43 / 273
どえらい装備!! の巻
第40話 あいちゃんの配信のためにみなとみらいへ
しおりを挟む
結局、魔力を流す方法はわからないまま。
蓮くんに聞いてみたけど、こやつは選ばれし天然の魔法使いだから「わからねえ」と言われた。くっそー。
ダンジョン1層なら広くて安全だしと思ってたんだけど、ヤマトが完全に私の命令を聞いてくれないと2層に行く危険があって良くないなあ。次回から場所は考え直そう。
ポーション1本飲んでも蓮くんが再度バテたので、そこで配信は終了して私たちはダンジョンの外に出た。
着替える前にヤマトを預けようと車に行ったら、ママが興奮気味にスマホを振り回している。
「速報! 知り合いの紹介で武器クラフトの職人さんと連絡取れたわ! 今度の土日にユズと蓮くんの武器を作って貰えるように頼んだから! 場所は鎌倉だからふたりで行けるわね?」
「えっ? 今度の土日? そんなに早くやって貰えるの? あっさり取れたね。てか、ママ送ってくれないの?」
「その日歩夢くんの朗読劇のマチネ取れてるの!! 無理! 日曜は融流くんのバーイベよ! 配信昼夜買ってあるから家から動かないから!
……クラフト職人は依頼料が高額だけど、そんなにみんながぱかぱか伝説金属で武器を作れるわけじゃないから、スケジュールは余裕があることが多いらしいわよ、さっき聞いた話けど」
ああ、ママの最優先はやはりそっちか……。オタクの推し俳には誰も敵わない。
あっさりスケジュール押さえられたのは驚いたけど、確かに伝説金属の武器なんて、普通はホイホイ持てる物じゃない。初心者ならなおさら。
普通は市販の武器か、ドロップ武器で地道にいい物へ切り替えて行きつつLVも上げるものだしね。
ちなみに、銃刀法という大変な法律があるんだけど、ダンジョンアプリを入れて冒険者であることを示せば、持ち歩くだけならクリア出来る。
街中で抜いたらアウトだし、アプリで「冒険者登録」してから長期間LV1のままでも、銃刀法逃れと見なされて逮捕されるけどね。
うん、ちょっと頭が切り替わって前向きになったかな! 武器作って貰えるの楽しみ!
MAG上げについては今度の配信の時に視聴者さんに相談してみるのもアリだ。冒険者がいるってわかってるし。
私は武器がまだ決まってないんだけど、今使ってるのはショートソードで、不便は感じてない。――でもこれだ、っていう確証も持ててない。そこら辺は職人さんに相談させて貰おうっと。
ダンジョンハウスで着替えて戻ってきて、蓮くんを家まで送りながら明日の特訓はないことと、当分は自分でまず走り込みで体力を付けることを指示してその日は解散。
そして、次の日の放課後はあいちゃんの配信にゲスト参加だ。今回は私の方のチャンネルでは流さない。なので、誘導は念入りにしておいたつもり。――それで。
「やる気が見られない」
茅ヶ崎駅で合流した瞬間に、あいちゃんにいきなり言われた言葉がそれだよ!
「どの辺? ファッションコーディネートの配信で見せるやる気ってどう表現すればいいの?」
「ナチュラルメイクのひとつもしてない。眉もいじってない。髪の毛も学校のまんま。結い直しすらしてない」
流れるようなダメ出しいただきましたー……。確かに、帰宅して顔は洗ったけど普段着に着替えてそのまま来ました。アイテムバッグの中にお財布とハンカチとのど飴を入れて。
「まあ、ゆーちゃんのことですからァ!? こんなことだろうと思ってましたしィ!? 全部私準備してきたけどね!!!!」
「やたら荷物が多いのはそれか! さすがはあいちゃん、激おこしてる割に面倒見がいい」
「しょうがない。先にドレッサーがある化粧室寄って、顔作ってから行くよ。私の配信で芋ジャーコールはさせないからね。芋ジャーなんて連想させない女の子に仕立て上げるよ」
そういうあいちゃんは学校が終わった後、ナチュラルメイクまでして髪の毛も巻いて来てる。これが、女子力! 私が持ってない攻撃力だ!
桜木町の駅で降りてから、動く歩道でお目当ての商業施設へ。
この動く歩道の上で歩くと、ちょっとぽよんぽよん反発があって楽しいんだけど、「動く歩道は歩くもんじゃない」ってあいちゃんにママみたいに怒られた。
あいちゃんは手回しが良いので、今日回る予定の店舗は撮影許可とってるんだって。あと、歩き回るから、商業施設自体にも連絡済みだそうで。そういう段取り立てる行動力凄いんだよね。
まずは化粧室で普段入らない方のエリアへ。そっちは定員3人の区切られて椅子が置いてある本当の意味での「化粧室」。鏡があって、コンセントがあって、お化粧直しに使うスペースだね。
「ゆーちゃんはポニテがトレードマークだから、髪は結い直してツヤ出しするだけにする。毛先だけ巻いても良いけど、どっちがいい?」
ほどいた私の髪をちゃっちゃとブラッシングしながら聞かれるけども……どっちがいいと言われましても。
「あいちゃんのお好きなように」
「わかった。毛先だけクルンと巻こう。いつものゆーちゃんとは違うんだぜってのを見せよう」
ブラッシングの途中でツヤ出しスプレーをプシャーッとされて、またブラッシング。おお……ヤマトに私がするような丁寧なブラッシングだ。
結局、あいちゃんに何度かお叱りの言葉をいただきながら、髪を結われ、巻かれ、眉毛抜かれて、「ナチュラルに見える手の込んだメイク」をされ……。
「ゆーちゃんって、毎日あれだけ走り込みしてる割に日焼けしないよねー。心肺機能を凄い鍛えてると日焼けの仕方違うらしいって聞いたことあるけど、それなのかな? でも紫外線ダメージは蓄積するんだから、日焼け止めはちゃんと塗りなよ。
一応3色持ってきたのに、私と同じ下地とファンデでいけるのが納得いかない」
「ソーイワレマシテモ……」
……もしかして、私にMAGについて文句言われてる時の蓮くんの気持ちってこんなだろうか。
蓮くんに聞いてみたけど、こやつは選ばれし天然の魔法使いだから「わからねえ」と言われた。くっそー。
ダンジョン1層なら広くて安全だしと思ってたんだけど、ヤマトが完全に私の命令を聞いてくれないと2層に行く危険があって良くないなあ。次回から場所は考え直そう。
ポーション1本飲んでも蓮くんが再度バテたので、そこで配信は終了して私たちはダンジョンの外に出た。
着替える前にヤマトを預けようと車に行ったら、ママが興奮気味にスマホを振り回している。
「速報! 知り合いの紹介で武器クラフトの職人さんと連絡取れたわ! 今度の土日にユズと蓮くんの武器を作って貰えるように頼んだから! 場所は鎌倉だからふたりで行けるわね?」
「えっ? 今度の土日? そんなに早くやって貰えるの? あっさり取れたね。てか、ママ送ってくれないの?」
「その日歩夢くんの朗読劇のマチネ取れてるの!! 無理! 日曜は融流くんのバーイベよ! 配信昼夜買ってあるから家から動かないから!
……クラフト職人は依頼料が高額だけど、そんなにみんながぱかぱか伝説金属で武器を作れるわけじゃないから、スケジュールは余裕があることが多いらしいわよ、さっき聞いた話けど」
ああ、ママの最優先はやはりそっちか……。オタクの推し俳には誰も敵わない。
あっさりスケジュール押さえられたのは驚いたけど、確かに伝説金属の武器なんて、普通はホイホイ持てる物じゃない。初心者ならなおさら。
普通は市販の武器か、ドロップ武器で地道にいい物へ切り替えて行きつつLVも上げるものだしね。
ちなみに、銃刀法という大変な法律があるんだけど、ダンジョンアプリを入れて冒険者であることを示せば、持ち歩くだけならクリア出来る。
街中で抜いたらアウトだし、アプリで「冒険者登録」してから長期間LV1のままでも、銃刀法逃れと見なされて逮捕されるけどね。
うん、ちょっと頭が切り替わって前向きになったかな! 武器作って貰えるの楽しみ!
MAG上げについては今度の配信の時に視聴者さんに相談してみるのもアリだ。冒険者がいるってわかってるし。
私は武器がまだ決まってないんだけど、今使ってるのはショートソードで、不便は感じてない。――でもこれだ、っていう確証も持ててない。そこら辺は職人さんに相談させて貰おうっと。
ダンジョンハウスで着替えて戻ってきて、蓮くんを家まで送りながら明日の特訓はないことと、当分は自分でまず走り込みで体力を付けることを指示してその日は解散。
そして、次の日の放課後はあいちゃんの配信にゲスト参加だ。今回は私の方のチャンネルでは流さない。なので、誘導は念入りにしておいたつもり。――それで。
「やる気が見られない」
茅ヶ崎駅で合流した瞬間に、あいちゃんにいきなり言われた言葉がそれだよ!
「どの辺? ファッションコーディネートの配信で見せるやる気ってどう表現すればいいの?」
「ナチュラルメイクのひとつもしてない。眉もいじってない。髪の毛も学校のまんま。結い直しすらしてない」
流れるようなダメ出しいただきましたー……。確かに、帰宅して顔は洗ったけど普段着に着替えてそのまま来ました。アイテムバッグの中にお財布とハンカチとのど飴を入れて。
「まあ、ゆーちゃんのことですからァ!? こんなことだろうと思ってましたしィ!? 全部私準備してきたけどね!!!!」
「やたら荷物が多いのはそれか! さすがはあいちゃん、激おこしてる割に面倒見がいい」
「しょうがない。先にドレッサーがある化粧室寄って、顔作ってから行くよ。私の配信で芋ジャーコールはさせないからね。芋ジャーなんて連想させない女の子に仕立て上げるよ」
そういうあいちゃんは学校が終わった後、ナチュラルメイクまでして髪の毛も巻いて来てる。これが、女子力! 私が持ってない攻撃力だ!
桜木町の駅で降りてから、動く歩道でお目当ての商業施設へ。
この動く歩道の上で歩くと、ちょっとぽよんぽよん反発があって楽しいんだけど、「動く歩道は歩くもんじゃない」ってあいちゃんにママみたいに怒られた。
あいちゃんは手回しが良いので、今日回る予定の店舗は撮影許可とってるんだって。あと、歩き回るから、商業施設自体にも連絡済みだそうで。そういう段取り立てる行動力凄いんだよね。
まずは化粧室で普段入らない方のエリアへ。そっちは定員3人の区切られて椅子が置いてある本当の意味での「化粧室」。鏡があって、コンセントがあって、お化粧直しに使うスペースだね。
「ゆーちゃんはポニテがトレードマークだから、髪は結い直してツヤ出しするだけにする。毛先だけ巻いても良いけど、どっちがいい?」
ほどいた私の髪をちゃっちゃとブラッシングしながら聞かれるけども……どっちがいいと言われましても。
「あいちゃんのお好きなように」
「わかった。毛先だけクルンと巻こう。いつものゆーちゃんとは違うんだぜってのを見せよう」
ブラッシングの途中でツヤ出しスプレーをプシャーッとされて、またブラッシング。おお……ヤマトに私がするような丁寧なブラッシングだ。
結局、あいちゃんに何度かお叱りの言葉をいただきながら、髪を結われ、巻かれ、眉毛抜かれて、「ナチュラルに見える手の込んだメイク」をされ……。
「ゆーちゃんって、毎日あれだけ走り込みしてる割に日焼けしないよねー。心肺機能を凄い鍛えてると日焼けの仕方違うらしいって聞いたことあるけど、それなのかな? でも紫外線ダメージは蓄積するんだから、日焼け止めはちゃんと塗りなよ。
一応3色持ってきたのに、私と同じ下地とファンデでいけるのが納得いかない」
「ソーイワレマシテモ……」
……もしかして、私にMAGについて文句言われてる時の蓮くんの気持ちってこんなだろうか。
33
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる