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ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻
第11話 なるほど実感、犬まっしぐら!
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ダンジョンの入り口をくぐると、そこは新宿駅だった。――いや、ただの比喩だけど。
人多すぎ! モンスターの出ない第一層なのに、ここで見たことがないほどの人がいる。
とりあえずここに用はないので、私はヤマトを抱っこしたままで第二層への階段を降りた。ここも人だらけ。モンスターよりも人が多いってどういうことだろうね。もう、ゴブリンもスライムも湧いた側からキルされている。
うーん、ヤマトもいるし、5層以下を目指そうかな。配信するにしても、あんまり人の映り込みが多いと肖像権とか問題になりそうだし。人が多すぎて、ヤマトがさっきからそわそわしてるんだよね。
「ヤマト、ちょっと下に行こうか」
一応言ってみると、ヤマトは口を開いて笑顔になった。私はヤマトを下ろすと、リードを持って走る体勢に入った。
「ヤマト、ゴー!」
「ワン!」
その一言で始まる、異様な速度のダッシュ。朝のランニングよりも速い!
「あっ、犬がいるぞ!」
「あれがヤマト! 可愛いー!」
「50万再生のシンデレラガール、今日も芋ジャーか」
うっさいわ! これは初心者の服っていうれっきとした初心者3点セットなんだから! まだダンジョン入り始めて数日だから、他の装備持ってないんだもん!
2層に溢れるダンジョン初心者と思われる人の間を縫って、私とヤマトは走る。
そして、3層に降りてもやっぱり人が多い! どうしようかなと思っていたら、ヤマトは明らかにある一点を目指して走っていた。
モンスターかなと思ったら、第4層への階段だ。私はまだ一度も行ったことがない。かれんちゃんたちも昨日が初4層だったはず。
ちょっと迷ったけど、ヤマトを信じて第4層へ。
第4層は、さすがにあんまり人がいなかった。サザンビーチダンジョンは第1層から第3層までが何のギミックもないただの土の地面だけのフロアで、第4層からは森林エリア。
聞いた話だけど、7層以降はここのダンジョンの周囲のような砂浜エリアだそうだ。走りにくい分スタミナを鍛えるには良さそう。――いや、それなら普通に海岸走ればいいか。
ここの最深部は第10層で、レベルが10を超えてれば踏破できてしまう。それが初心者ダンジョンと言われる所以なんだけど。
「ヤマト、ちょっと待っててね。準備しちゃうから」
私がリュックを下ろすと、ヤマトはぺたんと腹ばいになった。ああん、なんという可愛さ! スフィンクスのポーズだね。
リュックからニーパッドとエルボーパッド、そして初心者の盾を取り出して装着。スマホも通常モードから空中浮遊自動追尾機能をオンにする。
これはダンジョンが出来てから、ダンジョン産のオリハルコンを原材料として使って開発されたシステムらしくて、昔のスマホは浮かなかったんだよと聞いて驚いた覚えがある。
「『ゆ~かのダンジョン配信』はっじまっるよー! 今日もヤマトと一緒でーす。なんと、昨日体重を量ってみたら。ヤマトは4キロでした! 軽いですね。うち3匹猫がいるんですけど、全員より軽かったです! でもこれからどんどん大きくなるんだよね~、ヤマトしゃ~ん?」
準備が出来たので、ヤマトを抱っこして配信開始。スマホに向かって、笑顔で手を振る。驚いたことに、すぐにコメントが流れていった。
『待ってました!』
『ゆ~かちゃん、50万再生おめ!』
『事前に予告が欲しい。6月に入ってから毎日配信してたアーカイブが残ってたから、今日もこのくらいの時間だと思ってたけど』
「ああっ! そうか、事前に告知しないといつ始まるかわからないもんね! えーとね……って、ヤマトぉぉぉ!」
耳をピコン! と一方に向けたヤマトが突然走り出した。さっきまでとは勢いが違う!
「ヤマト、どうしたの!? 何かあるの? モンス? モンスなの? ぎゃー!」
しゃべりながら走っていたら、木の根っこにつまづいて早速転んだよ! んもう!
人多すぎ! モンスターの出ない第一層なのに、ここで見たことがないほどの人がいる。
とりあえずここに用はないので、私はヤマトを抱っこしたままで第二層への階段を降りた。ここも人だらけ。モンスターよりも人が多いってどういうことだろうね。もう、ゴブリンもスライムも湧いた側からキルされている。
うーん、ヤマトもいるし、5層以下を目指そうかな。配信するにしても、あんまり人の映り込みが多いと肖像権とか問題になりそうだし。人が多すぎて、ヤマトがさっきからそわそわしてるんだよね。
「ヤマト、ちょっと下に行こうか」
一応言ってみると、ヤマトは口を開いて笑顔になった。私はヤマトを下ろすと、リードを持って走る体勢に入った。
「ヤマト、ゴー!」
「ワン!」
その一言で始まる、異様な速度のダッシュ。朝のランニングよりも速い!
「あっ、犬がいるぞ!」
「あれがヤマト! 可愛いー!」
「50万再生のシンデレラガール、今日も芋ジャーか」
うっさいわ! これは初心者の服っていうれっきとした初心者3点セットなんだから! まだダンジョン入り始めて数日だから、他の装備持ってないんだもん!
2層に溢れるダンジョン初心者と思われる人の間を縫って、私とヤマトは走る。
そして、3層に降りてもやっぱり人が多い! どうしようかなと思っていたら、ヤマトは明らかにある一点を目指して走っていた。
モンスターかなと思ったら、第4層への階段だ。私はまだ一度も行ったことがない。かれんちゃんたちも昨日が初4層だったはず。
ちょっと迷ったけど、ヤマトを信じて第4層へ。
第4層は、さすがにあんまり人がいなかった。サザンビーチダンジョンは第1層から第3層までが何のギミックもないただの土の地面だけのフロアで、第4層からは森林エリア。
聞いた話だけど、7層以降はここのダンジョンの周囲のような砂浜エリアだそうだ。走りにくい分スタミナを鍛えるには良さそう。――いや、それなら普通に海岸走ればいいか。
ここの最深部は第10層で、レベルが10を超えてれば踏破できてしまう。それが初心者ダンジョンと言われる所以なんだけど。
「ヤマト、ちょっと待っててね。準備しちゃうから」
私がリュックを下ろすと、ヤマトはぺたんと腹ばいになった。ああん、なんという可愛さ! スフィンクスのポーズだね。
リュックからニーパッドとエルボーパッド、そして初心者の盾を取り出して装着。スマホも通常モードから空中浮遊自動追尾機能をオンにする。
これはダンジョンが出来てから、ダンジョン産のオリハルコンを原材料として使って開発されたシステムらしくて、昔のスマホは浮かなかったんだよと聞いて驚いた覚えがある。
「『ゆ~かのダンジョン配信』はっじまっるよー! 今日もヤマトと一緒でーす。なんと、昨日体重を量ってみたら。ヤマトは4キロでした! 軽いですね。うち3匹猫がいるんですけど、全員より軽かったです! でもこれからどんどん大きくなるんだよね~、ヤマトしゃ~ん?」
準備が出来たので、ヤマトを抱っこして配信開始。スマホに向かって、笑顔で手を振る。驚いたことに、すぐにコメントが流れていった。
『待ってました!』
『ゆ~かちゃん、50万再生おめ!』
『事前に予告が欲しい。6月に入ってから毎日配信してたアーカイブが残ってたから、今日もこのくらいの時間だと思ってたけど』
「ああっ! そうか、事前に告知しないといつ始まるかわからないもんね! えーとね……って、ヤマトぉぉぉ!」
耳をピコン! と一方に向けたヤマトが突然走り出した。さっきまでとは勢いが違う!
「ヤマト、どうしたの!? 何かあるの? モンス? モンスなの? ぎゃー!」
しゃべりながら走っていたら、木の根っこにつまづいて早速転んだよ! んもう!
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