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6 夢見た未来
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「お前が友だちになったっていう『成宮』のお嬢さんから、どこまで聞いてるかは知らないが……家督を継ぐことを放棄して、『成宮』と決別した叔父さんというのがいたとしたら、それが俺だ……『成宮』は、今はあの子の母親――俺の姉貴が継いでいる」
「そう……なんだ……」
ここで私はとても重要なことに気がついた。
父は、私が友だちになった『成宮のお嬢さん』を、今現在あのお屋敷で暮らしているらしい女の子のことだと持っているようだが、それは違う。
私が友だちになったのは、『うてな』でこことは違う世界へ迷いこんで出会った、椿ちゃん――父の母だ。
しかしそのまちがいを正すには、もういったいどこから説明しなければならないのかわからなくなるほど複雑で、その上そんな突拍子もない話を、信じてもらえる自信もない。
ここは異を唱えず、とりあえず父と話を合わせておくことを選ぶ。
「特には、聞いてないけど……」
「そうか……」
父は大きく息を吐き、椅子の背もたれに深く背中を預けた。
花火を見上げ、その音に時々声をかき消されながら、話をしてくれる。
「俺と姉貴の上には兄貴がいて、『成宮』は当然その兄貴が継ぐものだと、周りも本人もまったく疑ってなかった。子供の頃から、俺たちとは別に英才教育を受けて、お前のお祖母ちゃんのお父さん――和奏から見たらひいお祖父ちゃんだな……その人から帝王学を叩きこまれて……頭のいい、優しい兄貴だったけど、まだ若いうちに亡くなったんだ……」
父の家族の話など、これまで一度も聞いたことがなく、私は驚きの思いで目を見開く。
「そう……なの……」
「ああ。当然次は、次男の俺がって話になったけど、その頃にはもう俺はこの町にいなくて、和奏も生まれたばかりで、ここへ帰るっていう選択肢は選べなかった……それで姉貴が「だったら私が!」って継いだんだ。昔からしっかり者だし、人づきあいはいいし、却って和奏のひいお祖父ちゃんの代より、『成宮』は町への影響力と人脈を広げてるかもしれないな……」
「そうなんだ……」
父の話によれば、あの椿ちゃんのお父さんから、椿ちゃんの娘に当たる人が家督を継いだということになる。
だとすれば、椿ちゃんと誠さんはいったいどうしたのだろうと、私は不安になった。
「そう……なんだ……」
ここで私はとても重要なことに気がついた。
父は、私が友だちになった『成宮のお嬢さん』を、今現在あのお屋敷で暮らしているらしい女の子のことだと持っているようだが、それは違う。
私が友だちになったのは、『うてな』でこことは違う世界へ迷いこんで出会った、椿ちゃん――父の母だ。
しかしそのまちがいを正すには、もういったいどこから説明しなければならないのかわからなくなるほど複雑で、その上そんな突拍子もない話を、信じてもらえる自信もない。
ここは異を唱えず、とりあえず父と話を合わせておくことを選ぶ。
「特には、聞いてないけど……」
「そうか……」
父は大きく息を吐き、椅子の背もたれに深く背中を預けた。
花火を見上げ、その音に時々声をかき消されながら、話をしてくれる。
「俺と姉貴の上には兄貴がいて、『成宮』は当然その兄貴が継ぐものだと、周りも本人もまったく疑ってなかった。子供の頃から、俺たちとは別に英才教育を受けて、お前のお祖母ちゃんのお父さん――和奏から見たらひいお祖父ちゃんだな……その人から帝王学を叩きこまれて……頭のいい、優しい兄貴だったけど、まだ若いうちに亡くなったんだ……」
父の家族の話など、これまで一度も聞いたことがなく、私は驚きの思いで目を見開く。
「そう……なの……」
「ああ。当然次は、次男の俺がって話になったけど、その頃にはもう俺はこの町にいなくて、和奏も生まれたばかりで、ここへ帰るっていう選択肢は選べなかった……それで姉貴が「だったら私が!」って継いだんだ。昔からしっかり者だし、人づきあいはいいし、却って和奏のひいお祖父ちゃんの代より、『成宮』は町への影響力と人脈を広げてるかもしれないな……」
「そうなんだ……」
父の話によれば、あの椿ちゃんのお父さんから、椿ちゃんの娘に当たる人が家督を継いだということになる。
だとすれば、椿ちゃんと誠さんはいったいどうしたのだろうと、私は不安になった。
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