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ハロンズ編
95 ヒュドラ退治with天才と天才と天災
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依頼を受けるために冒険者ギルドに行くと、俺たちが来たことを聞いてアンギルド長が出てきてくれた。
「久しぶりだな、まあこちらへ来て座りたまえ。お茶でも出そう」
ギルド長からそんなことを言われたら、断るわけにはいかない。俺たちは顔を見合わせ、ギルド長室へ足を踏み入れた。
ネージュでもギルド長室って入ったことがないんだよな。というか、ネージュのギルド長は見たことすらない。
ギルド長室は執務机とソファセットがあり、来客対応もできるようになっていた。俺たちの住んでいる家に備え付けであったものと遜色ない品物で、恐らく冒険者ではなく別の相手の応接に本来使用するものなのだろう。物凄く緊張する。
「最近、魔物が活発化している」
自らお茶を淹れてくれたアンギルド長は、前置きなくそう言った。
以前レヴィさんから聞いたことでもあるしそれにはあまり驚かない。むしろ、いきなり実務的な話に切り込んできたギルド長に驚いた。
「そのようです。前回のワイバーン退治も前例のないことだと聞きました」
答えたのはレヴィさんだ。俺たちのパーティーはレヴィさんがリーダーということになっている。
ピーターたちの「黄金の駿馬」みたいにパーティー名を付けようかという案もあったんだけど、サーシャとソニアが死ぬほど嫌がったので、その話はなかったことになった。……確かに、パーティー名があった方がわかりやすくていいんだけど、「黄金の駿馬」とか自ら名乗るのはないわーと俺でも思う。
「そうだ。ロクオ近辺ならともかく、ハロンズ近郊までワイバーンが現れたことは今までなかった。ロキャット湖のヒュドラも以前は稀に見かける程度だったのが、最近は複数頭が頻繁に目撃されている。繁殖したことは間違いないだろうし、ヒュドラは猛毒を持つ危険な竜だ。現状既にロキャット湖での漁に支障が出始めている。最大目撃数は現在のところ4頭。なので、2頭の討伐を依頼する。これは星5パーティーである君たちにしか依頼できない。ロクオ近辺の魔物討伐には黄金の駿馬が出向いている」
「以前からその件については打診があったので検討していましたが、戦力的に若干問題があるかもしれないと思い、リンゼイ・レッドモンドとルイ・ウォルトン両名のパーティーへの参加を要請しました。6名での変則パーティーになりますが、ジョーに補助魔法は不要なので問題ないかと思います。いかがでしょうか」
「リンゼイ・レッドモンドか……魔法の才ではソニアに遥かに及ばないが、上位聖魔法の使い手として今すぐ動かせる人間としてなら有効だろう。ルイも威力はないながらも緻密な魔法制御ができる。それに彼の本領は剣士であることだしな」
「えっ」
俺は思わず驚きに声を上げてしまった。ルイは自分で制御はそれほどうまくないって言ってたのに!
それに、4属性魔法が使えても教授の魔法の才は遥かにソニアに及ばないって、どういうことだろう。
「ジョー、私が意外なことを言ったような顔をしているな。リンゼイは地水風火の4属性の魔法を操るが、元の魔力がそれほど高くはない。複数属性を扱えることで行動の選択肢は非常に増えるが、相手に与えるダメージという点では純粋に魔力量が多いソニアには到底及ばないのだよ。
魔法使いの強さというものはいくつの属性を持っているかではなく、むしろどれだけの魔力量を持っているかだと私は考える。確かに3属性や4属性魔法使いは希少だが、希少だからといってそれがそのまま戦力に反映されるわけではない」
「確かに……そうですね」
アンギルド長の言う通りだ。いくら多くの属性が使えても、元の魔力が少なければ魔法の威力に反映されない。……ソニア、ネージュの街の中で仕事をしてた時は本当に宝の持ち腐れだったんだなあ。
「だから、リンゼイは上位聖魔法がなければ星1からのスタートになるはずだった。……まあ、彼はあのでたらめな性格ではあるが魔法制御の方は一流だ。それこそ針の穴に糸を通すような細かい芸当も成し遂げる。……気が乗ればの話だが」
……気が乗れば、なんだ……。
その一言に、俺たちのパーティーは全員同時に暗い顔になった。
「……少々不安ですが、彼にはプリーストとしての働きを期待していますので、どうにかなるでしょう。懸案はヒュドラが水棲であることです」
「すみません、私がみなさんに補助魔法をちゃんと掛けられれば……」
レヴィさんの言葉にサーシャが肩を縮ませるが、アンギルド長とレヴィさんが同時に「それは違う」と否定してくれた。
「サーシャ、アーノルドのパーティーの時には、アーノルドやギャレンと物理的な防御が高い人間が多かった。だが、今の俺たちは魔法職中心で防御が薄い。そこを補うためのプリーストふたり体制なんだ。特にヒュドラは毒が問題だ。主戦力になるサーシャが動けなくなった時に、それを治療するプリーストが必要だ。それはわかるな?」
「……確かに、私以外は防御が薄いですね」
「ヒュドラが水棲であることも関わってくるぞ。一撃入れればそちらに襲いかかってくるだろうが、水中や遠い場所などソニアの魔法が届かない場所にいたら問題外だ。そういう時に、プリーストの補助魔法による底上げは効果的になる。なんとか魔法を当てておびき寄せ近接戦闘に持ち込めば、君たちの実力なら確実に事を成し遂げると思っている」
「ギルド長のご期待に沿えるよう、尽力いたします」
「頼んだぞ。今まで最も目撃情報が上がっているのは、ロキャット湖のハロンズとは反対側の東側の岸であるナビッチだ。必要があれば船を借るといい。掛かった経費は申請してくれれば報奨金とは別に出そう。そして、報酬は150万マギルだ」
「150万……」
ソニアが呟いて卒倒しそうになっている。370万出して即金で家を買ったのに、この辺の感覚は相変わらずらしい。
前にサブカハのタンバー神殿をアーノルドさんたちと一緒に調査した時には8人で150万だったんだよな。今回は6人で150万、プラス買い取りがあればそれもだから、とんでもないことになりそうだ。
「ヒュドラの血は毒があるが、そこから解毒剤を生成することもできる。毒は使いようで薬にもなるからな。ジョーがいるから頼めることだが、可能な限りヒュドラの体は回収して欲しい。普段は本当に部分的にしか持ち帰ることができず、ヒュドラの素材は高価だ」
「わ、わかりました」
湖だよなあ。一時的に全部水を収納しちゃえばヒュドラは炙り出せるんじゃないだろうか。……いや、駄目だな。それをすると水産資源にも間違いなく打撃が出る。
ヒュドラをどうやって誘きだすかを悩みながら、俺たちは依頼を受けてその場を立ち去った。
行きも帰りも目的地に近い場所まで移動魔法を使えるので、時間は大幅に短縮できる。ルイと教授に準備してもらう関係で出発は明日だ。俺たちもレベッカさんたちに食事を用意してもらったりしないといけない。
翌朝、俺たちが準備を全て終えてふたりを迎えに行くと、どんよりした顔のルイと遠足の出発前の子供みたいな顔をした教授が待ち構えていた。
「やあ、おはよう! 昨日は楽しみすぎて寝られなかったよ!」
「馬鹿だろこいつ……あ、俺はちゃんと寝たから安心しろ」
教授は俺たちと同じく古代竜の革鎧らしい。ルイはチェインメイルに長剣を佩いていた。盾は持っていない。それと、馬を用意してくれている。1頭だからふたり乗りをするのだろう。
「ルイ、盾はなくても大丈夫?」
「ああ、俺は両手剣で戦うから盾は持てねえ。剣が盾代わりだな。パリィはめちゃくちゃ稽古させられたぜ」
なるほど、剣を防御にも使うのか。盾で攻撃することもある俺と逆だな。
「それじゃあ、ストラドに移動魔法で行きましょう。そこから馬でナビッチへ」
大街道の宿場町のひとつであるストラドに移動魔法を繋げる。俺が見えないドアを開けると、教授がパアアア! と顔を輝かせた。
「おおおお! これが伝説の移動魔法! 本当に空間を繋いでいる! いやあ、生きてるうちに体験できるとは思わなかったよ」
「なんかどっかで聞いたような……」
「いいから行きましょう。寝てないなら教授が休む時間も必要よ」
呆れた声のソニアが促す。そうだよな、「徹夜した魔法使い」って恐ろしく信頼度の低い響きがある。
俺たちはストラドの端に移動してから、馬でナビッチの街を目指した。
ストラドからナビッチの間にもきちんとした道があるので移動も楽だし、魔物に遭遇することもない。この道はサーシャの実家のあるケルボに行く時に使った北街道に合流するように続いている。
馬で走ること3時間ほどでナビッチの街に着いた。今までは山間を走ってきたが、それを抜けると急に目の前に湖が広がっていた。
一瞬海? と思ったくらい広い。対岸が見えなかった。
「小島があるからあそこまで船で行った方がいいと思うよ」
湖を見下ろしながら、ルイと一緒に馬に乗っている教授が提案してくれる。そういえば、「ヒュドラが瞬きするのか確認したくてロキャット湖に張り込んだ」ってルイが前に言ってたな。
「教授はヒュドラを見たことがあるんですか?」
「いや、見たことはないんだよ」
「今年の1月にクッソ寒い中であの小島に張り込んだんだ。でもその時にはヒュドラは見られなかったぜ。数ヶ月の間に増えたなんてにわかには信じられねえな」
「そうだな……それは確かに不自然だ。街で少し聞き込みをしてみるか」
レヴィさんの言葉にみんなが頷く。街中の食堂で昼食をとりながら、地元の人に話を聞いてみようということになった。その間、街の外に家を出して教授には休んでもらう。見張り役はルイだ。
話を何人かから聞いてみたところ、今までは時折見かける程度で頻繁に見かけるものではなかったヒュドラが、数ヶ月前から急に目撃頻度が上がったらしい。数ヶ月というのはいろいろ聞いていったら3・4ヶ月くらいのようだ。
ヒュドラは水棲とはいえ、水面から顔を出して呼吸をしなければならないそうで、時々水面から頭がにょーんと出ているという。イメージができなかったんだけど教授とレヴィさんが言うには頭が9つあって首が長い竜だというから、八岐大蛇みたいなものかな。
厄介なのが、この首を全部潰さないと倒した首も再生する特性だそうだ。なんか、ゲームでそういう敵はよく見たな……。
「久しぶりだな、まあこちらへ来て座りたまえ。お茶でも出そう」
ギルド長からそんなことを言われたら、断るわけにはいかない。俺たちは顔を見合わせ、ギルド長室へ足を踏み入れた。
ネージュでもギルド長室って入ったことがないんだよな。というか、ネージュのギルド長は見たことすらない。
ギルド長室は執務机とソファセットがあり、来客対応もできるようになっていた。俺たちの住んでいる家に備え付けであったものと遜色ない品物で、恐らく冒険者ではなく別の相手の応接に本来使用するものなのだろう。物凄く緊張する。
「最近、魔物が活発化している」
自らお茶を淹れてくれたアンギルド長は、前置きなくそう言った。
以前レヴィさんから聞いたことでもあるしそれにはあまり驚かない。むしろ、いきなり実務的な話に切り込んできたギルド長に驚いた。
「そのようです。前回のワイバーン退治も前例のないことだと聞きました」
答えたのはレヴィさんだ。俺たちのパーティーはレヴィさんがリーダーということになっている。
ピーターたちの「黄金の駿馬」みたいにパーティー名を付けようかという案もあったんだけど、サーシャとソニアが死ぬほど嫌がったので、その話はなかったことになった。……確かに、パーティー名があった方がわかりやすくていいんだけど、「黄金の駿馬」とか自ら名乗るのはないわーと俺でも思う。
「そうだ。ロクオ近辺ならともかく、ハロンズ近郊までワイバーンが現れたことは今までなかった。ロキャット湖のヒュドラも以前は稀に見かける程度だったのが、最近は複数頭が頻繁に目撃されている。繁殖したことは間違いないだろうし、ヒュドラは猛毒を持つ危険な竜だ。現状既にロキャット湖での漁に支障が出始めている。最大目撃数は現在のところ4頭。なので、2頭の討伐を依頼する。これは星5パーティーである君たちにしか依頼できない。ロクオ近辺の魔物討伐には黄金の駿馬が出向いている」
「以前からその件については打診があったので検討していましたが、戦力的に若干問題があるかもしれないと思い、リンゼイ・レッドモンドとルイ・ウォルトン両名のパーティーへの参加を要請しました。6名での変則パーティーになりますが、ジョーに補助魔法は不要なので問題ないかと思います。いかがでしょうか」
「リンゼイ・レッドモンドか……魔法の才ではソニアに遥かに及ばないが、上位聖魔法の使い手として今すぐ動かせる人間としてなら有効だろう。ルイも威力はないながらも緻密な魔法制御ができる。それに彼の本領は剣士であることだしな」
「えっ」
俺は思わず驚きに声を上げてしまった。ルイは自分で制御はそれほどうまくないって言ってたのに!
それに、4属性魔法が使えても教授の魔法の才は遥かにソニアに及ばないって、どういうことだろう。
「ジョー、私が意外なことを言ったような顔をしているな。リンゼイは地水風火の4属性の魔法を操るが、元の魔力がそれほど高くはない。複数属性を扱えることで行動の選択肢は非常に増えるが、相手に与えるダメージという点では純粋に魔力量が多いソニアには到底及ばないのだよ。
魔法使いの強さというものはいくつの属性を持っているかではなく、むしろどれだけの魔力量を持っているかだと私は考える。確かに3属性や4属性魔法使いは希少だが、希少だからといってそれがそのまま戦力に反映されるわけではない」
「確かに……そうですね」
アンギルド長の言う通りだ。いくら多くの属性が使えても、元の魔力が少なければ魔法の威力に反映されない。……ソニア、ネージュの街の中で仕事をしてた時は本当に宝の持ち腐れだったんだなあ。
「だから、リンゼイは上位聖魔法がなければ星1からのスタートになるはずだった。……まあ、彼はあのでたらめな性格ではあるが魔法制御の方は一流だ。それこそ針の穴に糸を通すような細かい芸当も成し遂げる。……気が乗ればの話だが」
……気が乗れば、なんだ……。
その一言に、俺たちのパーティーは全員同時に暗い顔になった。
「……少々不安ですが、彼にはプリーストとしての働きを期待していますので、どうにかなるでしょう。懸案はヒュドラが水棲であることです」
「すみません、私がみなさんに補助魔法をちゃんと掛けられれば……」
レヴィさんの言葉にサーシャが肩を縮ませるが、アンギルド長とレヴィさんが同時に「それは違う」と否定してくれた。
「サーシャ、アーノルドのパーティーの時には、アーノルドやギャレンと物理的な防御が高い人間が多かった。だが、今の俺たちは魔法職中心で防御が薄い。そこを補うためのプリーストふたり体制なんだ。特にヒュドラは毒が問題だ。主戦力になるサーシャが動けなくなった時に、それを治療するプリーストが必要だ。それはわかるな?」
「……確かに、私以外は防御が薄いですね」
「ヒュドラが水棲であることも関わってくるぞ。一撃入れればそちらに襲いかかってくるだろうが、水中や遠い場所などソニアの魔法が届かない場所にいたら問題外だ。そういう時に、プリーストの補助魔法による底上げは効果的になる。なんとか魔法を当てておびき寄せ近接戦闘に持ち込めば、君たちの実力なら確実に事を成し遂げると思っている」
「ギルド長のご期待に沿えるよう、尽力いたします」
「頼んだぞ。今まで最も目撃情報が上がっているのは、ロキャット湖のハロンズとは反対側の東側の岸であるナビッチだ。必要があれば船を借るといい。掛かった経費は申請してくれれば報奨金とは別に出そう。そして、報酬は150万マギルだ」
「150万……」
ソニアが呟いて卒倒しそうになっている。370万出して即金で家を買ったのに、この辺の感覚は相変わらずらしい。
前にサブカハのタンバー神殿をアーノルドさんたちと一緒に調査した時には8人で150万だったんだよな。今回は6人で150万、プラス買い取りがあればそれもだから、とんでもないことになりそうだ。
「ヒュドラの血は毒があるが、そこから解毒剤を生成することもできる。毒は使いようで薬にもなるからな。ジョーがいるから頼めることだが、可能な限りヒュドラの体は回収して欲しい。普段は本当に部分的にしか持ち帰ることができず、ヒュドラの素材は高価だ」
「わ、わかりました」
湖だよなあ。一時的に全部水を収納しちゃえばヒュドラは炙り出せるんじゃないだろうか。……いや、駄目だな。それをすると水産資源にも間違いなく打撃が出る。
ヒュドラをどうやって誘きだすかを悩みながら、俺たちは依頼を受けてその場を立ち去った。
行きも帰りも目的地に近い場所まで移動魔法を使えるので、時間は大幅に短縮できる。ルイと教授に準備してもらう関係で出発は明日だ。俺たちもレベッカさんたちに食事を用意してもらったりしないといけない。
翌朝、俺たちが準備を全て終えてふたりを迎えに行くと、どんよりした顔のルイと遠足の出発前の子供みたいな顔をした教授が待ち構えていた。
「やあ、おはよう! 昨日は楽しみすぎて寝られなかったよ!」
「馬鹿だろこいつ……あ、俺はちゃんと寝たから安心しろ」
教授は俺たちと同じく古代竜の革鎧らしい。ルイはチェインメイルに長剣を佩いていた。盾は持っていない。それと、馬を用意してくれている。1頭だからふたり乗りをするのだろう。
「ルイ、盾はなくても大丈夫?」
「ああ、俺は両手剣で戦うから盾は持てねえ。剣が盾代わりだな。パリィはめちゃくちゃ稽古させられたぜ」
なるほど、剣を防御にも使うのか。盾で攻撃することもある俺と逆だな。
「それじゃあ、ストラドに移動魔法で行きましょう。そこから馬でナビッチへ」
大街道の宿場町のひとつであるストラドに移動魔法を繋げる。俺が見えないドアを開けると、教授がパアアア! と顔を輝かせた。
「おおおお! これが伝説の移動魔法! 本当に空間を繋いでいる! いやあ、生きてるうちに体験できるとは思わなかったよ」
「なんかどっかで聞いたような……」
「いいから行きましょう。寝てないなら教授が休む時間も必要よ」
呆れた声のソニアが促す。そうだよな、「徹夜した魔法使い」って恐ろしく信頼度の低い響きがある。
俺たちはストラドの端に移動してから、馬でナビッチの街を目指した。
ストラドからナビッチの間にもきちんとした道があるので移動も楽だし、魔物に遭遇することもない。この道はサーシャの実家のあるケルボに行く時に使った北街道に合流するように続いている。
馬で走ること3時間ほどでナビッチの街に着いた。今までは山間を走ってきたが、それを抜けると急に目の前に湖が広がっていた。
一瞬海? と思ったくらい広い。対岸が見えなかった。
「小島があるからあそこまで船で行った方がいいと思うよ」
湖を見下ろしながら、ルイと一緒に馬に乗っている教授が提案してくれる。そういえば、「ヒュドラが瞬きするのか確認したくてロキャット湖に張り込んだ」ってルイが前に言ってたな。
「教授はヒュドラを見たことがあるんですか?」
「いや、見たことはないんだよ」
「今年の1月にクッソ寒い中であの小島に張り込んだんだ。でもその時にはヒュドラは見られなかったぜ。数ヶ月の間に増えたなんてにわかには信じられねえな」
「そうだな……それは確かに不自然だ。街で少し聞き込みをしてみるか」
レヴィさんの言葉にみんなが頷く。街中の食堂で昼食をとりながら、地元の人に話を聞いてみようということになった。その間、街の外に家を出して教授には休んでもらう。見張り役はルイだ。
話を何人かから聞いてみたところ、今までは時折見かける程度で頻繁に見かけるものではなかったヒュドラが、数ヶ月前から急に目撃頻度が上がったらしい。数ヶ月というのはいろいろ聞いていったら3・4ヶ月くらいのようだ。
ヒュドラは水棲とはいえ、水面から顔を出して呼吸をしなければならないそうで、時々水面から頭がにょーんと出ているという。イメージができなかったんだけど教授とレヴィさんが言うには頭が9つあって首が長い竜だというから、八岐大蛇みたいなものかな。
厄介なのが、この首を全部潰さないと倒した首も再生する特性だそうだ。なんか、ゲームでそういう敵はよく見たな……。
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基本、ノリと勢いで書いてます。
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暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
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