上 下
11 / 283
ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻

第10話 予想外の展開

しおりを挟む
「もしかしてゆ~かちゃんとヤマトちゃんですか?」

 黄色い悲鳴が聞こえたと思ったら、私の所にダダダダって走ってきた人がいる。話しかけてきたのは大学生っぽいお姉さん。背が高くて髪の毛ふわふわで女子! って感じの綺麗な人だ。
 ……普段なら、絶対ここ(ダンジョン前)で見かけない人種だあ……。

「あっ、ハイ、そうです」
「動画見ました~。生ヤマトちゃんヤバイ可愛い~♡ 一緒に写真撮って貰ってもいいですか?」
「私とですか!? むしろこんな芋ジャー着てる人と写真撮っていいんですか? えないですよ?」
「いいの! 生ゆ~かちゃんって感じするし! えーとね、じゃあ、『サザンビーチ』で撮るよ。ゆ~かちゃんはヤマトちゃん抱っこして。ハイ、サザンビーチ!」
「サザンビーチ! イェイ!」
「イイ感じ♪ ありがとー。頑張ってね!」

 そうか、チで口元がいい感じに開くんだ。地元民なのに知らなかったご当地ネタを知った気分。

「お姉さんは入らないんですか?」
「近くだから、ちょっとだけ入ってみようかな~って思って来たんだけど、この人の多さを見たらもう……。もしかしたらヤマトちゃんみたいな可愛い従魔をテイム出来るかなーなんて思ったんだけど」
「人の多さはそれかー!」
 
 お姉さんの言葉でやっと私は気がついた。
 ここで私は昨日ヤマトと出会った。

 てことは、もしかしたらまた【柴犬?】な従魔がここに出るかもしれないって事だ。動画がバズった分、柳の下のドジョウを狙った人がたくさん来たんだ!

 そんなことを考えてたら、ドンって結構な勢いでぶつかられた。
 いや、私よろけませんでしたけどね。

「痛って~……おまえどんな体幹してんだよ。こけろよ」

 今度は知らないお兄さんに話しかけられた……ってか、わざとぶつかってきたな、この人。でも見た感じ一般人だから、VIT17のステータスを持つ私をぶつかっただけで転ばせられるわけがない。

「おまえ、ゆ~かだろ。その犬よこせよ。おまえなんかより俺がもっと上手く使ってやんよ」

 お兄さん改めやからがヤマトに手を伸ばしてきたから、私は片足を引いてヤマトをその男の手から遠ざけた。
 取られると思ってるんじゃなくて、もしヤマトが噛みついたら大怪我必至だし最悪片腕ちぎれたりするだろうし、絶対慰謝料とか大騒ぎされるに決まってるし。

「渡すわけないでしょ。従魔がマスターを選ぶんだよ。私がもしヤマトを手放しても、ヤマトが認めなければあんたはマスターになれないんだから」
「うっせえんだよ! いいからよこせ……あぁん?」

 男の振り上げた右手は、別の男性によって掴まれていた。慌ただしいな……。

「ゆ~かちゃんの邪魔するな。恐喝の現行犯ですって警察呼ぶぞ。ここにどれだけ人がいておまえの今の行動見たと思ってるんだ」
「そうよそうよ!」

 一緒に写真を撮ったお姉さんも声を上げてくれた。そして、ダンジョンの入り口付近にいた人たちの中から、何人かが走ってきて私たちを囲む。

「こんなこったろうと思ったよ! 馬鹿が出るだろうなと思って待機してたらガチヒットとか」
「ゆ~かちゃん、ヤマトを連れて早くダンジョンに入るんだ。輩は俺たちが押さえておくから」
「昨日の動画、凄く良かったよ! 転んでも転んでもめげずにヤマトと走り回るゆ~かちゃん見てたら、くだらないことでくよくよしてるのが馬鹿らしくなった」
「ゆ~かちゃん、転んだらスパチャ100円入れたげるから今日も頑張れよ!」

 知らない人たちが口々に私のことを話している。――なんか、凄く不思議。一夜にして本当に私有名人になったんだなあ……。
 走って転んでヤマトと笑って、時々ゴブリンを盾でぶん殴って――それで笑顔になってくれる人がいるんだ。

「守ってくれてありがとうございます! あと、動画見てくれて本当に嬉しいです。もし昨日スパチャ入れてくれてた人がいたら、それもありがとうございます! でも、今日は転ぶつもりないですよ! 行ってきまーす!」

 私がダンジョンに入れるように、他の人が周りの人を誘導してくれた。
 近くにいた人に、ふと思ったことを聞いてみる。

「なんでみなさん、こんなに良くしてくれるんですか?」
「こどもは大人に守られて当たり前なんだよ」
「それ、かっこいい! ほんとにありがとうございました!」

 よし! 私は今日も楽しい配信をするぞ! 可愛いヤマトをうーんと見せびらかそう。――それを楽しみにしてくれる人がいるって知っちゃったから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...