92 / 122
ハロンズ編
88 通常運転
しおりを挟む
「ただいま!」
家の玄関のすぐ側に移動魔法のドアを繋げて、ハロンズに戻る。
戻った瞬間、乾いた洗濯物を取り込むために外にいたらしいソニアが少しやつれた顔を向けてきた。
「お帰りなさい。……涼しかった?」
怖っ!
俺はぴくりと頬を引き攣らせたけど、サーシャは笑顔で「はい!」と答えた。それはもう元気よく。避暑してきました! というようなご機嫌さで。
「北街道は山間の木陰をずっと馬で走れたので爽快でした! 私の実家のあるケルボもかなり北にある村ですし、こちらと違って過ごしやすかったですよ。今度はソニアさんも一緒に行きましょうね! ……ところで、痩せたんじゃないですか? 具合が悪いんですか?」
「それなら私も一緒に連れて行って欲しかったわ! 暑くて寝苦しくてやってられなかったわよー! 暑気負けして食事がちゃんと取れなくなって痩せたのよ!」
夏バテか……。顔を見た瞬間からそんな気がしたけど。
俺たちはハロンズで一番暑いと言われている時期を丸々帰省に充ててしまったので、ソニアがどれだけ慣れない暑さで苦しんだかはわからない。ただ、「レベッカさんがいなかったら倒れてたわよ」と呟いたソニアの声には物凄い悲哀が滲んでいたから、俺はアオの手綱を離すと魔法収納空間からスティレア織りの布を取り出してソニアに差し出した。
「ソニアに特別なお土産。スティレア織りっていう通気性のよくてさらっとした織物。興味あるかなと思って買ってきた」
「ありがとう!! 後1ヶ月早く欲しかったわ、これ! 素朴な織物だけど表面が少しでこぼこしてるわね。それに通気性もいいけど汗もよく吸いそう。これでシーツと寝間着を仕立てたら今より少しは快適に過ごせそうだわ。ジョー! 仕立屋に行くわよ、北23番の方の! 移動魔法出して!」
「えええっ、今!?」
「ソニアさん、仕立てなら私がやりますから! シーツなら今日中に縫えますし! そんなに暑かったんですね……」
「寝る時だけでもネージュに戻りたいと思ったくらい暑かったわ。ここって周りに低い山があってちょっと盆地になってるじゃない? 熱気が籠もる感じなのよ。ネージュならもっと風通しがよかったのに」
そ、それは本当に辛いな……。スティレア織りを買ってきてよかった。
「サーシャ、アオとフローの世話は俺がやっておくから、シーツを縫ってくれないかな。ソニアだけでなくて、この分だとみんな参ってそうだし」
「はい、シーツなら端始末だけでいいのですぐ縫えますよ。多分コリンさんもできるんじゃないかと思います。ソニアさん、すぐに縫いますからね。シーツができたら簡単な造りですが寝間着も作りますね」
「ありがとうサーシャ! 愛してる! ジョーと別の方向にあなたってすっごい器用よね!」
織物を抱えたソニアとサーシャが家の中に入るのと入れ違いに、「ジョォォォォー!」って叫び声がしてコリンがタックルしてきた。
「ぐふっ!」
「お帰りお帰り! ジョーがいなくて寂しかったよー!」
犬か? コリンに尻尾が見える気がする。
あと、力一杯飛びつくのは本気でやめて欲しい。
「ただいま。暑くて大変だったってソニアから聞いたけど、コリンは大丈夫だった?」
「暑かった! 俺毎日下着だけで寝てた! 氷の柱は常に置いてあったんだけど、湿気が凄くてさー」
ああ、確かにそういう問題はあるよなあ。
とりあえずコリンにも涼しく過ごせそうなシーツと寝間着は必要らしい。
「ソニアへのお土産なんだけど、スティレア織りっていう通気性がよくて汗もよく吸いそうな布を買ってきたんだよ。ソニアがそれでシーツと寝間着を作りたいって言うから、サーシャが仕立てることになってさ。コリンも裁縫ができたら手伝ってくれないかな」
いいよ! という返事が来ると思っていたのに、コリンから返ってきたのはいつもよりも1オクターブくらい低い声だった。
「俺には?」
「ん?」
「俺にお土産は?」
「――牡蠣! 牡蠣があるよ! ネージュだとこの時期の牡蠣はなかなか食べられなかったんだろう? 生でつるんといけるし栄養もあるから、暑さに参ってたならいいと思う!」
俺はレベッカさんやレヴィさんに心の中で手を合わせながら、「コリンのことを思って牡蠣を買ってきたよ」という風を装った。その俺の言葉でコリンはくるりと表情を変える。
「そっかー! うん、夏の牡蠣はなかなか食べられないし、冬の牡蠣の方がネージュでは美味しかったよ。今夜は牡蠣だね!」
「うん、思いっきり食べてよ」
「楽しみだな! じゃあ、俺はサーシャと一緒にシーツを縫うよ。ジョーは?」
「アオとフローを厩に戻したら行くよ。大した手伝いはできないけど。じゃあ、また後で」
「うん! そうだ、頼まれてた蒸し器とハンドミキサーできてるよ。後で見せるねー」
「えっ」
去り際にとんでもない発言をしていったコリンに驚いて振り向いたけど、ちょうどドアがバタンと閉まるところだった。
蒸し器はともかく、ハンドミキサーなんか本当にざっくりとしか説明してないんだけどな? コリン天才かな。
数秒前までは「とんでもねえ爆弾を抱えてしまった」と頭の片隅で思ってたんだけど、コリンへの評価が爆上がりする。
これは、あれだ。アーノルドさんと一緒。人格の一部に大問題有りだけど、その他の部分は素晴らしいって奴。
ソニアとレヴィさんも加わってその日の晩までに俺たちは人数分のシーツを縫い上げ、そこで布が尽きたので俺はもう一度アニタさんのところへ行って布を多めに買い込んできた。
寝間着についてはサーシャとコリンで縫うという。コリンは裁縫も得意らしい。手先が器用なんだなあ。
シーツについては適度な大きさに切って、その切った場所だけ折り返して直線で縫っていくだけだったから、多少下手くそでもなんとかできた。
蜜蜂亭スタッフはお店で仕事をしていたからその場にいなかったけど、一番裁縫が下手なのは俺だった。次にソニア。意外に上手なのがレヴィさん。そして越えられない壁の先にコリンとサーシャがいる。
「ソニアとレヴィさんは、俺たちがいない間に依頼を受けたりしたんですか?」
「ああ、依頼、依頼な……受けたよ。ワイバーンの群れがロクオ山脈からこっちに向かってきてな」
単純作業の合間にレヴィさんに何の気なしに話しかけてみたら、とんでもない答えが返ってくる。
俺は驚いて針の先で少し指を刺してしまった。
「ワイバーン!? ワイバーンって竜の一種ですよね? 大丈夫だったんですか?」
「俺が弓で、ソニアが風魔法でなんとか戦ったが……ジョーとサーシャがいない時にふたりだけで依頼を受けるのは無謀だとわかった」
「レヴィさんがそんなことを言うなんて……ワイバーンはそんなに強力だったんですか?」
凄い早さでなみ縫いをしながら顔を上げずにサーシャが聞き返す。それに対して、ソニアとレヴィさんが揃って力なく首を横に振った。
「いや、相性の問題だな」
「私、空を飛んでる相手に魔法を当てるの苦手だわ」
「……今更?」
「今更感はあるが、本当に今回はそれで苦戦したんだ。俺とソニアだけだと前衛がいなくて、俺は攻撃が本領じゃないから火力不足になる」
レヴィさんが一言喋る毎に、その声から力が抜けていく……。ソニアがいるのに火力不足というのは矛盾を感じるけど、いくら攻撃を打っても当たらないならそれは確かに火力に数えられないな。
「あれ? だけどソニアってマーテナ山で飛んでる火竜の首を切り落として倒したよね?」
「ワイバーンと火竜では大きさが全然違うのよ。ワイバーンは小さい上に何頭もいたの。だから余計当たりにくくて」
「ジョーさん、ワイバーンは火竜の3分の1くらいの大きさなんですよ。小さいので竜じゃないって言う人もいるんですけど、その分飛ぶのが早いしブレスも吐いてくるので、ちょっと厄介な相手です」
そうか、俺は火竜みたいなのをイメージしてたから、あれにレヴィさんが弓を射るのは凄いなと思ったんだけど、小さいのなら確かに人間の射る弓矢でも効果があるだろう。
「前にアーノルドたちとワイバーン退治をした時には、アーノルドとギャレンという壁がいたから楽に倒せた。俺とソニアでは常識上は接近されると危ないんだが……」
「確かにふたりとも防御的には薄いから危ないですよね? どうやって倒したんです?」
「「はぁ……」」
俺の問いかけに、ソニアとレヴィさんが同時にため息をつく。思い出しただけでげんなりするらしい。そんなにか……。
「1頭目は俺に体当たりしてこようとしたから、弓を至近距離から口に打ち込んで動きが止まったところにソニアが《旋風斬》を当てて倒した。それで、残りは結局ソニアが《暴風斬》を打ちまくって力押しで倒した」
「なんだかんだ言って火力で押してるじゃないですか……」
「何度も言うけど、私は飛んでる相手に魔法を当てるの苦手よ。だから、広範囲に展開するように《暴風斬》を打ちまくるしかなかったのよ」
「…………いつも通りだね」
「ある意味安心しました」
ソニアとレヴィさんの倒し方も酷いけど、俺とサーシャの感想も酷かったと思う。
「プリーストの必要性をしみじみ感じたな。ジョーとサーシャも帰ってきたことだし、やらなければいけないことも一段落付いた。……サイモンをそろそろスカウトしに行かないか?」
「実は俺もサイモンさんの実家のことを考えてました」
サーシャの家で作ったブリ照りが好評だったことで、俺はこの国の人にも醤油は受け入れられると手応えを感じた。
そして、サイモンさんのところでは醤油を持て余している。だから、ブリ照りを筆頭に「そこでしか味わえない美味しい料理」を売りにすればいい。
近々アンナさんに声を掛けて、レベッカさんにも加わってもらってオールマン食堂の経営再建計画とメニュー案に付いて話し合うことにしよう。
せっかくだから醤油の認知度を上げて、その産地との貿易をもっとして欲しいし。
家の玄関のすぐ側に移動魔法のドアを繋げて、ハロンズに戻る。
戻った瞬間、乾いた洗濯物を取り込むために外にいたらしいソニアが少しやつれた顔を向けてきた。
「お帰りなさい。……涼しかった?」
怖っ!
俺はぴくりと頬を引き攣らせたけど、サーシャは笑顔で「はい!」と答えた。それはもう元気よく。避暑してきました! というようなご機嫌さで。
「北街道は山間の木陰をずっと馬で走れたので爽快でした! 私の実家のあるケルボもかなり北にある村ですし、こちらと違って過ごしやすかったですよ。今度はソニアさんも一緒に行きましょうね! ……ところで、痩せたんじゃないですか? 具合が悪いんですか?」
「それなら私も一緒に連れて行って欲しかったわ! 暑くて寝苦しくてやってられなかったわよー! 暑気負けして食事がちゃんと取れなくなって痩せたのよ!」
夏バテか……。顔を見た瞬間からそんな気がしたけど。
俺たちはハロンズで一番暑いと言われている時期を丸々帰省に充ててしまったので、ソニアがどれだけ慣れない暑さで苦しんだかはわからない。ただ、「レベッカさんがいなかったら倒れてたわよ」と呟いたソニアの声には物凄い悲哀が滲んでいたから、俺はアオの手綱を離すと魔法収納空間からスティレア織りの布を取り出してソニアに差し出した。
「ソニアに特別なお土産。スティレア織りっていう通気性のよくてさらっとした織物。興味あるかなと思って買ってきた」
「ありがとう!! 後1ヶ月早く欲しかったわ、これ! 素朴な織物だけど表面が少しでこぼこしてるわね。それに通気性もいいけど汗もよく吸いそう。これでシーツと寝間着を仕立てたら今より少しは快適に過ごせそうだわ。ジョー! 仕立屋に行くわよ、北23番の方の! 移動魔法出して!」
「えええっ、今!?」
「ソニアさん、仕立てなら私がやりますから! シーツなら今日中に縫えますし! そんなに暑かったんですね……」
「寝る時だけでもネージュに戻りたいと思ったくらい暑かったわ。ここって周りに低い山があってちょっと盆地になってるじゃない? 熱気が籠もる感じなのよ。ネージュならもっと風通しがよかったのに」
そ、それは本当に辛いな……。スティレア織りを買ってきてよかった。
「サーシャ、アオとフローの世話は俺がやっておくから、シーツを縫ってくれないかな。ソニアだけでなくて、この分だとみんな参ってそうだし」
「はい、シーツなら端始末だけでいいのですぐ縫えますよ。多分コリンさんもできるんじゃないかと思います。ソニアさん、すぐに縫いますからね。シーツができたら簡単な造りですが寝間着も作りますね」
「ありがとうサーシャ! 愛してる! ジョーと別の方向にあなたってすっごい器用よね!」
織物を抱えたソニアとサーシャが家の中に入るのと入れ違いに、「ジョォォォォー!」って叫び声がしてコリンがタックルしてきた。
「ぐふっ!」
「お帰りお帰り! ジョーがいなくて寂しかったよー!」
犬か? コリンに尻尾が見える気がする。
あと、力一杯飛びつくのは本気でやめて欲しい。
「ただいま。暑くて大変だったってソニアから聞いたけど、コリンは大丈夫だった?」
「暑かった! 俺毎日下着だけで寝てた! 氷の柱は常に置いてあったんだけど、湿気が凄くてさー」
ああ、確かにそういう問題はあるよなあ。
とりあえずコリンにも涼しく過ごせそうなシーツと寝間着は必要らしい。
「ソニアへのお土産なんだけど、スティレア織りっていう通気性がよくて汗もよく吸いそうな布を買ってきたんだよ。ソニアがそれでシーツと寝間着を作りたいって言うから、サーシャが仕立てることになってさ。コリンも裁縫ができたら手伝ってくれないかな」
いいよ! という返事が来ると思っていたのに、コリンから返ってきたのはいつもよりも1オクターブくらい低い声だった。
「俺には?」
「ん?」
「俺にお土産は?」
「――牡蠣! 牡蠣があるよ! ネージュだとこの時期の牡蠣はなかなか食べられなかったんだろう? 生でつるんといけるし栄養もあるから、暑さに参ってたならいいと思う!」
俺はレベッカさんやレヴィさんに心の中で手を合わせながら、「コリンのことを思って牡蠣を買ってきたよ」という風を装った。その俺の言葉でコリンはくるりと表情を変える。
「そっかー! うん、夏の牡蠣はなかなか食べられないし、冬の牡蠣の方がネージュでは美味しかったよ。今夜は牡蠣だね!」
「うん、思いっきり食べてよ」
「楽しみだな! じゃあ、俺はサーシャと一緒にシーツを縫うよ。ジョーは?」
「アオとフローを厩に戻したら行くよ。大した手伝いはできないけど。じゃあ、また後で」
「うん! そうだ、頼まれてた蒸し器とハンドミキサーできてるよ。後で見せるねー」
「えっ」
去り際にとんでもない発言をしていったコリンに驚いて振り向いたけど、ちょうどドアがバタンと閉まるところだった。
蒸し器はともかく、ハンドミキサーなんか本当にざっくりとしか説明してないんだけどな? コリン天才かな。
数秒前までは「とんでもねえ爆弾を抱えてしまった」と頭の片隅で思ってたんだけど、コリンへの評価が爆上がりする。
これは、あれだ。アーノルドさんと一緒。人格の一部に大問題有りだけど、その他の部分は素晴らしいって奴。
ソニアとレヴィさんも加わってその日の晩までに俺たちは人数分のシーツを縫い上げ、そこで布が尽きたので俺はもう一度アニタさんのところへ行って布を多めに買い込んできた。
寝間着についてはサーシャとコリンで縫うという。コリンは裁縫も得意らしい。手先が器用なんだなあ。
シーツについては適度な大きさに切って、その切った場所だけ折り返して直線で縫っていくだけだったから、多少下手くそでもなんとかできた。
蜜蜂亭スタッフはお店で仕事をしていたからその場にいなかったけど、一番裁縫が下手なのは俺だった。次にソニア。意外に上手なのがレヴィさん。そして越えられない壁の先にコリンとサーシャがいる。
「ソニアとレヴィさんは、俺たちがいない間に依頼を受けたりしたんですか?」
「ああ、依頼、依頼な……受けたよ。ワイバーンの群れがロクオ山脈からこっちに向かってきてな」
単純作業の合間にレヴィさんに何の気なしに話しかけてみたら、とんでもない答えが返ってくる。
俺は驚いて針の先で少し指を刺してしまった。
「ワイバーン!? ワイバーンって竜の一種ですよね? 大丈夫だったんですか?」
「俺が弓で、ソニアが風魔法でなんとか戦ったが……ジョーとサーシャがいない時にふたりだけで依頼を受けるのは無謀だとわかった」
「レヴィさんがそんなことを言うなんて……ワイバーンはそんなに強力だったんですか?」
凄い早さでなみ縫いをしながら顔を上げずにサーシャが聞き返す。それに対して、ソニアとレヴィさんが揃って力なく首を横に振った。
「いや、相性の問題だな」
「私、空を飛んでる相手に魔法を当てるの苦手だわ」
「……今更?」
「今更感はあるが、本当に今回はそれで苦戦したんだ。俺とソニアだけだと前衛がいなくて、俺は攻撃が本領じゃないから火力不足になる」
レヴィさんが一言喋る毎に、その声から力が抜けていく……。ソニアがいるのに火力不足というのは矛盾を感じるけど、いくら攻撃を打っても当たらないならそれは確かに火力に数えられないな。
「あれ? だけどソニアってマーテナ山で飛んでる火竜の首を切り落として倒したよね?」
「ワイバーンと火竜では大きさが全然違うのよ。ワイバーンは小さい上に何頭もいたの。だから余計当たりにくくて」
「ジョーさん、ワイバーンは火竜の3分の1くらいの大きさなんですよ。小さいので竜じゃないって言う人もいるんですけど、その分飛ぶのが早いしブレスも吐いてくるので、ちょっと厄介な相手です」
そうか、俺は火竜みたいなのをイメージしてたから、あれにレヴィさんが弓を射るのは凄いなと思ったんだけど、小さいのなら確かに人間の射る弓矢でも効果があるだろう。
「前にアーノルドたちとワイバーン退治をした時には、アーノルドとギャレンという壁がいたから楽に倒せた。俺とソニアでは常識上は接近されると危ないんだが……」
「確かにふたりとも防御的には薄いから危ないですよね? どうやって倒したんです?」
「「はぁ……」」
俺の問いかけに、ソニアとレヴィさんが同時にため息をつく。思い出しただけでげんなりするらしい。そんなにか……。
「1頭目は俺に体当たりしてこようとしたから、弓を至近距離から口に打ち込んで動きが止まったところにソニアが《旋風斬》を当てて倒した。それで、残りは結局ソニアが《暴風斬》を打ちまくって力押しで倒した」
「なんだかんだ言って火力で押してるじゃないですか……」
「何度も言うけど、私は飛んでる相手に魔法を当てるの苦手よ。だから、広範囲に展開するように《暴風斬》を打ちまくるしかなかったのよ」
「…………いつも通りだね」
「ある意味安心しました」
ソニアとレヴィさんの倒し方も酷いけど、俺とサーシャの感想も酷かったと思う。
「プリーストの必要性をしみじみ感じたな。ジョーとサーシャも帰ってきたことだし、やらなければいけないことも一段落付いた。……サイモンをそろそろスカウトしに行かないか?」
「実は俺もサイモンさんの実家のことを考えてました」
サーシャの家で作ったブリ照りが好評だったことで、俺はこの国の人にも醤油は受け入れられると手応えを感じた。
そして、サイモンさんのところでは醤油を持て余している。だから、ブリ照りを筆頭に「そこでしか味わえない美味しい料理」を売りにすればいい。
近々アンナさんに声を掛けて、レベッカさんにも加わってもらってオールマン食堂の経営再建計画とメニュー案に付いて話し合うことにしよう。
せっかくだから醤油の認知度を上げて、その産地との貿易をもっとして欲しいし。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

半神の守護者
ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。
超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。
〜概要〜
臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。
実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。
そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。
■注記
本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。
他サイトにも投稿中

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる