16 / 271
ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻
第15話 ファンの気持ちを考えろ
しおりを挟む
『サザンビーチダンジョンに隠し部屋だと!?』
『あそこは初級故に探索されつくしたと思ってたのに』
『昨日は柴犬従魔で今日は隠し部屋……なんという豪運なのか』
『イケメンも拾ったしな』
コメント欄が物凄い勢いで流れていく。みんな、まさかの隠し部屋発見に盛り上がってる。私も驚いてるよ。ダンジョン潜り初めて4回目でこんなことになるなんて。
「私もサザンビーチダンジョンは探索されつくしてるって思ってました! 多分、ヤマトの嗅覚がなかったら見つけられなかったんじゃないかな? 隠し部屋に入ってみます! っと、その前に」
私は隠し部屋の前から、アイドルふたりの前まで走って戻った。
Dアイドルで、事務所社長の命令でギャラド……じゃなくてシーサーペントを倒そうとしてたんなら、彼らも配信してたはず。
怪我して、見ていたファンを心配させて終わりなんて悲しすぎる。
私にはわかる。だって、ペンライト6本振りながら推しのライブ見てるママを身近で見てるから。
「ねえ、イケメンヒーラー……じゃなくて、えーと」
「安永蓮だよ、いい加減憶えとけ。おまえ、心の声ダダ漏れ過ぎないか?」
「蓮くん、あっちで隠し部屋を見つけたから、一緒に行かない?」
私の提案にイケメンヒーラー改め蓮くんは驚きすぎたのか薄く口を開いて固まった。ああー、アイドルがそんな顔しちゃダメでしょ。
「なんでだ? 俺たちと関係ないだろ」
「関係ないよ。でも、配信してたんでしょ? このまま終わったらファンの人も心配したまま終わって悲しいんじゃないかと思って。
私はあなたたちのこと知らないけど、推しがいる人の気持ちはちょっとわかる」
『ゆ~かちゃん、優しい!』
『しかしアイドル相手にいきなり名前呼びは度胸ある』
『いいから隠し部屋ー、早くー』
ふたりを撮影していたらしいスマホはまだ浮いている。それを見ながら蓮くんは少しだけ悩んで――。
「気遣いサンキュ。じゃあ、一緒に行こうぜ、隠し部屋。
聖弥、悪いけどあとちょっと待っててくれ。未発見の隠し部屋が撮れる機会なんてないだろうから」
「大丈夫、ここならモンスターも出ないし、僕の代わりに隠し部屋の財宝撮って来なよ。頼んだよ、蓮」
あ、ヤバ、一瞬「尊いっ!」って叫びそうになった。
なんだろう、このお互いのことを信頼してるのが伝わってくる感じ、BでLな漫画とかにありそうな!
「……おい、その邪悪な目付きは何だよ」
うっ、一瞬よこしまな妄想に走りかけたのに気づかれた!
「ナンデモナイヨー! じゃあ、行こう」
「うわっ、ちょっと待て、おまえいきなり走るなよ! 追いつけないだろ!!」
そんなこと知らないよー。まあ、隠し部屋の入り口で待ってあげるけどね。
私が砂浜を往復で走って息も切らせてないというのに、蓮くんは隠し部屋の前に辿り着いたとき、肩で息をしていた。
うーむ、私よりレベルが高いのに……でも、アイドルって言ってたし冒険者科に入ってるわけじゃなさそうだし、こんなもんかなあ。
「お待たせしました。シーサーペントに挑んで負けたアイドルが可哀想だったので、一緒に隠し部屋初公開の瞬間を映したいと思います」
『意外に毒舌』
『いや、優しいだろ』
『俺なら絶対ひとりで行くぞ』
「……どうも、情けを掛けられた駆け出しDアイドル、『SE-REN』の安永蓮です……」
首を斜めに倒して、死んだ魚みたいなよどんだ目をした蓮くんが私の隣に立つ。
「ワンワン!」
「そして、世界最強に可愛い柴犬、ヤマトきゅんで~す♡」
『存じております』
『存じております』
『存じております』
『はよ隠し部屋入れ』
「はい、じゃあサザンビーチダンジョン最下層の隠し部屋、初公開です!」
私はさっき体当たりで壊した壁の穴を潜って、隠し部屋に踏み込んだ。
そこにあった物は――。
「うわぁー! 凄い、きれーい!」
海のダンジョンにふさわしい青が広がっている。その光景に私は思わず声を上げていた。
『あそこは初級故に探索されつくしたと思ってたのに』
『昨日は柴犬従魔で今日は隠し部屋……なんという豪運なのか』
『イケメンも拾ったしな』
コメント欄が物凄い勢いで流れていく。みんな、まさかの隠し部屋発見に盛り上がってる。私も驚いてるよ。ダンジョン潜り初めて4回目でこんなことになるなんて。
「私もサザンビーチダンジョンは探索されつくしてるって思ってました! 多分、ヤマトの嗅覚がなかったら見つけられなかったんじゃないかな? 隠し部屋に入ってみます! っと、その前に」
私は隠し部屋の前から、アイドルふたりの前まで走って戻った。
Dアイドルで、事務所社長の命令でギャラド……じゃなくてシーサーペントを倒そうとしてたんなら、彼らも配信してたはず。
怪我して、見ていたファンを心配させて終わりなんて悲しすぎる。
私にはわかる。だって、ペンライト6本振りながら推しのライブ見てるママを身近で見てるから。
「ねえ、イケメンヒーラー……じゃなくて、えーと」
「安永蓮だよ、いい加減憶えとけ。おまえ、心の声ダダ漏れ過ぎないか?」
「蓮くん、あっちで隠し部屋を見つけたから、一緒に行かない?」
私の提案にイケメンヒーラー改め蓮くんは驚きすぎたのか薄く口を開いて固まった。ああー、アイドルがそんな顔しちゃダメでしょ。
「なんでだ? 俺たちと関係ないだろ」
「関係ないよ。でも、配信してたんでしょ? このまま終わったらファンの人も心配したまま終わって悲しいんじゃないかと思って。
私はあなたたちのこと知らないけど、推しがいる人の気持ちはちょっとわかる」
『ゆ~かちゃん、優しい!』
『しかしアイドル相手にいきなり名前呼びは度胸ある』
『いいから隠し部屋ー、早くー』
ふたりを撮影していたらしいスマホはまだ浮いている。それを見ながら蓮くんは少しだけ悩んで――。
「気遣いサンキュ。じゃあ、一緒に行こうぜ、隠し部屋。
聖弥、悪いけどあとちょっと待っててくれ。未発見の隠し部屋が撮れる機会なんてないだろうから」
「大丈夫、ここならモンスターも出ないし、僕の代わりに隠し部屋の財宝撮って来なよ。頼んだよ、蓮」
あ、ヤバ、一瞬「尊いっ!」って叫びそうになった。
なんだろう、このお互いのことを信頼してるのが伝わってくる感じ、BでLな漫画とかにありそうな!
「……おい、その邪悪な目付きは何だよ」
うっ、一瞬よこしまな妄想に走りかけたのに気づかれた!
「ナンデモナイヨー! じゃあ、行こう」
「うわっ、ちょっと待て、おまえいきなり走るなよ! 追いつけないだろ!!」
そんなこと知らないよー。まあ、隠し部屋の入り口で待ってあげるけどね。
私が砂浜を往復で走って息も切らせてないというのに、蓮くんは隠し部屋の前に辿り着いたとき、肩で息をしていた。
うーむ、私よりレベルが高いのに……でも、アイドルって言ってたし冒険者科に入ってるわけじゃなさそうだし、こんなもんかなあ。
「お待たせしました。シーサーペントに挑んで負けたアイドルが可哀想だったので、一緒に隠し部屋初公開の瞬間を映したいと思います」
『意外に毒舌』
『いや、優しいだろ』
『俺なら絶対ひとりで行くぞ』
「……どうも、情けを掛けられた駆け出しDアイドル、『SE-REN』の安永蓮です……」
首を斜めに倒して、死んだ魚みたいなよどんだ目をした蓮くんが私の隣に立つ。
「ワンワン!」
「そして、世界最強に可愛い柴犬、ヤマトきゅんで~す♡」
『存じております』
『存じております』
『存じております』
『はよ隠し部屋入れ』
「はい、じゃあサザンビーチダンジョン最下層の隠し部屋、初公開です!」
私はさっき体当たりで壊した壁の穴を潜って、隠し部屋に踏み込んだ。
そこにあった物は――。
「うわぁー! 凄い、きれーい!」
海のダンジョンにふさわしい青が広がっている。その光景に私は思わず声を上げていた。
40
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる