75 / 77
7 もう一度『初めまして』から始めよう
10
しおりを挟む
穴の開くほど見つめ続ける私の視線に気がついたのか、その子もふとこちらへ目を向ける。
(目があっても椿ちゃんにしか見えない!)
心の中で叫ぶ私を余所に、隣で父が呑気な声を発した。
「あれ? 時間をずらしたつもりだったのに……かちあったか?」
私のことはただじっと見ていた女の子が父に視線を移すと表情を厳しくする。
「和奏、ほら。お前のお友だちだろ? 『成宮』の雅……」
「雅……ちゃん……?」
私はその名前を噛みしめながら、改めて彼女へ視線を向けた。
私とは違いちゃんとした黒の喪服のワンピースを着た彼女は、まるで日本人形のように可愛らしい。
かなりの小柄だった椿ちゃんより、少しだけ背は高いようだが、その他は何も変わらない。
まるで型で抜いたかのように、顏も体型も椿ちゃんにそっくりだ。
「話して来ていいぞ」
父が肘でつつくので、私は花束を父に押しつけ、彼女へ向かって歩き始めた。
(えーっと……雅ちゃん……雅ちゃん……)
まちがえて『椿ちゃん』と呼びかけてしまわないように、何度も声に出さず練習した。
(目があっても椿ちゃんにしか見えない!)
心の中で叫ぶ私を余所に、隣で父が呑気な声を発した。
「あれ? 時間をずらしたつもりだったのに……かちあったか?」
私のことはただじっと見ていた女の子が父に視線を移すと表情を厳しくする。
「和奏、ほら。お前のお友だちだろ? 『成宮』の雅……」
「雅……ちゃん……?」
私はその名前を噛みしめながら、改めて彼女へ視線を向けた。
私とは違いちゃんとした黒の喪服のワンピースを着た彼女は、まるで日本人形のように可愛らしい。
かなりの小柄だった椿ちゃんより、少しだけ背は高いようだが、その他は何も変わらない。
まるで型で抜いたかのように、顏も体型も椿ちゃんにそっくりだ。
「話して来ていいぞ」
父が肘でつつくので、私は花束を父に押しつけ、彼女へ向かって歩き始めた。
(えーっと……雅ちゃん……雅ちゃん……)
まちがえて『椿ちゃん』と呼びかけてしまわないように、何度も声に出さず練習した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる