お披露目配信の時に呼べってあいちゃんに言われてたの忘れてた!」

『物凄いgdgd感』
『これぞゆ~か』
『なんで防具作ったらMVなのかがわからない』
『圧倒的説明不足』

 むう……。私のチャンネルの人たちはツッコミが多いね。
 確かに、今思いついたことをだーっとしゃべっちゃったけど。

「時系列で説明します!
 まず、武器を作って貰った直後、私と蓮くんの防具を作って貰いました。デザインはあいちゃんで、法月紡績さんにアポイタカラで布を作って貰って、寧々ちゃんのお父さんにクラフトして貰いました。
 それが先週の木曜に上がってくるって話で、そしたらママが『MV撮るわよ』って言い出して……なぁぜなぁぜ?」

 結局私には説明しきれなかった。ガクリ。

「アイドルユニットを自称してるんだから、ひとつくらいアイドルらしい活動しないとダメでしょって思ったのよ!」

 とうとう、カメラの後ろからママがツッコんでくる。私と蓮くんと聖弥さんは揃って「なるほどー」と頷いた。

『ママさんいるのか』
『なるほど、サンバ仮面の差し金か』
『ゆ~かちゃんママ、ありがとう!』

「まあ、アポイタカラ製布防具にするのは決まってたし、蓮くんと聖弥さんがこの先もユニット活動で使えるようにと思ってデザインして貰ったしね。でも(仮)もあったから、私までお揃いデザインになっちゃった。
 MVですが、この後20時30分にこのSE-RENチャンネルと私のチャンネルでアップされるように予約しております!
 聖弥さんが復帰してきたし、これでSE-REN(仮)は活動終了ということでいいのかな。
 時間近づいてきたら一緒にカウントダウンしようねー!」

『ゆ~かの進め方が圧倒的に手慣れてる件』
『活動終了かー』
『一番アイドルらしいのがゆ~か』
『蓮くんよりアイドル……』
『もうすっとこどっこいコンビが見られないのは寂しいけど仕方ないか』

 言われてる! 言われてるよ連くん! そして打ちのめされている!

 その後は、やっと退所届を書き終わった蓮くんを交えて、MV撮影の裏話とかで時間を潰した。
 ボイトレをママがやった話とか、あいちゃんがメイク担当で来た話とか。
 言っておかないと、後であいちゃんが激おこするからね。

「僕もさっき見せて貰ったけど、前に作ったMVより出来が良かったので期待してください。パソコンとかで2窓できる人はそれで見て、無理そうなら一旦こっち出てMV見てから戻ってきて欲しいな。
 じゃあ、カウントダウン行くよー」

 何故かMVに関わってない聖弥さんが笑顔でカウントダウン始める。
 蓮くんは緊張してるらしくて真顔。私は笑顔。
 そして、SE-REN(仮)の活動を締めくくるMVが公開された――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

処理中です...