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ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻

第15話 ファンの気持ちを考えろ

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『サザンビーチダンジョンに隠し部屋だと!?』
『あそこは初級故に探索されつくしたと思ってたのに』
『昨日は柴犬従魔で今日は隠し部屋……なんという豪運なのか』
『イケメンも拾ったしな』

 コメント欄が物凄い勢いで流れていく。みんな、まさかの隠し部屋発見に盛り上がってる。私も驚いてるよ。ダンジョン潜り初めて4回目でこんなことになるなんて。

「私もサザンビーチダンジョンは探索されつくしてるって思ってました! 多分、ヤマトの嗅覚がなかったら見つけられなかったんじゃないかな? 隠し部屋に入ってみます! っと、その前に」

 私は隠し部屋の前から、アイドルふたりの前まで走って戻った。
 Dアイドルで、事務所社長の命令でギャラド……じゃなくてシーサーペントを倒そうとしてたんなら、彼らも配信してたはず。

 怪我して、見ていたファンを心配させて終わりなんて悲しすぎる。
 私にはわかる。だって、ペンライト6本振りながら推しのライブ見てるママを身近で見てるから。

「ねえ、イケメンヒーラー……じゃなくて、えーと」
「安永蓮だよ、いい加減憶えとけ。おまえ、心の声ダダ漏れ過ぎないか?」
「蓮くん、あっちで隠し部屋を見つけたから、一緒に行かない?」

 私の提案にイケメンヒーラー改め蓮くんは驚きすぎたのか薄く口を開いて固まった。ああー、アイドルがそんな顔しちゃダメでしょ。

「なんでだ? 俺たちと関係ないだろ」
「関係ないよ。でも、配信してたんでしょ? このまま終わったらファンの人も心配したまま終わって悲しいんじゃないかと思って。
 私はあなたたちのこと知らないけど、推しがいる人の気持ちはちょっとわかる」
『ゆ~かちゃん、優しい!』
『しかしアイドル相手にいきなり名前呼びは度胸ある』
『いいから隠し部屋ー、早くー』

 ふたりを撮影していたらしいスマホはまだ浮いている。それを見ながら蓮くんは少しだけ悩んで――。

「気遣いサンキュ。じゃあ、一緒に行こうぜ、隠し部屋。
 聖弥、悪いけどあとちょっと待っててくれ。未発見の隠し部屋が撮れる機会なんてないだろうから」
「大丈夫、ここならモンスターも出ないし、僕の代わりに隠し部屋の財宝撮って来なよ。頼んだよ、蓮」

 あ、ヤバ、一瞬「尊いっ!」って叫びそうになった。
 なんだろう、このお互いのことを信頼してるのが伝わってくる感じ、BでLな漫画とかにありそうな!

「……おい、その邪悪な目付きは何だよ」

 うっ、一瞬よこしまな妄想に走りかけたのに気づかれた!

「ナンデモナイヨー! じゃあ、行こう」
「うわっ、ちょっと待て、おまえいきなり走るなよ! 追いつけないだろ!!」

 そんなこと知らないよー。まあ、隠し部屋の入り口で待ってあげるけどね。
 私が砂浜を往復で走って息も切らせてないというのに、蓮くんは隠し部屋の前に辿り着いたとき、肩で息をしていた。

 うーむ、私よりレベルが高いのに……でも、アイドルって言ってたし冒険者科に入ってるわけじゃなさそうだし、こんなもんかなあ。

「お待たせしました。シーサーペントに挑んで負けたアイドルが可哀想だったので、一緒に隠し部屋初公開の瞬間を映したいと思います」
『意外に毒舌』
『いや、優しいだろ』
『俺なら絶対ひとりで行くぞ』
「……どうも、情けを掛けられた駆け出しDアイドル、『SE-RENシーレン』の安永蓮です……」

 首を斜めに倒して、死んだ魚みたいなよどんだ目をした蓮くんが私の隣に立つ。

「ワンワン!」
「そして、世界最強に可愛い柴犬、ヤマトきゅんで~す♡」
『存じております』
『存じております』
『存じております』
『はよ隠し部屋入れ』
「はい、じゃあサザンビーチダンジョン最下層の隠し部屋、初公開です!」

 私はさっき体当たりで壊した壁の穴を潜って、隠し部屋に踏み込んだ。
 そこにあった物は――。

「うわぁー! 凄い、きれーい!」

 海のダンジョンにふさわしい青が広がっている。その光景に私は思わず声を上げていた。
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