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ゆ~か、アイドルをする!? の巻
第73話 事故った!!!!
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私と蓮くんの準備ができたところで、いよいよ撮影に入る。
今回は私メインに撮るカメラと、蓮くんメインに撮るカメラ、全景撮るカメラと3種類の映像を同時に撮る。これを3回やるわけ。
なので、私と蓮くんとママのカメラがふよふよ浮いて、ターゲットをロックオンして、撮影開始。あいちゃんのスマホに移した音源で私たちは振りを始める。
今日ここで撮るのは、振りだけ。
曲の方はちゃんと調整した奴に明日スタジオで歌吹き込んで完成させる予定。結構本格的だよねー。
まあ、これもママのこだわりなんですけども。フィーチャリング映像は絶対に欲しいのー! って大騒ぎしたのママですしね!
イントロは蓮くんと背中合わせで始まる。歌詞に合わせて、カメラに向かってそれぞれ手を差し伸べて。
『夢の中へと歩き出す未来を描く 君と二人 輝く星が導くように』
一応口パクはします! 後で歌に全然合ってないとそれはそれで困るしね!
僅か1週間の特訓で、蓮くんの動きはかなり良くなった。多分ステータスの恩恵受けてるんじゃないかな。
ママが言ってた「ダンスはAGIとDEX上がるわよ!」も案外眉唾じゃないのかも。
思った通りの動きをするには、自分の体をちゃんと把握しないといけないし、指先まで神経を行き渡らせるのは技術がいる。
まあ、確かにAGIとDEXが関わってくるよね。
蓮くんと聖弥さんは並んだときにほとんど身長が変わらないんだけど、私と蓮くんは15センチ近く違う。そのふたりでユニゾンをしたときに違和感が出ないように、沈み込む深さとか肩を下げる高さとか、調節するのは私の役目。
身長が違っても、肩を下げる角度とかが一致してれば揃って見えるからね。
蓮くんはダンスの完成度を上げるのにいっぱいいっぱいで、私に合わせるなんて芸当はとてもじゃないけどできなかった。だから、これはダンスの技術的に余裕がある私がやること。
笑顔で踊りながら、私はこの2週間近くSE-REN(仮)で活動してきたことを思い出し――いやあ、面倒だったなー!
これがなかったら、私もっとステ上げ特訓してたもん!
ヤマトとも一緒にダンジョン潜ってさ!
しかし、あれもこれも全部、MV撮り終わって編集して、聖弥さんが戻ってきたら終わりだー! ヒャッホー!
「うん、ユズいい笑顔ね! その調子よ!」
おおっと、内心の開放感が表情に出てしまった模様。こんなこと考えてましたなんてバレたら叱られる。
蓮くんと一緒にいるうちに、大涌谷ダンジョン行きたいなあ。火祭り事件再来だけど、プチサラマンダーに囲まれてファイアーブレス食らいまくりたい。今の装備ならダメージカット余裕だし、蓮くんのヒールもあるし。
……などと考えていたら、1回目の撮影が終了した。
「ママ、どう? 次行って平気?」
「私が見てた限りは平気よ。ふたりとも着替えてきて」
「えーと、どこで着替えたら……」
次の衣装を渡され、困惑する蓮くん。そうだよね、困惑はすると思う。
だけど、ここには隠し部屋があるじゃないか!
「あそこ! 中で着替えればこっちから見えないでしょ?」
隠し部屋を指さしたら蓮くんが仰け反っていた。
「隠し部屋を更衣室に使うとか! いや、まあ有りだな。部屋は部屋だし。ゆ~かはどうするんだ? 交代制?」
「私? 私はこのドレッサーの裏で着替えるよ。ママとあいちゃんしかいないし」
「それでいいのか、おまえ……普通そっちが隠し部屋使うべきじゃないのか……」
「でも私スパッツ穿いてるから、下半身肌が見えるほど脱ぐわけじゃないし」
「うわああ!! そういうこと言うなよ! わかった、着替えてくる!」
何故か赤くなって走って行く蓮くん。
果たして今のは、「下半身一度全部脱ぐ自分」と「スパッツだけになってる私」どっちを想像したのだろうか。
「いやー、こういうときにスカートって楽だよねー」
「でしょ? 私を褒めてよ」
「あいちゃん天才~」
私は今穿いてるキュロットの上からスカートを先に穿いて、その後でキュロットを脱いだ。学校でもよくやる気替え方法だね。こうすれば、あんまりいろいろ見えないから。
上だけは一度脱がなきゃいけないけど、どうせ中にドライ&クールなTシャツ着てるし。全然恥ずかしくもない。
メイクは崩れてないので、髪型ちょっと直してメイクも軽ーく直しただけで2回目の撮影は順調に終わった。
「じゃあ、3着目の衣装これね」
「正気か?」
蓮くんがチベットスナギツネの顔になってる! そして言外に拒否してる!
「正気だよ? この衣装の人気舐めちゃダメだよ」
「ぐぬぬぬぬぬ」
蓮くんにぐいぐいと芋ジャーを押しつける私VS受け取ろうとしない蓮くん。
ママが最初「芋ジャーも着て」って言ったとき私も「正気?」って言っちゃったけどね!
でも、やっぱり私たちと言えば芋ジャージなわけですよ! 期待されてるわけですよ!
「思い出して! 蓮くんが初めて芋ジャー……初心者の服を着たときのコメント欄の反応を!」
「思い出したくない!」
「『今日はスクショ祭りだー』って言ってた人がいるじゃん! 蓮くんの芋ジャーは保存されちゃうんだよ」
「尚更嫌だろ!? 俺が今後売れたとき、『15歳の時は芋ジャー着て特訓してました』って言われるんだぞ」
私たちが言い争いをしていたら、ママがスススと寄ってきて蓮くんの肩を叩いた。
「蓮くん、この先売れるために今できる努力はするのよ。私の頭の中にある画を撮るには芋ジャージが必要なの」
「アッ、ハイ」
ママの圧に負けた蓮くんが芋ジャーを持って肩を落としたまま隠し部屋に向かう。
ママ強いな! さすがPだわ。
「ママ、MVの完成図が頭にあるの?」
「ありませーん☆ 編集はユズ任せよ。ほら、蓮くんを説得するにはああいうのが一番でしょ?」
てへぺろしてるママP……。蓮くんが哀れだな。まあ、私が芋ジャーがいいアクセントになるように動画を編集するか!
そして3回目、ふたり揃って芋ジャーでダンス。前もって一応蓮くんにはポーション飲むか訊いたけど平気だって言われた。
今まで動いた分は防具の補正が掛かってたから、スタミナがまだ残ってるみたいだね。
3回目の曲が終盤にさしかかったとき、背後でザッバーン! って凄い音が聞こえた。
「振り返らない! 踊り続けなさい!」
振り返ろうとした瞬間、ママの鋭い声が飛んできて私たちは慌ててダンスに集中する。
何が、何が起きてるの!?
『時が過ぎても忘れないよ この瞬間ずっと一緒にいたい願いを胸に』
歌詞の途中で聞こえる、ボチャンという何かが水に落ちた音。
嫌な予感マーックス!!
なんとか最後まで踊りきった私が振り返ると、海からヤマトが上がってくるところで、砂浜について柴ドリル。さっきのボチャンはヤマトが海に飛び込んだ音か。
じゃ、じゃあ、その前の「ザッバーン」は……。
慌ててスマホに駆け寄って、今録画した物の後半を再生する。というか、私の視界の隅であいちゃんがお腹抱えたままうずくまってるんですけどね。肩がぷるぷるしてるから、笑いをこらえてるんだな。
そして、私は見た。
芋ジャーで踊る私たちの後ろに突然湧いたシーサーペントと、そこに跳び蹴り食らわすヤマトを。
「これかー!!」
「うわあああ、俺の経験値!!」
同じく動画を確認して事態を把握したらしい蓮くんがスマホアプリをチェックし始めた。
そして、芋ジャーのままでばったりと砂浜に倒れ込んだ。
ああ……言わなくてもわかったよ……。
今のでLV9になっちゃったんだね……。
今回は私メインに撮るカメラと、蓮くんメインに撮るカメラ、全景撮るカメラと3種類の映像を同時に撮る。これを3回やるわけ。
なので、私と蓮くんとママのカメラがふよふよ浮いて、ターゲットをロックオンして、撮影開始。あいちゃんのスマホに移した音源で私たちは振りを始める。
今日ここで撮るのは、振りだけ。
曲の方はちゃんと調整した奴に明日スタジオで歌吹き込んで完成させる予定。結構本格的だよねー。
まあ、これもママのこだわりなんですけども。フィーチャリング映像は絶対に欲しいのー! って大騒ぎしたのママですしね!
イントロは蓮くんと背中合わせで始まる。歌詞に合わせて、カメラに向かってそれぞれ手を差し伸べて。
『夢の中へと歩き出す未来を描く 君と二人 輝く星が導くように』
一応口パクはします! 後で歌に全然合ってないとそれはそれで困るしね!
僅か1週間の特訓で、蓮くんの動きはかなり良くなった。多分ステータスの恩恵受けてるんじゃないかな。
ママが言ってた「ダンスはAGIとDEX上がるわよ!」も案外眉唾じゃないのかも。
思った通りの動きをするには、自分の体をちゃんと把握しないといけないし、指先まで神経を行き渡らせるのは技術がいる。
まあ、確かにAGIとDEXが関わってくるよね。
蓮くんと聖弥さんは並んだときにほとんど身長が変わらないんだけど、私と蓮くんは15センチ近く違う。そのふたりでユニゾンをしたときに違和感が出ないように、沈み込む深さとか肩を下げる高さとか、調節するのは私の役目。
身長が違っても、肩を下げる角度とかが一致してれば揃って見えるからね。
蓮くんはダンスの完成度を上げるのにいっぱいいっぱいで、私に合わせるなんて芸当はとてもじゃないけどできなかった。だから、これはダンスの技術的に余裕がある私がやること。
笑顔で踊りながら、私はこの2週間近くSE-REN(仮)で活動してきたことを思い出し――いやあ、面倒だったなー!
これがなかったら、私もっとステ上げ特訓してたもん!
ヤマトとも一緒にダンジョン潜ってさ!
しかし、あれもこれも全部、MV撮り終わって編集して、聖弥さんが戻ってきたら終わりだー! ヒャッホー!
「うん、ユズいい笑顔ね! その調子よ!」
おおっと、内心の開放感が表情に出てしまった模様。こんなこと考えてましたなんてバレたら叱られる。
蓮くんと一緒にいるうちに、大涌谷ダンジョン行きたいなあ。火祭り事件再来だけど、プチサラマンダーに囲まれてファイアーブレス食らいまくりたい。今の装備ならダメージカット余裕だし、蓮くんのヒールもあるし。
……などと考えていたら、1回目の撮影が終了した。
「ママ、どう? 次行って平気?」
「私が見てた限りは平気よ。ふたりとも着替えてきて」
「えーと、どこで着替えたら……」
次の衣装を渡され、困惑する蓮くん。そうだよね、困惑はすると思う。
だけど、ここには隠し部屋があるじゃないか!
「あそこ! 中で着替えればこっちから見えないでしょ?」
隠し部屋を指さしたら蓮くんが仰け反っていた。
「隠し部屋を更衣室に使うとか! いや、まあ有りだな。部屋は部屋だし。ゆ~かはどうするんだ? 交代制?」
「私? 私はこのドレッサーの裏で着替えるよ。ママとあいちゃんしかいないし」
「それでいいのか、おまえ……普通そっちが隠し部屋使うべきじゃないのか……」
「でも私スパッツ穿いてるから、下半身肌が見えるほど脱ぐわけじゃないし」
「うわああ!! そういうこと言うなよ! わかった、着替えてくる!」
何故か赤くなって走って行く蓮くん。
果たして今のは、「下半身一度全部脱ぐ自分」と「スパッツだけになってる私」どっちを想像したのだろうか。
「いやー、こういうときにスカートって楽だよねー」
「でしょ? 私を褒めてよ」
「あいちゃん天才~」
私は今穿いてるキュロットの上からスカートを先に穿いて、その後でキュロットを脱いだ。学校でもよくやる気替え方法だね。こうすれば、あんまりいろいろ見えないから。
上だけは一度脱がなきゃいけないけど、どうせ中にドライ&クールなTシャツ着てるし。全然恥ずかしくもない。
メイクは崩れてないので、髪型ちょっと直してメイクも軽ーく直しただけで2回目の撮影は順調に終わった。
「じゃあ、3着目の衣装これね」
「正気か?」
蓮くんがチベットスナギツネの顔になってる! そして言外に拒否してる!
「正気だよ? この衣装の人気舐めちゃダメだよ」
「ぐぬぬぬぬぬ」
蓮くんにぐいぐいと芋ジャーを押しつける私VS受け取ろうとしない蓮くん。
ママが最初「芋ジャーも着て」って言ったとき私も「正気?」って言っちゃったけどね!
でも、やっぱり私たちと言えば芋ジャージなわけですよ! 期待されてるわけですよ!
「思い出して! 蓮くんが初めて芋ジャー……初心者の服を着たときのコメント欄の反応を!」
「思い出したくない!」
「『今日はスクショ祭りだー』って言ってた人がいるじゃん! 蓮くんの芋ジャーは保存されちゃうんだよ」
「尚更嫌だろ!? 俺が今後売れたとき、『15歳の時は芋ジャー着て特訓してました』って言われるんだぞ」
私たちが言い争いをしていたら、ママがスススと寄ってきて蓮くんの肩を叩いた。
「蓮くん、この先売れるために今できる努力はするのよ。私の頭の中にある画を撮るには芋ジャージが必要なの」
「アッ、ハイ」
ママの圧に負けた蓮くんが芋ジャーを持って肩を落としたまま隠し部屋に向かう。
ママ強いな! さすがPだわ。
「ママ、MVの完成図が頭にあるの?」
「ありませーん☆ 編集はユズ任せよ。ほら、蓮くんを説得するにはああいうのが一番でしょ?」
てへぺろしてるママP……。蓮くんが哀れだな。まあ、私が芋ジャーがいいアクセントになるように動画を編集するか!
そして3回目、ふたり揃って芋ジャーでダンス。前もって一応蓮くんにはポーション飲むか訊いたけど平気だって言われた。
今まで動いた分は防具の補正が掛かってたから、スタミナがまだ残ってるみたいだね。
3回目の曲が終盤にさしかかったとき、背後でザッバーン! って凄い音が聞こえた。
「振り返らない! 踊り続けなさい!」
振り返ろうとした瞬間、ママの鋭い声が飛んできて私たちは慌ててダンスに集中する。
何が、何が起きてるの!?
『時が過ぎても忘れないよ この瞬間ずっと一緒にいたい願いを胸に』
歌詞の途中で聞こえる、ボチャンという何かが水に落ちた音。
嫌な予感マーックス!!
なんとか最後まで踊りきった私が振り返ると、海からヤマトが上がってくるところで、砂浜について柴ドリル。さっきのボチャンはヤマトが海に飛び込んだ音か。
じゃ、じゃあ、その前の「ザッバーン」は……。
慌ててスマホに駆け寄って、今録画した物の後半を再生する。というか、私の視界の隅であいちゃんがお腹抱えたままうずくまってるんですけどね。肩がぷるぷるしてるから、笑いをこらえてるんだな。
そして、私は見た。
芋ジャーで踊る私たちの後ろに突然湧いたシーサーペントと、そこに跳び蹴り食らわすヤマトを。
「これかー!!」
「うわあああ、俺の経験値!!」
同じく動画を確認して事態を把握したらしい蓮くんがスマホアプリをチェックし始めた。
そして、芋ジャーのままでばったりと砂浜に倒れ込んだ。
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