もう一度『初めまして』から始めよう

シェリンカ

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6 夢見た未来

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「じゃあその勇気を持って、懐の中のプレゼントを渡しに、今すぐ椿ちゃんのところへ行ってください」

 軽く背中を押し出した私に、誠さんは驚いた顔を向けた。

「椿のところへ? でも……」

 そのあとに続く言葉は、今『成宮』の家へ行っても会わせてもらえないだろうという心配だとわかり、私はすぐに神社の背後にそびえる山を指した。

「椿ちゃんなら今、『秘密の場所』に居ます。誠さんなら行き方わかりますよね?」
「ああ……」

 頷いた彼の背を、私は両手で押した。

「早く行かないと、帰りが遅くなって椿ちゃんが怒られちゃいます。だから全力で走っていってください。プレゼントを渡したら、椿ちゃんをちゃんとお屋敷まで送っていってあげてくださいね」

 その間には、祭りのトリを飾る花火も上がるだろうと思った。
 お屋敷へこっそりと戻るために急ぎながら、椿ちゃんがあの田んぼ道で、誠さんと二人で花火を見上げることが出来たら、それはどんなにロマンチックだろう――。
 その光景を想像して、私は自分のことのように胸をときめかせる。

「わかった。じゃあ行ってくるね。和奏ちゃん」

 鷹揚に手を振っている誠さんを、私は懸命に言葉で急かす。

「いいから急いで! 急いで行ってください!」
「わかった!」

 笑顔で答えると、本当に全力で山道を上るほうへ走っていった誠さんを見送り、私はほっと胸を撫で下ろした。

(よかった……この先はもう私には確かめることができないけど……きっとうまくいくはず……あの二人ならうまくいってくれるはず……)

 私の目から見ても、可愛らしいとしか言いようのない感情を向けあっている二人が、自分の祖父母の若い頃の姿だという事実を、本当に面白く思いながら、私はようやく一息ついた。

 と、その時――。
 私が立っている場所へ向かい、懸命に駆けてくる人影が見える。

(あ……)

 人波を必死にかきわけ、足をもつれさせながら走ってくる、小豆色の着物に白いエプロンを付け、髪を首のうしろでお団子にまとめた若い女性のシルエット――。

(百合さん! ううん……ハナちゃん!)

 息を切らせて駆けつけるはずの彼女のため、何か飲みものを確保しておかなければと、私は周囲を見回した。
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