殴り聖女の彼女と、異世界転移の俺

加藤伊織

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ハロンズ編

102 テント完成!

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 一週間後、サイモンさん以外の俺たちのパーティー4人とコリン、それに教授とルイという大人数で村へと向かった。サイモンさんも誘ってみたけど、留守番が必要だから後で見せてもらうと断られた。でも目がキラリと光っていたので、商売のネタになるとわかったら凄い食いつき方をしてきそうだ。
 
 既に鍛冶ギルドのグレッグさんからはポールが届いていて、それが思っているように組み立てられることは確認済みだ。実際使う時には地面に固定するためのペグとかが必要だけど、今日はとりあえず必要ない。

「聖女様ー! 会いたかったー!」
「レナさん! お元気でしたか?」

 村に着いた途端、レナが駆け寄ってきてサーシャに抱きついた、
 下半身が蜘蛛だし外見はレナの方が年上に見えるけど、精神年齢でいくとサーシャが姉でレナが妹っぽい。前回は会えなかったので、今日は大好きなサーシャに会えてレナも満足そうだ。

「機織りしてくれたポーラさんはね、お裁縫も上手なんだよ。あたしも教わることになったの」
「それはいいですね。いろいろできると楽しいですし」

 レナと手を取って穏やかな顔で話しているサーシャは、なんだか本当にお姉さんみたいだ。サーシャのお姉さんのエレノアさんがこんな感じなんだよな。アリーナさんは結構がさつなんだけど。サーシャの中で「理想のお姉さん」はエレノアさんなんだろう。

 俺たちはレナの案内でポーラさんの家に向かった。来るということがあらかじめわかっていたおかげで、ポーラさんは家の前で白い物を持って手を振ってくれている。

「これが蜘蛛の糸で織った布なのね! 凄い! 滑らかで不思議な手触りだわ」

 目の色を変えてすっ飛んでいったソニアが布を触ってうっとりしている。ソニアの後に教授も続いていって、布を引っ張ったりいろいろし始めた。

「これは凄い。まるでサテンのような光沢だね。弾力もあってとても面白い手触りだ」
「もらった図の通りに縫ったのよ。これで大丈夫だと思うけどねえ。しかし、太い針だとなかなか刺さらなくて、手持ちの一番細い針で縫ったよ」
「へえ、そんなことが」

 布を見てみると、確かにドーム状になっている。このテントは吊り下げ式だから、生地の外側にポールを通すための紐を付けてあるのだ。早速ポールを一本組み立てて、その紐を通してみる。長さはバッチリだ。

「サーシャ、やってみて」
「わかりました。このポールを組み立てて、真ん中のところまで紐にくぐらせればいいんですよね」

 いいテントの条件として、「組み立てが楽にできること」があると思う。
 俺たちの中で一番背が低いサーシャが組み立てられれば、これを今後使う冒険者が困ることはないだろう。

 サーシャはポールを組み立てて、俺が通したポールと交差するように紐をくぐらせ、真ん中のところまでポール同士を固定した。
 そこから、ポールを持ってよいしょっと声を掛け、布ごと持ち上げる。見事にテントは立ち上がって、サーシャは自分の足元にあるポケット状になっている部分にポールを差し込んだ。

「で、できました。意外に簡単ですね。重さがそれほどではないので私でも組み立てられます」
「ついに、テントができたな……」

 レヴィさんは白いテントを見て感慨深そうだ。
 蜘蛛の糸で織った布は多少の伸縮性があるらしくて、布の部分がピンと張った綺麗な形になっている。

「この布ねえ、凄いのよ。見ててごらん」

 テントを作って余ったらしいハギレを俺に渡し、ポーラさんはハサミと包丁を持ってきた。
 俺に布を広げて持たせると、その布に向かって包丁で切りつけてくる! うわっと思ったけど、布に包丁が弾かれて何事もなかった。続いて、包丁で突きを入れてくるけどそれも弾く。
 す、凄い……強度があることはわかってたけどこれ程までとは……そこいらの革鎧なんか目じゃない耐衝撃性能があるんじゃないだろうか。

「僕もやってみたいのだが!」
「あー、言うと思ったよ。じゃあ俺が持っててやるから」

 子供のような笑顔を浮かべた教授が包丁を構えると怖いな。布を持っているルイもちょっと嫌そうな顔をしている。

「おおおっ! この感覚は、あれだよ! ハンモックで揺れていた時の感じに似ている!」
「それだけじゃないんだよ」

 ポーラさんは布の端にハサミを入れた。切れないんじゃ? と思ったけど、今度はすんなり切れていく。不思議だな!

「端っこから刃物を入れると切れるのさ。切れなかったらこんなもの作れなかったからね。でも目打ちも通らないからもしかしてと思って切りつけてみたら、包丁を弾くんだもん。驚いたよ」
「へえええええ」

 教授とソニアだけでなくコリンとルイまでテントをペタペタ触りに行った。そしてそのまま入り口を見つけたコリンは中へ入っていく。

「俺が立ってても平気だね! 実際に作ってみると本当に今までのテントと全然違うのがわかるよ! これなら毛布を巻き付ければ5人寝られるよ」
「そのつもりで設計したもんね。床のあるテントはどう?」
「地面に毛布を敷いて寝るのと比べれば圧倒的に快適だな。水を弾くのはどんな感じだ?」
「じゃあみんなテントに入りたまえ。僕が外から水を掛けよう」

 レヴィさんの疑問に教授が提案をしてくれたので、俺たちは続々とテントの中に入った。

「いいかい? 行くよー。《水生成クリエイトウォーター》!」

 ドドドド、と勢いよくテントに水が当たる音がする。教授が水を当てているらしい場所は少し内側から見て出っ張っているんだけど、そこから水が漏れ出す気配はなかった。試しにそっと触ってみても、湿り気は感じない。

「ルイくん! 交替交替!」
「あー、わかったよ。教授は中に入れ」

 うきうきした教授にせがまれて、教授と入れ替わりにルイが出て行く。そしてルイの《水生成クリエイトウォーター》の詠唱で、やはり耐水性は問題ないことが実証された。教授はキラキラと目を輝かせて拍手している。

「いやあ、感無量だね! 蜘蛛の糸で布を作ってはどうかと提案したのは僕だけど、まさか実現するなんて!」
「実現すると思ってないことを言ったんですね!?」

 俺が突っ込むと、教授はハハハと笑ってごまかした。この人は都合が悪くなると逃げるんだよなあー。

「凄えな。本当に水を弾くぞ。当てた水がそのまま滝みたいに流れていった」

 ルイも耐水性に感心している。これなら強度、耐水性共に問題ない!

「それで、これ一個作るのにいくら掛かったんだ?」

 ごく当たり前の質問をレヴィさんが俺に向かって尋ねた。

「………………ポール部分が25万マギルで」
「布はあたしの日当くらいだね。原材料はレナの糸だから無料だよ」
「ポーラさんに1日1500マギル払うとしても、ええと……」
「――いや、そこは計算しなくていい……。ポール部分を聞いただけでげっそりした」

 レヴィさんは顔を覆っている。確かに、250万円以上のテントって誰が使うんじゃ! って冷静になると思ってしまう。

「サーシャくん、このポールを持ってどう思った?」
「えっと、凄く軽かったです! 布を持ち上げる時に少し力が要りましたけど、ポールだけなら重さはそれほど」
「では必要な強度を得られる範囲で、他の金属を混ぜて価格を下げるのはどうかな。半分を鉄にしたらどうなるか試してみては?」

 一家にひとり教授!! 解決法がすらすら出てくる!
 コリンが「ミスリルを……鉄と混ぜる?」って凄い形相で言ってるけど、それは武器防具ではやらないよっていう常識だ。ことテントに関してはそういうことがあっても仕方ないと思う。――でも俺にはひとつ懸念があるんだよな。

 例えばこのテントがひとつ25万マギルしたとして、冒険者パーティーに1回1000マギルで貸し出したとする。このテントが250回以上貸し出されれば元が取れる計算になるけども、そのくらい使っても駄目になるものだとは思えない。ミスリルのポールは俺が持ってガンガン岩を叩いてみたけど。それでも傷ついたりしなかったし。

「鉄を混ぜると軽さと丈夫さはともかく、ミスリルを使う最大の利点である『錆びない』って部分が駄目になりそうなんですよね。俺は高価でも、長く使えば元が取れるからいいと思ってますし」
「確かに、それは問題だね」
「布に関しては……これで完成だな」
「それじゃあレナとポーラさんに改めて相談があります。これと同じものを10個作って欲しいんです。ひとつあたり1万5000マギルお支払いします。期限は……レナがどれくらい1日に糸を出せるかも関係するよね」
「あたしじゃなくても、大きい蜘蛛を呼んで頼めば同じくらいの糸が出せるよ」
「本当に!? じゃあお願いしてもいいかな。それだとどのくらい掛かりそうかな」
「えーとね……」

 考え込むレナにポーラさんが助け船を出す。

「糸を取るのに2日、織るのに5日、縫うのに1日ってところだね。あたし以外の人にもやらせていいんだろう? そうするとこの村の織り手に声を掛けて10日もすればできるよ。機織りが早くなくても裁縫がはやい子とかもいるからね」
「そ、そんなに早くできますか? じゃあ一応15日でお願いします。他の人にお願いするのも構いません。この村で一番機織りがうまいというポーラさんが見て信頼できる人にお願いして下さい」
「待って! テント用に織り終わっても、この布をもっと織って欲しいんだけど! これで鎧下を作ったら最高じゃない? 火に弱いかもしれないけど、火竜の皮と組みあわせて内側にこれを着たら軽戦士の防御力も凄く上がると思うのよね」

 すかさずソニアが口を挟んできた。新しい布を前に目が爛々としている。ドレスにでもするのかと思ったら、まさかの鎧下だ。物凄く実用的。
 でも金属鎧にしろ革鎧にしろ、内側にこれで作ったチュニックとかを着たら怪我が格段に減る気はする! 少なくとも、着ていれば「街中で心臓を一突きにされました」なんてことはなくなるはず。そうか、衛兵関係に営業を掛けてもいいんだよな。厚みがあまりないから服の下に着ていても防御力を発揮し、貴族の一部にもそういう意味では需要がありそうだ。これはソニアに後で伝えておこう。

「教授はスティレア織りの工房を作るんですって? だったら、ジョーの仕事が終わった後に織った布は私に買い取らせてくれない? それほどたくさん一気に作る必要は無いから。もし今後ジョーがもっとテントを作るということになっても対応できるし、防具屋の知り合いがいるから持ち込んでみたいわ」
「それは……あたしは構わないよ。今まででは想像できない稼ぎになるしね」
「レナさんも、この村の人が機織りをするなら大丈夫ですよね?」
「うん、あたしのことを心配してくれてありがとう」

 レナがサーシャに腕を絡めて甘える。こっちはこっちで距離が近いんだよな……。いや、何にやきもちを焼いているんだ俺は。レナは幼女メンタルなんだぞ。

「テントについては俺が金を出して全部作ります。それで、ギルド長に相談してギルド内で貸出窓口を作らせてもらいます。金額とかはギルドと相談かな……」

 場合によっては4.5年で掛かった経費が回収しきれるだろう。その頃には作れるテントも増えているだろうから、ネージュの冒険者ギルドにも回せるようになる。
 ソニアも蜘蛛の糸の織物に出資するという話になったし、いろいろお金が動き始めてきた。

「ソニア、防具屋の知り合いって?」
「ハワードさんよ。多分ジョーも知ってるでしょう? あの人、うちの父の飲み友達なの」

 懐かしい名前を聞いたなあ……。俺がネージュで初めて防具を買った時お世話になった人だ。

「まあ、ジョーがいいならいいか……」

 ひとり、値段のことが引っかかっているらしいレヴィさんだけは手放しでは喜んでいなかったけども、「軽くて・丈夫で・持ち運びがしやすくて・居住性が高い」俺の夢のテントができた!

 なお、教授はこの功績を持って「山とテントを語る会・名誉顧問」の称号を与えられた。
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