20 / 273
ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻
第19話 おまえVSイケメンヒーラー
しおりを挟む
「うわあ……凄い啖呵切った」
夜道歩くときは気をつけろよ、って私たちに絡んで来た輩よりたち悪くない?
まあ、ママの場合は本当にただの脅しなんだけど。いや、ただの脅しって何だ、脅しは脅しだわ……。
「おまえの母親、凄えな……」
さっきから脱力してる蓮くんが、ママの迫力に圧倒されて風に吹き消されそうな声で呟いた。
大丈夫かな? なんかダンジョンの中にいたときより存在感が希薄になってるように見えるけど。
「モンペなの。モンスターペアレント。ていうか、モンスターなペアレント? いや、ファンだからモンファン? 推しの事になると私のこと以上に熱いから」
「でもそういう人がいてくれると、嬉しいな」
「大丈夫大丈夫、きっと蓮くんたちにもいるって」
「他人事、気楽だよな……」
あ、口が悪いのは健在だった。大丈夫そうだ。
救急隊員さんがママに近付き、搬送先が決まったことを伝えていた。搬送先は南部総合病院らしい。茅ヶ崎にある大きい病院の中ではここから一番近いところかな。
「搬送先は、茅ヶ崎の南部総合病院です、と」
早速蓮くんがLIMEで社長さんにメッセージを送っている。うん、さっきママが怒鳴りつけたから、こういうときは一方的にメッセージ送るのがいいね。
「じゃあ、行こうか。蓮くんもゆ~かと一緒に送っていくわよ。
みなさん、いろいろありがとうございました。これからもゆ~かのことをよろしくお願いします」
手伝ってくれた周りの人に深々とお辞儀をするママ。でもサンバ仮面だからいまいち締まらない!
「あの、ゆ~かちゃんのお母さん、写真アップOKですか?」
「仮面付けてるのでいいですよ。ホホホ」
しかも写真出しOKしてるよ……。仮面付けて素顔がわからなければいいと思ってるのかな。むしろこれ被ってることで目立ちまくってるんだけど。
「ヤマト、おいで」
「ヒャン」
ヤマトは周りの人に入れ替わり立ち替わりご機嫌でモフられていたけど、私の一言で駆け寄ってきた。
う~ん、可愛いでしゅね~! ちゃんとマスターの言うこと聞いて偉ーい!
車に乗るときにヤマトを犬用ウェットシートで全身拭いて、後部座席に乗って私の膝の上で抱っこ。
ヤマトはちょっとおねむみたい。ほかほかしてる。今日は大物と戦ったからね。瞬殺だったけども。
蓮くんも私の隣に座り、ママが車を発進させた。
「そういえば、おまえさ……」
蓮くんがふと思い出したという様子で私に話しかけてきた。おまえ、という呼び方にいい加減イラッとするなあ。
「なんですか? イケメンヒーラー」
「その、褒められてるのかけなされてるのかよくわかんねえ呼び方やめろ! さっきまで蓮くんって呼んでただろ!?」
「私もゆ~かっていうOネームがありますぅ! 最初に名乗ったよね!? 人の名前くらい憶えなさいよ、イケメンヒーラー」
「くっ……」
特大ブーメランをくらってすっごく悔しそうに下を向く蓮くん。やがて彼はぼそっと衝撃発言をかましてきた。
「……悪い。実はテンパってて名前覚えてなかった」
「ええええー!」
びっくりだよ。人の名前くらい覚えろって散々言ってた本人が憶えてなかったとは。
「ごめんってば。その、ゆ~か……さん」
「気持ち悪っ! たった今まで『おまえ』呼びしてきてた人がさん付けしてくるの、予想外に気持ち悪っ!」
「ちくしょー! じゃあなんて呼べばいいんだよ! ゆ~か様か!?」
あ、逆ギレした。この短い時間の付き合いで既にわかっちゃったけど、この人結構短気だよね。私も人のことは言えませんが。
「ゆ~かでいいよ。
というか、配信中じゃないから改めて自己紹介するね。柳川柚香、高校1年。この子は従魔のヤマト。配信は小学生の頃からやってるんだ。ダンジョン実況始めたのは6月に入ってから。冒険者科の生徒は6月になるまでダンジョンアタック解禁されないの」
「それで俺よりレベル低かったのか。……聞きたかったのはさ、さっきダンジョンの中で配信してたとき、ゆ~かの同接3000人って言ってただろ? ダンジョン出てからもおまえ……ゆ~かのこと知ってるみたいな人たちがたくさんいたし。
有名配信者なのか?」
「うっ、良かった、普通の人がいた!」
私たちのことを知らない人がいると安心する妙な感覚!
今朝から周りの態度が一変したから私自身も戸惑ってたんだよ。悪ノリはしてたけど。
「な、何だよその反応」
「私ね、昨日あのサザンビーチダンジョンでヤマトを見つけて、最初は迷子犬だと思って保護しようとしたらテイムしちゃったの。
それだけじゃなくて、ヤマトが規格外にステータス高くて、配信見てた人たちが『何だ?』ってなってどんどん増えてって、モンスを追いかけて走り回るヤマトを止めようと私も走り回ってたら、その動画が一晩経ったら50万再生されてて、知らない間に有名人になってて」
「ご、50万!?」
驚きのあまり蓮くんの声が裏返った。
夜道歩くときは気をつけろよ、って私たちに絡んで来た輩よりたち悪くない?
まあ、ママの場合は本当にただの脅しなんだけど。いや、ただの脅しって何だ、脅しは脅しだわ……。
「おまえの母親、凄えな……」
さっきから脱力してる蓮くんが、ママの迫力に圧倒されて風に吹き消されそうな声で呟いた。
大丈夫かな? なんかダンジョンの中にいたときより存在感が希薄になってるように見えるけど。
「モンペなの。モンスターペアレント。ていうか、モンスターなペアレント? いや、ファンだからモンファン? 推しの事になると私のこと以上に熱いから」
「でもそういう人がいてくれると、嬉しいな」
「大丈夫大丈夫、きっと蓮くんたちにもいるって」
「他人事、気楽だよな……」
あ、口が悪いのは健在だった。大丈夫そうだ。
救急隊員さんがママに近付き、搬送先が決まったことを伝えていた。搬送先は南部総合病院らしい。茅ヶ崎にある大きい病院の中ではここから一番近いところかな。
「搬送先は、茅ヶ崎の南部総合病院です、と」
早速蓮くんがLIMEで社長さんにメッセージを送っている。うん、さっきママが怒鳴りつけたから、こういうときは一方的にメッセージ送るのがいいね。
「じゃあ、行こうか。蓮くんもゆ~かと一緒に送っていくわよ。
みなさん、いろいろありがとうございました。これからもゆ~かのことをよろしくお願いします」
手伝ってくれた周りの人に深々とお辞儀をするママ。でもサンバ仮面だからいまいち締まらない!
「あの、ゆ~かちゃんのお母さん、写真アップOKですか?」
「仮面付けてるのでいいですよ。ホホホ」
しかも写真出しOKしてるよ……。仮面付けて素顔がわからなければいいと思ってるのかな。むしろこれ被ってることで目立ちまくってるんだけど。
「ヤマト、おいで」
「ヒャン」
ヤマトは周りの人に入れ替わり立ち替わりご機嫌でモフられていたけど、私の一言で駆け寄ってきた。
う~ん、可愛いでしゅね~! ちゃんとマスターの言うこと聞いて偉ーい!
車に乗るときにヤマトを犬用ウェットシートで全身拭いて、後部座席に乗って私の膝の上で抱っこ。
ヤマトはちょっとおねむみたい。ほかほかしてる。今日は大物と戦ったからね。瞬殺だったけども。
蓮くんも私の隣に座り、ママが車を発進させた。
「そういえば、おまえさ……」
蓮くんがふと思い出したという様子で私に話しかけてきた。おまえ、という呼び方にいい加減イラッとするなあ。
「なんですか? イケメンヒーラー」
「その、褒められてるのかけなされてるのかよくわかんねえ呼び方やめろ! さっきまで蓮くんって呼んでただろ!?」
「私もゆ~かっていうOネームがありますぅ! 最初に名乗ったよね!? 人の名前くらい憶えなさいよ、イケメンヒーラー」
「くっ……」
特大ブーメランをくらってすっごく悔しそうに下を向く蓮くん。やがて彼はぼそっと衝撃発言をかましてきた。
「……悪い。実はテンパってて名前覚えてなかった」
「ええええー!」
びっくりだよ。人の名前くらい覚えろって散々言ってた本人が憶えてなかったとは。
「ごめんってば。その、ゆ~か……さん」
「気持ち悪っ! たった今まで『おまえ』呼びしてきてた人がさん付けしてくるの、予想外に気持ち悪っ!」
「ちくしょー! じゃあなんて呼べばいいんだよ! ゆ~か様か!?」
あ、逆ギレした。この短い時間の付き合いで既にわかっちゃったけど、この人結構短気だよね。私も人のことは言えませんが。
「ゆ~かでいいよ。
というか、配信中じゃないから改めて自己紹介するね。柳川柚香、高校1年。この子は従魔のヤマト。配信は小学生の頃からやってるんだ。ダンジョン実況始めたのは6月に入ってから。冒険者科の生徒は6月になるまでダンジョンアタック解禁されないの」
「それで俺よりレベル低かったのか。……聞きたかったのはさ、さっきダンジョンの中で配信してたとき、ゆ~かの同接3000人って言ってただろ? ダンジョン出てからもおまえ……ゆ~かのこと知ってるみたいな人たちがたくさんいたし。
有名配信者なのか?」
「うっ、良かった、普通の人がいた!」
私たちのことを知らない人がいると安心する妙な感覚!
今朝から周りの態度が一変したから私自身も戸惑ってたんだよ。悪ノリはしてたけど。
「な、何だよその反応」
「私ね、昨日あのサザンビーチダンジョンでヤマトを見つけて、最初は迷子犬だと思って保護しようとしたらテイムしちゃったの。
それだけじゃなくて、ヤマトが規格外にステータス高くて、配信見てた人たちが『何だ?』ってなってどんどん増えてって、モンスを追いかけて走り回るヤマトを止めようと私も走り回ってたら、その動画が一晩経ったら50万再生されてて、知らない間に有名人になってて」
「ご、50万!?」
驚きのあまり蓮くんの声が裏返った。
39
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる