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「社長、四本さん、メール転送しますので早めに見てください」
高見沢の声はいつもと変わらなかった。だが、わざわざ「早めに」と彼女が言うからには緊急性が高い事項のようだ。桑鶴は無言でマウスを握り、試作中で野菜を切っていた夏生は自席へと慌てて戻った。
「……これ、会社宛に来たのかい? このフォーマットからすると問い合わせフォームからだよね」
「そうですよ。もしかして貴方、自分の連絡先を親に教えてないんですか?」
「だってお前とは絶縁だ、勘当だって言われたし……そのあとスマホの契約乗り換えるときについでに番号も変えたから。亮介くん経由で連絡来るんじゃないかと思ってたんだよ、僕は」
「物騒な話をしてるなあ」
理彩が眉をひそめて呟く。悠と理彩だけがメールの中身を見ていないが、高見沢と夏生の会話の内容からすると、クレインマジックの問い合わせ用のフォームを使って夏生の親が連絡をしてきたらしい。桑鶴は座ったままでそれを読み終えると、頭の後ろで腕を組んで背もたれに深く寄りかかった。
「どうする? ナツキチ」
「向こうから会って話したいというなら、行くよ。いつかは片をつけなきゃいけない問題だって僕もずっと思ってきたし。CMはきっかけだったけど動画チャンネルも、いつかこの状況になるように――父に届くようにやってきたんだしね。
今日の仕事はするけど、明日から休みをもらっていいかな。1日で帰ってこられればいいんだけど、徹底的にやり合ってくるつもりだから、正直いつ戻れるかわからない」
「そこまで険悪なんですか、貴方のところ」
「いいぞナツキチ、書類なんぞ後でいくらでも融通してやるから、満足いくまでやり合って、結果を勝ち取ってこい」
「その書類、どうこうするの私なんですけどね……」
ぼやく高見沢に手を合わせて、夏生は苦笑した。
「ごめん、高見沢さん。うまく行ったらお土産になにかいいもの持ってくるから。速水さん、ちゃんと言ってなくてごめん。僕、主義主張の対立で料亭やってる親から勘当されててさ。クレインマジックでは、僕の理念を発信させてもらってたんだ。僕のポリシーはここまで支持されてるって、いつか父に突きつけるためにね」
「どうしてそこで私の名前だけ……そうか、悠は知ってたのね」
「ああ。同居してるしな。しばらくしてから夏生から聞いた」
夏生が四本の姓を名乗り続ける以上は彼にとっては伏せておきたい事だと思っていたので、悠は誰にも夏生のプライベートを話す気はなかった。彼が自分にだけ打ち明けてくれたのは信頼の証しだとも思っている。
疎外感に打ちのめされたのか理彩は額を押さえて呻いた。そこへ高見沢のフォローが入る。
「ちなみに私も今のメールで知った口なので、気にしなくていいんじゃないですか」
「そうか、そうよね――やるからには勝ちなさいよ」
「当然だよ。だって、僕が負けたらここに戻れなくなるからね。さてと、それじゃあ、今日の仕事はきっちり終わらせて行かないとね!」
ノートPCを閉じて、夏生が立ちあがる。丹念に手を洗ってから作業を開始する夏生に視線を投げると、夏生と目が合った。何か言いたげな様子を察知して、頷いてみせる。仕事が終わったら、部屋に戻ってから話したいのだろう。
終業後、悠はさりげなく真っ先に退社した。元々デスクもないから片付けも少ない。上の部屋に住むようになってからは更に荷物も減って身軽なのだ。
リビングで夏生を待っていると、すぐに夏生も帰宅した。夏生がリビングまで来るのを待って、ふたりは黙って拳を合わせた。
「ハルくん……」
拳を握ってはいるが、夏生は声を震わせていた。彼がクレインマジックの癖の強い面々の中でも際だって繊細な性格なのだと、今では悠もよくわかっている。
心配するなという気持ちを込めて、悠はもう一度夏生の拳にゴツリと音がするほど拳をぶつけた。
「大丈夫だ。あんたは間違ってない。自信を持って行ってこい」
気分はリングサイドのセコンドだ。そのまま気合いを入れるように夏生の広い背中を叩いた。
「うん――うん、ありがとう、ハルくん。勝って、ついでにA5ランク和牛1キロぐらいぶんどってくる」
「本当か? それ凄いな。やっぱりステーキか?」
「ステーキもいいけど、すき焼きもいいよね。ふたりだったらどっちも食べられるよ」
「楽しみだ。社長たちには内緒にしておこう」
顔を見合わせて、ふたりで笑う。それで緊張がほぐれたらしく、夏生が深く息をついた。
「これから、すぐ実家に戻るよ。着替えとかさすがに持っていかないといけないから、ちょっと準備するね」
自室に戻った夏生は、すぐに小さなボストンバッグを持って戻ってきた。玄関に向かう夏生に付いて、悠もシューズボックスの前まで行く。
「それじゃ、行ってきます」
「ああ。気をつけて。頑張れ」
頑張れ、と送り出しながら、夏生の背中に添えた手にありったけの応援の気持ちを込める。
悠の喜ぶ顔が好きだからと、いつも夏生は美味しいものを食べさせてくれる。そんな夏生に対して、せめて一番の理解者として応援したいと悠は願っていた。
1日2日では夏生は戻ってこないのではないかと覚悟はしていたが、3日目の夜もひとりで過ごすとなると、心細さが募ってくる。
上京してからはひとりが当たり前だったし、実家にいたときだってひとりで過ごすことが多かった。夏生と暮らすようになってからは1ヶ月足らずだったが、世話焼きな彼の存在は悠の自覚以上に膨らんでいたらしい。
朝食も夕食もひとりで食べて、コーヒーは自分で淹れる。「ハルくんもコーヒー飲む?」と柔らかな声で尋ねてくれる年上の友人は今はいないのだから。
朝食はパンをかじるばかりだったが、毎日夕食はそれなりに作った。冷蔵庫の中に生鮮食品があったからだ。腐らせるのは辛い。
夏生のアシスタントをしているうちに身についた技術で、アプリを見ながらではあったが、悠もなんとか食べられる料理を作れるようになっていた。
高見沢の声はいつもと変わらなかった。だが、わざわざ「早めに」と彼女が言うからには緊急性が高い事項のようだ。桑鶴は無言でマウスを握り、試作中で野菜を切っていた夏生は自席へと慌てて戻った。
「……これ、会社宛に来たのかい? このフォーマットからすると問い合わせフォームからだよね」
「そうですよ。もしかして貴方、自分の連絡先を親に教えてないんですか?」
「だってお前とは絶縁だ、勘当だって言われたし……そのあとスマホの契約乗り換えるときについでに番号も変えたから。亮介くん経由で連絡来るんじゃないかと思ってたんだよ、僕は」
「物騒な話をしてるなあ」
理彩が眉をひそめて呟く。悠と理彩だけがメールの中身を見ていないが、高見沢と夏生の会話の内容からすると、クレインマジックの問い合わせ用のフォームを使って夏生の親が連絡をしてきたらしい。桑鶴は座ったままでそれを読み終えると、頭の後ろで腕を組んで背もたれに深く寄りかかった。
「どうする? ナツキチ」
「向こうから会って話したいというなら、行くよ。いつかは片をつけなきゃいけない問題だって僕もずっと思ってきたし。CMはきっかけだったけど動画チャンネルも、いつかこの状況になるように――父に届くようにやってきたんだしね。
今日の仕事はするけど、明日から休みをもらっていいかな。1日で帰ってこられればいいんだけど、徹底的にやり合ってくるつもりだから、正直いつ戻れるかわからない」
「そこまで険悪なんですか、貴方のところ」
「いいぞナツキチ、書類なんぞ後でいくらでも融通してやるから、満足いくまでやり合って、結果を勝ち取ってこい」
「その書類、どうこうするの私なんですけどね……」
ぼやく高見沢に手を合わせて、夏生は苦笑した。
「ごめん、高見沢さん。うまく行ったらお土産になにかいいもの持ってくるから。速水さん、ちゃんと言ってなくてごめん。僕、主義主張の対立で料亭やってる親から勘当されててさ。クレインマジックでは、僕の理念を発信させてもらってたんだ。僕のポリシーはここまで支持されてるって、いつか父に突きつけるためにね」
「どうしてそこで私の名前だけ……そうか、悠は知ってたのね」
「ああ。同居してるしな。しばらくしてから夏生から聞いた」
夏生が四本の姓を名乗り続ける以上は彼にとっては伏せておきたい事だと思っていたので、悠は誰にも夏生のプライベートを話す気はなかった。彼が自分にだけ打ち明けてくれたのは信頼の証しだとも思っている。
疎外感に打ちのめされたのか理彩は額を押さえて呻いた。そこへ高見沢のフォローが入る。
「ちなみに私も今のメールで知った口なので、気にしなくていいんじゃないですか」
「そうか、そうよね――やるからには勝ちなさいよ」
「当然だよ。だって、僕が負けたらここに戻れなくなるからね。さてと、それじゃあ、今日の仕事はきっちり終わらせて行かないとね!」
ノートPCを閉じて、夏生が立ちあがる。丹念に手を洗ってから作業を開始する夏生に視線を投げると、夏生と目が合った。何か言いたげな様子を察知して、頷いてみせる。仕事が終わったら、部屋に戻ってから話したいのだろう。
終業後、悠はさりげなく真っ先に退社した。元々デスクもないから片付けも少ない。上の部屋に住むようになってからは更に荷物も減って身軽なのだ。
リビングで夏生を待っていると、すぐに夏生も帰宅した。夏生がリビングまで来るのを待って、ふたりは黙って拳を合わせた。
「ハルくん……」
拳を握ってはいるが、夏生は声を震わせていた。彼がクレインマジックの癖の強い面々の中でも際だって繊細な性格なのだと、今では悠もよくわかっている。
心配するなという気持ちを込めて、悠はもう一度夏生の拳にゴツリと音がするほど拳をぶつけた。
「大丈夫だ。あんたは間違ってない。自信を持って行ってこい」
気分はリングサイドのセコンドだ。そのまま気合いを入れるように夏生の広い背中を叩いた。
「うん――うん、ありがとう、ハルくん。勝って、ついでにA5ランク和牛1キロぐらいぶんどってくる」
「本当か? それ凄いな。やっぱりステーキか?」
「ステーキもいいけど、すき焼きもいいよね。ふたりだったらどっちも食べられるよ」
「楽しみだ。社長たちには内緒にしておこう」
顔を見合わせて、ふたりで笑う。それで緊張がほぐれたらしく、夏生が深く息をついた。
「これから、すぐ実家に戻るよ。着替えとかさすがに持っていかないといけないから、ちょっと準備するね」
自室に戻った夏生は、すぐに小さなボストンバッグを持って戻ってきた。玄関に向かう夏生に付いて、悠もシューズボックスの前まで行く。
「それじゃ、行ってきます」
「ああ。気をつけて。頑張れ」
頑張れ、と送り出しながら、夏生の背中に添えた手にありったけの応援の気持ちを込める。
悠の喜ぶ顔が好きだからと、いつも夏生は美味しいものを食べさせてくれる。そんな夏生に対して、せめて一番の理解者として応援したいと悠は願っていた。
1日2日では夏生は戻ってこないのではないかと覚悟はしていたが、3日目の夜もひとりで過ごすとなると、心細さが募ってくる。
上京してからはひとりが当たり前だったし、実家にいたときだってひとりで過ごすことが多かった。夏生と暮らすようになってからは1ヶ月足らずだったが、世話焼きな彼の存在は悠の自覚以上に膨らんでいたらしい。
朝食も夕食もひとりで食べて、コーヒーは自分で淹れる。「ハルくんもコーヒー飲む?」と柔らかな声で尋ねてくれる年上の友人は今はいないのだから。
朝食はパンをかじるばかりだったが、毎日夕食はそれなりに作った。冷蔵庫の中に生鮮食品があったからだ。腐らせるのは辛い。
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