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どえらい装備!! の巻
第53話 蓮の武器
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本当は武器クラフトには土日金沢さんの予定を空けて貰ってる。
蓮くんの武器はまた明日……となるはずのところだったんだけど。
「今やる気が満ちてるから、多少無理してでも今日中に作りきりたいね。こういうときには間違いなくいい物が作れる」
私の村雨丸を作ったときにはマジックポーション飲んでたからMP消費が激しかったんだろうけど、今度は飲まずにそのまま蓮くんの武器を作ろうとしている。
手裏剣の消費MPが少なかったから行けるって判断してるんだろうけど、大丈夫かなあ?
「MP大丈夫ですか?」
「魔法使い用の武器は、太刀とかに比べればそれほどではないからね。ギリギリまで行くかもしれないけど大丈夫。念のため聞いておくけど、蓮くんは特にこれという希望はないんだよね?」
「ないですね……というか、杖に種類があるとか考えたことなかったです」
そっかー! 魔法使いだもん、基本的には杖でぶん殴るわけじゃないもんね。いや、補助魔法が得意な人とか、自分にバフ掛けてガチ近接戦闘する人もいるらしいって聞いたけど。
「つまり、能力値補正に重きを置いた運用ってことだね。じゃあ、またアポイタカラに任せてみよう」
そういえば、これを見つけたとき蓮くんも一緒にいたもんね。そっちにも縁があるとも言える。
金沢さんは手裏剣の時とは違い、一度部屋を出て顔と手を洗ってきたらしく、タオルで拭いながら戻ってきた。
そして、柏手を打ってから始まるフルバージョンのクラフトだ。
10キロのアポイタカラが最初はテーブルの上にあったんだけど、まだそれは半分近く残ってる。魔法使い用の武器ならあれで足りるんだろうな。
クラフトが終わったときそこに現れていたのは――。
「これ、先端に付いてるのって……まさか」
「蓮の花の蕾だね。そこの鶴岡八幡宮の源平池に夏になるとたくさん咲くよ」
ちょっと戸惑った感じの蓮くんの声。金沢さんのさくっと切り捨てる感じの断言。
蓮くんの武器はもちろん杖で、先端に蓮の花の蕾が付いてた。まるで氷でできた彫刻みたいで綺麗だけど。蓮くんが鑑定したら【ロータスロッド】って。
なんという直接的なネーミング! 草生える!
「……まんまじゃん?」
「俺の名前まんまだな……」
「名前というのは霊的に重要な要素をもつから、特に魔力関係では影響を受ける事が多いんだよ」
「あ、なんか属性付いてる」
「えーっ!? 激レアでは!? 何付いてる?」
「氷属性……」
うっは……また大変な物を引いてるよ、この人は。
初級魔法のスキルで取れる魔法はファイアーボールで、氷属性とは相性悪い。
氷系の魔法は確か、結構MAGが高くないと取れないんじゃなかったかなあ。その辺は教科書ざっと見ただけでまだ授業で習ってないし、私には無縁と思ってたからうろ覚え。
「……元気出しなよ」
「いや、別に落ち込んでないけど。新武器お披露目配信するつもりだったけどこれはやる意味あるのか疑問に思ってきた」
「じゃあ私単独でやるー」
「蓮くんはMAG相当高いの?」
金沢さんが聞いてきたので、LV8で15ですと素直に答える蓮くん。いつも思うんだけど、こやつは大人には素直だよね……。
「それで、霊感持ちなんだ?」
「認めたくはないけどそうみたいです。さっきゆ~かの武器を何にするかってアポイタカラに訊いてたとき、アポイタカラの中にそれまでらせん状に渦巻いてた気がぐわーっと大きくなるのを感じました」
「あ、それはね、アポイタカラの分子構造がらせん状になってるからだよ。ははは、本当に気が見えてるねえ。ちなみに霊感とMAGは無関係だよ。
僕もあちこち出かけると入れない場所があったり、防御法を身につけるまではかなり酷い目に遭ったりしたけど、LV30でMAGはやっと20だからね」
「マジですか……」
蓮くんはくたくたとその場に崩れ落ちた。――てか、それどころじゃない話を今聞いた気がする!
「金沢さん、気の巡らし方を知ってるんですよね?
私MAGが低すぎて初級魔法も取得出来ないんですけど、テイマーとして従魔にコマンド出すときに魔力を乗せないと上手く作用しないことに気づいたんです。
もし、鍛錬法を知ってたら教えてくれませんか!?」
「はっ!? 防御法も知ってるんですよね? 俺にも教えてください! ここに来るまで怖くて怖くて、ゆ~かに前歩いて貰わないと無理だったんです!」
……手を繋いで貰わないと歩けなーいって、半泣きになってた事実は華麗に伏せたか。だよねえ、かっこつけだもんね。
「ちょっと待ってね、汗だくになっちゃったから一度着替えてくるよ。ふたりともお昼は?」
「何か食べ歩きしようかなーと思ってました。紫いもソフトとか焼きたておせんべいとか。帰りに鳩のサブレーの一番でっかい缶を買って来いって言われますし」
「マジか。下調べ準備万端かよ。俺付き合わないぞ」
「いや別に? ここで解散して蓮くん先にひとりで帰ればいいじゃん?」
「嘘です、すみません、せめて駅まで一緒に歩いてください」
さっきの金沢さんみたいな90度のお辞儀……。そんなに怖いのかー。
「あー、地元に住んでるとなかなかやらないやつだね。せっかくだから僕もご一緒していいかな。
ファミレスでも、と思ったんだけども食べ歩きも楽しそうだからね。じゃあ、着替えてきたら気を巡らすコツを教えて、その後で食事して帰るということで?」
「はい、お願いします!」
「よろしくお願いします!」
地元の金沢さんが一緒なら、リサーチし切れてない穴場のお店とか教えて貰えるかも! やったー!
蓮くんの武器はまた明日……となるはずのところだったんだけど。
「今やる気が満ちてるから、多少無理してでも今日中に作りきりたいね。こういうときには間違いなくいい物が作れる」
私の村雨丸を作ったときにはマジックポーション飲んでたからMP消費が激しかったんだろうけど、今度は飲まずにそのまま蓮くんの武器を作ろうとしている。
手裏剣の消費MPが少なかったから行けるって判断してるんだろうけど、大丈夫かなあ?
「MP大丈夫ですか?」
「魔法使い用の武器は、太刀とかに比べればそれほどではないからね。ギリギリまで行くかもしれないけど大丈夫。念のため聞いておくけど、蓮くんは特にこれという希望はないんだよね?」
「ないですね……というか、杖に種類があるとか考えたことなかったです」
そっかー! 魔法使いだもん、基本的には杖でぶん殴るわけじゃないもんね。いや、補助魔法が得意な人とか、自分にバフ掛けてガチ近接戦闘する人もいるらしいって聞いたけど。
「つまり、能力値補正に重きを置いた運用ってことだね。じゃあ、またアポイタカラに任せてみよう」
そういえば、これを見つけたとき蓮くんも一緒にいたもんね。そっちにも縁があるとも言える。
金沢さんは手裏剣の時とは違い、一度部屋を出て顔と手を洗ってきたらしく、タオルで拭いながら戻ってきた。
そして、柏手を打ってから始まるフルバージョンのクラフトだ。
10キロのアポイタカラが最初はテーブルの上にあったんだけど、まだそれは半分近く残ってる。魔法使い用の武器ならあれで足りるんだろうな。
クラフトが終わったときそこに現れていたのは――。
「これ、先端に付いてるのって……まさか」
「蓮の花の蕾だね。そこの鶴岡八幡宮の源平池に夏になるとたくさん咲くよ」
ちょっと戸惑った感じの蓮くんの声。金沢さんのさくっと切り捨てる感じの断言。
蓮くんの武器はもちろん杖で、先端に蓮の花の蕾が付いてた。まるで氷でできた彫刻みたいで綺麗だけど。蓮くんが鑑定したら【ロータスロッド】って。
なんという直接的なネーミング! 草生える!
「……まんまじゃん?」
「俺の名前まんまだな……」
「名前というのは霊的に重要な要素をもつから、特に魔力関係では影響を受ける事が多いんだよ」
「あ、なんか属性付いてる」
「えーっ!? 激レアでは!? 何付いてる?」
「氷属性……」
うっは……また大変な物を引いてるよ、この人は。
初級魔法のスキルで取れる魔法はファイアーボールで、氷属性とは相性悪い。
氷系の魔法は確か、結構MAGが高くないと取れないんじゃなかったかなあ。その辺は教科書ざっと見ただけでまだ授業で習ってないし、私には無縁と思ってたからうろ覚え。
「……元気出しなよ」
「いや、別に落ち込んでないけど。新武器お披露目配信するつもりだったけどこれはやる意味あるのか疑問に思ってきた」
「じゃあ私単独でやるー」
「蓮くんはMAG相当高いの?」
金沢さんが聞いてきたので、LV8で15ですと素直に答える蓮くん。いつも思うんだけど、こやつは大人には素直だよね……。
「それで、霊感持ちなんだ?」
「認めたくはないけどそうみたいです。さっきゆ~かの武器を何にするかってアポイタカラに訊いてたとき、アポイタカラの中にそれまでらせん状に渦巻いてた気がぐわーっと大きくなるのを感じました」
「あ、それはね、アポイタカラの分子構造がらせん状になってるからだよ。ははは、本当に気が見えてるねえ。ちなみに霊感とMAGは無関係だよ。
僕もあちこち出かけると入れない場所があったり、防御法を身につけるまではかなり酷い目に遭ったりしたけど、LV30でMAGはやっと20だからね」
「マジですか……」
蓮くんはくたくたとその場に崩れ落ちた。――てか、それどころじゃない話を今聞いた気がする!
「金沢さん、気の巡らし方を知ってるんですよね?
私MAGが低すぎて初級魔法も取得出来ないんですけど、テイマーとして従魔にコマンド出すときに魔力を乗せないと上手く作用しないことに気づいたんです。
もし、鍛錬法を知ってたら教えてくれませんか!?」
「はっ!? 防御法も知ってるんですよね? 俺にも教えてください! ここに来るまで怖くて怖くて、ゆ~かに前歩いて貰わないと無理だったんです!」
……手を繋いで貰わないと歩けなーいって、半泣きになってた事実は華麗に伏せたか。だよねえ、かっこつけだもんね。
「ちょっと待ってね、汗だくになっちゃったから一度着替えてくるよ。ふたりともお昼は?」
「何か食べ歩きしようかなーと思ってました。紫いもソフトとか焼きたておせんべいとか。帰りに鳩のサブレーの一番でっかい缶を買って来いって言われますし」
「マジか。下調べ準備万端かよ。俺付き合わないぞ」
「いや別に? ここで解散して蓮くん先にひとりで帰ればいいじゃん?」
「嘘です、すみません、せめて駅まで一緒に歩いてください」
さっきの金沢さんみたいな90度のお辞儀……。そんなに怖いのかー。
「あー、地元に住んでるとなかなかやらないやつだね。せっかくだから僕もご一緒していいかな。
ファミレスでも、と思ったんだけども食べ歩きも楽しそうだからね。じゃあ、着替えてきたら気を巡らすコツを教えて、その後で食事して帰るということで?」
「はい、お願いします!」
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