40 / 51
40 危ない領主
しおりを挟む
私たちはライリーさんに連れられて、ソントンの街に入っていった。
もちろん、開放された門の前に椅子結界を置くことも忘れない。
八門遁甲の椅子だと、最悪中で人とモンスターが一緒にぐるぐるしちゃうからね……。
「大きな街ですね」
フロードルほどではないけども、ソントンは結構大きい方の街じゃないだろうか。
そうでなければ、奪い合いにならないか。
「ここから半日ほど西に向かったところにあるマーズルとほぼ規模は一緒です。ソントンとマーズルはその歴史から双子都市と呼ばれ、フロードルとオルミアの間の争いに何度も巻き込まれてきました。
その度に城壁が強化され、民の心を離さぬように為政の手厚い施策が入り、結果賑わった街なのですよ」
ライリーさんは丁寧に説明してくれたけど、なんというか、「ケッ、王族なんて奴らは馬鹿ばっかりしやがる」って思ってるのが丸わかりの口調だった。
……まあ、ね。仕方ないな、それは。他にもっと手厚くしなきゃいけないところがあるはずと思う気持ちもわかるし、最前線にあたる都市に力を注がなければいけないのもわかる。
わかるから、嫌なんだよなー。
「今はどこに向かっているんですか? 教会ですか?」
子供たちの列を率いて歩く私たちに、すれ違う住民から感謝の言葉が雨あられと降ってくる。その度に私は頭を下げながら、ライリーさんについて歩いていた。
「領主であられるハーストン伯の館です。オルミア国王からこの都市を任されているだけあって、なかなか有能な人物ですよ」
「正直に聞きます。野心的にはどんな人物でしょうか」
有能は有能でも、リチャード3世系の野心を持っていられると困る!
私の質問に、ライリーさんは足を止めて私を振り向く。
彼は聖職者っぽくないニヒルな笑みを湛えて、クッと喉の奥を鳴らした。
「なるほど、『あの』聖女レティシア様が殊更に気に掛ける理由がわかった気がします。あなたは危うい。しかも危ういとわかっていてやっているから質が悪いですね。
ハーストン伯は民を常に気に掛ける、領主としては実に良心的な人物ですよ。そうですね、私ですら、彼が存命のうちは戦が起こらないことを祈るくらいです」
「安心しました。ハーストン伯のこともですが、ライリーさんの事も」
「私の事で安心、ですか?」
若干胡乱げな顔をしている彼に、私は笑って見せた。ニヒルぶりやがって、ちゃんと聖職者じゃないの!
「はい。ライリーさんは頭の回る人物ですね。他の人が馬鹿に見えることが多いんでしょう。皮肉屋で――でも、善人です。聖職者らしくないと思った瞬間もありましたが、あなたはレティシアさんと同じく、神を信じて祈りを捧げる人です」
パッとライリーさんは嫌そうな顔をした。お、懐かしいな。これ、レイモンドさんに散々された表情だ。
「仮にも司教ですからね。しかし、どうなっているんですか、あなたの頭の中は。遠慮がないのは置いておいても、観察眼がおかしい」
「後ろ見て下さいよ。6歳と7歳が34人ですよ? 慎重に観察しながらその子なりの特性を見極めていかないといけないんですよ? しかも私、この子たちに出会ってからまだ半年くらいなんです」
「……なるほど」
振り返ると、子供たちはちゃんと後ろに付いてきていた。いつもの「隣の子と必ず一緒にいてね」だから、勝手な行動をしたら相方の報告が入る。お喋りはしてるけど、以前に比べて格段にちゃんと歩いてる。
もしかしてこれも私の指揮・指導スキルのおかげなのかな?
システム管理者は元の世界とはシステムが違うから、こっちでいくら能力が上がっても帰ったら関係ないとか言ってたけど、スキルだけでもいいから持ち帰りたい!
そして、目抜き通りと覚しき大通りを抜け、街の中心にある大きな屋敷に私たちは案内された。
あらかじめ、おもてなしは不要と断っておく。何か混入してると嫌だし、食料はこちらの世界では私たちの世界よりもずっと大事なもの。
私たちはモンスターを倒せばいくらでも供給できるから、気を遣ってもらう必要がないのだ。
「やあやあやあ! 貴女が噂のミカコさんですか! それと、おおおおお、子供がこんなに! わはははは、可愛いなあ! 実に、いい! 子供が元気にしているのはとてもいい!」
子供たちと別室にされるのかなと思ったら、ホールのような場所に40歳くらいの男性が降りてきて、子供大好きな大型犬みたいな顔をして足早に歩み寄ってきた。
「ハーストン伯です」
「この人が!?」
ライリーさんに耳打ちされて若干驚いた。
こう、イメージとしては初老の落ち着いた男性とかそういうのを予想してたから。
まさか、ゴールデンレトリバー系アラフォーが来るとは思わないでしょ!
「立ったままで失礼。もてなし不要と伺ったので、こちらも簡潔にお話をさせてもらおうと思いましてな。キーラン・ハーストンです。お初にお目に掛かる。
さて、総大司教猊下と聖女様の手紙によれば、異世界からの来訪者とのこと。にわかには信じがたいですが、『椅子の奇跡』を目の当たりにしては信じるしかあるまい。まあ、簡単に言うと私の身分は気にせず、忌憚なき意見を交換したいということです」
……一気にまともなことを喋ったな、と思ったら、ハーストン伯は真澄ちゃんの前にしゃがみ込んで「可愛いねー。お年いくつ? お菓子食べる?」とか訊いてるよ! 不審者か!
「ハーストン伯、おやめ下さい。人から勝手にものをもらわないようにと教えておりますので。食べたものによって具合が悪くなる子供もいます。例えば、蕎麦粉が近くにあるだけで呼吸が苦しくなってしまう子供とか」
「おお、すまない。私は子供が大好きでね。……子供は6人いたが、その内3人は3歳になる前に死んでしまったんですよ。成人したのはふたりだけ。なので、元気そうな子供を見るとつい嬉しくなってしまうのです」
私は思わず言葉を失ってしまった。そうだよね、魔法があってもほとんど役に立たないような世界なら、私たちの世界の中世とあんまり変わらないと思っていいはずだ。
医療が発展するまでは、子供は物凄く死にやすい。平均寿命をガクンと押し下げるくらい、乳幼児の死亡率は高い。
「いや、貴女にそんな顔をさせたかったわけではない。子供を失うのは何も私に限った話ではない。それに戦争が起きれば子供だけではなく大人も大勢死ぬ。
フロードルが常に我ら双子都市を狙うのは痛いほどわかるのだ。なにせあの国は国土の大半を大陸北部が占めていて、土地が痩せている場所が多い。貧しさとも戦いながら、南下の機会を常に窺っている。南は肥沃な土地が多いのでね。
悲しい話だが、私が彼の国の王だったとしても、民を思えば思うほど、戦争を起こしたいだろう。双子都市を陥とし、それを足がかりに豊かな土地を増やす。それが、ひいては長い目で見て国の民全てを豊かにすることなのだから」
真澄ちゃんの頭を撫でながら、ハーストン伯はそんなシリアスな事情を話す。悲しそうな寂しそうな笑顔がその顔に浮かんでいた。
そうか、私はどうしても平民だから考えられなかったけど、為政者としてみたらそういう事情があるのか……。あの貧しい村に手を差し伸べるには、国としての余力が足りない。だから、手っ取り早い戦力を手に入れたからには戦争を起こす。
なんてきつい話なんだ。
「ああ、だからそんな顔をしないで欲しい。今は魔物被害が増大して、南へ行くほど強力な魔物が出てくるせいで、逆にオルミアは軍事力に力を傾けざるを得ず、フロードルの軍事的脅威はありません。簡単に言うと、フロードル軍ではまともに戦ってオルミア軍に勝てない。魔物被害が収まっても、しばらくこの状況は続くでしょう。
なので、貴女方には思う存分魔物を倒していただきたい」
「はい、それです! そのお話をしたかったんです!」
話が急に本題に入って、私は思わず元気よく返事をしてしまった。
さっき聞いた限り、マーズルとの距離はそれほどではないから、私の希望としてはこの2都市の間を行き来してモンスターを倒しまくりたい。
「簡潔に言います。ソントン・マーズル両都市からの支援はいりません。ただ、この辺りをうろうろして魔物を倒している私たちに危害を加えないでいただければそれだけで充分です。
私たちが魔物を倒すと、神の御加護によりその魔物の『存在するための力』が、食べ物や飲み物になって手に入ります。ただ、それは私たちが食べることで魔物の『存在するための力』を消すことになるため、都市の人たちに分け与えると魔物被害の解決が遅くなるのです」
あのシステム管理者の語ったことを、言い方を変えて説明する。ライリーさんとハーストン伯は私の説明を聞いて明らかに驚いていた。
「私たちが元の世界に帰るためには、とにかくたくさんの魔物を倒さねばならないのです。でも、魔物が多い南にいきなり行くには戦力的に怖いので、できれば力を付けるためにもこの辺りで森からやってくる魔物たちを倒したいと思っています。実際、フロードル領では見かけなかったような強い魔物もいましたし」
「よし、わかった。マーズルの領主にそのように伝えておこう。ただ魔物を倒してもらうだけでも、我々にとって充分利がある。
ライリー師の策で、貴女方はこの都市にとっては救い主と思われておりますしな。手を出したら街から追放されるくらいのことは想像付くだろう」
「話が早い! 助かります!」
私が頭を下げると、ハーストン伯は立ち上がって私に向かって笑いかけた。
「なに、国の利益などが絡むから面倒なのであって、魔物に困る都市とそれを倒せる力として考えれば単純なのだ。支援は無用と言われたが、何か困ったことがあったらいつでもここに来て言いなさい。――私は純粋に、この子供らが無事に親の元に帰れる事を祈っているよ」
そう言って子供たちに向けたハーストン伯の目はとても優しくて。
この人は本当に子供が好きなんだなあってよくわかる。
……速攻桂太郎くんを抱っこしたりしなければ、心底信用できるんだけどなあ……。
もちろん、開放された門の前に椅子結界を置くことも忘れない。
八門遁甲の椅子だと、最悪中で人とモンスターが一緒にぐるぐるしちゃうからね……。
「大きな街ですね」
フロードルほどではないけども、ソントンは結構大きい方の街じゃないだろうか。
そうでなければ、奪い合いにならないか。
「ここから半日ほど西に向かったところにあるマーズルとほぼ規模は一緒です。ソントンとマーズルはその歴史から双子都市と呼ばれ、フロードルとオルミアの間の争いに何度も巻き込まれてきました。
その度に城壁が強化され、民の心を離さぬように為政の手厚い施策が入り、結果賑わった街なのですよ」
ライリーさんは丁寧に説明してくれたけど、なんというか、「ケッ、王族なんて奴らは馬鹿ばっかりしやがる」って思ってるのが丸わかりの口調だった。
……まあ、ね。仕方ないな、それは。他にもっと手厚くしなきゃいけないところがあるはずと思う気持ちもわかるし、最前線にあたる都市に力を注がなければいけないのもわかる。
わかるから、嫌なんだよなー。
「今はどこに向かっているんですか? 教会ですか?」
子供たちの列を率いて歩く私たちに、すれ違う住民から感謝の言葉が雨あられと降ってくる。その度に私は頭を下げながら、ライリーさんについて歩いていた。
「領主であられるハーストン伯の館です。オルミア国王からこの都市を任されているだけあって、なかなか有能な人物ですよ」
「正直に聞きます。野心的にはどんな人物でしょうか」
有能は有能でも、リチャード3世系の野心を持っていられると困る!
私の質問に、ライリーさんは足を止めて私を振り向く。
彼は聖職者っぽくないニヒルな笑みを湛えて、クッと喉の奥を鳴らした。
「なるほど、『あの』聖女レティシア様が殊更に気に掛ける理由がわかった気がします。あなたは危うい。しかも危ういとわかっていてやっているから質が悪いですね。
ハーストン伯は民を常に気に掛ける、領主としては実に良心的な人物ですよ。そうですね、私ですら、彼が存命のうちは戦が起こらないことを祈るくらいです」
「安心しました。ハーストン伯のこともですが、ライリーさんの事も」
「私の事で安心、ですか?」
若干胡乱げな顔をしている彼に、私は笑って見せた。ニヒルぶりやがって、ちゃんと聖職者じゃないの!
「はい。ライリーさんは頭の回る人物ですね。他の人が馬鹿に見えることが多いんでしょう。皮肉屋で――でも、善人です。聖職者らしくないと思った瞬間もありましたが、あなたはレティシアさんと同じく、神を信じて祈りを捧げる人です」
パッとライリーさんは嫌そうな顔をした。お、懐かしいな。これ、レイモンドさんに散々された表情だ。
「仮にも司教ですからね。しかし、どうなっているんですか、あなたの頭の中は。遠慮がないのは置いておいても、観察眼がおかしい」
「後ろ見て下さいよ。6歳と7歳が34人ですよ? 慎重に観察しながらその子なりの特性を見極めていかないといけないんですよ? しかも私、この子たちに出会ってからまだ半年くらいなんです」
「……なるほど」
振り返ると、子供たちはちゃんと後ろに付いてきていた。いつもの「隣の子と必ず一緒にいてね」だから、勝手な行動をしたら相方の報告が入る。お喋りはしてるけど、以前に比べて格段にちゃんと歩いてる。
もしかしてこれも私の指揮・指導スキルのおかげなのかな?
システム管理者は元の世界とはシステムが違うから、こっちでいくら能力が上がっても帰ったら関係ないとか言ってたけど、スキルだけでもいいから持ち帰りたい!
そして、目抜き通りと覚しき大通りを抜け、街の中心にある大きな屋敷に私たちは案内された。
あらかじめ、おもてなしは不要と断っておく。何か混入してると嫌だし、食料はこちらの世界では私たちの世界よりもずっと大事なもの。
私たちはモンスターを倒せばいくらでも供給できるから、気を遣ってもらう必要がないのだ。
「やあやあやあ! 貴女が噂のミカコさんですか! それと、おおおおお、子供がこんなに! わはははは、可愛いなあ! 実に、いい! 子供が元気にしているのはとてもいい!」
子供たちと別室にされるのかなと思ったら、ホールのような場所に40歳くらいの男性が降りてきて、子供大好きな大型犬みたいな顔をして足早に歩み寄ってきた。
「ハーストン伯です」
「この人が!?」
ライリーさんに耳打ちされて若干驚いた。
こう、イメージとしては初老の落ち着いた男性とかそういうのを予想してたから。
まさか、ゴールデンレトリバー系アラフォーが来るとは思わないでしょ!
「立ったままで失礼。もてなし不要と伺ったので、こちらも簡潔にお話をさせてもらおうと思いましてな。キーラン・ハーストンです。お初にお目に掛かる。
さて、総大司教猊下と聖女様の手紙によれば、異世界からの来訪者とのこと。にわかには信じがたいですが、『椅子の奇跡』を目の当たりにしては信じるしかあるまい。まあ、簡単に言うと私の身分は気にせず、忌憚なき意見を交換したいということです」
……一気にまともなことを喋ったな、と思ったら、ハーストン伯は真澄ちゃんの前にしゃがみ込んで「可愛いねー。お年いくつ? お菓子食べる?」とか訊いてるよ! 不審者か!
「ハーストン伯、おやめ下さい。人から勝手にものをもらわないようにと教えておりますので。食べたものによって具合が悪くなる子供もいます。例えば、蕎麦粉が近くにあるだけで呼吸が苦しくなってしまう子供とか」
「おお、すまない。私は子供が大好きでね。……子供は6人いたが、その内3人は3歳になる前に死んでしまったんですよ。成人したのはふたりだけ。なので、元気そうな子供を見るとつい嬉しくなってしまうのです」
私は思わず言葉を失ってしまった。そうだよね、魔法があってもほとんど役に立たないような世界なら、私たちの世界の中世とあんまり変わらないと思っていいはずだ。
医療が発展するまでは、子供は物凄く死にやすい。平均寿命をガクンと押し下げるくらい、乳幼児の死亡率は高い。
「いや、貴女にそんな顔をさせたかったわけではない。子供を失うのは何も私に限った話ではない。それに戦争が起きれば子供だけではなく大人も大勢死ぬ。
フロードルが常に我ら双子都市を狙うのは痛いほどわかるのだ。なにせあの国は国土の大半を大陸北部が占めていて、土地が痩せている場所が多い。貧しさとも戦いながら、南下の機会を常に窺っている。南は肥沃な土地が多いのでね。
悲しい話だが、私が彼の国の王だったとしても、民を思えば思うほど、戦争を起こしたいだろう。双子都市を陥とし、それを足がかりに豊かな土地を増やす。それが、ひいては長い目で見て国の民全てを豊かにすることなのだから」
真澄ちゃんの頭を撫でながら、ハーストン伯はそんなシリアスな事情を話す。悲しそうな寂しそうな笑顔がその顔に浮かんでいた。
そうか、私はどうしても平民だから考えられなかったけど、為政者としてみたらそういう事情があるのか……。あの貧しい村に手を差し伸べるには、国としての余力が足りない。だから、手っ取り早い戦力を手に入れたからには戦争を起こす。
なんてきつい話なんだ。
「ああ、だからそんな顔をしないで欲しい。今は魔物被害が増大して、南へ行くほど強力な魔物が出てくるせいで、逆にオルミアは軍事力に力を傾けざるを得ず、フロードルの軍事的脅威はありません。簡単に言うと、フロードル軍ではまともに戦ってオルミア軍に勝てない。魔物被害が収まっても、しばらくこの状況は続くでしょう。
なので、貴女方には思う存分魔物を倒していただきたい」
「はい、それです! そのお話をしたかったんです!」
話が急に本題に入って、私は思わず元気よく返事をしてしまった。
さっき聞いた限り、マーズルとの距離はそれほどではないから、私の希望としてはこの2都市の間を行き来してモンスターを倒しまくりたい。
「簡潔に言います。ソントン・マーズル両都市からの支援はいりません。ただ、この辺りをうろうろして魔物を倒している私たちに危害を加えないでいただければそれだけで充分です。
私たちが魔物を倒すと、神の御加護によりその魔物の『存在するための力』が、食べ物や飲み物になって手に入ります。ただ、それは私たちが食べることで魔物の『存在するための力』を消すことになるため、都市の人たちに分け与えると魔物被害の解決が遅くなるのです」
あのシステム管理者の語ったことを、言い方を変えて説明する。ライリーさんとハーストン伯は私の説明を聞いて明らかに驚いていた。
「私たちが元の世界に帰るためには、とにかくたくさんの魔物を倒さねばならないのです。でも、魔物が多い南にいきなり行くには戦力的に怖いので、できれば力を付けるためにもこの辺りで森からやってくる魔物たちを倒したいと思っています。実際、フロードル領では見かけなかったような強い魔物もいましたし」
「よし、わかった。マーズルの領主にそのように伝えておこう。ただ魔物を倒してもらうだけでも、我々にとって充分利がある。
ライリー師の策で、貴女方はこの都市にとっては救い主と思われておりますしな。手を出したら街から追放されるくらいのことは想像付くだろう」
「話が早い! 助かります!」
私が頭を下げると、ハーストン伯は立ち上がって私に向かって笑いかけた。
「なに、国の利益などが絡むから面倒なのであって、魔物に困る都市とそれを倒せる力として考えれば単純なのだ。支援は無用と言われたが、何か困ったことがあったらいつでもここに来て言いなさい。――私は純粋に、この子供らが無事に親の元に帰れる事を祈っているよ」
そう言って子供たちに向けたハーストン伯の目はとても優しくて。
この人は本当に子供が好きなんだなあってよくわかる。
……速攻桂太郎くんを抱っこしたりしなければ、心底信用できるんだけどなあ……。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンのオレが異世界最強になってしまった件について
楠乃小玉
ファンタジー
上司から意地悪されて、会社の交流会の飲み会でグチグチ嫌味言われながらも、
就職氷河期にやっと見つけた職場を退職できないオレ。
それでも毎日真面目に仕事し続けてきた。
ある時、コンビニの横でオタクが不良に集団暴行されていた。
道行く人はみんな無視していたが、何の気なしに、「やめろよ」って
注意してしまった。
不良たちの怒りはオレに向く。
バットだの鉄パイプだので滅多打ちにされる。
誰も助けてくれない。
ただただ真面目に、コツコツと誰にも迷惑をかけずに生きてきたのに、こんな不条理ってあるか?
ゴキッとイヤな音がして意識が跳んだ。
目が覚めると、目の前に女神様がいた。
「はいはい、次の人、まったく最近は猫も杓子も異世界転生ね、で、あんたは何になりたいの?」
女神様はオレの顔を覗き込んで、そう尋ねた。
「……異世界転生かよ」
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
少女が過去を取り戻すまで
tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。
玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。
初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。
恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。
『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』
玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく────
※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです
※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります
内容を一部変更しています
※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです
※一部、事実を基にしたフィクションが入っています
※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます
※イラストは「画像生成AI」を使っています
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる