添い寝屋浅葱

加藤伊織

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浅葱編

互いに求めていたもの

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 玲一の声も目も、今までこんな彼は知らないというほど情熱的だ。彼が浅葱自身を求めていると、その声と眼差しではっきりと感じてしまった。

「あんたに受け入れられないんじゃないかと思ってたのは俺だってそうだ。あんたに無防備に懐かれて、無関心でいられなかった。いつも苦しそうなのに、俺の前ではほっとしてるあんたが気になってしょうがなかったんだ。腕枕をして、抱きしめて、頼まれたってそんな事他の客にはやるはずもないくらいに玲一だけ特別だった。それなのに、なんでもない顔をして友人になることなんてできなるわけないだろう?
 あの名刺を渡して、それで俺がどういう人間かわかって避けられるならそれで諦めも付いたのに」

 息が苦しいくらいに抱きしめられていた腕が緩む。頬擦りをされて、耳元で低い声で囁かれる。綺麗に包んで隠してきた欲を曝け出しているのがわかる、いやらしい声だった。

「お昼寝屋に行けなくなってた理由を教えようか? 君にいやらしいことをする夢を見たからだったんだよ。その後で、夢の中の君を思い出しながら自分でした。そんな風に欲情した相手と、同性でも平気な顔で同衾できないだろう?
 でも実際に離れてみたら、君がいないのは思ったよりずっと寂しいことだって気付いたし、猫のことを話してるときの君は凄く尊いものに見えて、自分が恥ずかしくなった。
 だから、目の前にご馳走があってもそれを食べたらなくなっちゃうって思ったら、飢え死にしないように薄めて薄めて食べようって気になったのはしょうがないだろう」
「馬鹿か、あんたは。ずっと俺を買い続けていたら本当に飢え死にする羽目になるかもしれないんだぞ」
「浅葱、もしかして、それを心配して枠を消したのかい?」

 やっと真実に気付いた玲一が目を丸くする。一瞬前まで雄の顔をしていたのに、感激したのか睫毛を震わせて一度きつく目を瞑った。

「……あんたの寝顔で抜いたことがあるぞ」

 玲一を心配していたのはその通りだが、添い寝しても抱いてもらえない欲求不満が浅葱の中で燻ったのも、思い切った行動に出たひとつの原因だった。100パーセント純粋に玲一のためだったなんてことはとても思うことができなくて、玲一の告白の恥ずかしいところと被せる。キスは我慢したが、それは我慢できなかった。玲一の唇と指を思い出しながら、トイレでこっそりと欲を吐き出していたのは本当だ。

「えっ? いや、こんな可愛さとは無縁のでかい男で!?」
「気持ち悪いか?」
「……見せて。僕をオカズにして、君がどんな風にしてたのか」

 爽やかさなんてどこかに吹き飛ばした、浅葱を捉えようとする玲一の笑顔。目元は笑っておらずにギラギラとしていて、求められる喜びに興奮が収まらない。
 ――なんだ、そんな顔もできるじゃないか。
 優しい笑顔が好きだ。爽やかな笑い声が好きだ。けれど、ずっと向けられたいと思っていたのはこういう顔だった。
 浅葱は言葉の代わりに、もう一度キスで返した。

 欲にまみれた男の視線が自分の体を舐め回すように見つめている。玲一に求められて、思っていたよりも遙かに気持が昂ぶる
 先を争うように互いに脱がせ合って、バッグの中からコンドームとローションのパックを掴んで適当にベッドの上に投げてばらまいた。そのベッドの上で、仰向けになった玲一の腹を跨ぐようにして、浅葱は一切を隠すことなく、彼の前に晒している。

 薄く口を開いた玲一は、肘をついて少し身を起こしていた。時折唾を飲み込む喉の動きが見えて、それだけで浅葱は張り詰めきっていた。
 ローションのパックを破いて、とろりとした潤滑剤をたらたらと自分に掛ける。少し冷たいけれども、自分の手ですぐ温まる。
 左手で握り込んで上下に扱けば、先走りよりも手っ取り早く滑りをよくしてくれたローションがくちゃくちゃと濡れた音を響かせた。
 掌で皮ごと茎を刺激しながら、親指で先端をぐい、と押す。割れ目から溢れて玉になっていた透明の先走りが潰れて、ローションに混じった。
 膝立ちで既に臍に触れるほど反り返っている前を扱きながら、後ろの穴に指を伸ばす。縁をやわやわと指の腹で揉みしだいてから、指を差し込むと少し慣らしてきたせいで簡単に飲み込んでしまう。自分のイイ場所はわかっているから、そこをぐりぐりと弄ると思わず声が漏れた。茎に浮いた筋を指で撫でると腰が揺れる。
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