殴り聖女の彼女と、異世界転移の俺

加藤伊織

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ネージュ編

17 君の専属料理人です

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 ネージュに戻ってギルドに大量の大猪ビツグワイルドボアを積み上げようとしたら、「5回に分けて欲しい」とエリクさんに懇願された。
 
 そうだよな。古代竜エンシェントドラゴンを置いた部屋に大猪99頭が入りきるわけがない。
 結局、順次解体を進めていきながら、なくなったらまた置くということを繰り返すことになった。
 前回の話を聞いたところ、解体専門の職人総出で20頭の解体に3日掛かったらしい。
 それが早いのか遅いのか俺には全く判断が付かないけど、はっきりわかるのは10日以上ネージュに留まらなければ俺の搬送の仕事は完了しないということだった。

 ……なるほど。それも含めての30万マギルか。
 サーシャが「ジョーさんは! 戦闘経験を! 積むべきです!」と気合い入りまくりなのでその内近郊にでも何かの狩りに連れて行かれそうなんだけど、それまでは猶予ができた。
 やりたいことがいろいろあるから、今のうちにやっておこう。
 

 初日に解体した大猪のバラの部分を100キロくらい買い取らせてもらっていたので、俺はベーコン作りに必要な他の道具を街で買い揃えた。
 財布の紐が固いサーシャが何か言うかなと思ったら、俺と一緒に店を回りながら妙に嬉しそうにしている。

「サーシャ、嬉しそうだね?」
「はい。ジョーさんが自分からやってみたいことがあるっていうのが嬉しくて。
 ……時々思うことがあるんです。もしも自分がジョーさんの立場だったら、どうなってしまうかな、って。多分、何もできないと思います」
「それは……どうだろう」

 俺も想像してみる。俺が元いた日本に突然飛ばされてしまったサーシャはどうするだろうかと。
 ――ほとんど想像が付かない。ひとつだけ思ったのは、車を魔物と勘違いしてボコボコにしそうだなということくらいだ。
 
 戸籍というものが厳密に存在するあの国で、サーシャはどんな扱いを受けるだろうか。
 言葉が通じても見た目が外国人に見えるから、不法滞在とか思われて拘束されるかもしれない。
 逆に、美少女だから悪い奴に目を付けられて囲われて、いいように扱われるかもしれない。

 どっちにしろ、あまりいい方向へは行かないだろうというのが推測できる。

「そういえば、俺が計算速いから驚かれたもんね」
「そうですよ! ジョーさんみたいにいろんな勉強ができるわけじゃないですから、多分本当に何もできなくて困り果てると思うんです。私の取り柄と言えば上位聖魔法と戦うことだけですし、料理もうまくないですし。ジョーさんは凄いです」

 段々サーシャの声がいじけてくる。俺からしてみたら料理ができるよりも、大猪を一撃で倒せる方が常人にはできないし100倍くらい凄いことだと思えるんだけども。料理は練習すればできるようになるけど、あれはアーノルドさんかサーシャでないと無理だ。
 多分、あれだな。無い物ねだりってやつ。
 それにしても、サーシャは料理ができないというのはちょっと意外だ。
 
「料理、してこなかったの?」
「10歳までは家の手伝い程度はしましたが、姉がいたので私は本当に手伝い程度で。きちんと母から料理を習う前に教会に入って修行を始めてしまいましたし、教会では質素な料理が主でしたから、麦粥程度しか作れないんです。お肉も焼くと焦がすことが多くて……。イスワでジョーさんが作ってくれたニジマスのお料理、本当に美味しかったです。私もあんなお料理が作れるようになったらなあ」
「俺が――」

 俺が教えようか、と言いかけて俺は言葉を止めた。
 もっといい言葉があるじゃないか。清水の舞台からダイブだけど。
 
「俺が、サーシャが美味しいと思う料理をいつでも作るよ」
「えっ、本当ですか!」

 間髪入れずに満面の笑みで振り返ったサーシャは、俺の顔が微妙に緊張してることに気付いたらしい。
 たっぷり5秒ほど笑顔のままで固まった後、俺の言葉の真意に気付いたらしくて突然ぶっ倒れた!

「うわっ! サーシャ、大丈夫!?」
「ずるい……なんでいつも不意打ちなんれすか……」

 慌てて抱き留めたけど、また目がぐるぐるのサーシャだ。
 あああ、どうして俺は毎回毎回……。

 茹で蛸のようになったままぐにゃりと脱力しているサーシャを支えつつ、どこか休めるところはないかと俺は辺りを見回した。

「――あ」

 そして、初めて見る一軒の店の看板に目を留めたのだった。


 俺がサーシャを抱えて乗り込んだのは、クエリーさんの店だ。
 来るのは初めてだけど、店の名前は聞いていたし、一目でピンときた。
 規模としてはそこそこ大きい店だ。置いてある物は雑多だけど、雑貨店というやつだろう。
 店主であるクエリーさんが自ら仕入れをするから品物は確かなのだと、武器屋のハワードさんからも評判を聞いていた。

「クエリーさん、こんにちは! 先日お世話になったジョーです!」

 俺がドアをくぐってすぐに声を張ると、奥からクエリーさんがゆったりと出てきて――そして、ぐったりしているサーシャを必死に支える俺という構図を見て慌てて駆け寄ってきてくれた。

「ジョーくんにサーシャちゃんじゃないか、どうした!?」
「話しながら歩いていたらサーシャが倒れてしまって」
「ずるい……ジョーさんずるいんです……ふえっ」
「すみません、買い物しますんでちょっと休ませてもらえませんか」
「いいともいいとも。さ、奥へおいで。何か飲み物でも出してあげよう」
「ありがとうございます。――サーシャ、ごめん」
「ぎゃひっ!?」

 また凄い奇声がしたな……。
 引きずるのも悪いから横抱き、いわゆるお姫様抱っこをしただけなんだけど。
 慣れない体勢で怖いのか、俺の首にしがみつくサーシャの腕がプルプルしてる。

 店のバックヤード的な場所に通されて、そこにある椅子にサーシャを腰掛けさせてもらった。まだサーシャがぐにゃんとしてるので、椅子を壁に近づけてそこにもたれかかれるようにする。

「仲が良いねえ。いいことだ、ははは」

 笑いながらクエリーさんはコップをふたつ持ってきてくれた。お礼を言って口を付けると、微かにレモンの味がする。冷えた水にレモン汁を入れたものらしくて、俺にとっても馴染み深い味だ。
 冷たさが心地よくて、思わず一気に飲み干してしまう。サーシャも蜜蜂亭でリンゴジュースを飲んだときのように一気に喉に流し込んでいた。

「はあ……」
「はあ……」

 俺たちは同時に息をついて、顔を見合わせてまた固まった。

「あ、あのさ。サーシャが食べたいときは本当にいつでも作るから」
「はい、あの……はい、覚えておきます」

 俺たちの間に流れる空気に気付いたのか、クエリーさんがにまにまとしている。
 くっ、居心地悪いな……。

「サーシャは休んでて。俺は欲しいものがありそうだから見てくる」
「わ、わかりました」

 冷たい壁に再び身を預けてサーシャは顔を覆ってしまった。
 俺はクエリーさんの背を押して足早に店に戻る。
 ちらっと見えたんだけど、空樽売ってるみたいだったんだよな。塩漬けにした肉を入れるのにいいと思ったんだ。

「あ、これ俺が運んできたワインですか」
「そうだよ。イスワ産を示す焼き印が入ってるからね。さて、何を探してるか教えてくれれば見繕おう」
「大猪を狩ってきたので、燻製を作りたいと思ってるんです。調理道具は買ってきたので、そこの樽を数個と、塩と、あと香辛料は何があるか教えてもらえますか?」
  
 クエリーさんは香辛料のリストを持ってきて俺に見せてくれた。俺はスパイスについてはあまり詳しくないので、父の作っていた燻製各種に使われていたものだけなんとかわかる程度だ。
 値段は決して安くなかったけど、大量に買ったらクエリーさんはほくほく顔で樽をひとつおまけしてくれた。

「さすが空間魔法使いだな、稼げてるんだね?」
「はい、おかげさまで」
「それにしても、燻製にこんなに香辛料を使うのかい?」
「使わないんですか?」
「聞いたことがないねえ」

 ざっくりクエリーさんに話を聞いたら、この世界ではハムもベーコンも「ただ煙で燻すだけ」のようだ。それでも水分が抜けて保存性が圧倒的に増すので重宝されるらしい。
 道理でベーコンらしいベーコンに出会わないと思った。

 ならば、俺が美味しいベーコンを作らねば、と妙な使命感が漲ってくる。
 そしてもうひとつ、クエリーさんに相談したいと思っていたことを思い切って尋ねてみることにした。

「クエリーさんは麦粥って食べますか?」
「俺はあの味があまり好きじゃなくてねえ。我が家は朝はパンだよ」
「持ち帰りもできる凄く美味しい麦粥の店が早朝から開いてたら、利用したいと思いますか?」
「ふむ……興味はある。個人的には凄く美味しいとジョーくんが言うところが気になるし、商人としては早朝から開いていて持ち帰りができるというところが気になるね。なにせ麦粥といえば手早く作れて手早く食べられるのが利点だから、手軽に持ち帰りができるのは強みになる。それが簡単には作れない『凄く美味しい麦粥』なら、家でざっと煮るより鍋を持って買いに来た方がいいと思う人間もいるだろう」

 クエリーさんが顎をさすりながら喋っている。これはイスワで見たことがある。あれは確か俺がワインを収納して運びましょうという提案をしたときだった。
 多分これは、考慮中のサインだ。
 食いつきは悪くないというところか。

「ベーコンが出来上がったら、俺特製の麦粥を作りますから是非食べてみてください。それで商売になると思ったら、お店にしてみませんか」
「ジョーくんが自分で店をやるんじゃなくて、俺に任せるということかい?」
「出資はできます。でも俺は商売のことはからきしですし、サーシャと一緒に冒険者をしたいと思ってるので」

 俺の言葉にまたクエリーさんがにまにました。
 しまった、墓穴を掘った……。

「まずは食べてみてからだなあ。俺だけじゃなく、飲食店をやってる奴にも一枚噛ませた方がいい。蜜蜂亭って知ってるかい?」
「あ、冒険者ギルドの側の店ですね?」
「ああ。あそこの店主のレベッカは俺とは幼馴染みでね。がめつい……おっと、商魂逞しい頼りになる奴だよ。その時にはそいつも連れていこう」
「わかりました。美味しいものを作ります。じゃあ、この会計を」
「25000マギルだよ。まいどあり!」
 
 大量の塩と樽、そして香辛料を魔法収納空間にしまって、俺はお礼を言ってからサーシャを迎えに行った。
 幸いサーシャはクールダウンできていて、買い物が済んだと伝えるとぎこちないながらも良かったですねと微笑んでくれる。  

 
 そして宿に戻り、俺は厨房を借りてあらかじめ適当に切り分けられていた大猪のバラ肉に塩を擦り込んだ。
 塩を擦り込んで一日おき、程良く水分が抜けたらソミュール液という調味液に漬け込むんだけども――。 

 ここで問題があることに俺は気付いてしまった!
 魔法収納空間の中では時間が経過しない。
 つまり、猪肉の塩漬けを作ろうとしても、全然水分が抜けてくれない。

 困ったなあ。かといって、収納空間から出しておいたら恐ろしく場所を食う。
 宿にはちょっと厨房を借りることは頼んだけど、でかい肉のブロックを置かせてくださいなんて頼んでない。
 そもそも、大量に猪肉を買ったのは、俺がうっかり「漬け込みは魔法収納空間でやればいいや」と思ったからだ。
 
 うーん、どうしたものかなあ。
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