上 下
3 / 310
柴犬? ヤマトとの出会いの巻

第3話 柴犬ってマイペースだから

しおりを挟む
ゆ~か LV2
HP 44/45
MP 5/5
STR 8(+3)
VIT 12
MAG 3
RST 2
DEX 6
AGI 11
ジョブ 【テイマー】
装備 【初心者の服】【初心者の盾】【初心者の剣】
従魔 【ヤマト】

 ステータスを確認して私はうんうんと頷いた。HPが1減ってるのは、多分ヤマトにどーんと体当たりされたときに尻餅付いたからだね。今の私は紙防御だから、些細なことで案外HPが減ったりする。

「うん、ちゃんとヤマトの名前の所も変わりました! ヤマトはうちに連れて帰るけど、ダンジョンに連れてくるのは無理だよねえ……って言った側から!!」
「ガウッ!」
「ステイ! ヤマト、ステイ! ノー! うわー、そもそも躾が出来ていないから言うこと聞いてくれなーい!」

 このダンジョンの最弱モンスター、スライムを見つけてヤマトが突撃していく。確かにスライム弱いし、私でも倒せるくらいだけど酸を吐き出したりするし……。ヤマトが怪我したら嫌だよ!

「ヤマトー! 止まってー!」

 ヤマトを追いかけて全力で走る! 走る! 走る事しか私にはできない!
 これでも高校に入ってから冒険者科は週5で体育があるから、スタミナだけは自信あるんだ!

『テイマーの定義が俺の中で変わった瞬間』
『やばい、このテイマー全然言うこと聞いてもらえてない』
『柴犬可愛いよ柴犬。もし火傷したらこれでポーション買ってあげな』

 チャリーンとスパチャのSE。スパチャありがとー! とおざなりに叫んで私はなんとかスライムの直前でヤマトに抱きつき、左腕に装備した盾でスライムを自分の下敷きにして倒した。
 酸が飛んで火傷の危険があったけど、「確実に火傷する」よりはまし。ヤマトの確保が最優先で、腰に下げてる剣を抜く余裕なんて無かった。

「はーはー……今、盾を使ってスライムを倒しました。魔石だけ残ってます。ヤマトを捕まえたまま剣とか出せなかった。ヤマトは無事です……って、ステイ! ちょっとこの柴犬、中犬なのに力が強いー!」

 私が抱え込んでいるにも関わらず、私をずるずると引きずってヤマトが潰れたスライムの残骸に向かう。そして、そこに落ちている黒くてギザギザしている魔石を――食べた!

 まるでおやつ感覚で、カリカリと噛んでいる音が聞こえる。噛み心地どうなの!? あんなにとげとげしてたけど! そして、ごくんとヤマトは魔石を飲み込んだ。

「ぎゃー! 魔石食べちゃった! 吐いて!」

 私はヤマトの口に手を突っ込んで魔石を出させようとする。ヤマトはいやーんって顔をして私の手を前脚で邪魔しようとする。
 くっ! 犬の口に付いてるゴムパッキンが邪魔をする!

『おちつけ!』
『あれって人体に有害とは言われてないから犬も平気かもしれないけど、ギザギザしてるから飲み込んだら腹痛起こしそうだな』
『がんばれ、ゆ~かたん!』
『ダンジョン配信を見ていたはずなのに、何故かJKと犬の取っ組み合いを見ている件』
『それな。世界は平和だな』

 私はとうとうヤマトに魔石を吐き出させることを諦めた。ヤマトは私の前でお座りしてピンク色の舌を出し、首を傾げて「なにがいけなかったの?」という顔をしている。

『我テイマーですけど、従魔のステがあるから確認してみるべし。もし状態異常とかあったらそこに出るから』

 そんなコメントを見て、アプリをチェック。私のステータスからヤマトの名前の所を押すと、

ヤマト LV1 従魔 
HP 100/100
MP 60/60
STR 120
VIT 130
MAG 80
RST 80
DEX 120
AGI 160
種族 【柴犬?】
マスター 【ゆ~か】

 はい?
 とりあえずスクショして配信で流してみる。真顔で。
 この私の混乱を、視聴者さんにもお裾分けという名の押しつけをしたくて。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。 最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。 でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。 記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ! 貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。 でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!! このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない! 何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない! だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。 それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!! それでも、今日も関係修復頑張ります!! 5/9から小説になろうでも掲載中

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...