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ダメステアイドルと柚香の特訓の巻
第31話 呼び方問題いろいろ
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「で、ユニット名どうする? SE-RENでやっていいの? よくないよね」
ヤマトのお腹に思いっきり顔を埋めている蓮くんに私は尋ねた。
ヤマトもさ、ちょっとは嫌がって欲しいな。柴犬は飼い主に忠実で他の人に懐きにくくて頑固って言うじゃん。
でもこの子は半分仔犬のせいか、エヴリバディウェルカムオッケー! ヘーイ、カモーン! なんだよね。
「ユニット名……ダメだ、考えられない。名前の法則で言うと『YU-REN』になって幽霊みたいだ」
犬吸いに必死になってる蓮くんはIQが下がってる。
よし、ここはダメ人間になってない私がしっかりしないと!
「じゃあ私が決めていい?『SE-REN(仮)』で。あ、(偽)でもいいよ!」
「『(安)』もありそうなネーミングだな」
「なんでそれ知ってるの? さては蓮くんの親も読書家?」
「元のハードカバーのを足の小指の上に落としたことがある……」
「アイター!」
想像しただけで痛いな! あの本凄い分厚いもんねえ。
私たちの会話でママがすっくと立ち上がり、「読みたくなった!」と叫んで2階へ駆け上がっていった。
パパはスマホでキャンピングカーを検索しながら「このモデルは800万か……」とか呟いてる。うーん、フリーダム。
「ま、いいか……適当な名前の方が期間限定感が出そうだし、聖弥が復帰するまでだしな」
ヤマトを吸って落ち着いたのか、それとも吸ってもヤケになってるのが治らないのか、蓮くんがまさかのOKを出したよ!
「マ? 『SE-REN(仮)』で本当にいいの?」
「重要なのは名前じゃないだろ。X‘sには一応書いといたけど、聖弥の怪我の報告を配信でやらないとな。できるだけ早めに……明日の夜やってもいいか? ここで」
「なんでうちで!?」
このイケメンヒーラー、意外と図々しいよ!? 人の家をスタジオ代わりに使おうとしてくるよ!
私の当然すぎる疑問に、蓮くんはヤマトを抱っこし直しながら答えた。
「ゆ~か、ヤマト連れて出るんだろ?」
「あったり前じゃん。私とヤマトはニコイチだよ」
「うち、母親が『犬好きの犬アレルギー』なんだよ……昔は犬飼ってたんだけど、その子が死んでからはアレルギーのせいで飼ってない」
彼の回答を聞いて、私は崩れ落ちた。
犬好きの犬アレルギー……なんて、なんて悲しい響きなんだ!!
そんな人のいるところに、この世界の全てを虜にする愛らしくて人懐っこいヤマトを連れていくなんて鬼の所業、私には絶対できない!
犬アレルギーも猫アレルギーも、基本フケが原因で起きるものだから毎日お風呂入ってるヤマトは比較的安全かもしれないけど、それでも何が起こるかわからないし、ヤマト誰でもなめちゃう癖があるし!
「それは……仕方がないね……ママにはくれぐれも乱入しないようにお願いして、ここでやるのがいいか」
「悪い。聖弥とふたりの時はいいんだけど、ヤマトがいるからには出したいしさ」
ヤマト可愛いからねえ。出したいと思うのは仕方なし。それにうちの子だから、よそまで連れて行くのもちょっとねーと思うし。
「じゃあ、明日の夕方か夜配信してもいいか果穂さんに訊いてくれ」
「今上にいるよ? 自分で訊いてよ」
「おまえは……よその家で、他人の母親を呼びつけたり、勝手に階段上ってって質問したりできるのか?」
「必要とあらば。てか、仲良し加減かな?」
「勘弁してくれよ……俺はそこまで心臓強くないんだよぉ」
弱音を吐きながらどさくさに紛れてヤマトに頬ずりするのは感心せんな!
私は単純に面倒で言ったんだけど、蓮くんにとってはそうなのか。
私とかれんちゃんママなんか、「かれんちゃんママ~、お湯沸騰してるよー」とか1階と2階で呼んだりするけどなあ。
解せぬ、って顔をしていたら、パパがどっこいしょと声を出して立ち上がった。
「パパが言ってくるよ。蓮くんもそろそろ帰らないといけないだろう? どこに住んでるんだっけ、車で送っていくよ」
「ありがとうございます。俺の家は藤沢です。ここからだと山越えて反対側辺りで……えーと……なんてお呼びしたらいいですか」
ママの件があるからか、うちのパパへの呼び方を蓮くんは事前に尋ねた。
「呼び方? いや、別におじさんでもなんでもいいよ」
「柳川家にも普通の人がいた……」
「いや、なんでそこ感激してるの? 私とママが普通じゃないみたいじゃん」
ビシッと手の甲で蓮くんにツッコミを入れたら、パパと蓮くんが同時に「普通?」と聞き返してきた。
え? パパも私とママのこと普通じゃないと思ってるの!?
「あ、そうだ、明日の夕方か夜に重大発表がありますって投稿しとかないと」
蓮くんは私から目を逸らして片手でヤマトを抱っこしたままスマホを取り出し、パパは真顔で私に向かっていった。
「ユズ、よーーーーーく憶えておきなさい。世の中には『普通の人』なんていないんだよ。全員どっかしら変人だ。
数値的な平均はあるかもしれないけど、個性の普通はないんだよ」
なるほど、一見常識的に見えるけど実は凄いマニアであるパパが言うと説得力があるね……。
ヤマトのお腹に思いっきり顔を埋めている蓮くんに私は尋ねた。
ヤマトもさ、ちょっとは嫌がって欲しいな。柴犬は飼い主に忠実で他の人に懐きにくくて頑固って言うじゃん。
でもこの子は半分仔犬のせいか、エヴリバディウェルカムオッケー! ヘーイ、カモーン! なんだよね。
「ユニット名……ダメだ、考えられない。名前の法則で言うと『YU-REN』になって幽霊みたいだ」
犬吸いに必死になってる蓮くんはIQが下がってる。
よし、ここはダメ人間になってない私がしっかりしないと!
「じゃあ私が決めていい?『SE-REN(仮)』で。あ、(偽)でもいいよ!」
「『(安)』もありそうなネーミングだな」
「なんでそれ知ってるの? さては蓮くんの親も読書家?」
「元のハードカバーのを足の小指の上に落としたことがある……」
「アイター!」
想像しただけで痛いな! あの本凄い分厚いもんねえ。
私たちの会話でママがすっくと立ち上がり、「読みたくなった!」と叫んで2階へ駆け上がっていった。
パパはスマホでキャンピングカーを検索しながら「このモデルは800万か……」とか呟いてる。うーん、フリーダム。
「ま、いいか……適当な名前の方が期間限定感が出そうだし、聖弥が復帰するまでだしな」
ヤマトを吸って落ち着いたのか、それとも吸ってもヤケになってるのが治らないのか、蓮くんがまさかのOKを出したよ!
「マ? 『SE-REN(仮)』で本当にいいの?」
「重要なのは名前じゃないだろ。X‘sには一応書いといたけど、聖弥の怪我の報告を配信でやらないとな。できるだけ早めに……明日の夜やってもいいか? ここで」
「なんでうちで!?」
このイケメンヒーラー、意外と図々しいよ!? 人の家をスタジオ代わりに使おうとしてくるよ!
私の当然すぎる疑問に、蓮くんはヤマトを抱っこし直しながら答えた。
「ゆ~か、ヤマト連れて出るんだろ?」
「あったり前じゃん。私とヤマトはニコイチだよ」
「うち、母親が『犬好きの犬アレルギー』なんだよ……昔は犬飼ってたんだけど、その子が死んでからはアレルギーのせいで飼ってない」
彼の回答を聞いて、私は崩れ落ちた。
犬好きの犬アレルギー……なんて、なんて悲しい響きなんだ!!
そんな人のいるところに、この世界の全てを虜にする愛らしくて人懐っこいヤマトを連れていくなんて鬼の所業、私には絶対できない!
犬アレルギーも猫アレルギーも、基本フケが原因で起きるものだから毎日お風呂入ってるヤマトは比較的安全かもしれないけど、それでも何が起こるかわからないし、ヤマト誰でもなめちゃう癖があるし!
「それは……仕方がないね……ママにはくれぐれも乱入しないようにお願いして、ここでやるのがいいか」
「悪い。聖弥とふたりの時はいいんだけど、ヤマトがいるからには出したいしさ」
ヤマト可愛いからねえ。出したいと思うのは仕方なし。それにうちの子だから、よそまで連れて行くのもちょっとねーと思うし。
「じゃあ、明日の夕方か夜配信してもいいか果穂さんに訊いてくれ」
「今上にいるよ? 自分で訊いてよ」
「おまえは……よその家で、他人の母親を呼びつけたり、勝手に階段上ってって質問したりできるのか?」
「必要とあらば。てか、仲良し加減かな?」
「勘弁してくれよ……俺はそこまで心臓強くないんだよぉ」
弱音を吐きながらどさくさに紛れてヤマトに頬ずりするのは感心せんな!
私は単純に面倒で言ったんだけど、蓮くんにとってはそうなのか。
私とかれんちゃんママなんか、「かれんちゃんママ~、お湯沸騰してるよー」とか1階と2階で呼んだりするけどなあ。
解せぬ、って顔をしていたら、パパがどっこいしょと声を出して立ち上がった。
「パパが言ってくるよ。蓮くんもそろそろ帰らないといけないだろう? どこに住んでるんだっけ、車で送っていくよ」
「ありがとうございます。俺の家は藤沢です。ここからだと山越えて反対側辺りで……えーと……なんてお呼びしたらいいですか」
ママの件があるからか、うちのパパへの呼び方を蓮くんは事前に尋ねた。
「呼び方? いや、別におじさんでもなんでもいいよ」
「柳川家にも普通の人がいた……」
「いや、なんでそこ感激してるの? 私とママが普通じゃないみたいじゃん」
ビシッと手の甲で蓮くんにツッコミを入れたら、パパと蓮くんが同時に「普通?」と聞き返してきた。
え? パパも私とママのこと普通じゃないと思ってるの!?
「あ、そうだ、明日の夕方か夜に重大発表がありますって投稿しとかないと」
蓮くんは私から目を逸らして片手でヤマトを抱っこしたままスマホを取り出し、パパは真顔で私に向かっていった。
「ユズ、よーーーーーく憶えておきなさい。世の中には『普通の人』なんていないんだよ。全員どっかしら変人だ。
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