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ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻

第23話 アレが乱入してきた

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「スパチャありがとうございます、芋ジャーLOVEさん、くるっくさん、やまちーさん……あああああ、全員名前呼ぶの無理ー、呼べなかった人ごめんなさいっ!
 あの、本当にありがたく思っています! 小学生から配信始めて一昨日まで底辺配信者だったので。装備を買い換えたりするのに使わせていただきます」

『装備買い換えないでくれー』
『女子高生の芋ジャーからしか摂取出来ない栄養素があるんだー』
『ゆ~かちゃんはいつからダンジョンに潜ってるの?』

 芋ジャー勢の質問は華麗にスルーして、さっきも見かけたダンジョン歴に関する質問に答えることにしますよ。

「いつからダンジョンに潜ってるかって質問なんですけど、冒険者科の生徒は1年生は6月になるまでダンジョンアタックしちゃいけない決まりがあるんです。
 それまではひたすらに基礎体力作りですね。生徒の安全考慮だそうです。
 実際、今日蓮くんたち見てて学校の方針は正解なんだなと思いました。
 なので、6月に入ってから潜り始めたからダンジョン歴は4日だけですね」

『ダンジョン歴4日でこんなことに……恐ろしい子』
『高校入って2ヶ月であんな体力が付くものなのか?』
『豪運ガール』
『ブートキャンプの成果なんだねー』
『いつもソロアタック?』
『前世で一体どんな徳を積んだんだ』
「ソロは今日が初めてです。一応今までは学校の友達とパーティー組んで……あ、サツキきた」

 私がヤマトを抱っこしてソファにひとりで座ってるのに気づいたのか、サツキが来て腕の隙間から無理矢理潜り込んできた。そして、寝ちゃったヤマトをせっせと毛繕いし始める。
 ううう、可愛いね~、可愛いね~、犬と猫でWで可愛いよ。

『猫きたー!』
『可愛い!』
『ヤマトお世話されてる』
『突然の癒やし映像』
『猫の名前は?』
『猫って犬が嫌いなのかと思ってた』

 猫効果さすがだね! コメントの流れが一気に変わるよ。
 サツキはヤマトに教育的猫パンチはするんだけど、基本的にお姉ちゃん気質なのと、やっぱりヤマトがまだこどもだってわかるからか、打ち解けるのが異様に早かった。
 カンタはまだやんのかステップしてるんだけどね。

「うちには猫が3匹いて、このハチワレの子がサツキ、あと妹の白に黒ブチのメイと弟でキジトラのカンタがいます。尻尾はみんな長いです。
 サツキはとってもお世話焼きなので、初対面の時はパンチしてたけど今日私が学校行ってる間に仲良くなったみたいですね」

 そんなこと言ってる間に、サツキはヤマトとくっついて私の膝の上で無理矢理丸くなったよ。狭い狭い。落ちないように両手で支える私は犬猫の下僕です。

『ネーミングがト○ロじゃん……』
『猫の兄弟ってどうやって見分けるの?』
「うちの3匹は一緒に保護したから多分兄弟なんだけど、性格でなんとなくこの子がお姉ちゃん、この子が弟、って感じに勝手に決めてます。
 サツキは世話焼きでしっかり者だからお姉ちゃん。メイは自分が可愛いのをわかってるあざといちゃっかりさんなので妹。ビビりのカンタは弟って感じに」

 弾幕で流れる「なるほどー」。まあ、基本的には3匹ともママをお母さんと思ってるから、兄弟の序列決めたのはママなんだけど。

『専攻って1年から分かれないの? クラフト専攻かわいそう』

 あ、いい質問が来た。世間的にも冒険者は多いんだけど、冒険者科が高校にできたのはつい最近のことで、認知が低いんだよね。

「それはね、クラフト職人もテイマーも、戦闘ができないとレベルが上がらないからなんです。スキルからレシピをゲットするのもレベルアップの時と、後は宝箱からレシピ出たときでしょ?
 ジョブやスキルが付いても結局それを磨くにはダンジョンでのレベル上げが必要なんです。だから、1年生は共通で強制ブートキャンプです。世の中厳しいー!」

『ちゃんと理解してるんだねえ』
『ゆ~かちゃん、ダンジョンだと天然炸裂だと思ってたけど案外しっかりしてる』
「そーーーなんです。ゆ~か、案外しっかりしてるんですよ! 時々抜けてるのは確かなんですけど。
 どーもどーも、ゆ~かの母です。みなさん、娘を応援していただきありがとうございます」

 うわーーーーーーーー!
 ママが乱入してきたーーー! リビングでやったの大失敗だこれ! 私の座ってるソファの後ろにきて、きっちりカメラに収まってる!

 しかもサンバ仮面!! サンバ仮面で画面に向かってお辞儀してる。何狙いなのこれ!?
 服や仕草は落ち着いた大人の女性って感じなのにサンバ仮面で一気に変人だよ。ギャップ萌え狙いなの?

「やめてよ、サンバ仮面! オア~」
「オア~」

 サツキとヤマトを抱っこしたまま、後ろを向いてサンバ仮面状態のママとコブダイの喧嘩をする。
 これは我が家では意見のぶつかり合いがあったときにやる儀式なんだよね。ぶつかり合ってる間に割とどうでもよくなるという効果がある。

『今の何?』
『突然の奇行』
『困惑でアイス溶けた』
『ゆ~かちゃんママも変な人か』
『今日湘南ダンジョンに来たときもああだったぞ』

「我が家では今のは『コブダイの喧嘩』と言ってます。コブダイがどんな喧嘩するのか知らないけど」
『コブダイじゃなくてムツゴロウの喧嘩じゃない?』
『……今、それなりの力で押してたように見えたけど』
「うん、ちょっとおでこ痛いくらいの力で押し合ってます」
『ゆ~かちゃんのSTRに対抗出来るママさんis何者……』
「ええっ!!」

 視聴者さんからの指摘で気づいて、私は慌てて後ろを振り返った。
 そうだよ! ぶつかってきた輩にもよろけない私だよ!? その私とコブダイの喧嘩が出来るママってどういう事なの!? 

「オ~ホホホホホ! 邪魔したわね、さらば!」

 私から何かを訊かれる前に察して、ママは怪盗がマントをバッサーってするみたいなポーズを取って逃げていった。

『困惑ー』
『困惑ー』
『困惑ー』
「私も困惑ー……あ、30分過ぎてる。なんか納得いかないけど切りがいいので今日はここまでで。サザンビーチダンジョンにはちょっと行けなくなっちゃったから、次回からはライブ配信するときにはX‘sに告知します。
 それでは、おやすみなさーい」

 画面に向かって笑顔で手を振り、サツキとヤマトを抱えたまま手を伸ばして配信停止の操作をする。

 サンバ仮面め……いつか見てろよ……。
 次から雑談実況は部屋でやることにしよ。
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