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19 最初の関門です
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幸いお弁当を食べ終わった頃にギルドからの配達が届き、カモミールは余っている遮光瓶にトゥルー・ローズを希釈しただけの香水を作ることができた。
ジェンキンス侯爵夫人に贈るつもりの香水と同じ香りになってしまったが、あくまでもこちらはサンプルだ。同じ物を販売するつもりはない。
なお、香水は香料をアルコールで希釈して作るのが基本だが、香料の濃度によってパルファム、オードパルファム、オードトワレ、コロンと分けられている。最も香料の濃度が高く香りが続くのがパルファムで、貴族の間では香水と言えばこれを指す。
コロンは高価な原料の濃度が最も薄いので安価で、必要なときに応じて使うことが多い。
遮光瓶をバッグに入れ、カモミールは念入りに化粧をして、髪型も普段とは違い大人っぽく見えるアレンジにした。白いエプロンは外し、手持ちの中では最も上等なワンピースに着替える。
「よし、行くわよ。怖じ気づいちゃダメ。私にはミラヴィアでの実績があるしトゥルーローズもある。絶対にクリスティンさんの支持を勝ち取ってみせる」
覗き込んだ鏡の中の自分に向かって言い聞かせ、気合いを入れる。工房から出ると、踏み台を使ってテオがまだ漆喰を塗っていた。
「テオ、私これから出かけてくるから。別に誰も来ないと思うけど、誰か来たら適当に対応お願い」
「はいはい……って、また化けたなぁー」
「必ず言われるわ! 私お化粧映えしやすい顔なのよね。そばかすを消すだけで年齢が上がって見えるらしいし」
いまのカモミールはいつもの少女めいた様子ではなく、凜とした美しい女性と言った方が正しい。もちろん、ヴァージルに教わった化粧の技術も盛り込んでいる。童顔に見えがちな顔をキリリとさせるアイメイクは必須だ。
「いざ、出陣!」
「ああ、やっぱり中身は変わってねえな……頑張って来いよ」
先程来ていたヴァージルから話のあらましは聞いていたらしい。テオが声援を送ってくれた。
遅くとも2時間後までには、とヴァージルに伝えておいたが、実際には1時間ちょっとで店に向かうことができた。
納品のために数え切れないほど訪れたことがある「クリスティン」に足を踏み入れると、顔見知りの店員が笑顔で近寄ってくる。
「いらっしゃいませ。本日は何かお探しでしょうか?」
「ミナさん……私よ、カモミール。今日はオーナーに呼ばれてきたの」
顔見知りでもカモミールだとは気づいてもらえなかった。化粧の力が凄いのか、「お下げにエプロン」でイメージが定着しすぎているせいなのかはよくわからない。
ミナははっと息をのんで手で口を覆い、苦笑しながら接客モードをやめる。
「えっ、あっ、いやだー、恥ずかしいっ! ごめんなさーい、いつもとあまりに感じが違うから気づかなくて」
「いいのいいの、よく言われるから。それより、オーナーのところに案内してもらえません? あまりお待たせはしてないと思うんだけど」
「カモミールさんはオーナー室には入ったことないんですよね。じゃあ案内します」
ミナがカモミールを案内して店の3階へ上がり、奥の部屋をノックした。
「オーナー、カモミールさんがいらっしゃいました」
「お通ししてちょうだい」
すぐに中から応えが帰ってくる。ミナがドアを開けると、中は応接セットと執務机のある部屋だった。
「ミナ、お茶の準備をお願い。カモミールさんはお久しぶりね。急にお招きしたのに来てくださって嬉しいわ。どうぞ、お座りになって」
オーナーのクリスティンは思わず気圧されるような美女だった。年の頃は化粧を差し引いて40を少し過ぎた頃合いかと思うが、正直よくわからない。年齢のよくわからない迫力美女という区分けで、タマラと少し似た雰囲気を持っている。
艶やかな金髪をハーフアップにして華やかに巻いて垂らしていて、口紅は一歩間違えば毒々しいほどの赤。ギリギリで「艶やか」の範囲に収めているのは他の部分の化粧や服装とのバランスもあるのだろう。マーメイドラインの黒いスカートは王都での流行なのだろうか、クリスティンの姿勢の良さと相まって、女性らしくも凜々しく見える。
完璧な笑顔をカモミールに向けているが、それが処世の技だということはカモミールにも当然わかる。相手は海千山千のやり手で知られる商団主だ。しかも化粧品を取り扱っているのだから、彼女の美そのものが武器なのだ。
「お久しぶりです、お招きいただきありがとうございます。ミラヴィアについていろいろとご報告しなければいけないこともありましたし、こちらからご連絡を差し上げないといけないところでしたが……」
勧められるままにソファに座ると、その向かいにクリスティンが座る。彼女は座っているだけなのに、隙が無いのが感じられてカモミールは場違いにも感心してしまった。踏んだ場数の違いがこういうところに現れるのだろう。
「商団主同士の話し合いなら腹の探り合いもあるけれど、あなたはこの店の看板商品の作り手ですもの、回りくどいやりとりは無しで、腹を割って話し合いましょう? 私たちの『クリスティン』とあなたの『ミラヴィア』は運命共同体と言ってもいいのだから」
「そうしていただけると助かります」
――ある意味別の怖さがあるけどね。
顔には笑顔を、腹の中では冷や汗を掻きつつ、カモミールはクリスティンの方針に全面的に賛成だと頷いた。
「……と、言いたいところだけど、急がせてしまったし、まずはお茶を飲んでからにしましょう。うちでも扱っている紅茶なの。私も好きな銘柄だから是非飲んでいただきたいわ」
タイミングを計ったようにドアがノックされ、ミナがポットと茶器を運んできた。彼女が淹れるのかと思ったが、ミナはそのセットをクリスティンの前に置いて一礼して部屋を出て行く。そして当たり前のようにクリスティンがティーポットに茶葉を入れ、お湯を注いで蒸らし始めた。
「私はこだわりがちょっと強くて、こういうのは人任せにできないのよね。私のような立場だと使用人がやるのが世間では当たり前なんでしょうけど、このお店の中だと私より美味しくお茶を淹れられる人がいないの。そうそう、あなたのお友達のヴァージルはそこそこね。筋がいいわ。あの子は何をさせても上達が早くて、有望な人材だと思うわ」
「お茶がお好きなんですね」
「ええ、もちろん。好きなものだからこそいい物を広めたいとも思えるの。ただお金儲けのためだけの商材を扱っていたのなら、私は成功していなかったでしょうね」
クリスティンはティーポットに保温の為の布を被せ、砂時計をひっくり返した。その間に白いティーカップにもお湯を注いで温めていて、美味しいお茶を飲むためのこだわりが感じられる。ティーカップもカモミールやタマラが普段使っているカップとはお値段が100倍くらい違いそうだ。
ビーカーで果実水を飲んだなんて言ったら、取引が無くなりそうで少し怖い。
「このお茶は香りが独特で、渋みが強いの。そのせいで苦手な人もいるのだけど、ミルクを入れるだけで味わいが変わるから、もし苦手な味だったらミルクを試してみて」
お茶を淹れている間にも会話が途切れないように、さりげない話題を挟んでくれる。カモミールの方は一旦ミラヴィアの現状を伝えることがお預けになってしまったので何を話したらいいかわからず、クリスティンの気配りがありがたかった。
砂時計の中の砂がすっかり落ちきって、クリスティンはカップに注いだ湯を小さな壺の中に捨てると、ティーポットを手にしてふたつのティーカップに濃さが均等になるように注いでいく。最後の一滴まで残らず注ぎきって、彼女はおそらく仕事用ではない笑顔でカモミールに紅茶を勧めた。
「……とてもいい香りですね。いただきます」
この香りは嗅いだことがある気がしたが、紅茶を口にゆっくり含んで香りを楽しんでから飲み込むと、やはり渋みが強く口に残った。商業ギルドで出されたものと同じ銘柄のようだ。おそらくグレードはこちらの方が高いのだろうが。
「ふふっ、はい、ミルクをどうぞ。お砂糖もね。私はスプーンで2杯くらいお砂糖を入れて、甘めのミルクティーを飲むのが好きよ」
カモミールの微妙な表情で、苦手な味だと察してくれたのだろう。クリスティンはまず自分のカップにたっぷりとミルクと砂糖を入れ、ミルクと砂糖の壺をカモミールの方に押しやってくれた。クリスティンもミルクを入れているのだからと、カモミールも遠慮無く真似してミルクと砂糖を入れる。
スプーンで砂糖が溶けるように混ぜて、それから改めて紅茶を飲むとミルクのまろやかさが渋みを包み込んで、深くて優しい味わいになっていた。香りも変わって、まるで果実と牛乳を合わせたデザートのようになっている。砂糖の甘さも加わってとても飲みやすく、思わずカモミールは笑顔になった。
「ミルクを入れるとこんなに変わるなんて……。実は以前一度飲んだことがあって、その時は苦手な味だと思ったんですが、こうして飲むととても美味しいです。大好きになりそう」
「でしょう? 良かったわ。まだお茶と言えば庶民層だとハーブティーが一般的で、紅茶は値段も下げにくいしなかなか広まらないの。まずひとり、美味しいと言ってくれる人が増えて私も嬉しい」
カップの温かさも手伝ってか、最初の緊張はかなりほどけていた。
このお茶にはどんな菓子が合うかなどを、まるで気の置けない友人同士のように話して、ふたりのカップが空になったときにクリスティンが顎の下で指を組んでカモミールを見つめた。
「さて――それじゃあ、話してくれるかしら。今『ミラヴィア』がどうなっているのかを」
ジェンキンス侯爵夫人に贈るつもりの香水と同じ香りになってしまったが、あくまでもこちらはサンプルだ。同じ物を販売するつもりはない。
なお、香水は香料をアルコールで希釈して作るのが基本だが、香料の濃度によってパルファム、オードパルファム、オードトワレ、コロンと分けられている。最も香料の濃度が高く香りが続くのがパルファムで、貴族の間では香水と言えばこれを指す。
コロンは高価な原料の濃度が最も薄いので安価で、必要なときに応じて使うことが多い。
遮光瓶をバッグに入れ、カモミールは念入りに化粧をして、髪型も普段とは違い大人っぽく見えるアレンジにした。白いエプロンは外し、手持ちの中では最も上等なワンピースに着替える。
「よし、行くわよ。怖じ気づいちゃダメ。私にはミラヴィアでの実績があるしトゥルーローズもある。絶対にクリスティンさんの支持を勝ち取ってみせる」
覗き込んだ鏡の中の自分に向かって言い聞かせ、気合いを入れる。工房から出ると、踏み台を使ってテオがまだ漆喰を塗っていた。
「テオ、私これから出かけてくるから。別に誰も来ないと思うけど、誰か来たら適当に対応お願い」
「はいはい……って、また化けたなぁー」
「必ず言われるわ! 私お化粧映えしやすい顔なのよね。そばかすを消すだけで年齢が上がって見えるらしいし」
いまのカモミールはいつもの少女めいた様子ではなく、凜とした美しい女性と言った方が正しい。もちろん、ヴァージルに教わった化粧の技術も盛り込んでいる。童顔に見えがちな顔をキリリとさせるアイメイクは必須だ。
「いざ、出陣!」
「ああ、やっぱり中身は変わってねえな……頑張って来いよ」
先程来ていたヴァージルから話のあらましは聞いていたらしい。テオが声援を送ってくれた。
遅くとも2時間後までには、とヴァージルに伝えておいたが、実際には1時間ちょっとで店に向かうことができた。
納品のために数え切れないほど訪れたことがある「クリスティン」に足を踏み入れると、顔見知りの店員が笑顔で近寄ってくる。
「いらっしゃいませ。本日は何かお探しでしょうか?」
「ミナさん……私よ、カモミール。今日はオーナーに呼ばれてきたの」
顔見知りでもカモミールだとは気づいてもらえなかった。化粧の力が凄いのか、「お下げにエプロン」でイメージが定着しすぎているせいなのかはよくわからない。
ミナははっと息をのんで手で口を覆い、苦笑しながら接客モードをやめる。
「えっ、あっ、いやだー、恥ずかしいっ! ごめんなさーい、いつもとあまりに感じが違うから気づかなくて」
「いいのいいの、よく言われるから。それより、オーナーのところに案内してもらえません? あまりお待たせはしてないと思うんだけど」
「カモミールさんはオーナー室には入ったことないんですよね。じゃあ案内します」
ミナがカモミールを案内して店の3階へ上がり、奥の部屋をノックした。
「オーナー、カモミールさんがいらっしゃいました」
「お通ししてちょうだい」
すぐに中から応えが帰ってくる。ミナがドアを開けると、中は応接セットと執務机のある部屋だった。
「ミナ、お茶の準備をお願い。カモミールさんはお久しぶりね。急にお招きしたのに来てくださって嬉しいわ。どうぞ、お座りになって」
オーナーのクリスティンは思わず気圧されるような美女だった。年の頃は化粧を差し引いて40を少し過ぎた頃合いかと思うが、正直よくわからない。年齢のよくわからない迫力美女という区分けで、タマラと少し似た雰囲気を持っている。
艶やかな金髪をハーフアップにして華やかに巻いて垂らしていて、口紅は一歩間違えば毒々しいほどの赤。ギリギリで「艶やか」の範囲に収めているのは他の部分の化粧や服装とのバランスもあるのだろう。マーメイドラインの黒いスカートは王都での流行なのだろうか、クリスティンの姿勢の良さと相まって、女性らしくも凜々しく見える。
完璧な笑顔をカモミールに向けているが、それが処世の技だということはカモミールにも当然わかる。相手は海千山千のやり手で知られる商団主だ。しかも化粧品を取り扱っているのだから、彼女の美そのものが武器なのだ。
「お久しぶりです、お招きいただきありがとうございます。ミラヴィアについていろいろとご報告しなければいけないこともありましたし、こちらからご連絡を差し上げないといけないところでしたが……」
勧められるままにソファに座ると、その向かいにクリスティンが座る。彼女は座っているだけなのに、隙が無いのが感じられてカモミールは場違いにも感心してしまった。踏んだ場数の違いがこういうところに現れるのだろう。
「商団主同士の話し合いなら腹の探り合いもあるけれど、あなたはこの店の看板商品の作り手ですもの、回りくどいやりとりは無しで、腹を割って話し合いましょう? 私たちの『クリスティン』とあなたの『ミラヴィア』は運命共同体と言ってもいいのだから」
「そうしていただけると助かります」
――ある意味別の怖さがあるけどね。
顔には笑顔を、腹の中では冷や汗を掻きつつ、カモミールはクリスティンの方針に全面的に賛成だと頷いた。
「……と、言いたいところだけど、急がせてしまったし、まずはお茶を飲んでからにしましょう。うちでも扱っている紅茶なの。私も好きな銘柄だから是非飲んでいただきたいわ」
タイミングを計ったようにドアがノックされ、ミナがポットと茶器を運んできた。彼女が淹れるのかと思ったが、ミナはそのセットをクリスティンの前に置いて一礼して部屋を出て行く。そして当たり前のようにクリスティンがティーポットに茶葉を入れ、お湯を注いで蒸らし始めた。
「私はこだわりがちょっと強くて、こういうのは人任せにできないのよね。私のような立場だと使用人がやるのが世間では当たり前なんでしょうけど、このお店の中だと私より美味しくお茶を淹れられる人がいないの。そうそう、あなたのお友達のヴァージルはそこそこね。筋がいいわ。あの子は何をさせても上達が早くて、有望な人材だと思うわ」
「お茶がお好きなんですね」
「ええ、もちろん。好きなものだからこそいい物を広めたいとも思えるの。ただお金儲けのためだけの商材を扱っていたのなら、私は成功していなかったでしょうね」
クリスティンはティーポットに保温の為の布を被せ、砂時計をひっくり返した。その間に白いティーカップにもお湯を注いで温めていて、美味しいお茶を飲むためのこだわりが感じられる。ティーカップもカモミールやタマラが普段使っているカップとはお値段が100倍くらい違いそうだ。
ビーカーで果実水を飲んだなんて言ったら、取引が無くなりそうで少し怖い。
「このお茶は香りが独特で、渋みが強いの。そのせいで苦手な人もいるのだけど、ミルクを入れるだけで味わいが変わるから、もし苦手な味だったらミルクを試してみて」
お茶を淹れている間にも会話が途切れないように、さりげない話題を挟んでくれる。カモミールの方は一旦ミラヴィアの現状を伝えることがお預けになってしまったので何を話したらいいかわからず、クリスティンの気配りがありがたかった。
砂時計の中の砂がすっかり落ちきって、クリスティンはカップに注いだ湯を小さな壺の中に捨てると、ティーポットを手にしてふたつのティーカップに濃さが均等になるように注いでいく。最後の一滴まで残らず注ぎきって、彼女はおそらく仕事用ではない笑顔でカモミールに紅茶を勧めた。
「……とてもいい香りですね。いただきます」
この香りは嗅いだことがある気がしたが、紅茶を口にゆっくり含んで香りを楽しんでから飲み込むと、やはり渋みが強く口に残った。商業ギルドで出されたものと同じ銘柄のようだ。おそらくグレードはこちらの方が高いのだろうが。
「ふふっ、はい、ミルクをどうぞ。お砂糖もね。私はスプーンで2杯くらいお砂糖を入れて、甘めのミルクティーを飲むのが好きよ」
カモミールの微妙な表情で、苦手な味だと察してくれたのだろう。クリスティンはまず自分のカップにたっぷりとミルクと砂糖を入れ、ミルクと砂糖の壺をカモミールの方に押しやってくれた。クリスティンもミルクを入れているのだからと、カモミールも遠慮無く真似してミルクと砂糖を入れる。
スプーンで砂糖が溶けるように混ぜて、それから改めて紅茶を飲むとミルクのまろやかさが渋みを包み込んで、深くて優しい味わいになっていた。香りも変わって、まるで果実と牛乳を合わせたデザートのようになっている。砂糖の甘さも加わってとても飲みやすく、思わずカモミールは笑顔になった。
「ミルクを入れるとこんなに変わるなんて……。実は以前一度飲んだことがあって、その時は苦手な味だと思ったんですが、こうして飲むととても美味しいです。大好きになりそう」
「でしょう? 良かったわ。まだお茶と言えば庶民層だとハーブティーが一般的で、紅茶は値段も下げにくいしなかなか広まらないの。まずひとり、美味しいと言ってくれる人が増えて私も嬉しい」
カップの温かさも手伝ってか、最初の緊張はかなりほどけていた。
このお茶にはどんな菓子が合うかなどを、まるで気の置けない友人同士のように話して、ふたりのカップが空になったときにクリスティンが顎の下で指を組んでカモミールを見つめた。
「さて――それじゃあ、話してくれるかしら。今『ミラヴィア』がどうなっているのかを」
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