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第八章 喜色の祝鐘
100:誓い1
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「ちょっと千紗! まだ支度終わんないの?」
ぶ厚いドアの向こうから聞こえてくるのは美久ちゃんの声。
本当はとうの昔に着終わっていた純白のドレスを指でなぞりながら、私はおずおずと返事をする。
「う、うん。もう少し……」
「早くしてね、みんな待ってるよ。花嫁さんがいなくちゃ、結婚式は始まんない!」
「うん……」
頷きながら背後をふり返ったら、開けっ放しの大きな窓が目に入った。
そこからひょっこり顔をのぞかせた紅君が、「俺ちょっと出かけるから、ちい、時間稼ぎしといて……」などと言って、どこかへ行ってしまってから、もう二十分が経った。
私たちのために、今日この場所に集まってくれた僅かな人の中には、待たされたことに腹を立てるような人物はいない。
でも、忙しい皆の時間を、奪ってしまっているのは少し気が引ける。
「どこ行っちゃったんだろう、紅君……?」
少し困った思いで窓に近づき、霞みがかった春の空を見上げる私は、もう、ほんの少しでも紅君の姿が見えなければ不安でたまらなかった私ではない。
――紅君が私のことを思い出してくれてから、もうすぐ一年。
何があっても、どこへ行っても、きっと彼は自分のところへ帰ってきてくれると信じられるぐらいには、私も大人になった。
彼のことが好きな自分に気がついたあの春からは、七年――。
私は今日、紅君のお嫁さんになる。
頬を撫でていく優しい春風も、私たちを祝福しているように感じた。
ぶ厚いドアの向こうから聞こえてくるのは美久ちゃんの声。
本当はとうの昔に着終わっていた純白のドレスを指でなぞりながら、私はおずおずと返事をする。
「う、うん。もう少し……」
「早くしてね、みんな待ってるよ。花嫁さんがいなくちゃ、結婚式は始まんない!」
「うん……」
頷きながら背後をふり返ったら、開けっ放しの大きな窓が目に入った。
そこからひょっこり顔をのぞかせた紅君が、「俺ちょっと出かけるから、ちい、時間稼ぎしといて……」などと言って、どこかへ行ってしまってから、もう二十分が経った。
私たちのために、今日この場所に集まってくれた僅かな人の中には、待たされたことに腹を立てるような人物はいない。
でも、忙しい皆の時間を、奪ってしまっているのは少し気が引ける。
「どこ行っちゃったんだろう、紅君……?」
少し困った思いで窓に近づき、霞みがかった春の空を見上げる私は、もう、ほんの少しでも紅君の姿が見えなければ不安でたまらなかった私ではない。
――紅君が私のことを思い出してくれてから、もうすぐ一年。
何があっても、どこへ行っても、きっと彼は自分のところへ帰ってきてくれると信じられるぐらいには、私も大人になった。
彼のことが好きな自分に気がついたあの春からは、七年――。
私は今日、紅君のお嫁さんになる。
頬を撫でていく優しい春風も、私たちを祝福しているように感じた。
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