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どえらい装備!! の巻
第47話 持ってる人・持ってない人
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寧々ちゃんの暴挙とも言える配信ではちょっとあり得ない感じの自己紹介に、魂飛ばしてる人がひとり。
私は肘でそいつの脇腹に軽ーく打撃を入れた。
「いっ! ええええーと、じゃあ、俺とゆ~かでダメージ入れて、法月さんはとどめをどんどん刺していくってことで」
「私がゆ~かなんだから、ネネって呼びなよ!」
「お、おまえ、それはさすがに……」
「ゆ……ゆ~かちゃん、安永蓮くん困ってるし、私は法月さんで構わないよ」
「いや待てよ、なんで俺だけフルネームで呼ばれてるわけ!?」
「ええっ、だ、だって、テレビで見てる俳優さんとか、なんかフルネームで呼んじゃうから……」
「わかる、わかる! 私もそう!」
『カオス度が増したな』
『芸能人フルネームで呼んじゃうのわかる』
『全員天然ボケ』
『そうか……そういえば推し以外の有名な俳優はフルネームで呼んでるわ』
芸能人フルネームで呼んじゃう問題は、どうもあるあるみたいだね。
「はいはいー、じゃあ、寧々ちゃんは私と同じ枠で、お互いに『蓮くん』『ネネ』で呼び合うように」
「どう考えてもおまえと同じ枠じゃないだろ、ゲストだぞ」
「わ、私もいきなり名前は……」
「じゃあもう、法月さんに安永くんでいいよ! はい、キリキリ行くよ。あそこにゴブリンいるから蓮くんゴー!」
「わ、わかった」
強引に呼び方問題を片付けて、湧いたゴブリンに蓮くんを特攻させる。
剣を振り上げて、あからさまに慣れてない動きで思いっきり叩きつける蓮くん。……って、キラって光ったー!
『クリティカルヒットだ!』
『初心者の剣でクリット!?』
『マジか、あれにDEX補正ないだろ』
『持って……いや、運がないな、イケメンヒーラー』
蓮くん、倒せないはずのゴブリンをクリティカルヒットで倒しちゃったよー! なんてこったーい!
「うわあああああ!! 倒しちまったー!」
ダンジョン内に響き渡る蓮くんの絶叫。岩壁だから響くこと響くこと!
叫びたいのは、私もだよ……。
もー、なんでこんな時にクリットしちゃうの!? 私でもまだ一度も出したことないのに!
「蓮くん、剣使用禁止! アイテムバッグに入れるから貸して!」
「じゃあ、俺はどうやって戦えば!?」
蓮くんから初心者の剣を取り上げると、蓮くんはあわあわとうろたえた。
さっきから予想外が起きすぎて、車の中から続くメンタルダメージが累積してるらしくて、置いて行かれるヤマトみたいな目で私を見上げてくる。
くっ、その目は反則……でもヤマトと蓮くんは根本から存在が違うから私は鬼になれるのだ!
「盾を右手に持ち替えて、盾でぶん殴って。
スライムには盾、ゴブリンには蹴り入れて! 盾はクリティカル出ないし、キックでクリットしても蓮くんはたかがしれてるから」
「わ、わかった……」
あああ、ダンジョンですら真に安全ではなかったか。
これは家に訓練用のタイヤ打ち込み台とか置かせないと駄目かな……。
ダンジョンに行けない日もあるんだし、後で一応送りつけておくか。木刀と一緒に。
「とりあえずLV上がらなくて良かった……」
ダンジョンアプリを確認する蓮くんは半泣きになってた。
寧々ちゃんは剣を持ったまま呆然としている。うん、呆然とするよね……。初ダンジョンでいきなりこんな展開だったら。
「気を取り直していこうー! どんどん攻撃してくよー。寧々ちゃん、とどめよろしく!」
「う、うん! 頑張る!」
なまくらの剣でゴブリンの頭をぶん殴っては離脱する私。頭殴られてふらついてるゴブリンに、割と思い切りよく体当たりのようにして剣をぶっ刺す寧々ちゃん。学校で戦闘訓練してるだけあって、蓮くんとは動きが比べものにならないね。
ゴブリンは消えて、後に魔石が残った。……なんだか魔石見るの久しぶりだな。全部ヤマトが食べちゃってたからなあ。
「とりあえずドロップは私のアイテムバッグに入れておくね」
魔石を拾いつつ、上から落ちてきたスライムも剣でぶん殴る。
なまくらの剣、重いから振るときに上腕二頭筋に力が入るのがよくわかるね。次LVアップしたら、STRがかなり上がってそう。
あっちーのゴブリンー! 今湧いたスライムー! と蓮くんに指示を出しつつ私も剣でモンスをぶん殴り続ける。
しばらくそれを続けたら、蓮くんが音を上げた。
「右腕痛い! これ左に変えてもいいか?」
「はやーい! 無駄な動きが多いからだよ。寧々ちゃんを見てごらん!? 最小限の動きでとどめ刺してるよ?」
「俺は冒険者科じゃないんだよ! 剣も盾も持ったの初めてなんだ!」
むう……そう言われるとこっちもそれ以上言えることはない。
ぜーぜー言ってる蓮くんの盾を外して左腕に付け替えてあげる。左腕でも裏拳――バックラーでやるシールドバッシュのことね――は余裕で行けるはず。
「凄い凄い、LV4まで上がったよ!」
1時間くらいで寧々ちゃんがアプリをチェックして、嬉しそうに報告してくれた。
寧々ちゃんの場合、LV3に上がった時点でクラフトスキル取得ステータスを満たしたらしい。例の脳内アナウンスが聞こえたって。
「じゃあ、3層に降りようか。出てくるモンスは一緒だけど、今度は集団で出るようになるから効率上がるよ」
「ちょっと怖いけど、ゆ~かちゃんがいるから頑張るね!」
『てぇてぇ』
『芋ジャー女子組てぇてぇ』
『ゆ~かちゃんとねねちゃん逃げてー』
ちょっと女子同士で盛り上がっただけでコメントが沸く! これどういう現象?
一方、3層に降りると聞いて蓮くんは不安げだ。
「俺、正直自信ない……」
「大丈夫、蓮くんが囲まれたら私が素手戦闘してでも切り開くから。最悪私はLV上がってもなんとかなる」
『ゆ~かちゃん頼もしい』
『蓮くん頼りない……』
コメントにとどめを刺されて蓮くんがへこむ。壁に手を突こうとしてるのかふらふらと壁に寄っていったら、その足下に突然何かが現れて思いっきりこけた!
「ぐえっ!」
「えっ、何!? って、青箱だー! 2層で!?」
宝箱が生える瞬間を見てしまった……。突然その場所に現れるって聞いてたけど、本当に突然なんだなあ。
『2層で青箱スポーン!?』
『前代未聞祭りだ』
『ゆ~か、やっぱり持ってるなー』
『蓮くん運がいい!!』
突然の青箱湧きに、コメント欄も大興奮だ。
というか、転んでる蓮くんは立ち直れてないけども。
でもこれは、今日の不運とメンタルダメージを一瞬にして覆す超幸運!
「えっ、宝箱? ああああああああ青箱! 授業で聞いた奴! 本当にあるんだね」
「マジか、てかそれにつまづくって俺どんだけ運がないんだ……いや、運が良いのか?」
「激運じゃない!? 青箱初めて見たー! 中身レア確定だよ、お手柄の蓮くん、開けてみよう!」
「お、おう」
青箱には基本罠があるんだけど、宝箱全体に言える例外として「初級ダンジョンの5層までは罠がない」というのがあるんだ。だから今日もサクッと開けて大丈夫。
蓮くんが震える手で青箱を開けてみたら、なんかきらきらした容器に入った桃っぽい物が出て来た!
「わー、なんか凄そうなものが出て来ました! 鑑定してみます! どれどれ……【神々の果実・復活】死んだ人に食べさせると生き返る奇跡の木の実……すご……よく考えたら凄くはないな」
「死んだ人に食べさせるって、どうやるんだ?」
「細かく刻んで口に入れるとか?」
「飲み込めないよね」
「すりおろして食道に無理矢理流し込む?」
「だから、内臓系全部動いてないんだってば」
「いっそ切開して、胃にぶちこむってのはどうだ」
「それって食べたことになるの?」
私たちが知恵を絞りつつ全力でうーむと悩んでたら、コメント欄が爆笑の渦に包み込まれていた。
『それ、ネタアイテム! 換金用!』
『ステータス上がる神々の果実の中でも唯一使えないクズアイテム!』
『そんなアイテムがあるんやw』
『持ってるなー、安永蓮!』
『ゆ~かの配信見てると前代未聞が多すぎる件』
「持ってる? 俺」
うつろな目で蓮くんが聞いてきたから、私は自信を持って笑顔で答えた。
「ううん、持ってないよ!」
私は肘でそいつの脇腹に軽ーく打撃を入れた。
「いっ! ええええーと、じゃあ、俺とゆ~かでダメージ入れて、法月さんはとどめをどんどん刺していくってことで」
「私がゆ~かなんだから、ネネって呼びなよ!」
「お、おまえ、それはさすがに……」
「ゆ……ゆ~かちゃん、安永蓮くん困ってるし、私は法月さんで構わないよ」
「いや待てよ、なんで俺だけフルネームで呼ばれてるわけ!?」
「ええっ、だ、だって、テレビで見てる俳優さんとか、なんかフルネームで呼んじゃうから……」
「わかる、わかる! 私もそう!」
『カオス度が増したな』
『芸能人フルネームで呼んじゃうのわかる』
『全員天然ボケ』
『そうか……そういえば推し以外の有名な俳優はフルネームで呼んでるわ』
芸能人フルネームで呼んじゃう問題は、どうもあるあるみたいだね。
「はいはいー、じゃあ、寧々ちゃんは私と同じ枠で、お互いに『蓮くん』『ネネ』で呼び合うように」
「どう考えてもおまえと同じ枠じゃないだろ、ゲストだぞ」
「わ、私もいきなり名前は……」
「じゃあもう、法月さんに安永くんでいいよ! はい、キリキリ行くよ。あそこにゴブリンいるから蓮くんゴー!」
「わ、わかった」
強引に呼び方問題を片付けて、湧いたゴブリンに蓮くんを特攻させる。
剣を振り上げて、あからさまに慣れてない動きで思いっきり叩きつける蓮くん。……って、キラって光ったー!
『クリティカルヒットだ!』
『初心者の剣でクリット!?』
『マジか、あれにDEX補正ないだろ』
『持って……いや、運がないな、イケメンヒーラー』
蓮くん、倒せないはずのゴブリンをクリティカルヒットで倒しちゃったよー! なんてこったーい!
「うわあああああ!! 倒しちまったー!」
ダンジョン内に響き渡る蓮くんの絶叫。岩壁だから響くこと響くこと!
叫びたいのは、私もだよ……。
もー、なんでこんな時にクリットしちゃうの!? 私でもまだ一度も出したことないのに!
「蓮くん、剣使用禁止! アイテムバッグに入れるから貸して!」
「じゃあ、俺はどうやって戦えば!?」
蓮くんから初心者の剣を取り上げると、蓮くんはあわあわとうろたえた。
さっきから予想外が起きすぎて、車の中から続くメンタルダメージが累積してるらしくて、置いて行かれるヤマトみたいな目で私を見上げてくる。
くっ、その目は反則……でもヤマトと蓮くんは根本から存在が違うから私は鬼になれるのだ!
「盾を右手に持ち替えて、盾でぶん殴って。
スライムには盾、ゴブリンには蹴り入れて! 盾はクリティカル出ないし、キックでクリットしても蓮くんはたかがしれてるから」
「わ、わかった……」
あああ、ダンジョンですら真に安全ではなかったか。
これは家に訓練用のタイヤ打ち込み台とか置かせないと駄目かな……。
ダンジョンに行けない日もあるんだし、後で一応送りつけておくか。木刀と一緒に。
「とりあえずLV上がらなくて良かった……」
ダンジョンアプリを確認する蓮くんは半泣きになってた。
寧々ちゃんは剣を持ったまま呆然としている。うん、呆然とするよね……。初ダンジョンでいきなりこんな展開だったら。
「気を取り直していこうー! どんどん攻撃してくよー。寧々ちゃん、とどめよろしく!」
「う、うん! 頑張る!」
なまくらの剣でゴブリンの頭をぶん殴っては離脱する私。頭殴られてふらついてるゴブリンに、割と思い切りよく体当たりのようにして剣をぶっ刺す寧々ちゃん。学校で戦闘訓練してるだけあって、蓮くんとは動きが比べものにならないね。
ゴブリンは消えて、後に魔石が残った。……なんだか魔石見るの久しぶりだな。全部ヤマトが食べちゃってたからなあ。
「とりあえずドロップは私のアイテムバッグに入れておくね」
魔石を拾いつつ、上から落ちてきたスライムも剣でぶん殴る。
なまくらの剣、重いから振るときに上腕二頭筋に力が入るのがよくわかるね。次LVアップしたら、STRがかなり上がってそう。
あっちーのゴブリンー! 今湧いたスライムー! と蓮くんに指示を出しつつ私も剣でモンスをぶん殴り続ける。
しばらくそれを続けたら、蓮くんが音を上げた。
「右腕痛い! これ左に変えてもいいか?」
「はやーい! 無駄な動きが多いからだよ。寧々ちゃんを見てごらん!? 最小限の動きでとどめ刺してるよ?」
「俺は冒険者科じゃないんだよ! 剣も盾も持ったの初めてなんだ!」
むう……そう言われるとこっちもそれ以上言えることはない。
ぜーぜー言ってる蓮くんの盾を外して左腕に付け替えてあげる。左腕でも裏拳――バックラーでやるシールドバッシュのことね――は余裕で行けるはず。
「凄い凄い、LV4まで上がったよ!」
1時間くらいで寧々ちゃんがアプリをチェックして、嬉しそうに報告してくれた。
寧々ちゃんの場合、LV3に上がった時点でクラフトスキル取得ステータスを満たしたらしい。例の脳内アナウンスが聞こえたって。
「じゃあ、3層に降りようか。出てくるモンスは一緒だけど、今度は集団で出るようになるから効率上がるよ」
「ちょっと怖いけど、ゆ~かちゃんがいるから頑張るね!」
『てぇてぇ』
『芋ジャー女子組てぇてぇ』
『ゆ~かちゃんとねねちゃん逃げてー』
ちょっと女子同士で盛り上がっただけでコメントが沸く! これどういう現象?
一方、3層に降りると聞いて蓮くんは不安げだ。
「俺、正直自信ない……」
「大丈夫、蓮くんが囲まれたら私が素手戦闘してでも切り開くから。最悪私はLV上がってもなんとかなる」
『ゆ~かちゃん頼もしい』
『蓮くん頼りない……』
コメントにとどめを刺されて蓮くんがへこむ。壁に手を突こうとしてるのかふらふらと壁に寄っていったら、その足下に突然何かが現れて思いっきりこけた!
「ぐえっ!」
「えっ、何!? って、青箱だー! 2層で!?」
宝箱が生える瞬間を見てしまった……。突然その場所に現れるって聞いてたけど、本当に突然なんだなあ。
『2層で青箱スポーン!?』
『前代未聞祭りだ』
『ゆ~か、やっぱり持ってるなー』
『蓮くん運がいい!!』
突然の青箱湧きに、コメント欄も大興奮だ。
というか、転んでる蓮くんは立ち直れてないけども。
でもこれは、今日の不運とメンタルダメージを一瞬にして覆す超幸運!
「えっ、宝箱? ああああああああ青箱! 授業で聞いた奴! 本当にあるんだね」
「マジか、てかそれにつまづくって俺どんだけ運がないんだ……いや、運が良いのか?」
「激運じゃない!? 青箱初めて見たー! 中身レア確定だよ、お手柄の蓮くん、開けてみよう!」
「お、おう」
青箱には基本罠があるんだけど、宝箱全体に言える例外として「初級ダンジョンの5層までは罠がない」というのがあるんだ。だから今日もサクッと開けて大丈夫。
蓮くんが震える手で青箱を開けてみたら、なんかきらきらした容器に入った桃っぽい物が出て来た!
「わー、なんか凄そうなものが出て来ました! 鑑定してみます! どれどれ……【神々の果実・復活】死んだ人に食べさせると生き返る奇跡の木の実……すご……よく考えたら凄くはないな」
「死んだ人に食べさせるって、どうやるんだ?」
「細かく刻んで口に入れるとか?」
「飲み込めないよね」
「すりおろして食道に無理矢理流し込む?」
「だから、内臓系全部動いてないんだってば」
「いっそ切開して、胃にぶちこむってのはどうだ」
「それって食べたことになるの?」
私たちが知恵を絞りつつ全力でうーむと悩んでたら、コメント欄が爆笑の渦に包み込まれていた。
『それ、ネタアイテム! 換金用!』
『ステータス上がる神々の果実の中でも唯一使えないクズアイテム!』
『そんなアイテムがあるんやw』
『持ってるなー、安永蓮!』
『ゆ~かの配信見てると前代未聞が多すぎる件』
「持ってる? 俺」
うつろな目で蓮くんが聞いてきたから、私は自信を持って笑顔で答えた。
「ううん、持ってないよ!」
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