3 / 122
ネージュ編
3 ふたりだけのパーティー結成
しおりを挟む
恥ずかしいくらい泣いた後で、俺たちはお互いぐずぐず鼻をすすりながら改めて自己紹介をした。
御厩条という名前は「みまや」を彼女が何度か噛んだので、「ジョー」と呼ばれることになった。そういえばうちの親、俺が将来海外に出ても呼ばれやすいようにこんな名前にしたとか言ってたっけ。
……中学の時の同級生に「獅子」って名前の奴いたけど、あいつ元気かな……。
「サーシャはこれからどうするの?」
勇者パーティーを追放された現場はかなりの人が見ていたはずだ。彼女の今後が心配になる。それに、俺も右も左もわからない場所で知り合った人間といきなり離れたくはなかった。
「それなんですが。あの、ものは相談で、私とパーティーを組んでもらえませんか?」
「パーティーってあの、勇者パーティーみたいな、一緒に冒険をしたりする……?」
思わぬ彼女からの提案に俺は動揺した。でも表情筋が7割死んでると言われる俺だから、声にもあまり動揺が出ていない。
「はい、そうです。基本的に冒険者はギルドに登録してお仕事を請け負って、報酬をもらいます。でも、私はさっきパーティーを抜けてしまいましたから、このままだとお仕事を受けられないんです。ひとりというのは危ないので、余程簡単なもの以外ギルドの方でお仕事を認めてくれなくて」
「俺が、冒険者に? でも、サーシャならどこでもパーティーに入れてくれるんじゃ?」
冒険者になるのはちょっと嫌だなという気持ちもあってそう尋ねてみると、みるみるサーシャの顔が曇った。
あ、もしかして地雷を踏んだかな……。
「はい……多分、誘っていただけるところは多いと思います。私、有名になってるそうですし。でも、アーノルドさんたちの迷惑になりたくないんです。有名になってしまった私が既存の他のパーティーに入ったら、きっと悪い噂になってしまうから」
彼女の言葉で、俺の体に電流が走った。
聖女だ。この子、まさしく聖女だ。
心根が清い。見た目が可憐なだけじゃなくて、性格がいい。例えそれなりの理由があり土下座をしてたとしても、自分を「追い出した」パーティーの心配をここまでするものか?
その上ドラゴンひとりで倒したなんて、そりゃこの子自体が噂になるに決まってる。
俺は目の前の天使のような少女を見つめて、味わったことのない感情に翻弄されていた。
「ジョーさん、この世界でどう生きていきたいとか考えてますか? きっと何もわからない状態ですよね? 私も若輩者でそんなに世間に凄く詳しいわけじゃないですが、一緒にいれば何かと助けてあげられると思うんです。ジョーさんの目の前で、私がパーティーから抜けてひとりになったこと、これも女神テトゥーコのお導きだと思います」
「女神テトゥーコ」
だめだ、どうしてもその名前が出てくると意識がそっちに引きずられる。
いや、でもちょっとありそうだな。俺の転移先として、わざわざサーシャの追放現場の目の前を選んだとか。あの女神はちょっとお節介そうだったし。
――あちらでも元気でお過ごしなさいね。
女神の最後の言葉が耳に蘇った。
正直、「またお会いしましょう」とかじゃなくて良かったけど、あの人善意で言ってくれたんだよな。
「俺も、女神テトゥーコのお導きかもしれないと思う。元気でお過ごしなさいねって言って握手してくれたし」
「えええっ! すご……凄いですね! あの、ジョーさん、握手してもらっていいですか?」
「別にいいけど?」
俺が手を差し出すと、サーシャは白くてほっそりした手でぎゅっと握手してきた。
……思ったより手のひら硬いな。まあ、武器と盾持って戦ってたら当然か。
「あわわ、この手が、女神と握手した手!」
なんか、反応がアイドルと握手したみたいになってるけど。間接握手ってやつか。俺と握手したことが重要なんじゃなくて、「女神と握手した俺」と握手したことが重要なんだな。
……ちょっと悲しい。
「感無量です! ジョーさん、ありがとうございます!」
さっきまで泣いていたのに、サーシャはふわふわとした笑顔を浮かべた。
「いいよ、パーティー。俺、空間魔法しか使えないけど」
君ともう少し一緒にいたいから。そんな気持ちは口に出さないけど。
多分女神の思惑もあると思うけど、右も左もわからない俺が誰かから「一緒に行動をしよう」と誘ってもらえてるのはとんでもない幸運のはずなのだ。
「お世話になります、よろしくお願いします」
俺が頭を下げると、サーシャは口をパクパクさせながらあわあわしていた。
「どうかした?」
「く、空間魔法って言いました?」
「うん。こっちの世界に来るとき、好きなスキルを選べって言われたから。他には上位聖魔法とか勇者もあったけど」
「空間魔法の使い手、物凄く珍しいんですよ! 上位聖魔法は、凄く頑張ればそれなりに習得できます。勇者はそもそも別格としても、空間魔法は生まれつきの素質がないと使えない魔法なんです! わあ、どうしよう、ジョーさんって凄い人だったんですね。私ったら軽率にパーティーに誘ってしまって……」
「いや、ひとりでドラゴン倒す方が凄いと思う」
「それは、その、コツがあるんです」
ドラゴンを倒すコツって何だろう……。気になるけど、聞くのが怖い気もする。
さすがの俺も変な顔をしてしまったんだろう。んんっ、とサーシャが咳払いをした。
「と、とにかく、空間魔法が使えたら凄いですよ。例えば魔物の討伐とか以外にも、荷物の運搬とかのお仕事もできますし。いろんな人助けができると思います」
「そうか、そういう仕事もあるんだ……。じゃあ、なんとかなるかな」
俺は体力には自信があるけど、凄い運動神経がいいわけじゃない。それにそんなに度胸もないし、戦闘はできるだけ避けたい。
「よかった、じゃあ、明日一緒にギルドに行きましょう」
「今からじゃなくていいの?」
「ギルド、実はあそこなんです」
サーシャが指さしたのは、さっき彼女が勇者から土下座されてた場所の目の前にある建物だった。――確かに、あの騒ぎだったら中にも聞こえてただろうし、パーティーから離れて即別の人間と組むというのも不自然に思われるかもしれない。
「わかった。それで、これからどうしたらいいかな」
「ええと、まずジョーさんの服と装備を買いに行きましょうか」
「やばい、俺お金持ってない!」
「大丈夫です。私がそれなりに持ってますから。ジョーさんは心配しなくていいですよ」
待て、サーシャは笑顔で当然のように言ってるけど、それってヒモじゃないのか?
俺は女の子にお金全部出させて、「ありがとう」なんて平気な顔してられないぞ。
「悪いけど、お金は一旦借りるって形にしてもらえるかな。冒険者の仕事で稼いだら返すから」
「ジョーさんは立派な方ですね。大丈夫です、空間魔法があればすぐにいい報酬のお仕事もできますよ。じゃあ、行きましょう」
そして俺は彼女に連れられて、大通りにある盾と剣のマークの描かれた一軒の店に連れて行かれたのだった。
「うわ……」
店内を見て、思わず俺はそんな声を上げてしまった。
剣や槍や斧、いろんな物が飾られているし、やたらめったら鎧も種類がある。
ファンタジーだ。文字のメニューで選ぶRPGじゃない。どっちかというとアニメで見た武器の店。
「ハワードさん、こんにちは」
「サーシャちゃんじゃないか! アーノルドのパーティーから抜けたんだって?」
「ふう……もう広まってしまってるんですね」
サーシャががっくりと肩を落とす。そんな彼女を慰めるように、ハワードと呼ばれたおじさんは大きな手で彼女の肩を叩いた。
「ギルドの前で大騒ぎしたそうじゃないか。そりゃああっという間に広まったよ。実はさっきアーノルドもここに来てな。サーシャは悪くないから、他の人とここに来ても怪しまないで欲しいって言われたんだ」
あの勇者、いい人かよ!
いや、さすが勇者、というべきなのかな。正義の側に立つ、正しい勇者ってことか。
「アーノルドさんにも気を遣わせてしまってるんですね。いえ、私が悪いんです」
「いやいや、どっちも悪くないさ。サーシャちゃんがいい子で、よく頑張ってるのはみんな知ってる」
「でも、私が未熟なせいで……」
「それこそ気にすることじゃないさ。まだ17だろう? これからまだまだ成長するんだ。そのうち魔法も正しく使えるようになる。――で、今日は何を見に来たんだい?」
その話題が続けばサーシャがどんどん落ち込んでいきそうだったので、うまく話を切り替えたおじさんに俺はナイス! と心の中で叫んでいた。
「あっ、はい! こちらはジョーさんといって、アーノルドさんたちと別れた直後に偶然出会った方なんです。彼は女神テトゥーコの御加護を受けているので、これも女神のお導きと思ってご一緒させてもらうことになりました」
「へえ、女神様の御加護をねえ。凄いじゃないか、兄ちゃん」
「え、いや、俺は何も凄くなくて、ただの偶然で」
手違いで死んだことになってるからこっちの世界に送られたとか、サーシャ以外には口が裂けても言えなさそうだな。女神の評判に関わってしまう。
「どんなのを探してるんだい?」
「そうですねえ。ジョーさんは直接戦うことはないと思いますし、素材のいい革鎧があれば」
「これなんかどうだ? 火竜の革で作ってあるからちょっとやそっとの火にも耐えられるぜ」
「ええと、できれば、私と同じものがあるといいんですが」
「サーシャちゃん……古代竜の革鎧なんか、そう簡単にホイホイ置いてあるものじゃないよ……」
古代竜? なんか妙に物騒な響きの単語が聞こえたな。
「素材もないですか?」
「ないねえ。あったら店に並べてるよ。全属性防御なんて希少品、目玉商品になるからね」
「あ、じゃあ、今から古代竜狩ってきますね。それで革鎧を発注します」
「えっ!?」
「えっ!?」
ハワードさんと俺の驚きの声が綺麗にシンクロした。
恐ろしく軽く爆弾発言をした当の本人は、自分がおかしいことを言った自覚は全くないようだった……。
サーシャ、多分、そういうところだぞ……。
御厩条という名前は「みまや」を彼女が何度か噛んだので、「ジョー」と呼ばれることになった。そういえばうちの親、俺が将来海外に出ても呼ばれやすいようにこんな名前にしたとか言ってたっけ。
……中学の時の同級生に「獅子」って名前の奴いたけど、あいつ元気かな……。
「サーシャはこれからどうするの?」
勇者パーティーを追放された現場はかなりの人が見ていたはずだ。彼女の今後が心配になる。それに、俺も右も左もわからない場所で知り合った人間といきなり離れたくはなかった。
「それなんですが。あの、ものは相談で、私とパーティーを組んでもらえませんか?」
「パーティーってあの、勇者パーティーみたいな、一緒に冒険をしたりする……?」
思わぬ彼女からの提案に俺は動揺した。でも表情筋が7割死んでると言われる俺だから、声にもあまり動揺が出ていない。
「はい、そうです。基本的に冒険者はギルドに登録してお仕事を請け負って、報酬をもらいます。でも、私はさっきパーティーを抜けてしまいましたから、このままだとお仕事を受けられないんです。ひとりというのは危ないので、余程簡単なもの以外ギルドの方でお仕事を認めてくれなくて」
「俺が、冒険者に? でも、サーシャならどこでもパーティーに入れてくれるんじゃ?」
冒険者になるのはちょっと嫌だなという気持ちもあってそう尋ねてみると、みるみるサーシャの顔が曇った。
あ、もしかして地雷を踏んだかな……。
「はい……多分、誘っていただけるところは多いと思います。私、有名になってるそうですし。でも、アーノルドさんたちの迷惑になりたくないんです。有名になってしまった私が既存の他のパーティーに入ったら、きっと悪い噂になってしまうから」
彼女の言葉で、俺の体に電流が走った。
聖女だ。この子、まさしく聖女だ。
心根が清い。見た目が可憐なだけじゃなくて、性格がいい。例えそれなりの理由があり土下座をしてたとしても、自分を「追い出した」パーティーの心配をここまでするものか?
その上ドラゴンひとりで倒したなんて、そりゃこの子自体が噂になるに決まってる。
俺は目の前の天使のような少女を見つめて、味わったことのない感情に翻弄されていた。
「ジョーさん、この世界でどう生きていきたいとか考えてますか? きっと何もわからない状態ですよね? 私も若輩者でそんなに世間に凄く詳しいわけじゃないですが、一緒にいれば何かと助けてあげられると思うんです。ジョーさんの目の前で、私がパーティーから抜けてひとりになったこと、これも女神テトゥーコのお導きだと思います」
「女神テトゥーコ」
だめだ、どうしてもその名前が出てくると意識がそっちに引きずられる。
いや、でもちょっとありそうだな。俺の転移先として、わざわざサーシャの追放現場の目の前を選んだとか。あの女神はちょっとお節介そうだったし。
――あちらでも元気でお過ごしなさいね。
女神の最後の言葉が耳に蘇った。
正直、「またお会いしましょう」とかじゃなくて良かったけど、あの人善意で言ってくれたんだよな。
「俺も、女神テトゥーコのお導きかもしれないと思う。元気でお過ごしなさいねって言って握手してくれたし」
「えええっ! すご……凄いですね! あの、ジョーさん、握手してもらっていいですか?」
「別にいいけど?」
俺が手を差し出すと、サーシャは白くてほっそりした手でぎゅっと握手してきた。
……思ったより手のひら硬いな。まあ、武器と盾持って戦ってたら当然か。
「あわわ、この手が、女神と握手した手!」
なんか、反応がアイドルと握手したみたいになってるけど。間接握手ってやつか。俺と握手したことが重要なんじゃなくて、「女神と握手した俺」と握手したことが重要なんだな。
……ちょっと悲しい。
「感無量です! ジョーさん、ありがとうございます!」
さっきまで泣いていたのに、サーシャはふわふわとした笑顔を浮かべた。
「いいよ、パーティー。俺、空間魔法しか使えないけど」
君ともう少し一緒にいたいから。そんな気持ちは口に出さないけど。
多分女神の思惑もあると思うけど、右も左もわからない俺が誰かから「一緒に行動をしよう」と誘ってもらえてるのはとんでもない幸運のはずなのだ。
「お世話になります、よろしくお願いします」
俺が頭を下げると、サーシャは口をパクパクさせながらあわあわしていた。
「どうかした?」
「く、空間魔法って言いました?」
「うん。こっちの世界に来るとき、好きなスキルを選べって言われたから。他には上位聖魔法とか勇者もあったけど」
「空間魔法の使い手、物凄く珍しいんですよ! 上位聖魔法は、凄く頑張ればそれなりに習得できます。勇者はそもそも別格としても、空間魔法は生まれつきの素質がないと使えない魔法なんです! わあ、どうしよう、ジョーさんって凄い人だったんですね。私ったら軽率にパーティーに誘ってしまって……」
「いや、ひとりでドラゴン倒す方が凄いと思う」
「それは、その、コツがあるんです」
ドラゴンを倒すコツって何だろう……。気になるけど、聞くのが怖い気もする。
さすがの俺も変な顔をしてしまったんだろう。んんっ、とサーシャが咳払いをした。
「と、とにかく、空間魔法が使えたら凄いですよ。例えば魔物の討伐とか以外にも、荷物の運搬とかのお仕事もできますし。いろんな人助けができると思います」
「そうか、そういう仕事もあるんだ……。じゃあ、なんとかなるかな」
俺は体力には自信があるけど、凄い運動神経がいいわけじゃない。それにそんなに度胸もないし、戦闘はできるだけ避けたい。
「よかった、じゃあ、明日一緒にギルドに行きましょう」
「今からじゃなくていいの?」
「ギルド、実はあそこなんです」
サーシャが指さしたのは、さっき彼女が勇者から土下座されてた場所の目の前にある建物だった。――確かに、あの騒ぎだったら中にも聞こえてただろうし、パーティーから離れて即別の人間と組むというのも不自然に思われるかもしれない。
「わかった。それで、これからどうしたらいいかな」
「ええと、まずジョーさんの服と装備を買いに行きましょうか」
「やばい、俺お金持ってない!」
「大丈夫です。私がそれなりに持ってますから。ジョーさんは心配しなくていいですよ」
待て、サーシャは笑顔で当然のように言ってるけど、それってヒモじゃないのか?
俺は女の子にお金全部出させて、「ありがとう」なんて平気な顔してられないぞ。
「悪いけど、お金は一旦借りるって形にしてもらえるかな。冒険者の仕事で稼いだら返すから」
「ジョーさんは立派な方ですね。大丈夫です、空間魔法があればすぐにいい報酬のお仕事もできますよ。じゃあ、行きましょう」
そして俺は彼女に連れられて、大通りにある盾と剣のマークの描かれた一軒の店に連れて行かれたのだった。
「うわ……」
店内を見て、思わず俺はそんな声を上げてしまった。
剣や槍や斧、いろんな物が飾られているし、やたらめったら鎧も種類がある。
ファンタジーだ。文字のメニューで選ぶRPGじゃない。どっちかというとアニメで見た武器の店。
「ハワードさん、こんにちは」
「サーシャちゃんじゃないか! アーノルドのパーティーから抜けたんだって?」
「ふう……もう広まってしまってるんですね」
サーシャががっくりと肩を落とす。そんな彼女を慰めるように、ハワードと呼ばれたおじさんは大きな手で彼女の肩を叩いた。
「ギルドの前で大騒ぎしたそうじゃないか。そりゃああっという間に広まったよ。実はさっきアーノルドもここに来てな。サーシャは悪くないから、他の人とここに来ても怪しまないで欲しいって言われたんだ」
あの勇者、いい人かよ!
いや、さすが勇者、というべきなのかな。正義の側に立つ、正しい勇者ってことか。
「アーノルドさんにも気を遣わせてしまってるんですね。いえ、私が悪いんです」
「いやいや、どっちも悪くないさ。サーシャちゃんがいい子で、よく頑張ってるのはみんな知ってる」
「でも、私が未熟なせいで……」
「それこそ気にすることじゃないさ。まだ17だろう? これからまだまだ成長するんだ。そのうち魔法も正しく使えるようになる。――で、今日は何を見に来たんだい?」
その話題が続けばサーシャがどんどん落ち込んでいきそうだったので、うまく話を切り替えたおじさんに俺はナイス! と心の中で叫んでいた。
「あっ、はい! こちらはジョーさんといって、アーノルドさんたちと別れた直後に偶然出会った方なんです。彼は女神テトゥーコの御加護を受けているので、これも女神のお導きと思ってご一緒させてもらうことになりました」
「へえ、女神様の御加護をねえ。凄いじゃないか、兄ちゃん」
「え、いや、俺は何も凄くなくて、ただの偶然で」
手違いで死んだことになってるからこっちの世界に送られたとか、サーシャ以外には口が裂けても言えなさそうだな。女神の評判に関わってしまう。
「どんなのを探してるんだい?」
「そうですねえ。ジョーさんは直接戦うことはないと思いますし、素材のいい革鎧があれば」
「これなんかどうだ? 火竜の革で作ってあるからちょっとやそっとの火にも耐えられるぜ」
「ええと、できれば、私と同じものがあるといいんですが」
「サーシャちゃん……古代竜の革鎧なんか、そう簡単にホイホイ置いてあるものじゃないよ……」
古代竜? なんか妙に物騒な響きの単語が聞こえたな。
「素材もないですか?」
「ないねえ。あったら店に並べてるよ。全属性防御なんて希少品、目玉商品になるからね」
「あ、じゃあ、今から古代竜狩ってきますね。それで革鎧を発注します」
「えっ!?」
「えっ!?」
ハワードさんと俺の驚きの声が綺麗にシンクロした。
恐ろしく軽く爆弾発言をした当の本人は、自分がおかしいことを言った自覚は全くないようだった……。
サーシャ、多分、そういうところだぞ……。
3
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる